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2026.09.16

韓国で熱視線を集めつつあるヨンフィ洞を街歩き #森田想の韓国偏愛日和 vol.7

映画『ソロモンの偽証』『朝が来る』『タイトル、拒絶』『わたし達はおとな』『辰巳』などさまざまな作品で大活躍の俳優・森田想さん。現在は配信中の「九条の大罪」(Netflix)にも出演しています。

実は韓国語が堪能で、年に数回渡韓するほど韓国通の森田さんによる、韓国コラム連載です。

第七回は、韓国旅で訪れたヨンフィ洞について。実際に撮影された写真とともにお楽しみください。

-무드 인 코리아- 森田想の韓国偏愛日和 vol.7

>> 「vol.6 本で見つけた名店へ。2泊3日の渡韓1日目を振り返る」はこちらから

去年の秋にソウル旅行に訪れた際に友人からオススメをもらっていた街があった。とてもこじんまりしていて、住宅地の中にカフェが連なっているような、親しみのある穏やかな場所らしい。名前は延禧洞(ヨンフィ洞)。手頃なショッピングをするには欠かせない学生の街・弘大の少し上にある。地図で見ると、左手には大きな自然公園が、右手には延世大学のキャンパスがどちらも縦に広がっているその真ん中に、メインのエリアが位置する。駅でいうと、弘大と新村のちょうど間で特段近い最寄りはない。バスや徒歩、自転車、各々の好きな移動時間を過ごした後にたどり着けるその街に私は惚れ込んでしまった。

旅行2日目の昼下がり。優雅な旅とは程遠く、欲深い私は約束時間の25分前まで弘大のMUSINSAでセールになっている服を探していた。相手から連絡があったので慌ててバスに飛び乗る。歩いて向かうと30分近くかかるところ、バスは中心部を抜けてあっという間にヨンフィ洞の入り口に着いた。なんだか、空気が確実に違う気がする。バスから降り立った右足がスキップしたそうに弾んだ。約束の相手は、今年の春にモデルとして撮影させてもらった韓国ブランド「Miseki seoul」のディレクターであるジンシルさんだ。彼女のお気に入りの街を紹介してくれるという。以前から気になっていて、教科書(前回の記事参照、なかしましほ著『ソウルのおいしいごはんとおやつ』)にも載っていたCafe MAAで集合予定だったが、2人ともお腹が空いてしまったので、まずは近くの麦飯(ボリパッ)の店に行くことに。

「연희보리밥(ヨンフィ麦飯)」は地図アプリの口コミの良さが際立ち訪れたが、とびきりの当たりだった。ジンシルさんから、麦ご飯は好き?と聞かれ、私は大きく頷いた。食感のある麦ご飯がむしろ大好きだ。メインのおかずをタブレットから選んで注文したら、二人分盛られたナムルの大きなお皿が真ん中に置かれる。私が選んだ辛いイカ炒めも食べ応えがあり、ほぼ野菜だらけなのに、その美味しさにどんどん口に放り込めばあっという間にお腹が満たされてしまった。食後のお口直しにと、店内にはシッケとカラメル味の雷おこしのようなポン菓子が用意されているところもポイントが高い。紙コップ一杯のシッケが妙に美味しくて、またハマってしまいそうだ。

食後は腹ごなしに軽い街散歩を。ヨンフィ洞といえば有名な、壁一面が毛糸の手芸屋さん「바늘이야기(バヌルイヤギ)」を横目に通り過ぎて、ジンシルさんがお土産に渡してあげると連れて行ってくれた「금
옥당(金玉糖・クムオクタン)」
という羊羹屋さんがなんとも素敵だったので紹介したい。

韓国に伝わるポジャギ(福を包む、という意味合いが込められたもの)、そしてノリゲ(伝統的な下げ飾り)が施されたラッピングデザインはとにかく人にあげたくなるし、季節で変わる約17種類のフレーバーの中には、ナツメ味、チェジュ緑茶味、カボチャ味など、ここならではのラインナップが。一個売りから試せるのもいい。年上のお姉さまや、お世話になっている人にぜひあげたい…と購入を悩んでいると、ここでトラップ。こちらの羊羹は「生羊羹」なので冷蔵必須、消費期限がなんと当日2〜3時間以内だったのだ。羊羹といえば非常食くらいもつ万能糖分、と思っていた私とジンシルさんはびっくりして、むしろアートのように陳列された店舗の在庫を心配した(もちろん空箱だった)。今日が帰国日で、夜にホームパーティに行くとか、打ち上げとか、何か、とにかく大人数の集まりがあったら、保冷剤でぐるぐる巻きにしてこの素敵なプレゼントを人にあげることが出来るのに。仕方なく自分だけ頂いたナツメ味の羊羹は弾力のある食感で、一気に全身を駆け巡る甘さなのにあっさり食べやすく、ますます人にあげたくて落ち込んだのだった。

