【女優・若月佑美】エッセイを書くことは、自分自身を救うこと
2011年に芸能活動を開始し、現在は女優・モデルとして着実にポジションを確立している若月佑美さん。二科展に9回も入選するなどアートの才能も持ち合わせ、さらなる活躍が期待されています。
そんな若月さんが約3年半にわたって『週刊SPA!』(扶桑社)で連載してきたエッセイ「履きなれない靴を履き潰すまで」を1冊にまとめたフォトエッセイが2023年6月27日(火)に発売されます。
今回はフォトエッセイのお話から、29歳になるいまだから感じることをインタビュー。若月さんの意外な一面を垣間見ることができました。
「29歳」という葛藤のなかで感じることとは?
——エッセイの連載がスタートした当時は環境が変わった時期だったかと思います。“履きなれない靴”はだいぶ足に馴染んできましたか?
それがなかなか馴染んでいないんです。グループ活動をしていた時は、親しい仲間とスタッフさんに囲まれ、ライブや番組収録などもルーティン化されていたので、1年ごとにブラッシュアップできていました。
しかし、女優業の場合は毎回、共演者さんやスタッフさんが初めての方ばかり。そして、ラブコメの次はサスペンス、その次は医療系…と “新しい靴”が次々と出てくる感じなのでなかなかひとつを履き潰すという状態ではないです。
——では、いまは新しい靴をいろいろ試して履き心地を試している状態なのですね。今回のフォトエッセイは29歳のお誕生日に発売されるとのことですが、20代後半を迎え女優業としての立ち位置をどう捉えていますか?
一番難しい時期だと感じています。学生役はもう難しいし、お母さん役は少し若く見えてしまう…OL役だと新人でもお局でもない年代なので、ちょうど狭間にいる感じで戸惑うことが多いです。
——逆に今の年齢だからこそできることはどんなことだと思いますか?
そうですね。葛藤のなかにいる時期だからこそ、いろんな年齢層の方たちとコミュニケーションが取れると思っています。たとえば、自分よりも若い子の悩みには寄り添うことができますし、逆に先輩方には色々とアドバイスをいただき、勉強させてもらっています。
人間関係の幅を広げることができる、いい時期だとは感じています。
——「先輩」というワードが出ましたが、目標にされている女優さんはいますか?
出会う方、出会う方、本当に愛のある素敵な先輩方ばかりですが、吉田羊さんや鈴木京香さんは役者の先輩としても女性としても尊敬しています。スイッチの切り替えや、役の振り幅、凛とした佇まいに憧れています。
私も強さと優しさを兼ね備えた女優さんになることを目標としています。
大事にしている言葉は、「最後に笑うのは道化師(ピエロ)」
——エッセイを拝読して感じたのですが、若月さんはご自身の内面を冷静に客観視している印象を受けました。
たしかに子どものころから自分のことを俯瞰的に捉えるところはありました。
姉に聞いた話なのですが、私は迷子になった時、コールセンターを探して自ら両親の呼び出しをお願いしたらしいです。幼いころから自分の置かれている状況を冷静に見て、行動するところがありましたね。また、作品のなかでも触れていますが、学生時代は倫理の授業が大好きでした。デカルトの「我思う、故に我在り」という言葉や、授業で学んだことは今も私の心のなかで活かされています。
——昔から大事にしている言葉はありますか?
大事にしている言葉が2つあります。まず1つ目は「自分で自分に後悔をするな」という言葉です。失敗してつまずいてしまうようなことがあったとしても、常に後悔のないように行動をしていたら、「あの時の自分はあれがベストだったんだ」と納得し、また一歩踏み出せます。だから、一つひとつのお仕事を後悔のないように全力で取り組んでいます。
もう1つは、漫画の『東京喰種 トーキョーグール』(集英社)のなかに「最後に笑うのは道化師(ピエロ)」という言葉があるのですが、この言葉にも感銘を受けました。辛いことがあったり、ピエロのように誰かに笑われたりすることがあったとしても、最後に笑うのはピエロである「私」と思うことで無敵になれます。
自分のことを見失わないためにも、この2つの言葉は大事にしています。
——作品のなかに「小さい頃から言葉を紡ぐ事が好きだった」とありますが、エッセイを綴ることや倫理で学んだ言葉を大事にするところはどなたかの影響なのですか?
大学時代に言葉の勉強をしていた父の影響が大きいと思います。最近は父のことを知れば知るほど、自分と同じ感性なので驚かされることが多いです。
撮り下ろし写真では「Y2Kファッション」に挑戦
——次に今回のフォトエッセイのことを詳しく聞かせてください。3年半のエッセイを1冊にするにあたり、工夫した点はありますか?
