2022.08.20
発酵温熱木浴スパと2種の泉質を満喫する山のリゾート「ふふ 箱根」
ふふ箱根
4月、桜散りゆく東京をあとに、少し遅れて見頃を迎えた神奈川県・箱根へ。新宿駅から小田急ロマンスカーを利用する方法が定番ですが、今回の往路はバスタ新宿から高速バスで2時間ほど揺られ、途中の山道や車窓からのぞく桜の景色を楽しみながら向かいました。この日はお天気に恵まれ、ポカポカ温かく、日中は汗ばむほどの陽気で絶好のドライブ日和でした。
春のはじまりに私が旅先として選んだのは、今年1月26日に開業したばかりの「ふふ 箱根」。ふふシリーズ6軒目のスモールラグジュアリーが箱根・強羅エリアに開業するのは昨年から耳にしていましたが、コロナも落ち着いて徐々に人出が戻ってきたことも相まって、開業して数ヶ月は稼働が高く、連日満室になるほどの大人気。
中でも注目は、ふふシリーズとしては初、おそらく箱根エリアでも初出店となる「発酵温熱木浴」を取り入れたスパを併設していること。さらに、ふふ初のプリフィックススタイルのディナーも気になるところ。1泊2日の体験記を徹底レポートします。
森林の香り 岩と草花 箱根連山が広がる山のリゾート
早雲山の山裾に広がる強羅は、箱根でも最も高い内輪山の一画に位置しているため、「ふふ 箱根」からは雄大な明神ヶ岳や明星ヶ岳を背景に、丸く尖った山頂が目印の金時山など、幾度にも重なる山々の表情を四季折々ひねもす見渡せます。
ところで、強羅の由来をご存知でしょうか?強羅は岩が多い地形で、“ゴロゴロ”とした岩、亀の“甲羅”のように地盤が硬いことから“ゴーラ”の名称の由来となったという説も。(諸説あり)
それらにヒントを得て「ふふ 箱根」のシンボルマークは亀甲紋、箱根連山をモチーフに、日本の木々と岩の陰影を重ね合わせ、箱根の伝統工芸である寄木細工で表現されています。
さらに象徴的なのは、この土地を表すように岩肌をイメージした壁面や、岩石に模したカウンターなど、岩や石を館内の至る所に取り入れて力強さを表現しています。
エントランスに鎮座する小松石の巨岩アート
暖簾を潜り、エントランスでまず目を奪われるのは、2メートル近くあるダイナミックな石のアート。箱根火山で形成されたという、神奈川県真鶴エリアでしか採掘できない希少価値の高い「小松石」や「本小松石」をインテリアやアートなど細部に使用しています。
これを拝んでからエレベーターでレセプションへ上がります。
銅版が埋め込まれ、花が生けられるようになっている
壁には京都西陣織の老舗「HOSOO」による作品。岩のゴツゴツ感を表現
バーとスーベニアショップを併設したロビーフロアからも山々の表情を望める
力強さの反面、森林に囲まれた箱根の大自然と調和するように、自然光を取り込むやわらかな空間づくりも特徴的。「松」「檜」「杉」など日本の木々をイメージした「木々の香り」は「ふふ 箱根」を象徴する香り。
自然を近くに感じられるようにと客室には竹籠の花器を設え、スタッフが日々生けているそう
渡り廊下をつたって客室とレストラン、大浴場を往来するのも心地よいひと時。庭にある椿の木は「ふふ 箱根」のシンボルツリー。ゲストの到着を歓迎してくれるかのようにウグイスが美しく囀ります。
山肌に抱かれるテラス付きプレシャススイート
ふふラグジュアリープレミアムスイート(約102-120㎡)
39室ある、8タイプの異なる全室スイート。50㎡から最大120㎡の広さの客室もあり、人数や用途に応じて選べます。
日本の木々を感じる客室は、きちんと整った美しい室礼の中に、箱根らしい力強い岩石、繊細な竹細工の花器に生けられた可憐な草花が巧みに取り入れられ、山のリゾートを彩ります。
