2023.02.24
京都・西陣のさとう植物店で、“魔除け”を作るワークショップに潜入!
さとう植物店
高級絹織物「西陣織」の発祥の地である西陣にアトリエを構え、沖縄発の伝統工芸「がんしな」をメインに、植物のある暮らしを提案している「さとう植物店」。
植物の魅力を暮らしに取り入れ、その魅力を発信している店主・佐藤恵美(めぐみ)さんにお話を伺いつつ、この時期にぴったりのワークショップに参加してきました。
「さとう植物店」とは
西陣の路地の一角に拠点を構えたさとう植物店は、店主・佐藤恵美さんのアトリエです。大きい目印などはなく、店の前に遠慮がちにある小さな紙に印刷されたさとう植物店の文字を確認して店内へ。
一歩足を踏み入れると、そこには外観からは想像がつかないほど、明るい光が差し込む温かい空間が広がっています。インテリアや調度品は天然素材のものばかり。沖縄に伝わるヤシの葉を編んだがんしな、自然農で育った稲穂のお飾り、最近店主が一目惚れした沖縄で修行された作家さんの作品が配されています。
フローリストから「植物屋さん」へ
植物のパワーをそのままに、さまざまな形に変えて届ける恵美さん。単身でロンドンやパリに渡って、植物のアレンジを学び、生花店での花修行を経て呼ばれるようにやってきた京都・西陣で京町屋をアトリエとしつつ、手づくり市を中心に活動しています。
フローリストとして活躍した経歴もありながら「植物を伝える」という、現在のスタイルに落ち着いたのは、華やかなお花屋さんの背景に潜む課題を見てきたから。「まだきれいに咲いているのに廃棄される大量のフラワーロスはもちろん、人工的に着色した切り花や、農薬により微生物も生きられないような悪環境で育った切り花を扱うことにも違和感がありました」。
恵美さんは改めて、より自然に近い形で生命力溢れる植物を扱いたいと考えたのです。
活動の根底にあるもの
さとう植物店の活動、その根底にある想いをお聞きすると「循環がキーワード」だと恵美さん。「現在の地球環境は、人間が大幅に手を加えてきた結果として存在しています。今こそ自然と向き合い共存を考えることが大切」と話します。
また「私にとって今の活動は、植物への敬意」という言葉もとても印象的でした。
彼女は植物に触れ、なにかを作る際に「対話をする」のだと言います。
例えばお飾りに使う稲穂などは、無農薬で丁寧に育てられたもの。植物自体が持っているエネルギーがとても高いそう。「植物は言葉を使いませんが、心で対話してくれるんですよ。植物と関わることで私の方が逆に力をもらっているから、敬意を持って接したいなと思って」とにこにこ教えてくれました。
季節のワークショップは月2回
そんな恵美さんの開催するワークショップは、不定期。「月に2回は開催したいと思っています」と笑います。そのタイミングも「希望は金曜日が1番多いのですが、私は直感を優先します」と、自身の直感や軸からぶれない様子も素敵です。
2月は大安の1日と立春の4日。このように季節の節目やエネルギーが大きく変わるタイミングで行うことが多いそうです。
「魔除けの唐辛子飾り」とは
今回は、2月4日の立春に開催された「魔除けの唐辛子飾りのワークショップ」に参加してきました。
主に東北の文化である唐辛子を使った魔除けのお飾りは、恵美さんがもともとは東北の出身であること、そして常連さんからの熱烈なリクエストがあったことから開催が決定。
東北の地で、節分や立春の時期から1年間飾るこのお飾りは、魔除けとしての役割があります。うず巻きの部分は鬼に見立てたもので、唐辛子の赤色には魔除けや厄除け、運気を上げる意味合いも。さらに古代米の紫色には、邪気払いや浄化の効果が期待できます。
・一杯のクロモジ茶からスタート
いつもは作業後に飲むお茶ですが、取材日は旧暦の正月でもある立春。新しい年のはじまりだからと淹れてくれた一杯を飲んでからのスタートになりました。
自然豊かな奥大山に力強く群生する、野生のクロモジを新月時に摘み焙煎したクロモジ茶は、希少なものだとのこと。ありがたくいただきます。
参加者さんの簡単な自己紹介が行われ、アトリエ内は温かい雰囲気に…。
植物に触れ、手作りを楽しむ