この日は雲ひとつない晴天。風も柔らかく吹き、ガラス張りのビルに反射した光が水面のように綺麗に揺らぎ、何もかも幸せに感じる日だった。知らない街に出会う喜びを噛み締めながら足の赴くままに歩けば、道のどこかしこに小さな看板があり、雑貨屋さんやカフェ、古着屋、ジャンル問わずこだわりのお店がぎゅっと詰まっているように感じる。「AFTER-NAP」というメンズメインの古着屋に入れば、無印良品や45Rなどの日本のブランドが人気だそうで品揃えが良かったのも面白かった。そして何より、この街にはテラス席が多い。またも首を大きく捻って動かし、右に左にカフェを見つけるたびに誰もがテラスでコーヒーを飲んでいる。一軒一軒寄って行きたい気持ちを抑え、当初の予定通りCafe MAAに行くべく、道を戻った。

グラスになみなみ、いやたぷたぷに入ったアイスアメリカーノと合わせて、SNSで何度も見た、岩に大きく波を打つような芸術的なソフトクリーム。人間には心地よい気温のテラス席もアイスクリームにとっては暑いようで、割とすぐ溶け始めてしまったので写真タイムを切り上げてまずは一口。

あまりの美味しさに、眼圧を感じるほど目を見開く。なんだこの味、知っているこの味、知らない美味しさ。茶葉の深みを感じるミルクティー味のアイスに、下にしかれた赤いソースはごろごろ入った冷凍イチゴによく合う、バラのソース。まさかこんなところでバラを味わえるとは。口の中がベルサイユ宮殿と化し、革命を起こしていた。何度も「이게 말이 돼요?(意訳:こんな美味しいってありえます?)」と口にする。どんどん溶けてアイスとソースが一体化したとしてもマリアージュは失わず、最後まで高級な味がした。これは確かに、全員こぞって訪れてほしい。朝ごはんにぴったりのオープンサンドは次に残しておく。まるで美術館のエントランスのような開放的なテラス席での至福の時間で、この日のヨンフィ洞探索は幕を閉じた。次回の旅では、この街のどこかにAirbnbでも借りて、朝コーヒーを一杯飲んでは他の街で買い物に勤しんだのち、帰ってきて夜どこかのビストロでワインを一杯飲む、そんな日々を送りたい。

帰国後、私の心のふるさとになったこの街(一目惚れにもほどがある)のことを考えていたら、韓国アイドルのSOMIさんがちょうどYoutubeを更新していた。ヨンフィ洞の出身らしく、出てくるのはどこも美味しそうなお店ばかり。数日前通った道に、もっともっと素敵な店があったらしい。

https://youtu.be/vr-8cRDTbHI?si=ljlZrGuVjqNUBaGs )
URL: https://youtu.be/WGuq6-vW9gQ?si=XMsPH-2Du6S3kICK

さらに奥深いことが分かったヨンフィ洞。そういえば、もっと奥まで歩いて通りに突き当たり安山都市自然公園の先まで行くと、最近日本でも人気のBOCBOKの実店舗があったりと、ファッション感度の高い街でもあることが窺える。数年前から徐々に熱視線を集めつつあるヨンフィ洞。遅ればせながら、私も無事デビュー。なんとなくコットンの服とか、サボサンダルが似合いそうな街。もしくは古着のアメカジTを着て行きたい。そんな妄想をしながら、さらに人気を集めて行列をなす前に、再訪の機会を待ちわびている。また次の記事でお会いしましょう!

バナー画像:
スタイリスト/入山浩章
ヘアメイク/江指明美(mod’shair)
撮影/金井尭子

<衣装>
スリーブレスフーディー ¥39,600、トップス ¥29,700、スリーブレスチュールドレス ¥52,800、サイクリングショーツ ¥12,100(すべてnaokitomizuka/naokitomizuka.official@gmail.com)
グローブ ¥8,470、スカートベルト ¥6,710(ともにGBH/https://gbhjapan.com)
スニーカー ¥51,700(MIKIOSAKABE/https://mikiosakabe.shop/)
ビーニー ¥9,350(BOCBOK/PR01.TOKYO 03-5774-1408)

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