<菜の花エコプロジェクト>地域ぐるみで油からエネルギーへ #巡る滋賀

<菜の花エコプロジェクト>地域ぐるみで油からエネルギーへ #巡る滋賀

滋賀県の最大の魅力といえば、滋賀県の代名詞でもある日本最大の湖・琵琶湖。その他、国宝の「彦根城」やユネスコ世界文化遺産の「比叡山延暦寺」など一度は訪れたい観光スポットもまた有名です。

でも、それだけではありません。有名観光スポット以外に焦点を当て深掘りすると、まだまだ知られていない注目ポイントがたくさん! それを知らないなんてもったいない…!

この連載では、「現地の方がおすすめしたいスポットやお店、それをつくるヒトの魅力をていねいに取材し、お届けする滋賀の観光ガイド“巡る滋賀”」の情報を発信していきます。

滋賀県への旅のきっかけやガイドブックとなりますように…そんな思いを込めて滋賀県の新たな魅力をお伝えします。

さらっとした舌触りに、キラリと光る黄金色。菜たね油「菜ばかり」は、東近江市で栽培期間中農薬不使用で育てられた菜の花の種(菜種)100%の油です。昔ながらの圧搾方式で丁寧に搾った一番搾りは、天然由来のコクが豊かで、揚げ物に使っても、そのままドレッシングにしても味わい深い…。

そんな「菜ばかり」は、「あいとうエコプラザ菜の花館(以降 菜の花館)」で作られています。ここでは、東近江市で生まれた地域資源循環の取り組みである、「菜の花エコプロジェクト」が行われています。

4月下旬、東近江市を訪れると、一面に咲き誇る黄色い菜の花畑。いくつかの菜の花畑を通って菜の花館に到着。菜の花館は、東近江市の資源循環型の地域づくりを進める拠点施設。ここでは菜たね油「菜ばかり」の他にも、米のもみ殻を炭化した「もみ殻くん炭」やリサイクルせっけん「愛しゃぼん」、そしてBDF(バイオディーゼル燃料)などさまざまな製品が作られています。菜の花館の指定管理を東近江市から受け、運営するのはNPO法人愛のまちエコ倶楽部(以降、愛のまちエコ倶楽部)です。

「愛のまちエコ倶楽部は、『菜の花エコプロジェクト』を進めるために生まれました。地域の豊かな資源と環境を未来へ引き継ぎ、持続可能な地域づくりを目指しています。また農村資源を生かした農業体験や農家民泊のコーディネートなどの地域活性化にも取り組んでいます」と説明してくださったのは、愛のまちエコ倶楽部の事務局長・伊藤真也さん。

愛のまちエコ倶楽部のスタッフは、20〜40代の6名。出身地も地元の人から千葉や奈良など、前職もそれぞれ異なるメンバーで構成されています。伊藤さんも、前職は東京でイタリアンレストランのマネージャー職に就いていたそう。

「最初のきっかけは、東近江市にある道の駅で見て、菜ばかりを購入したこと。その菜たね油の美味しさに、国産でこんな油ができるのかと驚いたんです。それからもっと食の現場に近づきたい、菜たね油について学びたいと転職しました」と伊藤さん。食への探究心がキッカケでしたが、愛のまちエコ倶楽部の活動を通じて、次第に環境問題にも関心が深まってきたといいます。

さて、「菜の花エコプロジェクト」とは、具体的にどんな取り組みなのでしょうか? 

「大きな特徴としては、菜の花を通じて地域資源が循環しているところ。この地域で育てられた菜種から菜たね油が作られ、搾油で出た油かすは有機肥料に。そして、食用油はおいしく食べてもらい、料理で使った後の廃食油を回収し、BDF(バイオディーゼル燃料)やせっけんにリサイクルし、地域で利用します。地域の問題は地域で解決しようと、市民と行政とNPOが共につくり上げてきた取り組みなんです」

なんと現在この地域では、菜種が約15haも栽培されているそう!

「菜種は北海道、九州など全国どこでも作れる作物。プロジェクトの立ち上げとともに、地域の集落営農を中心に、契約栽培を進めてきました。JAよりも高い金額で買い取ることで、農家さんの収入にも繋がるように努力しています。こうして少しずつ、転作で育てる作物に菜の花を選んでくださる農家さんが増えてきたんです」と伊藤さん。表面に出てこない努力が、大きなプロジェクトを動かす下支えになっているのですね。

約20年前に立ち上がった菜の花エコプロジェクト。現在、菜の花館は年間約3000人が訪れる施設になっています。その背景には地域に生じたとある問題があったといいます。

1977年に、琵琶湖で赤潮が発生します。合成洗剤に含まれているリンが原因のひとつだとわかり、女性団体や主婦を中心に、洗剤の勉強会を開いたり、合成洗剤に代わるせっけんの共同購入に取り組むようになりました。その後市民を中心に「せっけんを使って琵琶湖を守ろう!」と、リンを含む洗剤の使用をやめて、天然油脂を主原料としたせっけんを代用しようとする「せっけん運動」が起こります。

この市民らの活動が実を結び、1980年には、リンを含む家庭用合成洗剤の使用・販売の禁止条例が施行されます。この頃、東近江市(旧愛東町)でも、廃食油を回収し、リサイクルせっけんづくりが市民グループを中心に始まりました。そして1996年、廃食油からBDFを精製して、町のエネルギーに変えるという画期的な動きにつながってきます。さらに、1998年には食用油も自分たちの地域で作れるようにと、地域で菜種の栽培がスタート。2005年に菜の花館が誕生。「菜ばかり」・「もみ殻くん炭」を製造するプラントも設置し地域資源循環の取組み拠点として活動が始まりました。

今では、地域の学校給食で年に1度、「菜ばかり」が使われたメニューが出されているのだそう。子どもたち、羨ましいぞ〜!

実際にどんな風に作られているの?気になる続きはこちら

ディープな滋賀の魅力に出会える! 人気連載「巡る滋賀×キレイノート」の他記事は#巡る滋賀からご覧いただけます!

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