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2026.08.03

本で見つけた名店へ。2泊3日の渡韓1日目を振り返る #森田想の韓国偏愛日和 vol.6

映画『ソロモンの偽証』『朝が来る』『タイトル、拒絶』『わたし達はおとな』『辰巳』などさまざまな作品で大活躍の俳優・森田想さん。現在は配信中の「九条の大罪」(Netflix)にも出演しています。

実は韓国語が堪能で、年に数回渡韓するほど韓国通の森田さんによる、韓国コラム連載です。

第六回は、空港で買ったガイドブックで見つけた名店に立ち寄った2泊3日の韓国旅1日目について。実際に撮影された写真とともにお楽しみください。

-무드 인 코리아- 森田想の韓国偏愛日和 vol.6

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「韓国旅行のおすすめスポット、ある?」そう人から聞いてもらえる機会が増えたので、その度にやる気を出して、Naverマップに自分が立てたピンの中からその相手が好きそうな場所はないかと探すのだけれど、常にネタ切れになることを危惧している。今回はもっぱら自分のための旅行だったので、自分が食べたいものや買いたいもののために動くべきなのだが、どうにも脳が働かない。早朝の成田空港第3ターミナルに到着後、牛丼屋さんのモーニングセットを食べながら、私はこの旅をどう充実させるものか悩んでいた。

信頼する友人であり、写真家の石田真澄ちゃんの家には、山積みになったあらゆる写真集や小説がある。その中で印象的だった本を思い出した。表紙にはonionの看板商品である砂糖がけパンが載り、著者のお名前はひらがなだったような。

保安検査前にある本屋さんの観光・ガイドブックの棚の前まで行き、記憶を辿りながらなかしましほさんの「ソウルのおいしいごはんとおやつ」を購入した。今回の旅の相棒が出来た。これが本当に素晴らしいガイドブックで、韓国という土地で出会う味や人への愛情がたっぷり込められており、ページを捲るとふわりと湯気がわき立つようなご飯の写真が並び、自分の好みにぴったりな魔法の地図を見つけたような気持ちになった。ハリー・ポッターが謎のプリンスで、実験室の棚から半純血のプリンスの教科書を見つけ出したときと同等のチート感さえある(ハリー・ポッターの例えが全員に伝わらないと知りつつも書く)。これからの韓国旅を、確実に思い出深く導いてくれる、そして胃も心も幸せにしてくれる本との出会いでした。

午後便で仁川空港に着いた。今回も友人の家に泊めてもらう予定だったが、家まで荷物を置きにいくのは効率が悪かったので、ソウル駅内の有人荷物預り所で一旦3時間の料金を払った。そのとき時間は15時をとうに過ぎていて、ランチには遅い。今日の昼は無理か。2泊3日の旅は一食一食が惜しいというのに。右手に見えるゴンチャで一度腹を満たそうかとその場しのぎの誘惑に負けそうになったが、ふと年を重ねるごとに、最近は甘いものを欲していることに気づいた。そうだ、この際、韓菓(ハングァ)を食べることにしよう。そうと決まれば素早く電車に乗り、ソウル駅からもアクセスがいい安国(アングク)駅に降り立った。韓服を着た観光客の仲間たちを横目に、街路樹の並木に沿って歩いたらすぐ目的地が見える。アラリオミュージアムという、やけに出立ちがよく、存在感のある美術館の2階に位置するカフェ合(ハプ)である。

全面ガラス張りの店内には真っ白の焼き物、土器が並び、一階にある有名コーヒー店FRITZの韓屋風の屋根がちょうど見下ろせる。哀愁とモダンな雰囲気が合わさった、非常に品のいい空間が広がっていた。その日おすすめの伝統菓子と飲み物のセット(15,000Wで良心的)が注文できるというので、いつもの癖でアイスアメリカーノを頼んだ後、ここは伝統茶で合わせるべきでは?と察し、慌てて店員のお兄さんに「このお茶は美味しいですか」と聞いた。あまりにも教科書じみた質問だった。梨の味が効いてて美味しいので良かったら試してください、と私の想像よりはるかに寄り添ってくれたお兄さんに礼を言い、窓際の一人席に座った。

