INTERVIEW
インタビューINTERVIEW | 2024.03.01HIO MIYAZAWA宮沢 氷魚
作品で出会えたトランペットに
アパッシオナート!
GUESTS
今、目が離せない人物を迎えて、輝きの秘訣をインタビューする連載『キレメソ』。
今回のゲストは、現在放送中の日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」(TBS系)でトランペット奏者を演じている宮沢氷魚さん。圧倒的な存在感と透明感を放つ宮沢さんに撮影秘話から、旅の話までさまざまな角度からインタビューさせていただきました。
KIREI
METHOD
宮沢 氷魚
目次
HIO MIYAZAWA
宮沢 氷魚
PROFILE
俳優・モデル。’94年4月24日生まれ。アメリカ・カリフォルニア州出身。
ドラマ『コウノドリ』第2シリーズ(’17年)で俳優デビュー。以後、ドラマ『偽装不倫』(’19年)、NHK連続テレビ小説『エール』(’20年)などに出演、映画『騙し絵の牙』(’21年)では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。舞台『ピサロ』(’22年)ほか、話題作に出演。初主演映画『his』(’20年)では、数々の映画賞受賞。
’22年NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』にレギュラー出演。’23年、映画『エゴイスト』にて、アジア全域版アカデミー賞「第16回アジア・フィルム・
アワード」(AFA)、毎日映画コンクールでは助演男優賞、日刊スポーツ映画大賞石原裕次郎賞を受賞した。’23年3月には映画『52ヘルツのクジラたち』の公開と、’25年放送予定のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」への出演も決定している。
HIO MIYAZAWA
KIREI METHOD
役の“リアリティさ”を追求しながら
挑んだ撮影
まずは現在放送中の日曜劇場「さよならマエストロ」で宮沢さんが演じる森大輝について伺います。大輝はスーパーポジティブな性格という設定ですが、今回の役をどのようにとらえていますか?
これまで大輝役ほどポジティブな人物を演じたことがなかったので、クランクインするまで悩みました。
ポジティブな方は僕の周りにもたくさんいますが、“スーパーポジティブ”といえるような人はそうそういないので、大輝という役をどこまでポジティブにするか、監督さんやプロデューサーさんと何度も話し合いました。
ポジティブではなく、スーパーポジティブですから悩ましいですよね。
あまり過剰に演じてしまうと
人物像のリアリティがなくなってしまいます。
観ている人が共感できない人物になってしまわないように、まずは僕なりのポジティブさを探して、そこから役に向き合っていきました。
大輝の最初のシーンを演じた時のことを聞かせてください。
撮影直前までいろいろと考えてしまいました。
でも、いざ撮影が始まると作品自体が明るいので、自分からエネルギーを発しなくても周りに引っ張ってもらえ、自然と大輝のポジティブさが出せたように思います。
現場では楽団員役の役者さんがそれぞれ自分の楽器に向き合っていたかと思います。みなさんで声をかけ合うこともあったのでしょうか?
そうですね。各々に先生がついて、空き時間もみなさん熱心に練習されていました。
演奏するシーンの前は休憩時間も自然と集まり、みんなで音合わせをすることもありましたね。カメラが回っていない時間も常に何かしらの音が出ている楽しい現場です。
日曜劇場ということで主演の西島秀俊さんはじめ、西田敏行さんなどキャリアの長い俳優さんが大勢出演されていますが、現場の雰囲気はいかがですか?
西島さんも西田さんも本当にチャーミングで明るい方なので、カメラが回っていないところでも昔の撮影エピソードを聞かせてくれたり、美味しいお店の話をしたりと、和気あいあいとした雰囲気のなかで撮影が進んでいます。
人生にさらなる彩りを与えてくれる
“トランペット”との出会い
今回の役どころはトランペット奏者ですが、これまでトランペットの経験はありますか? もし初めての経験であれば、やってみての感想も聞かせてください。
僕は学生時代にトロンボーンをやっていました。
当時はトランペットをやりたかったのですが、腕が長いからという理由でトロンボーンの担当になってしまいました。トランペットは20年越しに念願が叶って吹くことができたので嬉しかったですね。
第3話ではトランペットを吹きながら“心の声”が流れるような描写もありましたね。
今回の作品では「演じるためにセリフを覚える」、
そして「トランペットを演奏する」という2つのことを同時に準備しなければならなかったのですが、
第3話では「吹きながら“心の声”と表情を合わせる」というシーンの撮影もあったので本当に大変でした。だからこそトランペットだけは事前に練習を重ねて、体に覚えさせるしかないと思って練習に励みました。
作品にちなんで、宮沢さんが思わず“アパッシオナート=情熱的”になるものはどんなことでしょうか。
この作品で出会えたトランペットですね。
クランクインをする3か月前から練習を始めましたが、最初は作品を通してみなさんに僕のトランペットの音色を聞いてもらうので必死に練習しました。練習がきついと感じたこともありましたが、次第にこの作品と音楽に魅了され、トランペットももっと上手くなりたいと思うようになりました。
トランペットは撮影用に用意されたものなのでしょうか?