お盆の時期には、夏の風物詩でもある「箱根強羅温泉大文字焼」を一部の客室から見ることもできるとか。
プレシャススイート #113(約67㎡)
ニノ棟は「椛の葉(MOMIJI)」、三ノ棟は「杉の梢(SUGI)」といったように、それぞれの棟の名称は敷地内に生息する樹木から命名されたそう。全ての棟を箱根連山が広がる渓谷を正面にとらえた造りに。
ウェルカムスイーツには名物の箱根強羅もち
岩とミラーが一体となった「ROCK MIRROR」
アロマオイルを染み込ませた小松石。木々や岩などをイメージしたロックブラウンの香り
石を施したバスルームのライトとハンモック
石を施した引き出しの取っ手
小松石のジュエリートレー
「ふふ」オリジナルのオーガニックアメニティ。箱根では「松」「檜」「杉」など日本の木々をイメージした「THREE TREES」
環境に配慮してアメニティはプラスティックフリー化
チェックインは客室で行います。客室タイプによって異なるものの、部屋には大きなソファ、バルコニーにはデイベッドやハンモックが配されていて、大自然を感じながら、まるで別荘に来たかのようにゆったりと寛ぎのひと時を過ごせます。
大浴場と客室風呂、2つの異なる泉質を満喫
2種類の源泉が楽しめるのも「ふふ 箱根」の魅力。
一ノ棟の5階には、箱根連山が目の前に広がる絶景の大浴場があります。その景色はまさに「山の上から望む山」という表現のように、正面から山の稜線、幾重にも重なる山の襞を見ることができ、見渡す限りの大自然を愉しめます。
大浴場は大涌谷温泉
大浴場の泉質は、硫黄が香る箱根らしい「大涌谷温泉」。硫酸塩を多く含んでいるため、角質が取れて肌はツルツルに。白濁した効能豊かな湯につかり、四季のうつろいを感じながら身も心もほぐれます。湯上がりにはコーヒー牛乳やアイスキャンディが楽しめます。
客室風呂は強羅温泉
一方、全客室に設えられた温泉は、塩化物を多く含む「強羅温泉」。皮膚に付着した塩分が汗の蒸発を抑え、湯上がりも潤いを長く保つ美肌の温泉。入浴時もすぐ近くに自然を感じることができ、木々の香りや森の表情を愉しみながら、好きな時間に何度でもゆっくり堪能できます。
大浴場の硫酸塩温泉で肌の角質を落とした後に、内風呂の湯で保湿する入浴法がおすすめだとか。
箱根の山にインスパイアされたバーで過ごすアペロタイム
2015年と2018年に撮影されたアルプスの地表が並ぶ
オリジナルカクテルは森林をイメージしたモヒート
夕暮れ時、食事の前に「BAR 空木(うつぎ)」で軽く一杯。
バーカウンターの正面には「地表」を捉えた象徴的な作品が並び、アペロタイムを彩ります。日中はそれらに箱根連山が映り込み、夜は絵だけが浮かび上がるようにライティングにもこだわりを。
季節のフルーツを使ったシャンパーニュカクテルや、山のリゾートをイメージしたというシグネチャーカクテルなど、趣向を凝らしたドリンクメニューが味わえます。
20品から自分好みにカスタムするプリフィックスディナー
Ruinatt(ルイナール)のロゼからスタート
箱根の雲海をイメージしたという5種類の前菜
蛍烏賊、水蛸、葛胡麻豆腐、百合根玉地蒸しなど
海老真丈と生海苔うす葛仕立て
初鰹炙り、縞鯵、野菜のちり酢和え
プリフィクスペアリング(3種8,800円)、ナチュラルワインペアリング(3種5,500円)
豚の香味焼き
和紙で包んで食べる桜春巻。桜の葉も食べられる
食感が楽しい鰆のおかき焼き
お一人様サイズで楽しめる鮪頭とろの小鍋料理
レタスやトマトの食感が新鮮な海鮮香味鍋
鉄板料理「石ずえ」から黒毛和牛のフィレステーキ
生姜や木の芽が香る筍の釜焚き御飯
