五島列島初の高級リゾート<五島リトリートray by 温故知新>
LIFESTYLE

2024.03.18

五島列島初の高級リゾート<五島リトリートray by 温故知新>

ここ数年、都会からの移住者が増加傾向にあり、NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」(2022年10月~2023年3月放送)の舞台になったことから益々注目を集めている長崎県・五島列島。

5つの主要な島と大小140余りの島々が連なります。そのうち福江島には長崎空港または福岡空港からフライトで30-40分でアクセス可能。船を利用するなら長崎港からジェットフォイルで約1時間30分、博多港からは夜行フェリーも運航しています。空路/航路の選択肢の多さや九州からのアクセスの良さが相まって、五島市は「住みたい田舎ランキングベスト10(2021年版・宝島社「田舎暮らしの本」)参照」に選ばれるほど。

2022年8月には五島・福江島としては初となる、待望のラグジュアリーリゾート「五島リトリート ray by 温故知新」が開業。五島福江空港から乗車したタクシーのドライバーさんが「高級ホテルが出来て島民たちはざわついているんだよ」と、どこか嬉しそうに声高にお話しされていたのが印象的でした。

そんな最新リゾートの宿泊体験記をお届けします。

“祈りの島”、五島に息づくキリシタン文化

九州最西端、五島列島の南西部に位置する五島市は、コバルトブルーの海と、真っ白な砂浜、サイクリングやフィッシング、マリンスポーツなど、年間を通して楽しめる多彩なアクティビティ、キリシタンを物語る世界文化遺産など、自然と歴史が詰まった魅力にあふれています。

2018年には「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がユネスコ世界文化遺産に登録され、”祈りの文化”が継承されています。潜伏キリシタンの信仰の場で、カトリックが復活した際の拠点となった堂崎天主堂をはじめ、20もの美しい教会が点在しています。又、古くから本土とアジア大陸を繋ぐ寄港地として、空海をはじめ遣唐使船が行き交っていたという史実も。

こうしたさまざまな文化が折り重なりながら今もなお島に息づき、貴重な地形や地質が残るダイナミックなジオパーク。「五島リトリート ray by 温故知新」は地域創生を目的に「五島市ジオパーク構想」の一環で、西海国立公園の鐙瀬海岸エリアにおける新たなランドマークとして誕生しました。

五島のシンボル・鬼岳に見守られるように佇むホテル

島のシンボルとしてそびえ立つ鬼岳。その勇壮なネーミングとは裏腹に、標高315mの山全体が芝で覆われて丸みを帯びた、美しくもありどこか可愛らしさもある臼状の休火山です。

遥か昔に噴火した鬼岳火山、溶岩が散りばめられた溶岩海岸までが一体となる地に佇み、ホテルにいながらにして潮の香りや島の風、悠久の空と繋がるよう。ホテルから程近い展望台からパノラマに広がる景色は圧巻。

マップをたよりにホテル周辺をぐるっと1周歩くと1時間くらい。夕暮れ時のお散歩や朝のランニングにちょうど良い距離。

温暖な気候と豊かな自然がゆえ、五島列島にはバラエティに富んだ樹木が自生し、南国らしい植物が繁茂しています。ステンドグラスを集めた椿の花のキーホルダー作りや、デイクルーズでは無人島の近くのキリシタン洞窟でフィッシングなど、20種類以上のアクティビティがあります。

海の向こうに見える3つの島は黒島、黄島、赤島。ベルギー国旗を彷彿させます。黒島には最後の住民1名が2022年まで住んでいたものの、彼女の死後は無人島登録されました。現在住民は黄島に30名ほど、赤島に10名ほどで、定期船が運行しているそう。

教会を模したアイコニックなロビー

ダイナミックに広がる海と空の景観を取り込むように緻密に設計された吹き抜けのロビーに、まず目を奪われます。壁面やテーブルには光を反射する特殊な素材を使い、あえて景色が映り込むような仕掛けがなされています。中央に位置するフランス製の木材を使用したビッグテーブルは凹凸で水の揺らぎを表現しているとか。

