2026.07.29
【俳優 ディーン・フジオカ】自分の人生において完璧なタイミングで出合った“Loved One”という言葉
4〜6月にフジテレビ系で放送されていた連続ドラマ『LOVED ONE』。発見された遺体が残した“声なき最後の痕跡”をたどり、アメリカ帰りの風変わりな法医学者・水沢真澄と「MEJ(メディカルイグザミナージャパン)」のメンバーたちが難事件に挑んでいく新たな法医学ヒューマンミステリーとして、多くの視聴者を引き込み、惜しまれながら全11話のオンエアを終えました。
毎話のエンディング近くで流れていた主題歌「Loved One」も作品の世界観に寄り添うような楽曲で、いわば聴く者の胸に染みる味わい深きバラード。現在、デジタルシングルとして好評配信中です。
ドラマの主演を務め、主題歌も手がけたのは、ご存知ディーン・フジオカさん。俳優、ミュージシャン、プロデューサーと多面的に活動を行うディーンさんに、『LOVED ONE』という作品ならびに「Loved One」という曲に込めた思いの丈と、8月に発足10周年を迎えるファンクラブ「FamBam」での活動を通じて感じていることを、じっくりと語ってもらいました。
キーワードになった“Loved One”という言葉

──ドラマ関連のインタビューなどで「アメリカの法医学で遺体を『LOVED ONE』と呼んでいることに感銘を受けた」とお話されていましたが、この言葉が胸に響いた所以をお聞かせください。
ドラマで主演する時は、いつでも覚悟を決めて向き合っているんですけど、『LOVED ONE』ではありがたいことに主題歌も担当させていただくことになり、自分の中ではいつも以上に背負うものが大きかったんですね。でも、それこそ「Loved One=最愛の存在」という言葉があったから乗り越えられた、と感じていて。ドラマを終えた今では、自分の人生においても完璧なタイミングでこの言葉と出合えたという感覚があるんです。全11話が完結して、楽曲(=主題歌)もリリースされて、ミュージックビデオ(MV)も公開されて──俳優としても作家としても歌い手としても、個人としても「1つの区切りだったんだな」という思いが、いろいろな局面において増すばかりと言いますか──この“Loved One”という言葉との出合いがすべてだったと言えるくらい、僕にとってはまさしくキーワードになりましたね。
──ドラマのお話を聞いた当初は、まさかこれほどまでに大切な言葉になるとは想像されてはいなかった、と?
そうなっていくであろう可能性のようなものを、おぼろげには感じていたんですけど、正直なところ当初はドラマも主題歌も含めて…『LOVED ONE』というプロジェクトがどうなっていくのか想像がつかなくて、手探りでスタートさせたという感じでした。実を言うと、楽曲(=『Loved One』)は脚本ができあがる前に完成させていたんです。
──えっ? ということは、プロットや準備稿の段階で詞を書かれた、ということですか…!?
しかもプロットと言っても本当に初期の段階で、(ディーンさんが演じた主人公の)水沢真澄というキャラクターも完全にはできあがっていなかったんですよ。「真澄という主人公がいて、アメリカから帰ってきて、日本では『MEJ』という法医学専門チームで新たな試みを行っていく」という、基礎的な設定しか材料がなくて。なので、“Loved One”というキーワードと、ご遺体の足元を写した写真と、そのA4の紙一枚に書かれたプロットから想像力を働かせて、イメージをふくらませていったんです。
「奇をてらわず、研ぎ澄ました」制作過程

──ドラマの世界観にもピタリと符合していたので、台本を読み込まれたうえで詞を書かれたのかなと思っていましたが、そうではなかったんですね…。
1話完結でありつつ、全11話に渡って縦の軸を通すストーリーもあるという構造は把握していたので、“Loved One”という言葉が各回のご遺体のみならず、加害者や被害者、ご遺族や関係者といった登場する人物すべて──それぞれの人生に関わる曲にしたいな、というビジョンは明確だったんです。そこに対する迷いはほぼなくて、サウンドもピアノやストリングスといった基本的な楽器にとどめて、奇をてらったり実験的なことをするのではなく、王道のバラードでいくことは最初から決めていました。どちらかと言えば、今回は歌詞を紡いでいく作業に一番時間を掛けたんですよ。すごく難しかったですけど、同時にやりがいも感じながら言葉を紡いでいった、と言いますか。
──先にメロディーをつくって、歌詞を乗せていったという感じでしょうか?