黒糖わらび餅
そら豆ムース トマトジュレ
個室もあるのでお子様連れや会食などの利用にもおすすめ
「ふふ」といえば食事のクオリティの高さに定評がありますが、日本料理「山の笑(やまのえ)」では、ふふシリーズ初となる“プリフィックススタイル”を採用しています。暖簾をくぐると活気溢れる厨房が覗けます。
コースは[箱根雲海]をイメージしたという前菜、お椀、お造りと続いた後に、メインは[進め肴]と書かれた14種類(日によって異なります)のメニューからお好きな3品を選べます。
握り寿司、季節の天麩羅、金目の煮付け、黒毛和牛のすき煮など、各地から取り寄せた旬の厳選食材を使った豊富なラインナップ。
レストラン内の鉄板料理「石ずえ」で提供している黒毛和牛のステーキやスペアリブ香薫焼などもオプション料金で、和食コースの一品として選べるのが嬉しいポイント。
加えて、〆はお茶漬け、自家製蕎麦、筍ご飯の3種から1品、デザートはわらび餅、そら豆ムース、お煎餅アイスの3種から1品を選びます。
選んでいいと言われるとどれもこれも魅力的で迷ってしまいますが、このプロセスが新鮮で楽しい。二人で異なるメニューを選べば2倍楽しめます。
自然派ワインを取り揃えているのも、自然と岩をテーマにした「ふふ 箱根」ならでは。プリフィクスペアリングは4種の食事に合うお酒を提案してくれます。
器は箱根連山との関わり深い小松石や日本の銘木などを取り入れた特注の食器。料理が引き立つ磁器や陶器などオリジナルの器も。日本の木々が香る杉や葉などを要所に添えて。
ふふ 箱根の朝食名物“強羅ごろごろカレー”でパワーチャージ
箱根連山を望むカウンター席に二人並んで
竹の皮から顔を出したのは出汁巻き卵とからすガレイの西京焼
新感覚のサラダ
山形産コシヒカリの釜炊きごはん
強羅ごろごろカレー
旬の水菓子
朝食もまた日本料理「山の笑」にて。窓際のカウンター席からは朝日をたっぷり浴びて輝く箱根連山の絶景を望めます。
「食籠(じきろう)」と呼ばれる重箱のような陶器に、先付、焼き魚、調理長自慢の出汁巻卵といったご飯のお供に相応しい副菜たちが丁寧で美しく、彩り鮮やかに盛り付けられています。
白米はゲストの到着に合わせて土鍋で準備されるため、米粒が一つ一つふっくら立ち上がり、白く艶やかな光沢がいっそう食欲をそそります。
「ふふ」の朝食といえば、河口湖の納豆豆腐グラタン、京都の福重膳などのように各施設に名物の一品がありますが、ここでは「強羅ごろごろカレー」がそれにあたります。カボチャやズッキーニなど大ぶり野菜がごろっと入って、しっかりスパイスも効いて食べ応え満載。朝カレーで元気いっぱい。体を目覚めさせてくれます。
ヒノキパウダーに包まれる発酵温熱木浴×桧香トリートメント
施術ルームは全4室
Lapidem(ラピデム)のスキンケアを使用
SPA「桧香-HINOKA-」ではトリートメントメニューに加えて、日本古来の発酵技術を用いた湿式温浴法「えん発酵温熱木浴」を導入しています。
一般的な酵素浴とは異なり、ここでは木が主役。奈良県吉野産の不純物の混ざっていない特定無垢ヒノキパウダーと、新鮮な生薬に少量の米ぬかをブレンドしたオリジナルのパウダーを使用することで、山、土壌、食への循環により世界をオーガニックへ変えるための活動を行っています。
木浴のみなら60分6,000円、スパと組み合わせると全身105分17,000円〜利用できます。
1.カウンセリング
バスローブに着替えます。木浴の際はローブを脱いで紙ブラ&ショーツのみになり、シャワーキャップと耳栓を装着。パウダーが細かいので耳に入らないよう覆い隠します。
2. アロマオイルを選ぶ
