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2025.06.18

<佐藤めぐみのcoffee note vol.10>
菓子研究家が作る本場仕込みのスイーツと、シーズンごとのコーヒーのお店

東京はおしゃれでかわいい、そして美味しいカフェの激戦区。そこで、コーヒー好きとして有名な女優の佐藤めぐみさんと、東京のカフェを巡る連載をお届けします。

第10回は【料理教室が併設!?菓子研究家が作る絶品プリンが評判のお店】。ほっと一息つきたくなるような、あなたのお気に入りのカフェが見つかりますように——。

@CASTOR

日本橋エリアの北側に位置する小伝馬町。歴史あるこの街に、新名所として話題のカフェ「CASTOR(カストール)」があります。店内に入ると芳ばしいコーヒーと、甘いお菓子の香りに包まれ、自然とショーケースの焼き菓子に目を奪われます。店主は、フランスに留学経験もある菓子研究家の藤野貴子さん。藤野さんのお父さんは有名フランス料理店のフレンチシェフ、お母さんも料理研究家なので、幼い頃から美味しい料理に囲まれて育ったといいます。2022年8月にオープンしたお店は、手前がカフェ、そしてガラス戸で仕切られた奥にはキッチンスタジオが! カフェと料理教室スタジオを併設した珍しいお店にお邪魔しました。

来店する度に新しいコーヒーとスイーツに出会える幸せ

佐藤めぐみ(以下、佐藤):貴子さん、お久しぶりです。やはり最初に、ショーケースに並ぶ美味しそうなクロワッサンやスコーンに魅かれますね。

藤野貴子 (以下、藤野):今日も朝から焼いています。クロワッサンは、高級ホテルで使われているフランスのパン職人が作った生地を輸入して焼きたてを提供しています。フランスで食べられているものを、本場と同じように毎日食べても飽きない味、サイズを意識して焼いています。

佐藤:ここに来たら東京にいながら本場の味が堪能できますね! ではまず、お店をはじめたきっかけを聞かせてください。

藤野:私は小さい頃からお菓子作りに興味がありました。大学卒業後は父が経営するフレンチレストラン「CASTOR」で、デザート作りを担当していました。しばらくしてフランスに渡り、老舗レストランでパティシエとして学びました。帰国後は、コーヒーと美味しいお菓子を提供するカフェを作りたいと思い、父のお店の名前を引き継ぎ、このお店をオープンしました。

佐藤:今はご両親と一緒に働いているそうですね。スープセットで提供しているポタージュはお父さんが作っていると聞きました。

藤野:最初はコーヒーとクロワッサンというシンプルなメニューでしたが、お客さまに提供したいメニューが増えていき、今は父の作るポタージュとクロワッサンやスコーンをセットにしたメニューも提供しています。朝から夕方までいつでも食べられますので、みなさんのお腹を満たせます!

佐藤:小伝馬町は下町でありながらオフィスビルも多いので、平日は近くで働く方の癒やしの場にもなっていそうです。次にコーヒーの特徴を聞かせてください。

藤野:豆は全国のお店から月ごとに仕入れています。現在は女性焙煎士の先駆けとして有名な方が経営する福岡のMANLY COFFEEというお店から仕入れています。もともと男性が多い業界でしたが、ここ数年でずいぶん女性のロースターやバリスタが増えました。女性は結婚、出産、育児などでライフステージが変わりますよね。そんな女性の活躍を応援する意味も込めて、女性が経営されているお店から仕入れることが多いです。

佐藤:いつも同じ味のコーヒーがいただけることも魅力ですが、月ごとに仕入れているだけあって、来店する度に新しい味に出会えることも嬉しいです。前回来た時は、貴子さんがフランス帰りだったのでフランスのコーヒーを淹れてくれました。まるで貴子さんのキッチンに遊びに来ている感覚です。

