2026.09.18
【俳優・矢吹奈子】相手の思いがダイレクトに伝わる手書きの手紙の良さを、改めて実感する日々
『君の名は。』や『すずめの戸締まり』などの制作で知られるコミックス・ウェーブ・フィルムが、初めて海外の劇場アニメーション映画を配給します。その作品は、第26回プチョン国際アニメーション映画祭で3部門を受賞してアジアを席巻した韓国発の“Kアニメ”『縁の手紙』。
思春期ならではの心の揺らぎや迷いを抱きつつ、日々を瑞々しく生きる韓国の学生たちの群像を、謎解き要素も交えながら俊英キム・ヨンファン監督が描いた爽快な一編です。
世界166の国と地域での配給が決定した話題作の日本語吹き替え版で、主人公ソリの声を担当するのは、矢吹奈子さん。子役を経てHKT48や日韓合同グループIZ*ONEで活動、現在は俳優として活躍する一方、ラジオ番組「レコメン!」でパーソナリティを務めるなど、多彩さを発揮しています。
縁の深い韓国のアニメーションで声優に初挑戦して感じたこと、また矢吹さんならではの韓国おすすめ情報など、幅広く伺いました。
矢吹さんとソリ。似ているところ、似ていないところ

──『縁の手紙』を試写を拝見しまして…想像もしていなかった展開に引き込まれ、最後のほうではウルッとしている自分がいました。
ありがとうございます。泣けますよね! 私も初めて(韓国語の)オリジナル版を全編通して見た時に泣いちゃいました。
──はい、とても素敵な作品でした。何でも、声を吹き込んだ主人公のソリは矢吹さんと似ているところがあるとのことですが、どの辺りでしょう?
似ている部分と違うかなと思う部分の2つがあるんですけど、私は新しい場所へ飛び込む時に不安よりも楽しみのほうが大きくて、ワクワクするタイプなんです。一方、ソリという女の子はちょっと引っ込み思案といいますか…転校した先では最初は不安のほうが大きくて。前の学校で自分に起こったこと(※ソリは、いじめられていた友達を庇ったことで、自分がターゲットにされてしまい転校する)もあって、周りと上手に関われないまま過ごしているんですけど、学校の机の中に隠されていた手紙を見つけてからは、手紙の続きを探しながらワクワクする毎日を過ごすようになっていって。
そんな風に新しい発見を楽しみながら生きている感じは、自分とすごく通ずるなと思いました。反対にちょっと私とは違うかなと思ったのは、意思を強く持って周りの人に思ったことを伝えられるところですね。俯瞰して見て、「ソリ、かっこいいなぁ。憧れるなぁ」と。まだ中学生だし、みんなに合わせて行動しているほうが悪目立ちしないし楽ですけど、ソリは自分の気持ちをしっかり人に伝えられるじゃないですか。なので、「ソリ、すごいね」と思いながら、寄り添うような気持ちで彼女を演じることができました。

──矢吹さんはお話も上手ですし、思っていることを言葉にしづらいというのが意外でした。
そこは元々の性格かもしれないです。結構、気づかうといいますか…「これを言ったら、嫌な気持ちになる人もいるんじゃないかな?」と先読みして考えちゃうタイプだったので、学校でも発言するのが苦手だったんですよ。国語の授業で“まる読み(※句点を区切りに1人ずつ文章を音読していくこと)”がある時も、「私は何番目だから、ここを読むんだな」と前々から練習していたぐらい、人前で大きな声でしゃべるのが得意じゃなくて──。
──そうだったんですね。それこそ、ソリも転校してきて早々、授業中に問題を解くよう不意に指されるシーンがありましたね。それも机の中に残されていた手紙のおかげで切り抜けることができるわけですが。
あの場面、私だったらあの手紙を読んでいたとしてもドキドキしたまま、声に出せなかっただろうなと思います。「あ〜、どうしよう、どうしよう!?」と。そこでも、ソリって強い子だなと感じました。
──ソリは芯が強いんでしょうね、きっと。
そう思います。結果的には同級生のドンスンのことも支えているし、全編を通して「かっこいい女の子だな」という印象が私の中ではあるんですよね。
小野賢章さんから受けた刺激

