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2025.01.29

情報との付き合い方と本当のフェミニズムを考える
by Kana Sato vol.11

ブランディングディレクター、コンサルタントとして活躍する佐藤香菜さん。世界各国を旅して見つけた“本当にいいモノ”を見極める審美眼を持ち、SNSで発信する丁寧な暮らしが同世代から熱い支持を集めています。そんな佐藤さんが、普段愛用しているコスメやいま気になっているモノ、旅先でのエピソードなど、美容からライフスタイルまで赤裸々に語ってくれる本連載。

第十一回は、「情報との付き合い方と本当のフェミニズムを考える」についてお話いただきました。

今回のコラムは、最近さらに考えることが増えたテーマについて、今の気持ちを書いてみようと思います。きっと様々な意見がある分野なので、そんな考え方もあるな~くらいの軽い気持ちで目を通していただければ嬉しいです。

わたしは年々テレビを観なくなっています。職業柄毎日たくさんの人と出会い、時にアイデアを生み出したり頭を働かせて業務を調整したり、その時点ですでに情報量はかなり多く、そんな1日の終わりに帰宅してテレビをつけると、大人数が一度に会話をして盛り上がっているようなバラエティ番組のスタジオ風景が騒音に感じてしまうことが増えました。学生の頃ならば笑えていたかもしれないことが、自分の経験値増加と共に視点も変わり、視聴することよりも自ら体験することの楽しさを知ったからなのかもしれません。

海外在住の知人が言っていたこと。「日本に帰国した時は久しぶりの日本のテレビは手が込んでいて面白く、釘付けになる。でも何日かするとすごく疲れてくる」と。海外滞在中のホテルでテレビをつけると、小さくシンプルなスタジオでコメンテーター数人のディスカッションが行われているだけの番組、世界情勢を伝える報道番組、そして洗剤や家電、住宅など家庭にまつわる商品のコマーシャルが目立ち、娯楽としてのテレビ番組という存在は日本ならではの歴史あるものと実感します。

もちろん、取材を尽くした内容のドキュメンタリーや上質なクラシックコンサートには引き込まれますし、わたし自身、とある番組に密着いただいた経験から、制作チームのみなさんがどれほどの事前準備と裏取りと細やかなお心遣いを大切にお仕事されているかを目の当たりにし、今でも尊敬の気持ちを持っています。

新しく始まった2025年も早速、衝撃的なワードや描写を伴うニュースや、どんな人でも耳にすれば少なからず心がかき乱されるような出来事が伝わってきて、正義感が強い人は怒りの感情でジャッジしがちになったり、共感力の高い人は悲しみの感情に飲み込まれそうになる時も。そうした真相がどこにあるかなどわかるはずもないニュースからは意図的に離れない限り、本当にいま自分が向き合うべきことや心の健康を守れない時代になりました。

わたしは仕事の合間にタクシーを利用することも多いのですが、座席に座った途端に始まる目の前のモニターの宣伝広告はすぐさまOFFにし移動中くらいは無音の環境を作ります。
どこに行っても消費を促すための、巨大モニターから流れる広告、電車の中吊り広告、スーパーに行けば専用のスピーカーからBGMが流れる野菜売り場、スマホを見ればSNSやYouTubeにも流れる広告…
古代の人たちが一生かけても見ることのなかった量の情報を、私たちはおそらく1日もあれば見ているはず。だからこそ脳は疲れ、心が追いつかなくなるのも無理はありません。

新たに学びたいと自ら思える分野でない限り、いま少し意識したいのは、たくさん吸収することよりも不必要なものを瞬時に見極め遮断すること。その判断基準は、まずは自分が心地よいか否かでも良いはずです。
本当に知るべき重大な情報は、意図的に表に出されることなくたいていひっそりと隠れているもの。全ての物事はいま目に見えているものだけではなく多面的な視点でこそ捉えられるのだと、より強く思う最近です。

わたしは自身を女性と認識しているので、いったんここでは「女性としての」「男性としての」視点でそれぞれ表記させてください。

フェミニスト、フェミニズムと聞くと「自己主張の強すぎるめんどくさい集団」という解釈をする人もいるように思いますが、それはおそらくXなどソーシャルメディア上で「フェミ」などという略称で煽られ、批判の対象となる傾向の影響も大きいと感じます。

