KIREI labo 輝くあの人の10箇条
LIFESTYLE

2022.01.07

KIREI labo 輝くあの人の10箇条

KIREI laboは、身も心も自分らしくキレイでいるための研究所。毎回、専門分野を究めたプロフェッショナルをお招きし、これまでの体験によって導き出されたそれぞれの10箇条を語っていただく連載です。第2回目の教授は、ジュエリーブランド「HASUNA(ハスナ)」の立ち上げほか、エシカル消費文化を普及させるべく活動しているブランドプロデューサー・ディレクターの白木夏子さん。日々の消費の中から気づくこと、どんなに小さくてもできるところから始めること、私たちの日常をあらためて考える“きっかけ”を教えていただきました。

ー第1条ー
現地を訪れて知った
“豊かさの中にある歪み”

国連職員になりたくて、イギリスの大学で貧困問題や環境問題を学んでいるうちに、貧困層の方々の暮らしや求めているものは現地に行かないと分からないと感じて、1年生の夏休みに南インドへ行きました。2か月間かけて「アウトカースト」と呼ばれている、カースト制度の外にいる最貧困層の人たちが暮らす村々を巡った中で、鉱山労働者の村があったんですね。そこで初めて鉱山労働の実態を知りました。大人は朝から晩まで働いて、子どもたちは学校に行けない、病気やケガをしても病院に行かれない、1日1食しか食べられない日もある。そういう中で採掘されるものがジュエリーや化粧品、電化製品の材料になっている。私たちの便利で豊かで美しい生活が彼らの犠牲の上に成り立っているということは、何かが歪んでいるなと思ったんですよね。

ー第2条ー
みんなが笑顔で幸せになれる
流れを作りたい

いろいろ調査をしていくと、インドだけじゃなくて、フィリピン、カンボジア、中南米のコロンビア、ペルー、アフリカのマリ共和国など、同じように鉱山で苦しんでいる人がいることや、世界全体で100万人ほどの子どもたちが鉱山で働いていることが分かったんです。この現状をなんとかしたいと思っていろいろ考えたビジネスのひとつが、様々な国からフェアトレードで石や金を仕入れて、ジュエリーを作って販売することでした。そうすれば、身に着ける人も、現地の人も、みんなが笑顔で幸せになれるお金の流れが作れる。上手くいけば、ほかにも同じようにエシカルやサスティナブルに気を付けながら商品を作るブランドが増えてくるんじゃないかなと思いまして。それで2009年にジュエリーブランド「HASUNA」を立ち上げました。

ー第3条ー
宝石や金が辿ってきた
道を明らかにする

「HASUNA」を立ち上げた当初は、石や金を仕入れる場所がなかったんですよね。国内の問屋さんに行って「この石はどこから来たんですか?」って聞いても、みなさん全然答えられなくて。“毎日こんなに高価な宝石に囲まれているのに、疑問に思わないのかな? 原産地も掘っている人も磨いている人も彫っている人も分からないものを取り扱ってどうして疑問に思わないのだろう?”と思っていました。ブラックボックス化されているところを誰も見ようとしないというよりは、どうしたらいいか分からないというのが現状だった思うんですけど、 現実問題としてみんな知らないんだなと驚きました。「HASUNA」では、原材料となる石や金を採掘している鉱山を可能な限り見に行くようにしています。

ー第4条ー
デザインは普遍的な美しさを追求

製品として「PERPETUAL(永続性、普遍的なもの)」であることをすごく大切にしています。親から子へ、子から孫へと永続的に使っていただける強度のものをしっかり作ること。デザインに関しても、ただ美しいだけではなくて、30年後、50年後に見ても古くなっていないデザイン、普遍的な美しさを追求することもこだわりですね。デザインは1920年代のアンティークジュエリーから着想を得ていたりもします。普遍的な美しさを追求していくと、アンティークでも今身に着けてもおしゃれなものがたくさんあるんです。

ー第5条ー
高い技術を持つ日本の職人さん
をサポートしたい

エシカルの一環として、日本の職人さんのサポートもしたいと思っています。いざジュエリーブランドをやり始めると、日本の職人さんがいかに大変な状況にあるかということを目の当たりにするんですね。何百万円、何千万円のジュエリーを作っているのに、副業をしないと暮らしていけないくらいの賃金しかもらっていない職人さんもいたり。すごく腕はいいけど、交渉やコミュニケーションが苦手な人が多いんですね。日本のジュエリーブランドとして、その問題はサポートしないといけないと思って、創業からジュエリーの仕上げは日本の職人さんにお願いしているんです。それから、愛媛県や三重県の真珠、九州の珊瑚など、日本の伝統的な素材を使うことで、日本の美しさを追求することも行っています。

ー第6条ー
いかなるジェンダーの
方々も分け隔てなく

ゲイの友達から「ジュエリーのお店は入りづらい」「変な目で見られる」という話を聞きますし、ゲイやレズビアンカップルが式を挙げられない結婚式場もあるようで、今だに差別されてしまうことを私はすごく疑問に思っているんですよね。それで、ジェンダーレスや多様性をテーマにしたジュエリーブランド「Re.ing」を作ってみたんです。カップルって男女だけじゃなくて、男男、女女、ひとりでいることを選んでいる人、再婚や子連れ婚、パートナーシップの形は様々だということをこのブランドを通じて知りましたね。ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーの方々も結婚指輪を買いに来られます。ジェンダーマイノリティの方々が意識せずに入れるような、オープンなブランドになればいいなと思いますね。

