2024.09.06
<佐藤めぐみのcoffee note vol.7>
新宿御苑にある台湾×日本の異国情緒満点のお店
東京はおしゃれでかわいい、そして美味しいカフェの激戦区。そこで、コーヒー好きとして有名な女優の佐藤めぐみさんと、東京のカフェを巡る連載をお届けします。
第7回は【ラテアートの大会でグランプリを受賞したバリスタが手掛ける異国情緒満点のお店】。ほっと一息つきたくなるような、あなたのお気に入りのカフェが見つかりますように——。
@ajura翹璹欏 新宿御苑
高田馬場にあるLIWEI COFFEE STANDの2号店として2022年12月にオープンした「ajura 翹璹欏(アジュラ)」。新宿御苑前駅から徒歩6分のところにあるお店は、一歩足を踏み入れるとまるで台湾に来たかのような気分に。しかし、よく見ると和のテイストも取り入れられており、とても落ち着く空間です。オーナーは台湾出身のリウェイさん。リウェイさんはこれまで数々のラテアートの大会で受賞経験があり、今では若いバリスタの憧れの存在です。今回はちょっと不思議で異国情緒あふれるカフェにお邪魔しました。
台湾と日本がうまくかけ合わされた
落ち着いた雰囲気の店内
佐藤めぐみ(以下、佐藤):外から大きな窓ガラス越しにすてきな店内が見え、引き戸を開けると異国の雰囲気に包まれました。台湾出身のリウェイさんならではのこだわりを感じます。まずはお店のコンセプトを聞かせてください。
リウェイ:お店は台湾のお寺や神社からインスピレーションを受け、台湾と日本の文化の融合がコンセプトになっています。内装を手掛けているのは日本人のハルコさん。台湾から持ってきた雑貨とハルコさんが収集した着物やお皿を店内のいたるところにディスプレイしています。
佐藤:日本と台湾が絶妙なバランスで彩られていますね。コーヒーを飲みながら店内の雑貨一つひとつを眺めても楽しそう。蓮をデザインした照明や、壁にかかっている小物すべてがかわいいです。食器もよく見ると少しずつ雰囲気が違いますね。
リウェイ:食器は台湾製のカップと日本の有田焼の2種類を使用しています。ラテは台湾製のカップを使用していますが、色や焼き目が1つずつ違うんです。どんなカップで提供されるかプチサプライズを楽しんでもらえたらうれしいです。
佐藤:私は以前からアジュラさんにお邪魔していますが、隅から隅までこだわりがつまっていて独特の世界観に魅力を感じています。また、店内に一歩入るとまるで台湾に旅行にきたかのような気持ちにさせてくれることもうれしいです。そして、リウェイさんと言えばラテアート! 2022年のラテアートを競う世界大会で優勝されました。
リウェイ:台湾で学生生活を送っている時に大手コーヒーチェーン店でバイトをしていました。台湾は日本よりもコーヒーに対しての関心度が高かったので、お客さんの知識も豊富でした。最初はそこまでコーヒーに興味がなかったのですが、働いていくうちに自分もコーヒーやラテアートの魅力を知り、コーヒーのセミナーに行ったり、いろんなお店に足を運んだりしていきました。
佐藤:そこからどうして来日を決意したのでしょうか?