長崎という地にちなんで、教会にインスパイアされたというロビーデザイン。静寂な空間の中に、パイプオルガンを思わせる重低音が心地よく響き、どこか神聖な気持ちになります。

デザイナーの故・橋本夕紀夫氏が最期に遺したインテリアの数々は、五島の海と空が織り成すシアターの中で、きらりと存在感を放っていて、その姿に心揺さぶられます。彼の発案で誕生したという「瞑想室」は、時間を忘れて自分自身を内観するための空間。ホテル名の「ray」は光線の意味から。鐙瀬海岸で時折見られる「天使のはしご」をイメージして自ら命名したそう。

ミラー塗装された御影石の裏には橋本氏のサインが刻印。
五島の物語を感じられる小さな瞑想室
空の劇場を映し出している。
ペンダントライトは一つ一つ手作り。凹凸で水の揺らぎを表現。
館内に飾られた「ray」の写真は実際の建設現場で撮影されたもの。
ローカルクラフトを購入できるスーベニアショップも。

海と空に一体化する全室露天風呂付きオーシャンビュー

全26ある客室は、いずれもオーシャンビューで露天風呂付きというのがこのホテルの魅力。

ガラス窓一面に蒼が広がるホテルロビー同様に、客室からも日の出から日の入りまで刻一刻と色合いを変える、海と空の劇場を楽しむことができます。とりわけ海の色は季節や時間帯によって、あるいは角度によっても見え方が変化するというから、どの瞬間も見逃せません。

島の景色に溶け込むようにスタイリングされたインテリアは、スタイリッシュでありながら、どこかウッド調ならではのぬくもりを醸し出し、ソファやベッド、タオルひとつとっても、ふわりと包み込まれるような感触に身も心も安らぎます。

全室に設えた露天風呂では、潮風や波音、虫の声を五感で感じながら湯浴みが楽しめます。

長い廊下を伝って客室に向かう。日没後はいっそう幻想的な景色に
ステンドグラスの向こうに鬼岳を覗ける一枚の窓
建物のちょうど中央に当たる3階のスーペリアルーム「36」がおすすめ
ウェルカムスイーツは五島名物かんころ餅。さつま芋を日干ししたスイーツでホテルオリジナル。通常は長方形だがあえて丸みを
ミラー効果で実際の平米数よりも広く見える。
満月をイメージしたスタンドライト。夜はフレームが消えて光だけが浮いているように見える。
オリジナルバスタオルとシャワーマット
椿の実や葉を活用したスキンケア「ON&DO」やバスアメニティ
アメニティは廃プラを意識した竹製シェーカーボックス
何気ない景色もこうして切り取るとまるでアートのように浮き出て見える。
建設途中に発掘された溶岩石はプレートやブックエンドなどに。
カリフォルニア発の音響システム「SONOS」を採用。
ウッドとステンドグラスを取り入れた客室
創業者が五島出身ということもあって冷蔵庫に「ヤクルト1000」

五島の食材とローカルクラフトを生かした伝統と革新の和

日が暮れてよりいっそう静寂で幻想的な雰囲気に包まれたロビーを眼下に見るメインダイニングでディナーを。宿泊客に限らず外来のゲストも利用可能に。

この地に伝わる料理とクラフトを上手に取り入れた、伝統と革新が融合した和食のフルコース。

アルコールペアリングのコースはワインから日本酒、焼酎まで地酒も充実。ソムリエがセレクトした一杯一杯が、素材の味と料理を引き立ててくれます。白味の魚には白ワイン、赤身の魚には赤ワイン、青魚にはシェリーを少し口に含むと新たな世界が広がるという。東洋と西洋のマリアージュが新鮮で、ここでしか味わえない食体験に感動の連続です。

