2022.10.07
奇跡のワイン・フランチャコルタとイタリアの郷土料理を、西天満の街角で
オステリア87(オッタンタ セッテ)
フランチャコルタ、という言葉を知っていますか。
イタリアではミシュランで星付きのお店などで提供される、希少で上質なスパークリングワインのこと。そのフランチャコルタの専門店があると知り、大阪・西天満のイタリアン「オステリア87(オッタンタ セッテ)」を訪れました。
オステリア87(オッタンタ セッテ)とは
西天満を東西に横切る老松通り、その角に佇む「オステリア87(オッタンタ セッテ)」。老松町には古美術と骨董の店が集まり、美食家が通う名店が点在しています。
「フランチャコルタの奇跡」と称される希少なワインを、現地の生産者より直接仕入れて提供しているオステリア87。その美酒と、現地で長年研鑽してきたオーナー・悳山芳弘(とくやま よしひろ)さんによる北イタリアの町、ロンバルディア州イゼオ市の郷土料理が共に楽しめる一軒です。
現地のエッセンスを詰め込んだ空間
足を踏み入れた店内には、大きな木製のカウンターとテーブル席が12席。木のぬくもりを感じる空間です。
カウンター側の壁にはブドウ畑や醸造家さんなどのモノクロ写真が飾られ、またBGMとして常時流れているイタリア語のラジオも耳に心地よく、異国情緒に浸るひとときに。
“奇跡のワイン発祥の地”で13年
オステリア87のオーナー悳山さんは、現地のフランチャコルタを日本へ紹介する活動も行うフランチャコルタ専門インポーターの第一人者でもあります。
奇跡のワイン発祥の地・イゼオ市で、フランチャコルタを愛してやまない師匠の下で修行した悳山さんは、その後奥さんと共に現地で自身の店をオープン。フランチャコルタとの相性を考えた郷土料理を提供していたそのお店は、現地のガイドブックにも掲載されるほど現地で人気の店になりました。
13年間を現地で過ごして帰国後は、当時より付き合いのあったワイナリーのフランチャコルタを日本に伝えたいという想いで、ワインインポーター「MELONE(メローネ)」を開業すると同時に、自らが腕を振るうレストランをスタートしたのです。
奇跡のワイン「フランチャコルタ」
フランチャコルタとはスパークリングワインの一種で、北イタリア・ロンバルディア州東部のフランチャコルタ地域で生産されるものを指します。
フランチャコルタを特別なものにしている理由はその製造方法。
最低2年以上かけ、手間暇を惜しまない伝統的な製法で造られています。ボトル内で二次発酵させるため、酵母の働きによりきめ細かな泡が生み出され、繊細でまろやかな味わいに。
シャンパーニュ地方で生産される有名なシャンパンと比べると小規模な分、品質の管理が行き届いており、厳しい規定を守られた品質で「フランチャコルタの奇跡」と呼ばれるほど希少なワイン。
また一般的に糖類で味を調整するドザージュという工程、フランチャコルタはぶどうそのものの糖分が豊富なため、最低限かほぼ行っていないワイナリーも多いのだそう。そのため果実本来の味が楽しめます。
また現在フランチャコルタにある130の醸造所のうち、6割がBIO認定を受けている、もしくは準備中とのこと。わざわざオーガニックと謳わなくても、今まで自然に寄り添う栽培方法が当たり前、という醸造家さんも多いのです。
おすすめフランチャコルタ3選
厳選されたフランチャコルタのなかから、オーナー選りすぐりの3本を紹介します。
【BREDASOLE「ROSE(ロゼ)」】
自家製の堆肥を作り、農薬を一切使用しない土壌作りにこだわる造り手、BREDASOLE(ブレダソーレ)。イゼオ湖畔、南西の街・パラティコでフェラーリ家の3兄弟が営む家族経営のワイナリーです。
瓶内二次発酵の期間が最低28ヶ月というブレダソーレのロゼは、グラスに注ぐとまるで夕暮れのような透明感のある茜色をした美しいフランチャコルタです。
今回試させていただいたのが、こちらブレダソーレのロゼ。
色味の優しさに反して辛口のロゼは、スッキリしつつもぶどうの果実をそのまま口に注いだようなジューシーさ! その後に、何層にも重なるさまざまな味わいが感じられます。
優しくきめ細やかな泡でのど越しもよく、ゴクゴク飲めてしまいそう!