基本的には“曲先”なんですけど、もう少し分解すると…“Loved One”というキーワードで曲をつくっていくうえで、何か大げさな表現をするのではなくて、ひたすら平凡な日常における他愛のない──生活の中の一コマ一コマを重ねていくように紡いでいって。その一文自体にどんな意味があるのかは未知でしたが、明確にその描写がイメージできるような日常の一コマを並べていったんです。
そのうえで、リフレインするサビの部分に“Loved One”という言葉を入れることで、いわゆる「愛しい」という感情は、特にふだん意識することもなく繰り返す「おやすみ」とか「ただいま」とか「おかえり」とか「ありがとう」といった言葉の延長線上にあるものと位置付けて、メロディーをつくっていきました。そして、「この構造だったら、あとはもうひたすら日常のエピソード集をAメロから一行一行、ワンシーンずつというか、写真を一枚ごとに見ていくような感じで物語を紡いでいくのがいいんじゃないか」と思いつきまして。表紙を開いて、1ページごとに物語を読み進めていった先にエンディングがあって、裏表紙を閉じるという──その構造で今回の曲をつくりたいという思いに沿って、クリエイトしていった感じです。
なので、イントロの最初の音からアウトロの最後の1音まで、歌詞で言うと最初のひと言から最後のひと言まで…ものすごくシビアに、それこそ命のやり取りをするような緊張感をもって向き合ったという感覚が自分の中にはありましたし、ここまで研ぎ澄ましたプロセスは初めてだったかもしれないですね。

──「奇をてらわず、研ぎ澄ます」という表現が本当にピッタリで、歌詞もサウンドもメロディーもストレートで…だからこそ響く曲になっているという感想を、僭越ながら「Loved One」に抱きました。それはある程度年齢を重ねてきて、自分が素直になれたからなのかもしれませんけれども…。
おっしゃること、めちゃくちゃ分かります。おそらく、人生を重ねていくと同時にいろいろなものを失っていっているからだと思うんですよね。残された時間のこととかもリアリティを持って感じられるようになるじゃないですか。自分の周りでも、この数年の間で同年代の親友たち──それぞれ出会ったタイミングは違いましたけど、親友と呼べるような仲間が3人亡くなって…。ずっと何かが胸につかえているような感覚というのが今もどこかあるんですけど、同時に自分も「あとどれぐらいの時間が残されているのかな?」と考えることが多くなったんです、必然的に。それもあって、削ぎ落とせるもの、素直になれること、大切にできるものがあるんだなと実体験を通じて自分も感じていた中で、この「Loved One」という曲を生み出すことができたんだなと思います。
何より余白を大切にしたかったんですよね。「寝癖のままで服を選ぶ横顔」という一文から歌詞が始まっていますけど、それ自体に深い意味があるわけでもなくて。ただ、明確に…誰が聴いても、その描写は思い浮かべられる一コマでもあると思っていて。それに続く描写はまた全然違うシーンになっていて、「コーヒーは絶対 ミルク多めなとこ」だったり、「メールを送る時に 少しだけ唇噛む癖」だったり…文章自体につながりはないんですけど、その積み重ねによって「相手の全部が愛しい」という思いが滲んでいって、やがて不思議な解放感が生まれてくるようにしたかったんです。そのうえで、サビに「Loved One」というキーワードをそっと置いてみた──という感じでした。
病的なまでにこだわったポイントとは?