じつは写真と文章はあえて関連づけていないんです。だから写真集としても楽しめる作りになっています。
文章は読んだ人のその時の状況によって感じ方が違うと思うので、受け取り方は読者の方に委ねていますが、文章に共感してもらい、読み返してもらえるような存在になれれば嬉しいですね。
——今回は撮り下ろしたショットや書き下ろしたエッセイもあるとのことですが、作品のなかで一番、思い入れのある写真はありますか?
2000年代のトレンドを取り入れた「Y2Kファッション」に挑戦した撮り下ろしカットですね。厚底ブーツを履いて、髪もメッシュを入れて“がっつり”決めてみました。
平成の時代を象徴する「アムラーっぽい写真」なんですが、どこか「エモさ」もある不思議な写真になっているので気に入っています。
——撮り下ろしショットの撮影前に特にケアをしたところはありますか?
美容に関しては、日ごろのケアが大事だと思っているので、撮影のために特別に何かをしたことはないです。いつもの自分を出したかったので、体も絞ったりしていません。
「ありのままの私」を見てもらえたら嬉しいです。
ただ普段から、夜のウォーキングが好きなので1時間くらい近所を歩いています。体もスッキリする上に、思考の整理もできるので私にとっては大事な時間です。
——雑誌でメイク連載をお持ちの若月さんですが、この夏挑戦してみたいメイクや気になっているコスメがあれば教えてください。
この夏はブラウン味のあるリップが流行るそうなので挑戦してみたいです。どうしてもブラウン系は秋・冬のイメージですが、リップが落ち着いていれば、アイシャドーが少し派手でも大人っぽい雰囲気が出せて素敵だと思います。
また、ラメが一切入っていないアイシャドーにも注目しています。マッドな色味を使い、最後に大粒のラメをワンポイントに使う、上級者メイクにも挑戦してみたいです。
誰にも見せたことがない「自分」の存在
——凛としていてクールでカッコいいというイメージの若月さんですが、ご自身の性格をどのように捉えていますか?
基本はファンの方が抱いてくださっているイメージのままですが、表に出したことがない自分も存在しています。この姿は家族にも見せたことがないかもしれません。
実は私、犬や猫など動物の前になると激変するんです。赤ちゃん言葉で話しかけたり、無邪気に遊んだり戯れたりする一面もあるんです。
あとは人見知りすぎて、人見知りだと悟られる前に自分から積極的に向かっていきます(笑)。
プライベートだともっとひどくて、電話に出られないんです。例えばマネージャーさんからかかってきても、電話が切れるのを待ってから、メッセージでやりとりをするくらい(笑)。だからお店に電話で予約をするのは本当に苦手ですし、美容院で美容師さんと話すのも戸惑ってしまうので、ずっと質問ばかりしています。
——とっても意外です。倫理が好きというお話から、ご自分の考えや想いを誰かにお話されるのもお好きだと思っていました。
誰かの話を聞くのは得意ですが、自分のことを語るのは苦手ですね。だから文章で思いを綴ることが好きなのかもしれません。
私にとってエッセイを書くことは、自分を自分で救う手段に近い感覚です。
——発売日である6月27日で29歳になり20代もラストですね。この1年をどのように過ごしたいですか?
20代をもう少し楽しみたかった…というのが本音ですが、周りの方から「30代が一番楽しいよ」という声をよく聞くので期待しています。
また、この1年はエイジングにシフトしていく時期だと思うので、自分の使っているメイクやスキンケアを見直したり、生活習慣も見つめ直したりしたいなと思っています。
Profile
若月佑美
女優・モデル。1994年生まれ、静岡県出身。乃木坂46の元メンバー。ドラマ「今日から俺は!!」、映画「ブラックナイトパレード」、舞台「薔薇王の葬列」をはじめ多数の作品に出演している。直近では「王様に捧ぐ薬指」(TBS系)に出演。2020年から、ファッション誌「Oggi」の美容専属モデルとしても活躍している。
■書籍情報
1st フォトエッセイ『履きなれない靴を履き潰すまで』
著者:若月佑美
発売日:2023年6月27日発売
出版社:扶桑社
<衣装>
ワンピース¥53,900/double standard clothing
シューズ¥8,690/あしながおじさん
※全て税込み
ヘアメイク/永田紫織(Nous)
スタイリスト/蔵之下由衣(commune ltd.,)
取材・文/安田ナナ
撮影/木南清香
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