【俳優・坂東龍汰】地方ロケの醍醐味は、その土地を感じ人と交流すること

【俳優・坂東龍汰】地方ロケの醍醐味は、その土地を感じ人と交流すること

映画にドラマに引っ張りだこの坂東龍汰が、青森の工芸品・津軽塗りを軸に家族の絆を描いた映画『バカ塗りの娘』に出演する。

オール青森ロケで行なわれた今回の作品。坂東は撮影の合間を縫って、できるだけ街に出かけるようにしたと言う。これは地方での撮影の際、彼のルーティンになっているそうなのだが、なぜなのか。本作の話と合わせて、地方ロケへのこだわりや、舞台となった青森の魅力を聞いた。

ゆったりとした時間だからこそ、映画館で

——ゆったりとした時間が流れる素敵な作品でした。堀田真由さん演じる主人公・美也子の兄・ユウを演じるにあたって、どんな心づもりで挑みましたか?

ユウは、映画の前半では、お父さん(小林薫)との関係性がだいぶギクシャクしていて、本音で話し合えない状況にある。でも、美也子のことはすごく気にかけていて、いい関係を築いているキャラクターだなと思いました。だから、そういう関係性を丁寧に演じていけたらいいなと。お父さんといる時のユウと、美也子と話している時のユウ、パートナーといる時のユウで、違う面を見せていけたらなと。

——脚本を読んでの印象を教えてください。

津軽塗というものを軸に描かれた家族の物語だな、と。津軽塗がきっかけで離れ離れになってしまった家族が、またその津軽塗というものを通して、元に戻っていくっていう再生の物語だなと、台本を読みながら美しい空気感の作品になるだろうなと絵が浮かびました。きっと心地よい映画になるだろうな、と。

——実際に出来上がった作品を観て、どんな印象を?

思った以上に流れがゆっくりで、だけど全く飽きない、観ていて間延びしない映画だなと思いました。それから、ファーストシーンのインパクト、淡々と器を作っていくシーンがすごく印象的で。あのシーンがあって、一気に映画の世界観にのめり込めるなと思いました。その空気感が、そのまま最後まで続いていくというのも魅力だなと。だからこそ、映画館で観てほしいなと。

——「映画館で観てほしい」と思った理由はなぜでしょう?

最近は展開が速くて、効果音もたくさん使われていて、説明的なセリフが多い“ザ・エンタメ映画”作品が主流になってきている気がするんです。ただ、この作品はゆったりとした時間が流れている。こういう作品を映画館で観ることで、ささいな音や会話、トーンなど映画館でしか体験できないものを楽しめるんじゃないかなと思いました。

話して、食べて、その土地に馴染んでいく

——撮影中、印象的だったエピソードを教えてください。

撮影が終わって、フラッと入ったお店のカウンター席で、1人で呑んでらっしゃる方がいたんです。その方が「へえ〜い!」って挨拶してきたからよく見たら、薫さんで(笑)。それに帰りの電車も一緒で、2人で電車に座りながらいろいろ話したんです。そういう時に「なんか本当に父ちゃんみたいだな」と感じました。

——撮影から離れても、映画の世界観と繋がっていたんですね。

そうなんですよ。居酒屋で呑んでいるのがお父さんにも見えるし、薫さんが呑んでいるようにも見えるし。撮影中も、地元の人が映画に出ているようにも見えるし、薫さんにも見えるし。自然とそこに馴染んでいる姿を見て素敵な方だなと思いました。弘前で撮る意味がそこで生まれてくるのかなって。

——なるほど。

きっとホテルにいて外に出ない、弘前の街を歩かないっていう選択肢もあると思うんです。でも、僕は地方で撮影する時は、そこの街に馴染んだり、そこに住んでいる人と同じものを食べたりすることに意味があるのかなと思っています。だから、地方での撮影の時は、率先していろんな居酒屋に行ったり、スナックに行っていろんな人と話したりするようにしているのですが、薫さんはそれを体現されているような方でした。

——弘前の街を楽しんだからこそ、演技に活きたことはありますか?

僕がキレるシーン、もともとは標準語だったんです。ただ「これ、津軽弁が出ちゃうの、かわいくないですか」って監督と話して変わりました。とっさに出ちゃうのは、ユウのルーツを感じられるし、家族と話す時は津軽弁だったんだろうなというのを想像させられるのかなと思ったんです。本当に余白をキレイに繊細に、映ってない部分まで想像できるような素敵な映画だなと思っています。

空気と雰囲気が澄んでいた青森という街

——呑みに行ったら薫さんがいたとのことですが、青森の方とは交流しましたか?

隣に座っていたご夫婦と会話をしました。「ここ行ったほうがいいよ」とか「あそこのそば美味しいよ」というお話を聞けて。楽しかったです。

——具体的にどのあたりに行ったのでしょうか?

青森県立美術館に行って、おすすめしていただいたお蕎麦屋さんに行って、車で山の上に行きましたね。そこでソフトクリームを食べました。知り合いのカメラマンさんと丸一日、車で一緒に走り回ってました。行き当たりばったり旅、みたいに。

——ずばり坂東さんから見て、青森の魅力ってどういうところでしょう?

まず、初めて空港に降り立った時に思ったのが、夕陽がすごくキレイだということ。目の前にある小高い山の後ろに夕陽が沈んでいった景色が最高でした。それからドライブして、いろんな森の中に入って行ったりした時に思ったのが、すごい美しい白樺がたくさんあって。車を止めて白樺の中に入って行って深呼吸しちゃいました。ものすごく気持ちが良かったです。

——青森といえば、地元・北海道にも新幹線で行けますよね?

そうなんですよ。今回も函館まで新幹線で行って、レンタカーで伊達市のほうまでいきました。地元が洞爺湖なので、洞爺湖でゆったりと泳いでみたり。9月だったんですけど、結構寒かったですね。

——最後に、坂東さんが考える旅の魅力を教えてください。

普段、忙しない日常の中で、本当にふとしたことが癒やしになるなと感じています。だから、旅の魅力は癒やしですかね。もちろん新しいものを探すこととかも楽しいんですけど、何も考えずにその土地に身を委ねられることで、すごく助けられるものがあるなと思っています。

Profile
坂東龍汰

俳優。1997年、北海道出身。2017年俳優デビューし、2018年にはドラマ『花へんろ 特別編「春子の人形」〜脚本家・早坂暁がうつくしむ人〜』で初主演を果たす。近年では、映画『フタリノセカイ』『冬薔薇』『峠〜最後のサムライ〜』(すべて2022年)、ドラマ『未来への10カウント』『ユニコーンに乗って』『両刃の斧』(すべて2022年)、『リバーサルオーケストラ』『王様に捧ぐ薬指』(ともに2023年)など出演作多数。現在公開中の映画『春に散る』にも出演している。

■作品情報
『バカ塗りの娘』
2023年9月1日(金)公開
出演:堀田真由/坂東龍汰 宮田俊哉 片岡礼子 酒向 芳 松金よね子 篠井英介 鈴木正幸
ジョナゴールド 王林/木野 花 坂本長利/小林 薫
監督:鶴岡慧子
脚本:鶴岡慧子、小嶋健作
原作:髙森美由紀「ジャパン・ディグニティ」(産業編集センター刊)
製作:「バカ塗りの娘」製作委員会
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
公式HP:https://happinet-phantom.com/bakanuri-movie/

(C)2023「バカ塗りの娘」製作委員会

取材・文/於ありさ
撮影/金井尭子

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