藤野:思わぬ出会いもあるかもしれないので、定期的に通ってもらえると嬉しいです。

佐藤:次にお店の名前の由来を聞かせてください。「CASTOR」とはどんな意味でしょうか。

藤野:父がフレンチレストランをオープンするために開店準備をしていた時、たまたま読んだ新聞記事から決めたそうです。そこにはあるご夫婦の手紙のやりとりが紹介されており、旦那さんから奥さんに宛てた手紙の冒頭に「Mon petit castor」の文字が書いてあったそうです。そこから「CASTOR」という響きが気に入り、店名にしたと聞いています。

佐藤:店名をラブレターの一節から取ったとは素敵です。看板のラッコのイラストもとってもかわいい。良く見るとお腹にランチョンマットをひいたラッコがナイフとフォークを持っているんですね!

藤野:店名が決まり、次にお店のマスコットがあったらいいねと考えたそうです。「CASTOR」という言葉はもともとビーバーという意味ですが、当時日本は空前のラッコブームだったので、そこからラッコをお店のマスコットにしたそうです。

佐藤:店内に掲げている看板はお父さんのレストランで使っていたものと聞きました。

藤野:父のお店のキッチンの脇に出窓があり、そのそばのショーケースで総菜や焼き菓子を販売していました。クリスマス前になるとお店が忙しくなるので小学生だった私はそこで店番をしてバイト代をもらっていたんです。当時、毎日見ていた看板を、今こうして自分のお店に掲げることができて感慨深いです。

佐藤:店内で使っているマグカップやお皿もとってもかわいいです。

藤野:食べることが好きな家族なので、食にまつわることにこだわりがありました。お店のマグカップは、母が当時コレクションしていたファイヤーキングです。

佐藤:店内はカフェと料理教室ができるサロンが併設されていますね。とってもめずらしい作りです。

藤野:一つの場所に2つのスペースを共有したかったので手前はカフェ、そして奥は料理教室をしたり、撮影をしたりするサロンを設けました。

佐藤:今後、どんなお客さまに来店してもらいたいですか?

藤野:毎日多くの方が忙しくしていると思うので、ほんの少しの時間でもここで美味しい飲み物と食べ物で「ほっ」としてもらいたいなと思っています。日曜日は不定休ですが、土曜日は営業しています。日本橋界隈からお散歩がてら、ぶらぶらと歩いてぜひお店に遊びに来てください。

丸みをおびた浅煎りコーヒーと、お店一番人気の自家製カスタードプリン

今回いただいたコーヒーは福岡のMANLY COFFEEさんで焙煎された浅煎りのコーヒーです。オレンジっぽい柑橘系の香りがすっと体の中に入っていきます。先ほど貴子さんが「いい感じに丸くなってきている」と話していました。たしかに熟成されて飲み頃のように感じました。

そして、一緒にいただいたのはお店で一番人気の自家製カスタードプリン。今回は自家製牛乳アイスをトッピングしました。少し固めのプリンにはほろ苦いカラメルソースがかかっていて、どこか懐かしい味です。そしてトッピングはバニラアイスではなく、貴子さん手作りの優しいアイス。少しシャーベットっぽいミルクアイスとのバランスも最高です。定番を守りつつも2か月ごとに「かぼちゃ」や「レモン」、「ほうじ茶」や「とうもろこし」など、少し変わった季節ごとのプリンも登場します。

私と貴子さんの出会いは約8年前です。青山のあるカフェのお菓子のファンだった私。そこのお菓子を作っている方が貴子さんだと知り、たまたま店内にいた彼女に話しかけました。今では本を出版したり、テレビにも出演したり、常に新しいことに挑戦し続けています。

有名なスイーツ「ガトーショコラ」は、貴子さんのお父さんが約40年前に生み出したケーキだそうです。次回は、そのレシピを再現した貴子さんの作るガトーショコラをいただきたいと思います。

CASTOR
東京都中央区日本橋本町4-13-8 朱ビル1階
https://www.instagram.com/castor__official

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取材・文/安田ナナ
撮影/渡会春加

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