撮影では2つのトランペットを使用していますが、
実はそのうちの一つは僕の弟のものなんです。
ほぼ毎日触れているのでかなり愛着がわいています。これからもトランペットは続けていきたいので、弟に相談して撮影が終わってからも使わせてもらおうと思っています(笑)。
今後、森大輝のこんなところに注目して観てほしい!
という部分があれば教えてください。
作品の前半部分は登場人物がぶつかる描写があったり、
晴見フィルの楽団員がトラブルを抱えたりと大変でした。
しかし後半では、メンバーが団結し、音楽への愛情をさらに感じることができると思います。大輝自身は楽団存続に対する焦りが表情にも出てきますが、みんなともっと音楽がしたいという強い思いも生まれているので、最終回まで楽しんでいただけたら嬉しいです。
10年後の自分のためにセルフケアは
欠かさない
お仕事柄、日々の体調管理は欠かせないかと思いますが、
意識的にやっていることがあれば教えてください。
俳優は現場に入る時間が早いので、
朝はどうしても早起きになるんですが、
僕の場合は家を出る2時間前には起きるようにしています。
だから、朝の6時に家を出るときは4時に起きています。
2時間前に起床とは早いですね。
その時間で自分の中でのルーティンはありますか?
朝から時間に迫られバタバタと現場に入ってしまうと、
その日1日中焦った気持ちのままになってしまうんですよね。
余裕を持って行動したいので2時間取っています。ルーティンは、起きたらまずシャワーを浴びます。肌を整えたらコーヒーを豆から挽いて、飲みながらその日の台詞をチェックしたり、植物に水をあげたりします。そうやって朝から時間に余裕を持って過ごすと、現場に入ってからも自分のペースで仕事に向き合えるので僕にとっては大事な時間ですね。
寝る前はどんなことを心がけていますか?
夜は毎晩、入浴剤を入れた湯船にしっかり浸かって体を温めることは心がけています。
そしてお風呂から出たら、体が固いのでストレッチをします。現場で緊張して筋肉が強張ってしまうこともあるので、お風呂上りに体をほぐすことは日課にしています。また、乾燥肌なので肌のケアも入念にします。「今やったことが10年後に影響してくるよ」と聞いてからは化粧水、乳液、美容液、アイクリームで保湿しています。
かなり入念に肌ケアもされているのですね。食事で気を付けていることはありますか?
現場に入ってしまうとどうしてもお弁当になってしまうので、なるべく野菜を摂ることを意識しています。
休みの日は自炊もします。料理を作ることは好きなので、魚を買ってきてソテーにしたり生姜焼きを作ったり、一通りはできます。
旅を通して自分の成長を感じたい
宮沢さんはアメリカで生活をされていたこともあるかと思いますが、今までに行った国でお気に入りの場所はありますか?
最近、撮影で訪れた台湾にノスタルジックな魅力を感じました。
首都の台北は最先端の建物が建っていますが、少し離れると歴史情緒あふれる風景が広がっていて、いろんな側面を見せてくれるのでまったく飽きませんでした。また、どこか昔の日本を思わせる風景もあるので、タイムスリップしたかのような感覚にもなり、国としての面白さを感じました。
では、まとまったお休みが取れて旅行に行けるとしたらどこに行きたいでしょうか?
そうですね。
行きたい地域が2つあるんですが、一つはアジアです。
特にインフラが整備されていない発展途上の国を自分の目で見て旅したいです。体力がある今だからこそ、あえてノープランでその土地の観光地からディープな部分まで満喫してみたいです。はたして自分がそういう土地に行ったときにどんなことを感じて何を吸収するのかということにも興味があります。
もう一つはどちらでしょうか?
ヨーロッパです。
シャネルのアンバサダーを務めているので、何度かコレクションや展示会のためにパリやロンドンに行きましたが、ほとんど街を見る時間がありませんでした。だからヨーロッパの国々も時間をかけてじっくり回ってみたいですね。でもこちらはどちらかというと、もう少し年齢を重ねてからでもいいかもしれません。
国内でこれから行きたい場所はありますか?
四国に行ってみたいです。
子どものころに一度、徳島には行ったことがあるらしいのですが、記憶にありません。だから僕にとっては未知の場所なんです。なかでも高知県の四万十川は絶対に訪れたいです。景色が雄大でどこをとっても絶景と聞くので、いつか旅したいですね。
常に穏やかな状態で過ごせるワケとは?