出てきたお茶セットを見た瞬間、興奮で踊り出したい気持ちを抑え、またしても丁寧なお兄さんの説明に満面の笑みで耳を傾けた。数時間前に日本で購入した本の中にあったお店に自分がいること、そして本の写真以上に美しい韓菓に感動していた。一口ごとにカリ、シュワシュワ、もっちり。特に梨のお茶は、喉越しを追いかけるように生姜の辛み、そして全体に広がる多幸感ある甘みと爽快感!甘いのに、甘いお菓子と合う。店内には韓国のママ友会と私以外にお客さんはおらず、ゆったりと味と空間に浸れる、極上のティータイムを過ごすことで、幸先のいい旅の始まりを感じた。この時点で、なかしましほさんの本を3回ほど抱きしめていた。

久しぶりの安国散歩ではいつの日かドラマで見た道に出くわしたり、路地裏の古着屋やポストカード屋さんを見たり、人の数ほど多いカフェまで、心躍るものだった。近くで休憩しようと思ったが、何となくまだ歩きたかったので、大好きな清渓川(チョンゲチョン)の方まで行くことにした。喉の渇きが限界を迎え、脳がどうにもコーヒーのことしか考えられなくなったくらいの方が、美味しく味わえるし。

旅行に行くときはまずSNSを染め上げろ、と自分に課している。出発前の空港から永遠にカフェやご飯屋を調べるとAIが勝手にタイムラインを調整し、最近渡韓した人たちの投稿を表示してくれる。その中からせっせと、穴場を載せてくれてそうな、あくまで日常の写真をメインに載せている方の投稿より拝借して、いざという時に使えるように気になるお店リストを作っておくのである。足の赴くままに歩き、明洞に近付いてきた頃、そんな戦法で見つけてあったコーヒー店に寄ることにした。安国からまっすぐ大きな通りを下って行けば、ウルチロイックとサムガのちょうど間に位置する、路地裏の秘密結社のようなお店「コーヒー韓薬房」が見つかる。その名の通り、まるで昔ながらの漢方を煎じてくれているかのような興味深い店内に、丁寧にドリップされるコーヒーの香ばしい香りが充満して、ノスタルジックな雰囲気に少しドキドキした。

とんでもない豪雨や、目を開くことが難しいほど元気な直射日光がない限り、私はテラス席に座って1日を楽しみたい。2階に上がると、ちょうど私を迎えてくれるかのように、ぼつんと席が空いていた。ロマンがあり過ぎてクラクラした。工事中の柵や距離の近い隣ビルを目の前にして、香港映画に出てくる風景とも感じられるその席で飲んだドリップコーヒーは程よい苦味とキャラメルのような風味で、そんなほっと一息つける時間ごと、このお店の良さを表していた。

ここはお土産の展開も充実しており、兄夫婦にと購入したドリップコーヒーパックはまさにパケ買い。使い終わっても箱を残して飾っておきたくなる。まだ渡せていないけれど。

その後は夕飯前にまたも漢南洞(ハンナムドン)ツアーにひとり繰り出し、いつものお店たちを回った後、20時過ぎに待ちなしでtacに入れるという幸運でフィナーレを迎え、充実しきった日を過ごした。夏が本格的に始まる前にとうもろこしフードが世間を賑わせているが、tacのスパイシーコーンを独り占めできたあの日が誇らしい。

とはいえ私がこうして数ヶ月前の日々を懐古するなか、各チェーン店の新作スイカジュース、そしてとうもろこしビンスの勢いは止まることを知らない。私を待ってはくれないか。パソコンの右手に置かれた水分補給のためのタンブラーに、水の代わりにスイカジュースがなみなみ入っててはくれないだろうか。『素晴らしき新世界』を視聴後で余韻が残るなか、言葉を借りるなら、恋慕しております、スイカジュース大君。日本も相当暑くなりましたが、真夏の韓国旅行で感じた日差しの強さたるや、思い出すだけでもっと暑い。近いようで遠い韓国の皆さま、体調にお気をつけて。まだまだ語りたいスポットを抽出すべく、私はカメラロールを見返します。また次の記事でお会いしましょう。

バナー画像:
スタイリスト/入山浩章
ヘアメイク/江指明美(mod’shair)
撮影/金井尭子

<衣装>
スリーブレスフーディー ¥39,600、トップス ¥29,700、スリーブレスチュールドレス ¥52,800、サイクリングショーツ ¥12,100(すべてnaokitomizuka/naokitomizuka.official@gmail.com)
グローブ ¥8,470、スカートベルト ¥6,710(ともにGBH/https://gbhjapan.com
スニーカー ¥51,700(MIKIOSAKABE/https://mikiosakabe.shop/
ビーニー ¥9,350(BOCBOK/PR01.TOKYO 03-5774-1408)

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