──本当に僭越ながら…なんですけど、その「My loved one」というワードをサビに持ってきて、しかも生楽器中心のサウンドで織りなすのはまさしく王道的で、だからこそチャレンジでもあったのかなと想像してもいるんです。
今までの楽曲づくりは“音楽的な探求の旅”といった感覚があって、サウンドも実験的だったり、アレンジワークとかメロディーも…ハーモニーの作り方とかボイシングの重ね方だったり、そういう実験のほうが楽しくて、おのずと楽曲の前面に出てきてしまったところもあって。もちろん、伝えたいメッセージも明確にありましたけど、今回は──先ほどもお話したように、一冊の本を表紙から1ページずつめくっていって、物語が終わって裏表紙を閉じるというプロセスを、自分が実体験したかのように感じられる装置になる楽曲をつくりたいなと思ったんです。
また、聴くシチュエーションによって…不思議な解放感みたいなものがあったり、高ぶっていくような思いだったり、終わりがあるからこそ大切にしたい何気ない日常の一コマだったり、手が届くところにある温もりであったり、そういったものを何回聴いても確実に想起できて、しかも別の日に表紙を開くと前とは違う物語を受け取れるような楽曲にしたかった、という思いが自分の中にはあったんですよね。ゆえに、サウンドはとにかくシンプルにしているんですけど、ミックスにはめちゃくちゃこだわっているんですよ。もう病的と言ってもいいくらいに(笑)。
──それは音数が少ないからこそ、ミックスでは細かいところまで追求したということでしょうか?
こんなにミックスに時間を掛けたことないんじゃないかなというぐらい、マスタリングしなくてもリリースできるぐらいの感覚で、めちゃめちゃ攻めましたね(笑)。そうやって攻められたのも、今までいろいろ音楽的な実験をしてきたからであって。「どうやったら、この歌詞とメロディー、引いてはこの楽曲が素直にまっすぐスッと伝わるのか?」ということをゴール地点にして、めちゃめちゃテクニカルなサウンドメイクと言いますか、ミックスにおける細かいテクニカルな作業をチームでいろいろとやっていった、という感じでしたね。

──素人が言うのも恐れ多いんですが、「Loved One」は詞とメロディーが、それこそスッと耳から胸に染みこんでいく感覚があるんです。
音響って技術的にもいろいろなアプローチがあるんですけど、最終的には胸が震えるかどうかみたいなところに帰着するじゃないですか。でも、これって客観的でありながら、実はめちゃくちゃ主観の判断にもなってくるんですよ。なので、正攻法じゃないかもしれないけど…例えば音の置き方を変えるとか、ボーカルと演奏のバランスを変えることで、より響くようなアプローチを探っていったんです。あとは空間系のエフェクト(※残響効果)の差し方とかも、エフェクトそのものはいつもと同じでありながら、音の残り方や伸び方といったところで今回は結構まさしく病的なぐらいにいろいろと試していて。それをやればやるほど、楽曲制作チームのクルーも「あ、なるほど! こういうアプローチもあるよね」と熱が入っていって。「あ、これじゃないな、だったらこっちかな」みたいに、どんどん選択肢が広がっていったんです。そんなふうにアレンジにおいてもミックスにおいても、ビジュアルのアートワークにしてもミュージックビデオにしても、「いいものをつくる!」っていうことから逃げずにまっすぐ向き合ってきたチームワークのもと、ここまでたどり着けたという手応えがすごくあるんですよね。
──ちなみに、パートによってリバーブ(※エフェクトの一種)の種類を細かく部分的に変えたりもしているんですか?
