【俳優・倉科カナ】「欠けてるんじゃない、満ちる途中」というセリフに出会えた喜び
柔らかい雰囲気の役からミステリアスな役まで、さまざまな表情で私たちを魅了してくれる俳優の倉科カナさん。とはいえ、バラエティ番組などでの印象から、倉科さんの名前を聞けば、笑顔の表情が思い浮かぶ人も多いはず。
5月24日(金)から公開される映画『三日月とネコ』は3人の大人とネコたちの共同生活を描いた作品。ここでも倉科さんの優しい表情に出会えます。
今回は、倉科さんの笑顔の秘訣から作品のお話までをじっくり伺いました。
役と自分の共通項が多く、ご縁を感じた作品
——映画『三日月とネコ』は、熊本地震をきっかけに迷える3人の大人が共同生活をはじめるところからスタートしますが、倉科さんが演じた鹿乃子(かのこ)たちのような共同生活についてどう思いますか?
他人との共同生活は大変なこともあるかもしれませんが、一緒に暮らすのは家族と限らなくてもいいと思います。自分が一緒に過ごしたい人と場所や時間を共有し、尊重しながらの生活も素敵だと思うので、鹿乃子たちのような選択もいいなと思います。これから彼女たちのようなスタイルが増えるかもしれませんね。
——今回の作品は倉科さんの故郷、熊本が舞台です。そして演じたのはネコを飼っている女性ということで、ご自身との共通項も多かったようですね。
初めて出演のお話をいただいた時は故郷が舞台ということでテンションが上がりました。私は子どものころから熊本城が常にそばにあるところで生活をしていたので、今回のお話は本当に嬉しかったです。
また、鹿乃子と同じように私もネコを飼っているのでさまざまなご縁を感じ、「ぜひ参加させてください」とすぐにお返事しました。
——歳を重ねてから故郷の熊本で生活したいな…という思いはありますか?
そうですね。いつかまた熊本で過ごしたいな、という感情がよぎることがあります。
デビュー当時は熊本が好きすぎて上京するのが嫌で嫌で…(笑)。1年くらいは駄々をこねて熊本から飛行機に乗って仕事現場に通っていました。熊本は自然が豊かで人も優しいし、ご飯も美味しいので大好きです。
——熊本県のオススメスポットがあれば教えてください。
熊本は観光スポットも多いのですが、私のおすすめは阿蘇のミルクロードと、菊池渓谷です。子供のころは本当によく阿蘇に行きました。広大な草原の中に“あか牛”がたくさんいて、熊本を代表する景観のひとつです。菊池渓谷はさまざまな滝があり、季節により雰囲気が違います。私は子供のころ、ヤマメを釣って食べた思い出があります。家族で出かけた帰りは屋台でからし蓮根を買って食べたりもしました。作品の冒頭に熊本の街並みが映るのでぜひ注目してください。
30代と40代のはざまの自分はまさに「満ちる途中」
——鹿乃子は優しい笑顔の中に少し悲しさも秘めている女性のように感じました。倉科さんはどういう人物だと捉え、演じられましたか?
鹿乃子は精神科の医師ということもあり、いろんな人の感情や状況を理解できる人だと感じました。でも、自分自身は人との関わり方がわからなかったり、さまざまな感情が心の中に渦を巻いていたりと、感情を理性で覆ってしまっているようなタイプなんです。だから安達祐実さん演じる灯(あかり)ちゃんと、渡邊圭祐さん演じる仁(じん)くんが寄り添って、そっと補ってくれているから立っていられるような女性と捉えました。演じる際はそんな鹿乃子の心の繊細さに注力しながら演じました。
——倉科さんから見て鹿乃子のどんなところに魅力を感じますか?
鹿乃子は職業柄、完璧そうに見えますが部屋の片付けが苦手だったり、人との付き合いが少し不器用だったりします。でもそこが逆に人間らしい魅力だなと感じました。
——今回の作品は考えさせられるセリフが数多くありました。倉科さんのなかでも印象に残っているセリフはありますか?