この略称や呼称というのは少々厄介なもので、日本ならではの表現の女子アナ、港区女子をはじめ、女子高校生をJK、男性には使われないバリキャリという働き方表現…などといった、職種や年代、生活習慣に至るまでを一種のブランド化しカテゴライズする結果につながっています。
それを受け入れ、うまく使って活躍する人もいるため差別的であるとは一概には言えませんが、男女の比率でいうと圧倒的に女性に対して表現されるこのような呼称が多いのは事実。良くも悪くも女性であることがブランド化されている現状には、行き過ぎたジェンダー役割意識を感じます。

これらの呼称が減った時が、本当の意味で男女の地位が平等に近づいた証。こういった呼び方をやめようと世の中に働きかけることができるのは、他でもなく女性たちしかいません。本来は体力的な面も、得意とする分野も少しの違いがあるから補い合えるのが男性と女性。一見女性だけを特別視するような表現や扱いは、時に男性にとっても間違った男らしさや負担や責任を求められるプレッシャーになり得ます。

本当のフェミニズムは、感情的に戦って得た権利ではなく、自分とは異なるジェンダーを尊重して、精神的な対等さを実感できること、と今のわたしは解釈しています。
10代、20代、30代と、わりと濃くいろいろな経験をした現在39歳のわたしが過去の自分を振り返り、これは貫いて本当によかったと思えることが一つあります。
それは「嫌われることを恐れない」ということでした。これはもともとの性格も関係し、他人に気を使える人ほど、場の空気を壊すことを避けるために一見平和的とも思える同調の態度を選ぶケースももちろん見られます。

しかし、人間はいつも微笑みを絶やさず、場の空気に合わせ、決して反論せず、違和感を閉じ込めてしまっていては自分の感情が死んでいきます。
これは絶対に間違っていると思うことには恐れずNOを。もしくは反応せず避ける。遠慮や恐れなど理由はあれど、これがうまくできないが故に全てのストレスや問題は始まるもの。NOの意思表示によって、実際には自分で想像していたほど問題になることはあまりなく、例え理解されなかったとしたらそこまでの関係だと諦められる。

行きたい場所があるなら連れて行ってもらうのではなく自ら出向き、一人の時間を楽しく過ごし、本当に好きな人とだけ行動を共にし、欲しいものは勢いよく自分で買い、日々起きる小さな決断を繰り返していくうちに、自分にとって良い選択をする癖がついてくるはず。

意思が強く自立した人とみなされると、都合よく利用しようという動機で近づく人は減ります。そうなれば、選ばれるのを待つ側ではなく、自ら選ぶ主体性を持って人生の流れも作っていける。世の中への不満は誰しもがある昨今、それをグッと自分の芯の部分に置きつつも、まずは自分の意識を変えることから周囲の人の意識に繋がり、小さな波が大きなうねりになって、それぞれが居心地のいい環境を作ることができると信じています。

このコラムはしばらく旅についての記録が続いたので、今回は今だからこそよく考えているテーマでわたしの素直な思いを残しました。
最近親しい友人たちともよく話すテーマです。少し重く思えるテーマこそ、これからも信頼できる友人や家族、パートナーと語り合うことで理解を深めていきたいです。


Branding Director 佐藤香菜


株式会社マッシュビューティーラボにて、オーガニックのコスメとインナーケア製品のセレクトショップ「Biople by CosmeKitchen」の立ち上げとディレクションを行ったのち、独立。ブランディングディレクター・コンサルタントとして多数の企業の製品企画立案、製品プロデュースから販路拡大に携わる。オーガニックコスメを巡る旅の様子はNHK「世界はほしいモノにあふれてる」への2度の出演や、Instagramアカウント @kana__sato622 で発信している。

>>vol.01 1人で旅する時間で気づくこと
>>vol.02 大人になった今だから本当の友人に出会える
>>vol.03 5月のパリ旅行記  おすすめグルメスポット!
>>vol.04 中国・ハルビン旅行記ーグルメ編ー
>>vol.05 中国・ハルビン旅行記ー可愛いモノ編ー
>>vol.06 夏の終わりの肌磨き!透明感がテーマのおすすめスキンケア
>>vol.07 石垣島のNEWホテルで過ごす、癒やしの旅へ
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>>vol.09 ベトナムで心躍るものを見つける旅【サパ編】
>>vol.10 ちょっとでも好きなら観に行こう サッカー観戦記

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