すごくこだわってはいるんですけど、そこまで複雑なことをしたくはないなという思いもあったんです。どうすれば手数を少なく、なおかつ1曲を通してエフェクトを掛けられるか、というような──。例えるなら、握り寿司や刺身をつくるような感覚ですね。専門的な話をすると、ベースを整えたうえで要所要所でちょっとずつオートメーションを掛けていく、といった作業はかなり細かくやっています。子音や母音の関係性を踏まえつつ、ボリュームの細かい調整をしたり、EQ(イコライザー)だったり、空間系のプラグインにしても、ほぼ選択肢はすべて試したんじゃないかなと言えるぐらい、試行錯誤しました。淡々とした曲だからこそ、少しずつフックに向かって何かが解放されていくような…こういうテクニカルな話をするのがいいのかどうか分からないですけど(笑)、結構細かい仕掛けはたくさん作りましたね。なおかつ作曲面では、とにかく歌詞を引き立たせるためのメロディーとアレンジを探っていって。そのうえで、ヘッドフォンやイヤホンで聴いた時に、どういう音の体験になるかみたいなところも突き詰めていったんですけど、今までにいろいろなトライをしてきてよかったなと思えたプロジェクトでした。
必然的だった『LOVED ONE』との出合い

──すごく興味深いお話でした。なお、「Loved One」はドラマ『LOVED ONE』の主題歌でもあるので、タイトルの表記は違えど言葉の響きを同じにした、という感じでしょうか?
最初は「The loved one」とか「My loved one」という仮タイトルにしていたんです。やっぱり、ドラマと同じ言葉にすると、“ラブドワン”と言った時に混乱しちゃうじゃないですか。「ドラマと曲、どっちの話?」となりかねないなと(笑)。 なので、後付けになるんですけど…ドラマが大文字の表記だったので、曲は小文字にして使い分けましょう、と。“Loved One”というキーワード自体すごく普遍的だと思いましたし、この言葉があったからこそ生まれた曲だったことと、個人的なタイミングにおいても「こういう素直な曲をつくりたい」という新しい挑戦へと導いてくれた言葉でもあったので、その文脈を大切にして同じタイトルにした──というプロセスでしたね。
──よく作品や役との出会いは「縁とタイミング」だということを聞きますけど、ディーンさんにとって『LOVED ONE』という作品はひときわ大きなものになったのでは、と傍からは感じてもいるんです。
そうですね、必然なのか偶然なのか…。でも、自分的にはもう必然としか思えないようなエピソードもあったんです。プロデューサーには伝えていなかったのに、亡くなった親友たちの名前がドラマの中で偶然にも出てきたりして。「こんなこと、あるんだな」と思いながら、撮影の途中で「実はあの回に出てきた人の名前って──」と制作陣にも話したんですけど、正直ビックリしました。そういう意味でも、思い入れの深い作品になりましたね。

──ええっ!? 聞いていてゾクッとなったんですけど、いち視聴者としては、また水沢真澄やMEJのメンバーたちの新しいエピソードが見たいという思いがあります。
そう言っていただけることが、すごくありがたいです。幸い、ドラマは新たなエピソードにもつながるような終わり方にもなっていると思いますし…(笑)。せっかくなので、ここで改めてお話させてほしいことがあって──水沢真澄というキャラクターと向き合っていく中で、孤高の天才にはしたくなかったという思いが自分の中にはあったんですよね。法医学者としてはプロフェッショナルで、技術や経験は飛び抜けたものがあるけど、どことなく子どものまま大人になってしまった一面も感じてもらえたらいいなと考えていたんです。小さな時に野山で虫や小動物の死体を見て、強烈に好奇心を感じて惹かれていったのをきっかけに、人体の生と死の境界線みたいなところに“自分だけの居場所”みたいなものを見つけた人物の物語なのかな、と捉えて真澄を演じていたので、彼の中に残っている童心みたいなものが、この物語の中では救いになるといいな、という思いも同時にあったと言いますか。毎回、凄惨な事件が起こって悲しい涙や怒りが描かれていく中で、真澄という人物の存在によって浄化されて少しでも救われるのなら──と。もし、またご縁があって水沢真澄と向き合えることことになって、「Loved One」という曲が物語の登場人物たちの日常に添えられることになるのなら、素直に嬉しいですね。
──ドラマの主題歌としてもさることながら、MVで綴られる男女の日常も微笑ましくて、だからこそせつないストーリーになっていて。ディーンさんはMVの制作にはどのくらい関わっていらっしゃるんでしょうか?
