【長澤樹×窪塚愛流】美しくも過酷な北海道で知ったこと
14歳の少女・愛と、同い年の幼なじみの少年・宗介。北海道の美しい雪景色を背景にふたりの喪失から再生までを描いた映画『愛のゆくえ』が3月1日(金)に全国順次公開となります。
愛の母・由美に育てられていた愛と宗介ですが、由美が亡くなったことをきっかけに東京と北海道に離れ離れで暮らすことに――。愛を長澤樹さん、宗介を窪塚愛流さんが演じます。
どこか幻想的なものを感じる物語ですが、おふたりはどのように捉えていたのでしょうか。撮影地となった北海道でのお話や、普段のおふたりの生活についても少しだけ覗かせていただきました。
監督も含めてみんな家族のような現場だった
――観る人によって本当にさまざまな感想を抱かれる作品かと思います。おふたりは最初に脚本を読んだ時はどのような印象を持たれましたか?
長澤樹(以下、長澤):不思議な世界観だな、(宮嶋風花)監督の色が全面に出ている作品になるんだろうな、と思いました。あとは情景がパッと頭の中に浮かんだので、自分が愛を演じる、演じないというよりは、監督と早く台本の感想を話し合いたかったです。ひとりの観客として、まず台本を楽しませていただきました。
窪塚愛流(以下、窪塚):現実ですが少し非現実的で、監督の思いや不思議な空間に魅了されました。これがどんなふうに映画に落とし込まれていくのか、その面白さに引き込まれたというか。演じる上で考えることもあったのですが、まず監督の話をお聞きするまでは何回も台本を読み込んで、宗介という人物を自分にいかに落とし込めるかを考えていました。
――初めて会った時のお互いの印象はいかがでしたか?
長澤:最初はすごく緊張してたんです。私、大丈夫かな、って思っていたんですけど、お会いしたら窪塚さんはマイペースですごく面白くて。年齢が2つしか離れていないこともあるんですけど、現場では本当にお兄ちゃんみたいなイメージでやらせていただいて安心感がありました。
窪塚:本当ですか?(笑)
長澤:本当です、本当!(笑)
窪塚:宗介としても自分自身としても、樹ちゃん、そして愛のほうが精神年齢が遥かに僕より上だなと思いました。撮影から2年経ってインタビューを一緒に受けていると樹ちゃんの落ち着きに驚かされています。今日のインタビューでお兄ちゃんみたいだと言ってくださってすごく嬉しいですが、逆に僕のほうが頼らせていただいていて。もっと頑張らなきゃ! 僕が2歳上なんだから!と自分を見直す機会になりました(笑)。
長澤:でも、現場でも入る前も、もちろん話はしたんですけど、一緒にその場にいるだけで安心できたので、監督も含めてみんな家族みたいでした。
窪塚:愛あふれる現場でした(笑)。
美しく、過酷な環境だからこそ撮れた映画
――撮影は北海道で行われていたんですよね。北海道はいかがでしたか?
窪塚:極寒でしたね。
長澤:寒かった……(笑)。寒くないシーンのほうが少ないです、きっと。
――思い出に残っていることや、印象的だったことはありますか?
長澤:全体的なことになるんですけど、北海道パートはやり直しができないんです。雪に一度足を入れると足跡がついちゃうから。
窪塚:確かに、確かに。
長澤:雪がない場所でリハーサルをして、本番ではこのぐらいの深さの雪があります、ということだけ知らされて。
窪塚:ズボッとはまっちゃってたよね。
長澤:一発本番のような緊張感がずっとありました。雪山を登るシーンがあるんですけど、そこはより深くて。
窪塚:本当にここを登るのか、という。道なき道を切り拓いて、木をかきわけ、でしたね、本当に。一歩間違えるとケガする可能性もあったので、演じながらもお互いの安全を確認しながらでした。でもそれを意識すると、宗介が本当の意味で愛のことを見ているんです。過酷な状況だったからこそ、あそこまで極限状態の芝居ができたのかなって思って。
長澤:うん、支えられていました。
窪塚:あと、樹ちゃんも見たかな。北海道だからさ、自然の動物がたくさんいて。学校の校舎の近くにキツネが……。
長澤:言ってたね。
窪塚:その時は本当に北海道の大自然の中で撮影してるな、と思いました。入り時間が早かった分、雪景色の中、太陽がだんだん登っていくグラデーションがとても美しかったんです。常に写真を撮っていました。
長澤:ずっと撮ってたね。寒いだろうなって思いながら車から見てました。私も撮ってたんですけど、寒さには勝てなくて撮ってる愛流くんを撮ってました(笑)。
北海道で好きな食べ物が増えた?