ー第7条ー
自分のお金が流れた
先の影響を考えてみる

今、エシカルやサスティナビリティ、SDGsが、一過性のブームで終わるのではなく、誰もが当たり前のように考えている社会が理想的です。私が実践していることだと、お金を使うことに関してなるべく地産地消や職人さんが関わっているものを買ったり、電気を自然エネルギーのものに変えたり。お金が動くことに関しては、社会に何らかのポジティブなインパクトを生み出すところに払うようにしています。お金を使うタイミングは毎日ありますよね。それを毎回エシカルを意識しなくてもいいと思うんです。例えば、地元の個人店に行くとか、そういうちょっとしたことから始めてみるのはおすすめですね。お金が動くポイントで、お金が流れた先の影響を考えてみることがすごく大事かなと思っています。

ー第8条ー
子育てはオープンな環境で
まわりの力を借りながら

仕事と育児を両立する秘訣は、育児に関わる人たちをチーム編成していくことだなと思っています。パートナー、両親、義理の実家、友人たち、それからシッターさんもチームの一員ですね。子育てを家庭の中だけにしないで、まわりにいる人たちみんなで子育てをする、オープンな形で子どもを支える環境作りを意識しています。子どもはいろんな大人や子どもと触れ合うことで、いろんな感情を味わえると思うんですよ。それによって、情操教育や非認知能力の向上にも繋がると思うんです。お母さんも家庭の中だけで頑張ろうとすると壊れちゃうと思うので、ゆるっと外の人たちの助けも借りながらやっていくのが大事かなと思います。

ー第9条ー
感情をしっかり見ることが
自分のケアに繋がる

最近「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること)」についていろいろ調べていて、自分の感情をいかに楽しむかがすごく大事だなと思っているんですね。少し前までは「ハッピーでポジティブな時間が多ければ多いほどいい」と言われてきましたけど、実は、様々な喜怒哀楽の感情を感じている「エモーショナル・ダイバーシティ」という状況が人間にとって必要で、幸せを作っているらしいんですよ。怒りたいときはめちゃくちゃ怒る、寂しいときや悲しいときはどっぷり涙を流す、感情を我慢せずに、しっかり見てあげることが自分のケアに繋がると思います。私は30代前半までそこをかなり押さえつけて我慢していたので。

ー第10条ー
ポジティブもネガティブも
味わうことが大切

私が感情を解放するようになったのは、マッサージ師の方に「すごい怒りが溜まってますよ!」って言われたことがきっかけです。それまでまったく無自覚で、“私はいつも落ち着いている”と思っていたんですけど、実はそんなことなかったみたいで(笑)。すごくびっくりして、そこから“怒ることって何かあるかな?”と考え始めたら、“あれも嫌、これも嫌、ムカつく!!”って感情が一気にどんどん出てきたんです。それから一か月間くらいずっと怒り散らかしていましたね(笑)。その後すごく落ち着いて、自分の感情を見始めた感じです。自分が日々感じるポジティブなものもネガティブなものも味わうことが大切だということに、私は30代後半になって気づいたので、キレイノート読者のみなさんはこれから味わっていくといいのかなと思います。

QUESTIONS

読者からの質問Q1

子育てをする上で大切に
していることはありますか?

ひとりの人間として子どもも接する、ということですね。

自分の子どもだけれども、自分の所有物ではないし、自分と同じではないし、自分が支配するものでもないし、「この子はこの子」と、ひとりの人間として向き合うようにしています。子どもに対して変に期待しちゃうと、そうじゃなかったときにコントロールしようとしてしまうんですよね。でも別々の人間だと思えば「ああ、そうなんだね」って受容できるので。

読者からの質問Q2

エシカルなどの取り組みをしていると
理解されないことがあり、
「意識が高いね~」と皮肉っぽく
言われて
嫌な気持ちになること
があります。
そういうときは
どう乗り切ればいいでしょうか?

人からの評価じゃないので、
自分が気持ちいいと思える
ことをやっていけばいいんじゃないかなと思います。

エシカルやサスティナビリティは、押し付けるものではないし、それを見せて楽しむものでもなく、ただ「自分が気持ちいいからやっている」というだけなので。好きでやっていれば、まわりの目を気にしなくてもいいと思いますよ。

profile

NATSUKO SHIRAKI
白木 夏子さん

ジュエリーブランドHASUNA Founder & CEO、ブランドプロデューサー・ディレクター。
武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部教員・研究所客員研究員。英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年に株式会社HASUNAを設立。ジュエリーブランドHASUNAでは、世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、 日本におけるエシカル消費文化の普及につとめる。ほかに、セレクトショップ、化粧品、アパレルブランドなど各種企業のブランドディレクション、東海地区の女性起業家育成プログラムにディレクターとして参画するなど、幅広く活動。女性の働き方や起業、ブランディング、サスティナビリティ、SDGs等をテーマに国内外で講演活動も行っている。

取材・文/依知川亜希子

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