【LA TORRE「BRUT(ブリュット)」】
家族経営のワイナリーで、ほかにもバールやレストランを所有する地域で愛されるLA TORRE(ラトッレ)。「飲み疲れないこと、飽きないこと、食事に合うこと」を大切にしたワイン造りを心掛けています。
LA TORREのブリュットはまさにオールマイティな一本。辛口で飲み心地はスッキリしつつも、複雑な層のなかにジンのようなほのかな苦みとミネラル感があります。
【CAMOSSI「SATEN(サテン)」】
代々農業をし、地域の土壌を知り尽くした醸造家で、特徴の違う3つの畑を生かしたフランチャコルタ作りを行います。CAMOSSI(カモッシ)の作るワインはどれも繊細で上品です。
フランチャコルタにしかないカテゴリーのサテンは、一度は飲みたい一杯。シルクを意味するサテン、きめ細やかさがあり舌触りも滑らか。CAMOSSIのサテンは、優しい辛口でサテンのお手本のような味わいなのです。
ロゼに合わせた料理3皿
今回はオステリア87おすすめの、ロゼと一緒に楽しめる3皿を紹介します。
【アンティパスト(前菜)「マグロのタルタル ガスパッチョ」】
前菜はマグロのタルタルがたっぷりのガスパッチョ。マグロやトマトの赤、野菜のオレンジや白、バジリコの緑など器の中が彩り豊か!
ガラスの器の中身を、スプーンで混ぜていただきます。
こんもりした緑の山はジェラティーナといい、こちらはバジリコをジェリー状にしたもの。口に含むと、バジリコの青々とした香りがふわっと口いっぱいに広がります。
通常のガスパッチョは材料をすべてミキサーにかけて作られるものが多い中、同店では自家製ピクルスは細かく刻んで混ぜ込むことで食感をプラス。惜しまないひと工夫が違いを生んでいます。
またバジリコ、レモン、オリーブオイルとシンプルな味つけながら、それぞれの料理が口の中で絶妙に混ざり合う奥深さ! あっという間に平らげてしまいました。
【プリモピアット(一皿目)「ラザニア」】
この界隈では食べられる店がほぼないため、ランチ時には「ラザニアの店」として通ってくれるゲストも多いのだとか。特徴的なのはこの肉感! パスタシートよりもお肉の量が多く、食べ応えもバッチリです。
【セコンドピアット(メイン)「牛ほほ肉の煮込みブレーシャ風」】
ロゼと相性のいいメインには「牛ほほ肉の煮込みブレーシャ風」を合わせて。
アンチョビで塩味を加え、白ワインで煮込んで仕上げています。お肉はフォークで切れる柔らかさ、味付けはあっさりしているのでどんどん食べ進めてしまいます。
ほうれん草とジャガイモのピューレが沿えてあり、アンチョビの味わいが絶妙でクセになるソースと絡めていただきます。
オステリア87で提供される料理は、味付けがシンプルで繊細。特にイタリアンと聞いて連想しがちなニンニクも、同店では香りづけ程度にさっと油にくぐらせる程度。匂いが気にならないのはもちろん、軽やかで優しい味わいが特徴です。
またシェアやひとり分で対応してくれるとのこと、ぜひ相談してみて。
奇跡のワイン・フランチャコルタと、イタリアの現地で認められたシェフが腕を振るう料理を一緒に楽しめる唯一無二のオステリア87。
扉を開けると、小さなイタリアが迎えてくれます。ぜひ旅行気分で訪れてはいかがでしょうか。
旅するように暮らす自然派ライター/オーガニック料理ソムリエ。
4年に渡る世界一周後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。コーヒー好きが高じてオーストラリアではバリスタ業の経験も。今は繊細でフルーティーな浅煎りコーヒーに夢中です。ライターとしては旅行誌の広告制作を経て、雑誌広告や編集ページを主に執筆。現在は自然に沿った生き方、ほどほど丁寧な暮らしを自ら実践しながら発信中。地球にも体にも優しい生き方のヒントをお届けしていきます。
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