ドラマの撮影と並行しての制作だったんですけど、最初に「どういうミュージックビデオがいいか」という話になった時、歌い手としての自分が歌唱しているシーンはマストで必要、ということを明確にしたんです。というのは、ドラマ(『LOVED ONE』)を撮りながらオーディション番組(『PRODUCE 101 JAPAN 新世界』)のプロデュースもして、セガの新作ゲーム『STRANGER THAN HEAVEN』という50年間を描く壮大なスケールの作品にも同時に参加して…ほかにも、いろいろなことをやりながらという状況だったので、自分がミュージックビデオで芝居の部分にも出るのは、スケジュール的に厳しいだろうな、と(笑)。
なので、男女2人のお芝居で紡がれていくストーリーの歌い手的な出方というか、この「Lobed One」という曲を歌わざるを得ない理由を持った存在として登場する──みたいな感じで、ちょっとドラマとクロスしていくような構造がいいんじゃないかと、構想を練っていって。それならこささりょうま監督のアプローチがピッタリなのではないかと、ディレクションをお願いさせてもらいました。見え方として、ドラマ『LOVED ONE』とも、ちょっとした“シェアード・ユニバース”みたいな感じにもなればいいな、という思いもありましたけど、単にディーン・フジオカがMVの中でリップシンクしているんじゃなくて、なぜ自分がここで歌っているのかをこささ監督が明確なビジョンに昇華してくださったことで、あの映像が生まれた──というのが、大まかなプロセスになりますね。
これまでに見た印象に残っている景色とは?

──川島海荷さんと伊島空さんがMVの中で織りなす日々は、それこそ『LOVED ONE』で描かれたとしても違和感がないストーリーになっていて…とても染みました。さて、今もお話にもありましたが、世界各地を飛び歩いてご多忙でいらっしゃるディーンさんにとって、心のオアシス的な街や地域を挙げるとするなら、どこになるんでしょう?
たくさんあるんですけど…近々、久しぶりにアメリカのワシントン州へ行くんですよ。自分はそこで5年間ぐらい──最初はタコマという街にいて、その後にシアトルへ引っ越したんですけど、20代前半の多感な時期をそこで過ごしたので、今の自分が行ったらどういうふうに感じるのかなと、すごく楽しみなんですよね。それから…もうちょっと派手な自然現象がある場所だと、『ピンカートンズ(邦題:荒野のピンカートン探偵社)』というドラマを撮っていたカナダのマニトバ州にあるウィニペグっていう街ですかね…。すっごく寒い街で、マイナス25℃とかマイナス30℃が当たり前だったんですけど、自分が滞在していた間にオーロラは出なかったものの、サンドッグ現象と言って──太陽の周りに360度の虹が見えたり、特殊な気候だからこそ見える現象をウィニペグでいろいろと見た時の感動は、今もよく覚えていますね。
ただ、今までいろいろな国へ行ってきて…景観が美しいなと思ったのは、CMの撮影で訪れたクロアチアのドブロブニクかな。ヨーロッパの旧市街と言いますか、「中世のヨーロッパって、こういう感じだったんだな」と思いましたし、ジブリの『紅の豚』とかにも出てきそうな美しい海もあって。あの景色も感動的でしたし、シーフードも美味しくて(笑)! そういう…まさに「Loved One」の歌詞じゃないですけど、愛おしい記憶が世界中、地球上のいろいろなところにありますね。そういった経験ができたのも本当にありがたいことだなと改めて思いますし、これからも自分で勝手にリミットをつくらず、ご縁やタイミングを大切にしつつ…いろいろな国や地域、街へと出向いて、いろいろな人と交流をして、さまざまな経験がたくさんできたらいいなと、心から思っているんです。
──そして、オフィシャルファンクラブ「FamBam(Family Always Means Backing Any Member)」が発足10周年を迎えます。そこに対する思いもお聞かせください。
