<沖島>“何もない”が最高のご褒美。離島で楽しむ自分だけの時間 #巡る滋賀

<沖島>“何もない”が最高のご褒美。離島で楽しむ自分だけの時間 #巡る滋賀

滋賀県の最大の魅力といえば、滋賀県の代名詞でもある日本最大の湖・琵琶湖。その他、国宝の「彦根城」やユネスコ世界文化遺産の「比叡山延暦寺」など一度は訪れたい観光スポットもまた有名です。

でも、それだけではありません。有名観光スポット以外に焦点を当て深掘りすると、まだまだ知られていない注目ポイントがたくさん! それを知らないなんてもったいない…!

この連載では、「現地の方がおすすめしたいスポットやお店、それをつくるヒトの魅力をていねいに取材し、お届けする滋賀の観光ガイド“巡る滋賀”」の情報を発信していきます。

滋賀県への旅のきっかけやガイドブックとなりますように…そんな思いを込めて滋賀県の新たな魅力をお伝えします。

海なし県なのに、離島。しかも人が住んでいる。皆さんはそんな島をご存知でしょうか。
滋賀県の6分の1を占める日本最大の湖、琵琶湖。この湖に浮かぶのが、日本でただ一つの“淡水湖に浮かぶ有人島”である沖島(おきしま。または沖ノ島[おきのしま])です。

現在でこそ近江八幡市に属しますが、古来より独特の島文化がはぐくまれて来たこの地。それを知るため、今回は、沖島漁業協同組合に所属する川瀬明日望(かわせ・あすみ)さんに沖島をぐるっと案内していただきました。

まずは、船に乗って沖島へと向かうところからスタートです!

離島というだけあって、この島には対岸からの橋は架かっていません。沖島に行くためには必ず船に乗る必要があるのです。対岸の港、近江八幡市の堀切新港から「沖島通船」に乗って出発。通船は一日に10~12本、1,2時間おきに運航しています。

所要時間は約10分。沖合約1.5 kmの距離なのでそう時間はかかりません。みるみるうちに、沖島、漁師町らしい漁港が近づいてきました。

「遠いところ、わざわざ~。」

桟橋のたもとで待ち受けていてくださった川瀬さん。地域おこし協力隊で着任して以来、精力的に沖島の魅力や情報発信を行っています。協力隊任期満了後は島の漁業組合に所属し、さらに密なかかわりを地域の人々と続けています。

では早速、島を巡って…。川瀬さんはおもむろに、私たちに鍵を差し出してきます。

「皆さん分の三輪車を用意していますので、今日はこれに乗って移動してもらいますね。島には自動車が1台もなくて、多くの人が三輪車を移動手段にしているんですよ」

なんと!小さな島とはいえ、まさか三輪自転車で移動するとは思ってもみませんでした。

そういうわけでいざ乗ってみると、けっこう楽しい。そして、たしかな便利さにも気づくのです。道幅の広くない島内を自由に行き来でき、大きめのカゴで、ある程度の荷物も運べます。3輪で安定感もあるので、ご高齢の方でも安心して乗れるわけですね。

こんなにも三輪自転車が活躍している土地、他にはないんではないでしょうか。到着していきなりの沖島ならではの文化。この先がとても楽しみな気持ちになりました。

なお、この三輪車『レンタサイクル ガンガン』は漁港の「湖島婦貴の会」が貸し出し窓口になります。島に来た方はぜひ一度乗ってみてください!

ここで少し、川瀬さんのパーソナルな部分に迫ります。出身は滋賀県日野町。島の出身者ではない川瀬さんは、なぜ沖島に来ることになったのでしょうか。

「地域おこし協力隊は10代のころに知りました。テレビドラマでちょうどやっていたこともあって、いつかはやりたいなぁと考えるようになったんです」

離島が好きで水辺の暮らしへの憧れがあったという川瀬さんは、大学生時代、実際にそのおもしろさを体感することとなります。

「インターンシップで奄美群島の沖永良部島の観光協会に行ったんです。『離島に行こう』みたいな募集をしていて、行ってみたらすごい良くて。そこで気づいたのが、各々が自分の会社のためにというよりも、島全体が会社そのもののようにみんなが島のために働く、みたいな感じなんですね。その島全体を成長させるために仕事をがんばっているというのがおもしろいなと思ったんですよ」

想いをさらに強くしたインターンシップ。まずは社会人経験を積みたいと20代後半まで京都でキャリアを重ね、いよいよ探し始めたときに見つかったのが、ここ、沖島での地域おこし協力隊だったそう。

「沖永良部島に行くのもアリだったんですけど、そのころ滋賀に愛着がわいてきてて(笑) 子どもの頃はあんまりなかったのに、大人になってからなんですよね。滋賀にも帰りたいしどうしようかなと思っていたら、ここが全ての条件を満たしました。地域おこし協力隊もやりたかったし離島にも住んでみたかったし、ちょうどスポッと、はまったんで(笑)」

実際に沖島に来た川瀬さん。特に食の部分で、出身地である山間部の日野町とは、同じ滋賀県であっても文化がまるで異なることを知ります。

「全部が違いましたよね。おすそ分けで魚をもらうことなんてないですもん(笑) 『じょき』のように鮒を生で食べられることも初めて知りましたし、鮒ずしもずっと食わず嫌いでした。ここにいると、お礼とかで鮒ずしをくれはるんですよ。いろんなおうちの鮒ずしを食べてきて、今では自分でも作れるようになりました。鮒ずし作れるってなんかいいですよね、誇れるっていうか。それを同世代ぐらいの知り合いにあげるんですけど、『食べたかったことなかったけど、美味しい』って言ってくれます」

協力隊で主に取り組んだのは琵琶湖の魚のPRでした。

「もとはメキシコ料理店で働いていたんで、作るのは得意。しかも琵琶湖の魚を全然食べたことがなかったので、どんな料理に使うといった固定観念がありませんでした。別に何の料理にしてもいいんじゃない?と思って、タコスを作ってみました(笑) 琵琶湖の魚を食べたことのないような同世代の人たちの取っ掛かりになればいいな、と思って」

「それに、食べているとやっぱりどういうふうに魚が獲れるのか、どんな人が獲っているのかも気になると思うので。漁船に乗せてもらっては映像や写真を撮って、SNSでPRしていましたね」

現在は漁業組合の一員となった川瀬さん。協力隊の頃から培ってきた島の人々との関係性に、組合を通じた水産関係の繋がりが加わり、仕事の幅も広がったといいます。琵琶湖の魚の魅力、そして沖島の魅力を発信する“キーパーソン”として活躍中です!

そんな沖島で出会った絶品グルメとは?…気になる続きはこちら

ディープな滋賀の魅力に出会える! 人気連載「巡る滋賀×キレイノート」の他記事は#巡る滋賀からご覧いただけます!

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