完成形を見ると難しそうに見えますが、恵美さんがお手本を見せてくれながら進行するので大丈夫! この日の参加者は全員で6名。「これくらいがちょうどいい」という意味がよくわかりました。ワークショップ中も、ひとりずつ寄り添ってくださるので、ひとりだけ作れない! なんてことはなく安心感があります。
・藁を編んで鬼を作る
手渡された藁をまずしっかりと揉んで、柔らかくしならせます。これは鬼に見立てたグルグルの部分に使います。つい難しい顔で集中してしまうと、「難しく考えず、楽しい気持ちでね」と恵美さん。
そのあとは、2人一組になり縄を編みます。ひとりで行うこともあるという工程ですが、今日はペアになり息を合わせてぐるぐると編んでいきます。
輪っか部分は「何重にしてもいいし、重ねなくてもいい。オリジナルでいいですよ」とのこと。見本は内側に向けてどんどん小さくなる3重でしたが、2重で横に重ねる人もいたり、恵美さんは「大きな一重でもいいよ!」とアドバイスしてくれました。
私は結局、見本に倣って3重で! ぐるりと回してみて、十分な長さがあるのを確認して藁編みは終了です。
・唐辛子を編む稲穂を用意
次は、唐辛子をつけるための稲穂の縄を作ります。ただ今回は恵美さんが事前に用意してくれているものを使用。
「2本を編むのは先ほどの藁編みと違い、より集中力が必要なんですよ」とのこと。お飾り作りの経験が豊富な方のみ、足を使って器用に稲穂を編んでおられました。
・組み合わせていく作業
鬼に見立てた藁のぐるぐる部分と、編む稲穂の縄、唐辛子が揃いました。
これから用意された稲穂に唐辛子を並べて組み込んでいく作業に進みます。
これが、思いのほか難しくて! コツをつかんでしまえばスムーズにはなりますが、それまでは先生の手元を見よう見まねで挟んでいきます。
もの作りへのアドバイス
ワークショップを通して恵美さんは「うまく作る必要はないし、絶対やこうあるべきは、ない」と何度もおっしゃいます。その人らしさ、オリジナリティを大切にすることを教えてくれました。
そして印象に残ったのが「もの作りには想いが宿る」という言葉です。
だからこそ作りながら難しいことを考えたり、編み目の数を数えることに必死になるのではなく、心が温かくなることを思いめぐらしているほうがいいとのことでした。
食後のスイーツでほっこり
イベントの恒例、スイーツタイムでは特別にオーダーされた「保存食LABO」のスイーツが登場! 自家製のレモンを使ったという一品は、フレッシュな酸味はありつつまろやかで上品な甘みが特徴でした。
お飾りを作るという本日の目的も果たし、三年番茶とともにいただくのはほっとする瞬間です。
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「魔除けの唐辛子飾りのワークショップ」のレポートをお届けしました。
参加者も常連さんがほとんどで、終始和やかに進みました。
また藁や稲穂、唐辛子などの植物に触れてもの作りをすることはもちろん、さとう植物店の店主、恵美さんの言葉一つひとつがとても心に響く豊かな時間でした。
「自然と共存するには直感と共に生きていくこと」というメッセージに、いかに私たちは日々頭で考えて判断、行動しているのだろうと思わされます。
京都を訪れる際、タイミングが合えばぜひワークショップに参加してみませんか。スケジュールはInstagramを確認してください。
旅するように暮らす自然派ライター/オーガニック料理ソムリエ。
4年に渡る世界一周後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。コーヒー好きが高じてオーストラリアではバリスタ業の経験も。今は繊細でフルーティーな浅煎りコーヒーに夢中です。ライターとしては旅行誌の広告制作を経て、雑誌広告や編集ページを主に執筆。現在は自然に沿った生き方、ほどほど丁寧な暮らしを自ら実践しながら発信中。地球にも体にも優しい生き方のヒントをお届けしていきます。
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