今回の作品は本当に素敵なセリフが多くて私も印象に残っています。とくに灯ちゃんが自分のことを「欠けたまま、大人になりきれていない」と後ろ向きの発言をする場面で、鹿乃子が「欠けてるんじゃない、満ちる途中」と励ますセリフが好きです。鹿乃子自身にも言い聞かせていると思うんですが、私自身も何度もこの言葉に励まされています。
——鹿乃子が三日月を見ながらしみじみと語るシーンはとても印象に残っています。
私はいま、30代と40代のはざまですが、大人になりきれているかと問われると、想像していた大人にはまだなれていません。まさにこのセリフのように「満ちる途中」です。
カテゴライズされてしまう世の中で、「自分をどこかに当てはめなくていいよ、あなたはあなた」と優しく言ってもらえているような言葉なので、心に響いています。
疲れたら自分の心に問いかける瞬間を増やす
——倉科さんといえばはじける笑顔がとても魅力的です。日々、笑顔で過ごす秘訣があれば教えてください。
私は楽しいことをみつけることがうまいんです。ちょっとしたことでもニマニマしちゃうんです(笑)。いたずらみたいなことを考えて、それを想像するだけでも楽しくなれるタイプなので、いつも笑顔でいられるのかもしれません。
——具体的にどんなことを想像しているのでしょうか。
たとえば、いまこの冗談を言ったらみんなどんな反応するかな?と想像するだけでも楽しくなるんです。自分も周りも笑顔になるような「オモロ!」って思えるようなことをふだんから追求しています(笑)。
——逆にちょっと疲れたなと思った時は、どんなことをして過ごしていますか?
今の俳優という仕事が本当に好きで、充実した日々を過ごしていますが、それでもふと「自分の心の方向がどこに向いているのかな」「最近ちょっと疲れているな」と感じる時があります。そんな時は、自分の心に問いかける瞬間を増やすようにしています。たとえば、「いま何がしたい?」「何が食べたい?」と、些細なことでも自分の心が欲する“こと”や“モノ”はなにかを問いかけて、その気持ちに素直でいるようにしています。
あとはとにかく泣きます。映画やドラマを観ながら、笑っちゃうくらいおおげさに泣くんです。そうすると、心が本当にすっきりします。
——最近観て泣いたドラマや映画はありますか?
どんな作品でも泣けちゃうんですが、最近観た作品だと韓国ドラマの「浪漫ドクターキム・サブ」です。頑張りすぎてる大人に対して、優しいドラマなんです。共感できるセリフのところでは「わかるー!!」って言いながら、泣けるシーンでは大号泣しています(笑)。
こだわりは“女性らしいフォルム”
——多忙な毎日を送る中、スキンケアで気を付けていることを教えてください。
昔からお肌のトラブルがあったら皮膚科に行って相談するようにしています。小さなことでも皮膚科の先生に相談して、その都度アドバイスをもらっています。美容液や化粧水などスキンケアはこだわりがあまりないので、ヘアメイクさんや詳しい人に教えてもらったものを使っています。
——スタイル維持のためにはどんなことをしていますか?
時間が空くとジムやマッサージに行きます。女性らしい曲線美にこだわっているので、ピラティスで筋肉を動かしたり、緊張する仕事なので理学療法でこりをほぐしてもらったりもします。
走ることも好きです。ジムでは「3分歩いて2分走る」というセットを長いときは1時間繰り返します。心拍数が変わるので汗をかきやすく、そのおかげでお肌の調子もいいです。
——食生活はどんなことに気をつけていますか?
食生活はあまり気にしていませんが、間食はしないようにしています。とにかくストレスはためたくないのでその分、体を動かしてカロリーを消費して美味しい食事とお酒を楽しんでいます。
Profile
倉科カナ
俳優。1987年生まれ、熊本県出身。2009年9月、NHK連続テレビ小説『ウェルかめ』のヒロインを務める。以降、ドラマ・映画・CM・バラエティなど幅広く活動。映画『3月のライオン』(17年)、映画『あいあい傘』(18年)、ドラマ「刑事7人」シリーズ(15~22年)、ドラマ「正直不動産」シリーズ(22~24年)、ドラマ「隣の男はよく食べる」(23年)、ドラマ「グレイトギフト」(24年)、ドラマ「坂の上の赤い屋根」(24年)など話題の作品に出演が続いている。舞台出演にも力を入れており、第29回読売演劇大賞女優賞を受賞。安達祐実、渡邊圭祐らとトリプル主演の映画『三日月とネコ』が24年5月24日(金)に公開される。
■作品情報
映画『三日月とネコ』
劇場公開:2024年5月24日(金)
出演:安達祐実 倉科カナ 渡邊圭祐
山中崇 石川瑠華
柾木玲弥 日高七海 小島藤子 川上麻衣子(特別出演)
小林聡美
脚本・監督:上村奈帆
原作:「三日月とネコ」ウオズミアミ(集英社マーガレットコミックス刊)
音楽:小山絵里奈
©2024 映画「三日月とネコ」製作委員会 ©ウオズミアミ/集英社
取材・文/安田ナナ
撮影/金井尭子
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