2022.04.27
Life is journey サステナブルな暮らしが根付くやんばる地方を紐解く <やんばる×KIREI NOTE>
“やんばる”という愛称で親しまれる沖縄県北部地方。
沖縄では、昨年、やんばる地方が世界自然遺産に登録されたことに加え、2022年には本土復帰50周年を迎えました。さらに、やんばる地方を舞台とした連続テレビ小説「ちむどんどん」がNHKにて放送を開始したことでより注目が集まっています。これらを背景に、キレイノートでは、『いま旅をしたい場所』としてやんばる地方をフィーチャー。
第五弾の最終回では、やんばるをもっと深く知るために、その土地に暮らす“泡盛の仙人”島袋正敏さんにインタビュー。沖縄の中心地とは一味違ったやんばるの自然の魅力や食文化、自然との共生について伺いました。やんばるの基本知識をマスターして、ぜひ旅の参考にしてみてくださいね。
“サステナブルな暮らし”を体現
やんばるの魅力を次世代に継承する泡盛の仙人
山原(やんばる)とは、文字通り山や原っぱなどの自然が手つかずの状態で残っている地域のことを指します。ヤンバルクイナが生息していることでも有名ですが、他にも1800種余の植物や、3600種ほどの野鳥などの生き物が存在しているんだとか。そんな、自然豊かなやんばる地方に暮らす島袋正敏(しまぶくろ せいびん)さんは、元名護博物館館長であり泡盛の仙人として精通しています。また、近年、自然との関わり合いが希薄になっている若者へ向けて、やんばるの自然と関わりながら守る活動を行っています。
やんばる地方を訪れるなら今がおすすめ!
特にいまの時期は緑が生き生きとして気候もよく過ごしやすいので、やんばるを訪れるには絶好のタイミングなんだそう。一方で、「梅雨の時期には高い確率でヤンバルクイナに出会うことができますよ。」と正敏さん。しかしながら、昨今、県内においてヤンバルクイナの交通事故が多発しているということもあり、訪れる際は、自然や生き物と関わり合うという意識をもち、ルールを守って行動することが大切です。
やんばる地方に根付く食文化
やんばるの食文化のひとつに出汁文化があります。かつては獲れた魚を燻製にして出汁にしていましたが、今では豚骨や根菜類から出汁をとったりするのが一般的。「今は何でも濃く味付けされた食品を購入して使うことが多くなったため、鈍った舌では分かりづらくなっていますが、ジャガイモや大根などの根菜類からも自然由来の出汁が出るんですよ。」と正敏さん。私たちが便利すぎる暮らしの中で感覚が鈍ってしまっていることに気づかされます。
後世にも継承したい泡盛の魅力
沖縄文化として有名なのが泡盛。日本の蒸留酒の中で一番古く、沖縄で生まれた黒麴菌を使って600年前から作られています。年月をかけて熟成させることで 芳醇な古酒となり、甕(かめ)によっては琥珀色になることもあります。100年物には80年物を、80年物には50年物を…といった具合に、仕次ぎ(つぎ足し)をしながら古酒を育てていくことで、豊潤さや香り、味のまろやかさの全く異なる古酒ができるそうです。
伝統として子供が産まれた時には、甕に入った泡盛を準備し、成人したらその熟成させた泡盛を味わうといった文化があります。やんばるではその古酒甕のストック率が圧倒的に高いそうで、一斗甕(18ℓ)換算で18,000個ほど。正敏さんもまた、ボトルでも熟成がすすむことから、9,000本の古酒を保存しているのだとか! さすが、泡盛の仙人と呼ばれるだけありますね。アイゴの稚魚や豚肉、イカを塩漬けにした保存食や豆腐ようなどをあてにするのが正敏さん流、古酒のたしなみ方なんだそう。
場面ごとに使用する酒器も変えるほど、とても大切にされている古酒文化ですが、出荷量は2000年をピークに、若者離れが原因で少なくなってきているんだとか。「一度、古酒を味わってもらうとその美味しさに気付くはずなので、是非一度試していただきたい。」と正敏さんは言います。やんばるだけでも12の泡盛酒造メーカーがあり、どこの酒造も製造工程の見学や、味見ができるところがほとんどだそうなので、やんばるを訪れた際には足を運んでみてはいかがでしょうか。
最後に、「やんばるを訪れたら、ただ自然を愛でるのではなく自然と積極的に関わり合い、そこに住む人々の中で様々な体験をしてほしい。それこそが自然を守り大切にすることであり、真の旅のあり方だと思います。」と正敏さんは言います。今ある自然や資源を守りつつ、豊かな暮らしを続けられるように生活する “サステナブルな暮らし”が根付くやんばる地方。訪れることで今の自分を見つめなおすきっかけにもなるはずです。
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