リウェイ:ラテアートと言ったら渋谷にあるSTREAMER COFFEE COMPANYが有名だと知り、働きたいと思うようになりました。2018年の4月、24歳の時に来日し、語学学校で日本語を猛勉強しました。そして、STREAMER COFFEE COMPANYの面接を受けて働くことになりました。そこでハルコさんに出会いました。
佐藤:コーヒーがつないでくれたご縁でハルコさんと知り合い、そして2020年に高田馬場に1号店にあたるLIWEI COFFEE STANDを、2号店としてこちらのアジュラをオープンされたわけですね。お店の名前の由来とこの場所を選んだ理由を聞かせてください。
リウェイ:店名は悩みましたが、2号店は“神様みたいな名前”にしようと思い「ajura(アジュラ)」という響きが気に入って名付けました。漢字の組み合わせは完全に造語なんです。だから台湾人も読めません。場所は駅の目の前よりも、少し歩いた住宅街の中で通りに面している場所を探していました。ちょうどここは店内から街路樹がキレイに見えて、思い描いていた雰囲気に合っていました。また、近くにお寺や公園があることも決め手になりました。
佐藤:新宿区という立地なのにお店の周りは落ち着いた雰囲気で和みます。次にお店で使っているコーヒー豆について聞かせてください。
リウェイ:日本の喫茶店はがっつり深煎りの豆を使うことが多いですが、うちでは深煎りと浅煎りの中間の中煎りを使っています。きちんと甘味や苦みを感じられるフレーバーにもこだわっています。また、中煎りだとラテアートが描きやすいんです。
佐藤:ラテアートが上手に描けるコツを教えてください。
リウェイ:ラテアートはエスプレッソの抽出量が大事です。多すぎると水っぽくなってアートが描きにくくなってしまいます。フォームドミルクとエスプレッソの比重が同じくらいだと描きやすいです。
佐藤:1号店のLIWEI COFFEE STANDでプリンがたいへん有名ですが、アジュラでもスイーツにこだわりはありますか?
リウェイ:こだわりというよりも、自分が食べたいもの、おいしいと思えることを大事にしています。すべて手作りなのでいろいろ試作してみては自分の理想に近づけていっています。ここのお店の一番の人気メニューはバスクチーズケーキなんですが、以前、台湾で食べたバスクチーズケーキが本当においしくて自分たちで再現しました。今の時期はアメリカンチェリーのレアチーズケーキもおすすめです。
佐藤:実は私、1号店のプリンが大好きです。本当においしいですよね。今回はアメリカンチェリーのレアチーズケーキを食べてみたいです。リウェイさんのお店は目も味も心も満たしてくれるお店ですが、お客さまにはどんな気持ちになってもらいたいと思っていますか?
リウェイ:見た目から入ってもらってもいいと思っています。そして、コーヒーを飲んでスイーツを食べてさらに好きになってくれたらうれしいですね。
まるでアートのような芸術性の高いカフェラテ
濃厚なチーズとチェリーの酸味が口のなかでとろけるスイーツ
アジュラはいつ来店してもラテアートの芸術性が高く、選んでくれるカップもおしゃれで目で楽しませてくれます。そして、舌ざわりが良いクリーミーなミルクの甘味とエスプレッソのほどよい苦味が口の中で合わさると、丸みのあるラテに変化し完結します。この日のリウェイさん渾身のラテアートは可憐なバラの花でした。そして合わせていただいたのはおすすめのアメリカンチェリーのレアチーズケーキ。濃厚だけどなめらかなチーズは少し塩味が感じられますが、しばらくすると心地よい甘味に変化します。甘酸っぱくてジューシーなアメリカンチェリーとのバランスは最高です。
3年ほど前に1号店のLIWEI COFFEE STANDで友だちの紹介で知り合ったリウェイさん。当時からラテアート技術を競うバリスタの選手権ですばらしい結果を出し、日本語も完璧だったので、来日してまだ10年も経っていないことに驚きました。ラテアートは人前で披露することが多く、特に集中力が必要なため、リウェイさんの精神力やラテアートへの思いを尊敬します。すでに都内に2店舗のお店を構えていますが、将来は和のテイストを盛り込んだお店を台湾でオープンさせたいそう。きっとそのお店もリウェイさんのこだわりがつまった人気店になるでしょう。いつか実現したら、私も台湾のお店を訪れたいです。
ajura 翹璹欏
東京都新宿区新宿1-24-2 藤和ハイタウン新宿104
https://www.instagram.com/ajura_gyoen
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取材・文/安田ナナ
撮影/渡会春加