2022.06.03
日本初!“酔わない”という選択肢。話題の「LOW-NON-BAR」とは?
LOW-NON-BAR(ローノンバー)
“飲んでもいいし、飲まなくてもいい。”
そんな、ありそうでなかった、誰もが心からくつろげる空間をご紹介。
『アルコールを“飲む人”と“飲まない人”の両方が一緒に楽しめるようなバー空間を作りたい』という想いが店名に込められた、日本初の本格的ロー・ノンアルコールバー「LOW-NON-BAR(ローノンバー)」。
都内を中心に9軒のバーを持つ「オーチャードナイト」が運営し、豊富な知識と高い技術を持つバーテンダーが創り出すカクテル、バー本来の“大人の社交場”の雰囲気が楽しめる、話題のお店です。
飲めなくても大丈夫。憧れの世界へ
年齢を重ね、ライフステージの変化でお酒から遠ざかってしまったものの、ムード漂うバーにはずっと憧れがありました。”そんな私でも行けそう!”と胸を躍らせ向かったのは東京・神田。
神田駅から徒歩5分、高架下に旧万世橋駅跡として「マーチエキュート神田万世橋」があります。旧プラットフォームや1階は整備され、ショップやカフェとして蘇っています。
看板を見つけ扉を開けると、まさに誰もが一度は憧れるイメージのオーセンティックな「バー」が。
レンガや打ちっぱなしの壁は旧万世橋の遺構保護の観点から当時のまま。それに合わせたアンティークのインテリア、重厚感ある内装になっています。
カウンターには昔のホテルバーからインスピレーションを受けた、滅多にお目にかかれない革の肘置き。その柔らかさに、少々緊張していた肩の力が抜けていくよう。実はここに肘を置き座ると姿勢が美しく見える仕組みになっているのだとか。
「バックバー」と呼ばれる棚は、フランスの薬棚をイメージしたアンティークな施し。様々なグラス、ズラリと並ぶ瓶が美しい。
日本でも広がる「ノンアル文化」
メニューを開けば、「どんな味がするの?」と想像力をかきたてられるモクテルたち。
ノンアルコールカクテルを「モクテル」と呼び、近年欧米では「SoberCurious(ソーバキュリアス=お酒を飲めるけどあえて飲まないという意味の造語)がトレンド。
日本でも近年は健康などのためにノンアル飲料を選ぶ層が広がりつつあります。
ただ、高品質なノンアルコールの商材は希少で、日本での流通もごく僅か。
「求める味わいを出すには、一般には流通していないものを独自のルートで入手したり、お店で手作りするなど日々研究。アルコールが入っていないので賞味期限も短く、管理にも細心の注意が必要なんですよ」と話してくださったのはバーテンダーの髙橋弘晃さん。
趣向を凝らしたモクテルを堪能
まずはお店の名前が付いたモクテルから。髙橋さんの華麗な手つきに魅了され、目の前で創り上げられる瞬間を見ることができるのもカウンターならでは。
《LOW-NON-BAR》とろりとした口当たりでベリーの甘みと渋み、英国生まれのフルーツやビネガーなどで作られたノンアルコールドリンク“シュラブ”の酸味がクセになる美味しさ。パプリカの香りが印象的。
ジュースとモクテルの違いは…? と伺うと「ジュースは体・喉の渇きを潤し癒やすものに対し、モクテルは非日常感を楽しむものではないでしょうか」と髙橋さん。
炙ったローズマリーの香りが漂い、カクテルの語源である鳥のグラスが可愛らしい。
見た目でも楽しませてくれ、その違いを最も感じられる一杯です。
《TRUFFE HONEY-NI》トリュフを漬け込んだハチミツと柑橘のさわやかなモクテル。口をつける前に、トリュフの豊かな香りが鼻を抜けびっくり! 旬の柑橘果物と相性抜群。
アルコールを使えばボリュームが出る反面、それがない分、いくつもの味を重ねることで芳醇さや複雑さを出しているのだそう。
ノンアルコールなのに、なんだかお酒を飲んでいるような心地よさ。
《WA”BI”SABI》ネーミングから興味津々だったこちら。なんとチョコとワサビの意外すぎる組み合わせ! お酒を飲まれないバーテンダーの方が考案したレシピだそう。
擦りおろしたてのツンとするワサビの香りで仕上がりにドキドキ…。
クリームも加わりまるでデザートのような優しい甘みに加え、ノンアルコールの日本酒(そんなものが存在していたとは!)とワサビの香りが最後に深みを出します。とてもノンアルコールとは思えない濃厚さ。
「料理と違って盛り付けも限られるので、コースターを合わせるだけでも世界観が出ますね」とこだわりは細部にまで。
《ESPRESSO&TONIC》最後は、通常の3倍の豆の量を使い一晩水出しされたエスプレッソを用いた、雑味がなくスッキリとした1杯。
「グラス・氷・見た目・香り」全てに手間暇がかけられており、それをゆっくり堪能するこれ以上ない贅沢な時間。
レシピも常にブラッシュアップ。珍しい素材や、好奇心を擽られるような組み合わせをチョイスしているのだとか。
好きな素材を1つ伝え、それをベースにカクテルをオーダーすることもバーの醍醐味のひとつ。もちろん、アルコールが入ったドリンクでもOK。
「気になる組み合わせ、好みを伝えてもらえればバーテンダーがお客様ひとりひとりに合わせて作りますよ。思いがけない組み合わせのお題をもらい、自分のレパートリーが増えていく楽しさもありますから」と、バー初心者でも気後れしないように、柔らかい雰囲気を作ってくれる髙橋さん。
全ての垣根を越えられる場所
訪れる客層は様々。私のように、お酒は弱いけどバーに憧れていたり、ごく稀に未成年や、子どもが成人したので親が連れてきたという方も。
「自分が狙った味で“おいしい”と言って喜んでもらえた瞬間が何より嬉しい。お酒が飲めない方にも楽しんでもらえた時、バーテンダーをしていて初めて人の役に立てたかなという感動がありますね」と髙橋さん。
“飲めない方が行きつけのバーを持ち、飲めない方が飲める人をバーに誘う。”
私にとってはもうすっかりお気に入りの場所に。
さて次は誰を誘おうかな? ぜひ、みなさんも新しいバーの文化に触れてみてはいかがでしょうか。
ドイツ在住の元CA。システムエンジニアを経て客室乗務員となり、退職後2023年より家族とドイツに住む。学生時代に台湾留学でマスターした中国語と英語に加え、現在はドイツ語の資格取得に挑戦中。異文化交流と新しい体験を求めて、世界中を旅するグルメ探究者。旅先で味わった料理を自宅で再現するのが趣味。ドイツを中心にヨーロッパでの暮らしと旅情報をお届けしていきます。
Instagram:@wakana_log/@wakana_log_germany
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