──そのドンスンの声を担当した小野賢章さんの印象についても、聞かせていただければと思います。
自分の収録の前に、小野さんがアフレコをされている現場を見学させていただいて。声優さんがアフレコをしているところは映像でしか見たことがなかったので、実際に見学する機会をいただけたことで、たくさんの気づきがありました。たとえば、ドラマの台本にはないような「アッ」とか「ウッ」とか「ハッ!」といった息づかいのセリフが書いてあって、どんな風に演じていいのか分からなかったんです。でも、小野さんは(オリジナルの)韓国版にはなかったドンスンの動きの部分にも声を入れていらっしゃって。「わっ、すごい…!」と感動しつつ、シーンによっては映像とリンクさせて動きながら声を吹き込む、といったことを学んで、採り入れながら私もアフレコに臨みました。
──実際に声のお芝居をされるにあたって、どういった意識づけをしたのでしょうか?
一番驚いたのが、モノローグ=心の声を読む時に「感情を乗せすぎないで」と言われたことですね。セリフは感情を乗せて話すんですけど、モノローグはちょっと淡々と喋っていて。部分的には感情を入れた表現もしているんですけど、ソリが泣いているシーンでも、モノローグは泣き声で言わなかったりするんです。収録中は完成形をイメージしないで、その時々の感情で声を吹き込んでいたんですけど、「心の声って、普通に喋っている声とこんなに違うのか」と学びながらのアフレコになりました。ドラマや映画だと、お芝居を全部撮り終わったあとでモノローグを録るんです。しかも、感情を入れて話すパターンが多くて。なので、「こんなに淡々とした話し方で、大丈夫かな?」と思いながら今回は収録していましたね。
──それと、声優さんは発声の仕方も結構違いますよね。
なので、私も最初は声をちょっと変えたほうがいいのかなという風に思っていたんです。普段の感じで喋っちゃうと、アニメの画と合わせた時に逆に違和感があるのかな、と。それで、声優さんみたいにハキハキとしっかり声を出したほうがいいのかなとも考えたんですけど、音響監督さんとお話する中で、意外とナチュラルに喋ったほうがソリらしさがあるんじゃないか、ということになって──。本番の何日か前に一回テスト収録で、ソリがクラスメートの子たちと初めて一緒にお昼ご飯を食べるシーンを、出演されている声優のみなさんと演じてみたんです。まずは自分が普段話す感じでやってみたら、「初々しさが逆に良い」ということで、なんとそのテイクがそのまま使われることになったんです。「えっ、この感じでいくんですか!?」と、そこで基準が決まるという。でも、普通に喋っている感じがリアルで、ソリらしさも出ると言われて、「アニメだからこういう発声の仕方をしよう」という考え方は忘れて臨むことにしました。私からすると自分の声にしか聞こえないんですけど…(笑)、映画を観てくださる方にソリの声として届いたらいいな、受け取っていただけたら嬉しいな、と──ちょっとドキドキしています。

──あくまで個人的な感想ですが、(矢吹がパーソナリティを務める文化放送の)「レコメン!」で喋っている感じとは違っていて、「ソリって、こういう声で話すんだな」という印象でした。
えっ、嬉しいです! ちょっと違う感じでした?
──だいぶ違う感じでした(笑)。
そうなんですね! その言葉を聞いて、ちょっと安心しました(笑)。
──しかも矢吹さんの声はよく通るので、言葉がクッキリ聞こえるんです。そういったお話も音響監督さんとはされましたか?
一番最初は、携帯で録音した声をお送りして聞いていただいて、そのあとに一度、マイクの前で実際にテストをして、1カ月後くらいに本番──という流れだったんですけど、マイクテストの時に教えていただいた発声法と話し方を意識して1カ月練習していたので、本番の時には「1カ月前と全然変わってる!」と言ってくださって。それもあって安心して収録できました。でも、本当にその1回の練習があったおかげで、いろいろと掴めた気がしていて。映像を見ながらのお芝居になると、顔のアップでは大きく喋りたくなりますし、引きの画では声を小さくしたくなっちゃうんですけど、「相手との距離感を考えて、言葉を投げかけてください」とご指導いただいたので、そこも意識しながら演じました。あと、「ドンスン」とか「ホヨン」と名前を呼ぶ時に韓国語の発音にしないでほしいと言われて、かえって苦戦するという…。ネイティブだと「パ(ク)ドンスン」という感じで“K”しか発音しないんですけど、今回は「パク・ドンスン」ってしっかり日本語発音で言うのが、逆に難しかったですね。
──ちなみに、キム・ヨンファン監督はアフレコに立ち会われたんですか?
いえ、監督とは後日、韓国でこの作品の主題歌(『Your Letter – Japanese Ver.』)のレコーディングをしたあとにお会いしました。なので、収録現場では音響監督さんとお話をしながらソリをつくりあげていったという感じです。舞台が韓国で、日常生活の雰囲気とか学校の様子も少し日本とは違っているんですけど、日本の人が観てもなるべく違和感がないような感じに調整してくださっていたので、全体的にはやりやすかったなという印象がありますね。
韓国のおすすめは「寒い中で食べるアツアツのラーメン」

