2023.04.14
川からの風が心地いい「Pratthana Slow Bar」でいただく心のこもった一杯
Pratthana Slow Bar(プラッタナー スローバー)
タイの南、プーケット島やピピ島など、リゾート地への入り口として知られる町・クラビ。
この町に、できて間もないカフェ「Pratthana Slow Bar(プラッタナー スローバー)」があります。クラビ川のほとり、昔ながらの建物の一角にその店はあり、注意深く見ていないと通り過ぎそうなさりげない外観。でも一度知ったら気になってしまう、そういう不思議な魅力を持つカフェです。
オーナーのYui(ユイ)さんにお話を聞き、クラビのニュースポット「Pratthana Slow Bar」を紹介します。
洗練されているのに懐かしい
「Pratthana Slow Bar」。その小さくもオシャレな店は看板さえ控えめで、いったいカフェなのかバーなのかもわりにくい。それでも人々が次々と入っていくため、気にならずにはいられない存在。ある時、前を通り過ぎようと思ったら珍しく空いていて、なかで準備をしていたYuiさんと目が合い、その笑顔に心を奪われ初めて扉をたたきました。
ちなみに店名のPratthanaは、Yuiさんの姓。「未来への希望」という意味だと、後から教えてくれました。
店内は洗練されているのに、どこか懐かしい雰囲気が漂う不思議な空間です。
昔ながらの長屋のような建物の端にあり、開け放してある店には川から吹いてくる風が通り抜けます。いたるところに置かれている緑が、その空間をより涼しげに演出してくれます。
・お父さんの思い出がそこかしこに
質素な箱のなかに、温もりを感じる家具や自然素材でできた調度品が配された空間。彼女の実家から引き継いだものがたくさんあるのだそう。ゆったり寛げる椅子は「カバーだけ変えて使っているの。こっちはそのまま! 40年くらい使っているもの」と、カウンターのチェアを指して笑います。
また7年ほど前に亡くなられたという電気技師だったYuiさんのお父さんが描いたイラストを用いてロゴにしたり、彼からもらったというラジオを大事そうにカウンターに飾っていたり…。この空間には彼女と彼女の亡きお父さんとの思い出が詰まっていることを知り、心が温かくなりました。
手描きのメニューにワクワク!
「Pratthana Slow Bar」のメニュー、そのほとんどが手書きというからびっくり! イラストや手書きの文字がいちいち可愛く、まるで絵本のように眺めてしまいます。
メニューには、クラビの町のほかのカフェではなかなか見つけられないものがたくさん。
まずハンドドリップがあることに感動。クラビではエスプレッソドリンクは多く見かけるものの、ハンドドリップを提供しているカフェは多くありません。しかも浅煎りのみで4種類そろえているところに、こだわりがうかがえ期待もアップ!
ほかにもバラエティ豊かなメニューに、心が躍ります。
どうやら今タイでは、コーヒーにパッションフルーツやマンゴー、ココナッツなど、フルーツジュースを混ぜたドリンクが人気と教えてもらいました。南国らしさを感じますね。
・オーツミルクの選択肢も
こちらでは追加20バーツほどでオーツミルクの選択肢があるのも嬉しいポイントです。
同店で置いているのは「OATLY(オートリー)」。なんと1990年代の設立当初より、オーツミルク一筋のブランド! オーガニックのシンプルな原料のみで創られた品質的にも信頼できるオーツミルクです。
ハンドドリップへのこだわり
チェンマイで活躍する「タイのドリップの王様」と称されるバリスタから学んだという技術で、丁寧な一杯を淹れてくれます。それまで談笑していても、コーヒーを淹れる時はその場の空気が一変するような集中力に、こちらも息を飲むほど…!
・手動のエスプレッソマシン!?
店に入るたびに店主が手で回していたのは、なんとエスプレッソマシン。見たことがないタイプで、調べてみると「ARAM(アラム)エスプレッソメーカー」というもの。電源もフィルターも不要で、お湯を注いで手でクルクル回すことで均一に力をかけエスプレッソを抽出できます。
思わず、作り方をじっと眺めてしまいました。
右)グルグル回して抽出!
実際に飲んだメニューを紹介
何度か通ってさまざまなドリンクを試してみました。地元の常連さんのおすすめと同じものもそのままオーダーしたので、そのメニューや感想を紹介します。
「ハンドドリップ /Gallery Drip Coffee」
Yuiiさんが厳選した4種類のなかから、今回は「Gallery Drip Coffee」のタイ北部・Mae Jantai産浅煎りコーヒーを。パンチのある酸味を感じる、フルーティーな一杯。夏の暑い時に飲むと特に、リフレッシュできそうです。
「ほうじ茶ラテ」
甘さ控えめ、それでいてほうじ茶の風味もしっかり。日本のものと比べても美味しく飲めるドリンクです。
「Andaman」
甘そうに見えますがエスプレッソ入りのため、甘いドリンクが苦手な私も美味しくいただけました。
底に見えるつぶつぶはタピオカではなく、サゴヤシの木の幹から取ったデンプンで作った「サゴ」。口中でプチプチする食感はまさにタピオカで、お腹も軽く膨れて満足度高め。ココナッツミルクが好きならハマってしまうデザート系ドリンクです。
「自家製ハニーレモンのドリップアイスコーヒー」
タイ人の常連さんが頼んでいたものをそのままオーダー。浅煎りを2種ブレンドしたハンドドリップに、自家製のハニーレモンをしっかりとまぜて提供。「リフレッシュになるよ」との言葉通り、目が醒めるようなな爽やかさとハニーの懐かしく優しい甘さが美味しい一杯!
シャイな店主の経歴とは
いつもにこにこ、そしてちょっぴりシャイなオーナーのYuiさん。
また名前もどことなく日本語っぽさ(ただし発音はユイーと語尾を上げる)がありますが、個人的にも日本の文化からたくさんのインスピレーションを受けたと話してくれました。特に好きなのが「シンプルさのなかに宿る美しさ」とのこと。わびさび、と共通する感覚ですね。なんだか嬉しくなります。
そしてなんと彼女、カフェをオープンする前には10年以上も、ベーカーとしてお菓子作りをしていたそうです。今は店をオープンしたてで、いつも用意することは難しいそう。ただ、美しいビジュアルの本格的なスイーツが並ぶ日もあり、運がよければ試せるかも!
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カフェ好きの私は、クラビに着いてから評判のカフェや気になる店をかなり回りましたが、「Pratthana Slow Bar」はそのなかで一番印象的な一軒。この場所と、店主の笑顔に出会えて幸運でした。
クラビでハンドドリップを提供するパイオニアでもある同店。この地を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※掲載内容は取材時の情報です
旅するように暮らす自然派ライター/オーガニック料理ソムリエ。
4年に渡る世界一周後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。コーヒー好きが高じてオーストラリアではバリスタ業の経験も。今は繊細でフルーティーな浅煎りコーヒーに夢中です。ライターとしては旅行誌の広告制作を経て、雑誌広告や編集ページを主に執筆。現在は自然に沿った生き方、ほどほど丁寧な暮らしを自ら実践しながら発信中。地球にも体にも優しい生き方のヒントをお届けしていきます。
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