――北海道と言えば、おいしいものがたくさんあるイメージなんですけど……。
長澤:食事に行く機会はなかったんですけど、印象に残っているのは、終盤でジンギスカンのお弁当が出た時はびっくりしました。焼肉のお弁当だったらあるんですけど、こんなの出るんだ!と思って。
窪塚:僕はずっとあんぱんを食べてました。
長澤:そう、ずっと食べてたんです。
窪塚:北海道に来るまでは、あんこが入っている食べ物はほとんど避けていて。
長澤:あんまり得意じゃなかった?
窪塚:お正月のおしるこ汁は好きだったけど……。でも北海道は小豆がおいしいって聞いたので。セイコーマートっていうコンビニで食べたあんぱんがめちゃくちゃ美味しかったんです。さすが北海道だな、と思いました。毎朝食べてましたね、あんぱんと牛乳。
長澤:そんなにおいしいのかな、と思って見てました(笑)。
――じゃあ、撮影中は欠かせないものになっていたんですね。
窪塚:帰ってきてからも自然と手に取るようになりました。コンビニのあんまんを食べたり。好きなものが増えました。
ふたりのリフレッシュ方法は?
――愛は絵を描くことが自己表現のひとつになっているかと思うのですが、おふたりにとってのリフレッシュ法を教えていただきたいです。
窪塚:僕はそれこそ絵を描くことが趣味のひとつではあるので、自分のモヤモヤや楽しかったことや、その時の感情を絵に表現するんです。例えば、自分の中のいろんな感情をキャラクターにしてみたり。独特なんですけど。
長澤:独特、確かに面白い。私はこれというのはあんまりなくて。普段の生活をしているだけでリフレッシュになっているんだと思います。静岡出身で今も静岡から通っているんですけど、帰ると普段の自分に戻ってて。新幹線に乗れば近い距離なんですけど、こんなに違うんだ、思いました。
――その移動の時間がスイッチというか。
長澤:そうですね。地元が好きなんだと思います。
節目の年に描く、未来のこと
――今、18歳と20歳ということで節目の年齢でもあるかと思うんですけど、今後の目標を教えてください。
長澤:このお仕事を始めた時から、オードリー・ヘップバーンさんが大好きで。ずっと世界中に愛されるような女優さんになることが目標なので、これからも変わらないだろうな、と思います。すごく大きな話ですけど、そういう人になりたいです。
窪塚:絶対なれると思います。絶対なる。僕が胸を張って言います。
長澤:本当に? 本当に?(笑)ありがとうございます。
窪塚:僕は演技をもっと深く掘り下げていくことです。脚本に書いてあることだけじゃなくて、書いてないことも突き詰められる。ただ演じているんじゃなくて、その世界でちゃんと生きて、バックボーンまでワンシーンでお客さんに伝えられるような俳優になることが目標です。
Profile
長澤樹
2005年、静岡県出身。『破壊の日』(2020年)で映画に初出演。東急ハーヴェストクラブ、CCCマーケティンググループブランドムービー、日本生命などのCMへの出演多数。そのほか、映画『光を追いかけて』(2021年)、『ハウ』(2022年)、『ちひろさん』(2023年)など話題作への出演が続く注目俳優。
窪塚愛流
2003年、神奈川県出身。映画『泣き虫しょったんの奇跡』(2018年)でスクリーンデビュー後、2021年から本格的に俳優活動を開始。『麻希のいる世界』、『少女は卒業しない』(ともに2022年)など。初めて主演を務めた映画『ハピネス』(篠原哲雄監督)が5月17日に公開される。
■作品情報
映画『愛のゆくえ』
劇場公開日:2024年3月1日(金)
出演:長澤 樹、窪塚愛流、林田麻里、兵頭功海、平田敦子、堀部圭亮、田中麗奈
監督/脚本/編集:宮嶋風花
Ⓒ吉本興業
ヘアメイク/ MAI KUMAGAI(HITOME)<長澤>
中山八恵<窪塚>
スタイリスト/ NATSUKI TAKANO(HITOME)<長澤>
上野健太郎(KEN OFFICE)<窪塚>
取材・文/ふくだりょうこ
撮影/Marco Perboni
<窪塚衣装>
ジャケット¥154,000、シャツ(参考商品)
パンツ¥132,000/STELLA McCARTNEY
(ステラ マッカートニー カスタマーサービス TEL:03-4579-6139)
シューズ¥15,400/Last Resort AB
(DEARGUEST TEL:03-6452-6855)
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