元々、「FamBam」という名前をつける前から個人的に親しい人たちと一緒に、ちょっと独特で一風変わった誕生日の過ごし方を毎年していたんです。それをそのまま「FamBam」っていうコミュニティーでも継承していったところがスタートだったので、自分としてはファンクラブというよりも、今までプライベートでやってきたことに一緒に取り組んでいく仲間たち、みたいな感じで捉えていて。フードドライブ(余剰した食品をファンから募って、フードバンクに寄付して児童養護施設や福祉施設に届ける活動)を毎年欠かさず続けてきている中で、多くのご賛同をいただいて。
さらに「FamBam Monster(Fambamの世界画を彩る個性豊かなキャラクターたち)」が生まれて、絵本もできて、ファンドレイズして、いろいろなところにドネーションさせてもらったりする中で、また新しい出会い、新しく何かを始めるきっかけ、新しい物語が生まれてくるんですね。ただ、いきなりその輪を大きく広げようとするんじゃなくて、まずは今まで自分にご縁があったところや身近なところ、その都度その都度住んでいる場所だったり、自分がいる場所で取り組み始めて──ライブという場所で同じ時間と空間を共有しつつ、自分が指さすところを見ていくようにして、一緒に同じ活動をしていくみたいな感じだったのが、コロナ禍にはモンゴルの子どもたちの学習教材的なものをドネートさせてもらったり、インドネシアのとある島で子どもたちが遊ぶ公園をつくらせてもらったり、どんどん輪が大きくなっていった10年だったな、という感慨がやっぱりありますね。
自分がいろいろな国や地域を旅してきた中で、自助努力ではどうやっても変えられない…圧倒的な不幸や貧困を目の当たりにしながらも、その時には何もできなかったという悔いを忘れずにいよう、負のスパイラルを正のスパイラルに、ネガティブをポジティブに切り替えるきっかけをつくることは自分にもできるんじゃないかという思いが「FamBam」の活動へとつながっていったわけですけど、めぐりめぐって、自分が一番その恩恵を受けている気もしていて。この10年間、「FamBam」を続けてきて、自分が苦しい時に支えてくれたり、どうするべきなのか迷った時に何かを示唆してくれるような…そんな存在だったんだなと改めて感じたりもしているんですよね。
もちろん、「FamBam」に入っている方だけをファンと定義するわけではないですけど、「FamBam」を続けるほどにメンバーのみなさんには感謝の気持ちが増すばかりなので、8月に行うイベント(8月19日にZepp DiverCityで開催されるイベント『Museum of FamBam』)を機に、またさらに新たな歩みを一緒に進んでいけたらいいなと思っているんです。

Profile
DEAN FUJIOKA
1980年、福島県生まれ。2004年に香港でモデルの活動をスタート。映画『八月の物語』の主演に抜擢され、俳優デビュー。2006年に台北へ拠点を移しドラマ・映画に出演。2009年には音楽制作の拠点をジャカルタに置き、シンガーソングライターとしての活動も開始。日本では2015年NHK連続テレビ小説『あさが来た』の五代友厚役でブレイク。以降、数々のドラマや映画で主演を務める。音楽活動では、TV アニメ『ユーリ!!! on ICE』の OP テーマ「HistoryMaker」が国内外で大ヒット。2023年には自身初となる日本武道館公演を成功させるなど、俳優・アーティストとしてグローバルに活躍の場を広げている。『PRODUCE 101 JAPAN新世界』では国民プロデューサー代表を務めた。
撮影/須田卓馬
取材・文/平田真人
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