インスピレーションをもとにアロマを選ぶ
スパ発のMADE IN JAPANスキンケアブランド「Lapidem Tokyo」のオイルを採用。陰陽五行説に基づいて香りをプロデュース。5色のカードの中から気になる2色を選びます。
実際に香りを嗅いでみて、最終的に一つに絞ります。季節や体調によって感じ方が変わり、バロメーターになるそう。まるでタロット占いのような気分に。
ちなみに、今回私が選んだ香りは…「リリース」
心を解き放つ香り。柑橘系、柚子、ベルガモット、ライムなど。自律神経を整えたり筋肉をほぐす。
3. 酵素ゼリーを飲む
酵素ゼリー、ミネラルウォーターを摂取します。発酵食と呼ばれる酵素ゼリーは天然の野草や果物を発酵熟成してビタミンやミネラルを豊富に含みます。黒糖の甘みで食べやすく、乾燥したプルーンのような感触。水分を摂って発汗を促します。
4. 発酵温熱木浴
温度調節しながらヒノキパウダーをさらに盛る
温かいヒノキパウダーが全身を包みます。電気など人工的熱源で加温せず、自然界に生息する微生物の温もり、発酵の力だけで保温。温度は65~85℃に保たれ、じんわり身体を温めてくれます。
定期的にパウダーの総入れ替えを行うことで、品質・衛生管理を徹底しています。香り、肌触り、木の温もりで、深いリラクゼーション効果を得ることができます。
5. フェイスマスクを装着 ※オプションメニュー
温浴中にフェイスマスクで肌に潤いを
5〜10分で毛穴から汗が噴き出してくるのがわかります。冷却タオルで額の汗を拭き取ってもらいつつ、フェイスマスクをのせて保湿+クールダウン。
6. シャワーとダウンタイム
20分の木浴後はゆっくり起き上がり、シャワーブースに移動。全身に付着したパウダーをしっかり洗い流します。パウダールームにはドライヤーやアメニティもあるので安心。特にのぼせやすい人はクラッと立ち眩みに注意。水分補給を欠かさずに。
7. ボディトリートメント
木浴で温まった後にオイルトリートメントで相乗効果
発酵温熱木浴でしっかり温まった身体を香り高いトリートメントオイルでゆっくりとほぐしていきます。椿オイルや米ぬかオイル、アルガンオイルをブレンドしたトリートメントオイルが肌に浸透して、しっとり滑らかに。
一人ひとりの好みに合わせ、足元から頭の先まで筋肉の緊張を緩和し、血行・リンパの流れを促進させ、自然治癒力を高めます。
8. リラックスタイム
施術後はハーブティーでほっと一息
ヒノキパウダーに包まれて、全身をじっくり芯から温めたおかげで、施術後もしばらくポカポカ、汗が止まりませんでした。その夜は驚くほどぐっすり熟睡できました。
リラックス効果はもちろん、生活習慣病や冷え解消にも効果が期待できます。発酵温熱木浴は、健康維持と環境配慮に取り組む新たな美容法として益々注目されることでしょう。
17歳から読者モデルとして「Vivi」「JJ」「non-no」など多数女性誌に出演。6年にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。大学卒業後、化粧品会社勤務を経て、フリーランスに転身し、ヨガインストラクターを務める傍ら、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国。特にタイに精通し、渡航回数は30回以上。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。JSAワインエキスパート呼称資格取得。
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