宮沢さんは寡黙でミステリアスな役柄が多いイメージですが、
ご自身を一言で表すならどんな性格でしょうか?
比較的、穏やかな性格だと思います。
時にはイライラもしますが、怒ったりすること自体が面倒なんです(笑)。体力も使いますし。
だからなるべく穏やかに過ごそうと努めています。
怒りを感じることがあっても、ぐっとこらえてしまうということでしょうか?
そうですね。
怒りの感情があっても自分の中で沈めてしまうんです。
だから意見が食い違う相手がいたとしても「そういう考え方もあるのか…」と消化してしまうので、友達とケンカになりません。感情的になって自分の意見を通したり、友達のために怒ったりする姿を見ると、逆にいいなと思います。
世間的にはキレやすい人が増えているという話も聞きますが、
宮沢さんはその真逆のタイプですね。
ふと自分の性格を考えた時に、相手のことを
ちゃんと考えているのかなと疑問に思うことがあります。
本当に相手のことを思っていたら、衝突も覚悟の上で自分の意見を言うべきなのかなと考えてしまいます。
穏やかで怒りを表に出さないというご自身の価値観を形成するにあたり、影響を受けた事柄はありますか?
もともとの性格だとは思いますが、両親がどちらかというと感情をストレートに表現するタイプなので
それを見ていいなと思う反面、自分は両親とは逆の方法で感情と向き合いたいと思ったのかもしれません。
でも今は役者をやっているからこそ、役を通していろんな感情を出せるので、プライベートで穏やかでいられるのかもしれませんね。
演じることは難しい。
でも、楽しむことも忘れたくない
現在、宮沢さんはモデルと俳優、二足の草鞋を履いていますが、
それぞれがもたらす好影響があれば教えてください。
映像とスチールでは大きな違いがありますが、
モデルも俳優も「表現する」という意味においては近いものがあるように思います。
それぞれがもたらす好影響は…そうですね、俳優業に携わる前は、ポージングをする時は先輩方のマネでしかなかったように思います。でも、芝居の勉強をはじめてからは、モデル業に対してずいぶん気持ちが楽になりました。これは「簡単になった」という意味ではありません。カメラマンさんの要望に応えることができるようになったことと、自分のやり方が見つかったからそう感じるようになりました。
モデルでデビューされた宮沢さんですが、今では俳優として多くの作品に出演されています。演じることで日々感じることがあれば教えてください。
やっぱり自分ではない人を演じるということは難しいです。
自分のことすらよくわからない時があるのに、自分以外の人を演じるということは、並大抵のことではないんだなと感じています。でも、他人を演じることで自分の新たな側面を発見できることもあります。例えば、常に感情的で怒りや悲しみを体で表現する人物を演じた時は、素の自分とは真逆のタイプなので、感情をむき出しにするとこんな感じなのか…と驚きがあります。同時に素の自分は普段から感情を抑えすぎていないか、ストレスに感じてはいないかと、俯瞰して見つめることもできます。
撮影が終わってからもその役を少し引きずってしまうタイプですか? それとも切り替えは早いほうでしょうか?
その役を演じている期間中はどうしても役のモードに
入っているので緊張感はどこかにあります。
でも僕の場合、どちらかというと強制的に自分に戻るように意識しているのでON・OFFの切り替えははっきりしているかもしれません。そうでないとやっぱり疲れちゃいますから。
今後どんなことに挑戦していきたいですか? もしくは演じてみたい役はありますか?
ここまで映画やドラマ、舞台や声優にも挑戦させてもらいました。
どれも難しくて大変ではありましたが、目の前の壁が高ければ高いほどやりがいを感じます。得るものも大きいと思うので、これからもいろんなことに挑戦していきたいと思っています。役でいえば、そうですね…先生役は経験がないのでいつかはやってみたいです。
たしかに宮沢さんといえば、骨太の作品に大御所の先輩方と共演されることが多かったかと思います。今後もお芝居を続けていく上で大事にしたいことはどんなことでしょうか?
芝居を英語で表すと「play」ですが、
playには“遊ぶ”という意味もあります。
演じることは本当に難しいことですが、「遊ぶ、楽しむ」という気持ちも忘れずこれからも続けていけたらいいなと思っています。
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『kirei note』X(Twitter)アカウント
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抽選で2名様に
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2024年3月1日(金)12:00~
3月7日(木)11:59まで
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【当選者】
2名様
【応募期間】
2024年3月1日(金)12:00~3月7日(木)11:59
【応募方法】
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取材・文/安田ナナ
撮影/須田卓馬
ヘアメイク/吉田太郎
スタイリスト/庄将司