2023.07.21
<現存唯一>紅屋がつくる玉虫色の口紅|今だけの紅花摘み体験レポート
紅花摘み体験
「キスミー」「ヒロインメイク」でお馴染みの化粧品メーカー「伊勢半」。実は、江戸時代後期から続き創業200年を迎えようとする紅屋がルーツということをご存じですか?
今もなお、「伊勢半本店」では江戸時代からの製法を引継ぎ、紅花から天然色素を取り出し、口紅として製造・販売しています。その紅の原料となる紅花は、7月が花摘みのピーク。山形県白鷹町では、今だけしか体験できない、江戸時代から続く紅花摘み体験ツアーが催行されています。
体験ツアーの流れ
①「最上紅花」摘み
今回紅花摘みを体験したのは、「最上紅花」の生産量日本一を誇る山形県白鷹町。山形新幹線・赤湯駅から、山形鉄道フラワー長井線で約1時間程の荒砥駅で下車し、車で10分ほど行くと、紅花畑が広がっています。
朝晩は冷え込み、日中は気温が上がる山形の気候は紅花に適し、古くから生産が盛んとのこと。今も江戸時代と変わらず、手摘みを行っています。体験できる畑によって異なりますが、紅花摘み体験が500円、収穫量によってはアルバイト代がもらえることも!?
紅花は葉にとげがあるため、真夏日でも長袖・長ズボンの着用が必須。トゲの痛さの少ない霧のある早朝に、花びらが1/3以上赤くなっているものを丁寧に手摘みしていきます。今はゴム手袋をしながら花摘みをしますが、江戸時代は今のような装備もない中、現在の10倍以上の収穫量を上げていたのだとか。
②3段階の「はなぶり」を経て酸化と発酵を促す
摘んだ花弁は、3段階の「はなぶり」を経て、酸化と発酵を促していきます。1段階目の「あらぶり」では葉や茎などを丁寧に取り除く作業、2段階目の「なかぶり」では水で丁寧にもみ洗いしながら、黄色の色素を洗い流し、酸化させ、黄色を赤色に変化させていきます。最後の「あげぶり」で、水気を切ります。
ツアーの内容によっては、「はなぶり」体験も。その後、5日間ほど直射日光を避けながら、水をかけ、かき混ぜ、という作業を繰り返し、酸化と発酵を促していくと、黄色の花弁が濃い赤へと変化していきます。
③質の良い濃い紅色に導く紅餅つくり
発酵させた花弁は、餅つき機でつき、粘り気を出していきます。昔は杵と臼を用いて、餅つきのようにこねていたのだとか。お餅のようになったら、一握りずつ丸め、平らに潰し、乾燥させます。この紅餅1枚をつくるのに、紅花約300輪が必要なので、相当な量の紅花を摘まなければいけないことがわかりますね。
何度もひっくり返して乾燥させたら、紅餅が完成。江戸時代は、船を使い、山形から京の都まで運んでいたとのこと。当時は「紅花一文、金一文」と言われ、紅餅は金と同等の価値があったのだとか。この良質な紅餅から、世界で唯一の口紅がつくられています。
匠の技 玉虫色の紅
この玉虫色に輝いている部分が紅花からつくられた口紅! 水気を帯びた筆で溶くと、深紅に変わります。唇にのせると、唇の色を拾いながら紅色に色付きます。
紅花摘みツアー
山形県白鷹町では、7月いっぱい紅花摘み体験ができます。紅花摘み・紅餅つくりなどの体験のほかに、紅花染め体験などもあるので、興味のある方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
紅と化粧の歴史を知る「紅ミュージアム」
東京都港区南青山にある「紅ミュージアム」では、実際に玉虫色の紅を試せたり、口紅の歴史や化粧の文化などを学んだりできます。ワークショップなどもあり、海外の方にも大人気。当日入場可で小町紅のお試しづけ(無料)もできます。一部、講座やワークショップは事前予約制なので、詳しく知りたい方は確認を。
日本化粧品検定協会代表理事、大学客員教授などを歴任。化粧品の専門家「コスメコンシェルジュ」として活躍中。著書は「美容成分キャラ図鑑(西東社)」など13冊、累計60万部を超える。時短美容家・3歳児の母として子育て奮闘中!
■Instagram:@cosmeconcierge
■Twitter:@sayakakonishi
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