──文化的なことで言うと、アニメの中でも食べ物が美味しそうで。特に、“学校を楽しむための手紙”に書いてあった通りに、ソリが学校へ“出前”してもらって食べるジャージャー麺と揚げ餃子を自分も食べたくなりました(笑)。
最近は日本でもいろんな韓国料理を食べられるようになって、ジャージャー麺のお店とかもできたりしているので、『縁の手紙』を観てくださった方は映画の帰りに韓国料理を食べに行くのも、いいかもしれないですね(笑)。
──確かに(笑)。なお、矢吹さんは「IZ*ONE」のメンバーとして韓国で活動していた時期もあるので、“通”ということを見込みまして…「韓国を旅するなら、ここへ行ってみて」という読者の方にレコメンドしていただけるでしょうか。
そうですね、どこがいいかな…。流行りの場所がどんどん変わっていっているみたいで、この前も韓国に行った時、「今はソンス(聖水地区)が人気なんでしょ?」と友達に聞いたら、「え、最近は人がちょっと少なくなってきてるよ」と。「じゃあ、次はどこなの?」と聞いたら──あ、あくまで私の友達から聞いた最新情報だという前提でお話しますけど、ヨンサン(龍山=ソウル中央部・漢江北岸にある地区)らしいです。実は私が前に住んでいた地区なので、「えっ、ヨンサンがこれから流行るの!?」とビックリしました。よくヨンサンにあるモールとかに行ったりしていたので、なんか地元が流行るみたいな感覚もあって、嬉しいですね(笑)。
──矢吹さんが住んでいらっしゃった当時は、そんな流行りそうな感じじゃなかったんですか?
はい、どちらかというとソウルの中でもメインどころからちょっと左側に行かなきゃなので、ホンデ(弘大)とかのほうが近いのかな…? 私が住んでいた時は正直、「ちょっと田舎味もあるな」と思っていたんですけど、流行るかもしれないということで…久しぶりにヨンサンにも行きたいですね。あとは…ハンガン(漢江)かなぁ。ソウル市内を流れている有名な大きな川なんですけど、ピクニックもできますし、ハンガンのコンビニでは夜になるとお店でラーメン=袋麺をつくれるんですよ。それがめちゃめちゃ美味しいので、ぜひ冬場に出かけていただいて、ラーメンを食べてもらいたいです。

──一度、真冬にソウルに行ったことがあるんですけど、本っ当に寒かったです。なので、温かい食べ物がいっそう滲みました(笑)。
激寒いですし、空気が冷たすぎて顔の皮膚とかが痛いですよね。そんな中でアツアツのラーメンを、ぜひ食べていただきたいです。
──いい情報をありがとうございます。では、韓国以外で矢吹さんの思い出に残っている旅先を挙げるとすると?
タイですかね。気候的には暑いんですけど、それだけにプールに入っているのが気持ちよくて。あと、ルーフトップパーが有名だと聞いて、「私も大人になったし、行ってみるか〜!」と。ちょっと高所恐怖症が芽ばえそうになるくらい高いところでしたけど、映え写真も撮れますし、すいかジュースもあって。私、すいかジュースが大好きなんですよ。でも、日本で100%丸絞りのすいかジュースってあんまり飲めないじゃないですか。だけどタイでは屋台でもウソみたいに大きなすいかジュースがあるので、もう…幸せでした。できることなら、毎日すいかジュースが飲みたいぐらいです(笑)。
──円安とはいえ、タイは物価も比較的安いですしね。
そうなんですよ! 私の感覚的にも、めっちゃ安かった印象があります。あと、けっこう日本語も聞こえてくるので、一人でも行けるかな〜と思って。私、まだ国内でも一人旅をしたことがないんですよ。なので、いつか一人でタイに行ってみたいなと思っています。
──一人旅は気ままなのがいいですよね。そして…最後に『縁の手紙』にちなみまして、矢吹さんが手紙を書きたくなるのは、どんな時かをお聞きして締めようと思います。
そうですね…自分がプレゼントをもらった時に、ひと言やメモ程度でも添えてあると嬉しくなるので、私もプレゼントを贈る時には手紙を書くようにしていて。それと、いただいたファンレターを読んでいると携帯の画面で見る文章とはまた違う、相手の方の思いや気持ち、感情が手書きの文字を通じて伝わってくるので、やっぱり手紙っていいなと、毎回読みながら思っています。

Prpfile
矢吹奈子
2001年生まれ、東京都出身。子役時代を経て、2013年にHKT48としてデビュー。2018年からは日韓合同グループIZ*ONEのメンバーとして世界的に活躍。2023年のHKT48卒業後は俳優に転身。ドラマ「御上先生」やミュージカル、バラエティ番組への出演に加え、2026年にはアニメ映画での声優挑戦や主演ドラマへの出演が決定している。
■『縁の手紙』
2026年9月25日公開
出演:矢吹奈子 小野賢章 ほか
監督:キム・ヨンファン
原作:チョ・ヒョナ『縁の手紙』(LINE マンガ)
制作:STUDIO LICO, STUDIO N
制作協力:CMC Media
製作:LOTTE ENTERTAINMENT
配給:コミックス・ウェーブ・フィルム
© 2025 LOTTE ENTERTAINMENT & STUDIO LICO & STUDIO N All Rights Reserved.
ヘアメイク/舩戸美咲
スタイリスト/山科美花
撮影/金井尭子
取材・文/平田真人
<衣装協力>
イヤリング¥16,500/vivid market、ブレスレット¥7,900/Mai’a madestore(共にロードス 03-3416-1995)
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