席によって海view/鬼岳viewを選べる
個室は会議やアクティビティにも使用
もろこし寄せとリーフの和風ジュレ
カボチャのオランダ煮、蜷貝、鯖の小袖寿司など5種の小皿
五島産ルビートマトのコンポート
30年ぶりに壱岐島で酒造り再開。「復活 よこやま純米大吟醸GOLD」
「あかじょ」という名のアカハタ
五島産石鯛や鰹のお造り。醤油は薄口と濃口で選べる
五島では羽カツオを食べることが多く、ピンクに近い薄めの色
ブロッコリーのピューレと五島産の甘鯛
色の異なる材料を重ねて蒸した「博多蒸し」
冷やし上五島かぼすうどん
五島牛に合わせてタンニンしっかりめの赤ワインを
ピューレをのせたマンゴープリン
食後にバーカウンター「ray bar」でもう一杯

日本有数の椿の生息地だからこそ体験したいホテルスパ

祈・海・光をテーマにしたオリジナルのオイル

古より1,000万本以上の椿が自生していると言われる五島。「ray spa」では、椿の葉を使ったお茶から始まり、椿油でのボディトリートメント、実・葉・花などから抽出したエッセンスが配合されたスキンケアでのフェイシャルトリートメントなど、島の名産品を余すことなく活用したスパメニューが体験できます。

日本ではまだ珍しい「ヴィシーレインシャワー」が受けられるのもこのスパの特徴。

フランスのヴィシー(VICHY)地方に古くから伝わる温泉療法の一つで、ベッドの上に横になった状態で8つのシャワーヘッドから噴射される温水を全身で浴びます。脚・腕・背中など全身のツボや血管が水圧により圧迫されることでマッサージ効果、血行促進効果、デトックス効果が期待できるそう。

シングル/ダブルルームがあり、一人旅の利用はもちろん夫婦旅や女子旅など旅先でスパ体験も思い出に。

「ray spa」ではオールハンドのボディトリートメントをはじめ、ヴィシーレインシャワー、五島や長崎のハーブを詰め込んだハーブボール、ハーブウォーターを活用した豊富なメニューが揃います。

五島が持つエネルギーを感じながら、静と動のスパトリートメントで感覚の扉を開きます。ボディ、マインド、ソウル、スピリット、自分自身の本質に気づきをもたらし、心身のバランスを健やかに整えていくひと時。身も心も解きほぐれる最上級のスパタイムに。

今回体験したメニューはレインタッチ。椿油のボディトリートメントで回りが良くなった後ヴィシーシャワーで体を整えます。

シャワーの水圧がほど良い刺激になり、筋肉の凝りを解してストレスを軽減させてくれます。次第に身体がポカポカして発汗してくるのがわかります。

水の音も耳に心地良く、まるで森林の中でしとしと降り注ぐ雨音を聴くよう。マイナスイオンをたっぷり浴びたあとは、潤いをベールで包むように五島の椿油と塩の美容水でお肌を仕上げます。

五島で迎える朝

客室のブラインドの隙間から差し込む光で自然に目覚める朝。ガラス窓一面に広がる“五島ブルー”に向かって大きく伸びをしたくなります。ストレッチやヨガをするのに十分なスペースがあります。

朝食はディナーと同じくメインダイニングにて。湯豆腐を主役にした、滋味深く、バランスの良い朝食。ホテルの北側にそびえる鬼岳を眺めながら食べればいっそうパワーチャージに。最高に気持ちの良い1日がはじまります。

終わりに

美しく雄大な自然に囲まれた、エネルギーあふれる島で過ごした数日間。

忙しない都会の暮らしの中で見過ごしてしまいがちな日々の変化も、五島にいるとなぜか、普段よりも空を見上げたり、生息する動植物に目を配ったり、自然の音に耳を傾ける瞬間が増えた気がします。遮るものが何もなくて広い空、モクモクと浮かぶ白い雲、何層にも碧を重ねる海、肌を撫でるあたたかな風、夜空にきらめく四季折々の星…。日常から身も心も解き放たれ、五感がどんどん研ぎ澄まされて、全てがリセットされていくよう。

静寂の中に一筋の強い光が差し込むように、長崎の小さな島に突如現れたスモールラグジュアリー「五島リトリート ray by 温故知新」ここに泊まることが旅の目的になるデスティネーションホテル。日常に疲れたら、また浄化を求めて足を運んでしまいそうです。

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