由布院の原風景・棚田の情景に癒やされる宿「界 由布院」が誕生!
2022年8月3日、大分県・由布院に、星野リゾートの温泉旅館「界 由布院」が新しくオープンしました。「界」ブランドとしては20施設目、九州においては「界 阿蘇」、「界 別府」「界 霧島」に続いて4施設目となり、ここ「界 由布院」のコンセプトは、“棚田暦で憩う宿”。棚田の中に滞在する、そんな贅沢な体験ができる宿なのです。
50年ほど前までは、棚田の景色が一面に広がっていた由布院エリア。「界 由布院」も、そんな懐かしい情景を思い起こさせる棚田のランドスケープが広がります。
四季折々の美しさを映し出す棚田や由布岳を望みながらの湯浴みなど、身も心もゆるむ旅をご紹介します。
心をうるおす上質な温泉旅館へ
JR由布院駅から車で約10分、静かな山間部に佇む「界 由布院」。建築家・隈研吾氏が設計とデザインを担当したおこもり感たっぷりの温泉旅館です。
ワンちゃんと宿泊できるお部屋もあるので、ペット連れの方も一緒に旅行できるのは嬉しいですね。
竹があしらわれたエントラスを抜けて、“農家の奥座敷”をイメージしたロビーへ。
一歩足を踏み入れた時から静謐な時間に包まれます。
こちらはコーヒーやお茶が自由に楽しめる「ライブラリー」。外に出ると、宿の中心に広がる棚田を一望できる「棚田テラス」があります。テラスの特等席で、雄大な山や大きな空、新緑に包まれた棚田を眺めるのは心が洗われるひとときです。
季節によって表情を変える棚田は、どの季節に訪れても楽しめるのがいいところ。
田植え前の春は、水が張られた棚田が水鏡のように自然の美を映し出し、田植え後の夏は成長した稲が風に揺られ、秋は豊かに実った金色の稲穂に圧倒される。
稲刈り後の藁こづみが置かれた棚田の風景も味わい深く、雪景色で白の世界の染まった冬景色もまた、格別の風情です。
由布岳を一望できる露天風呂で、ゆるりと湯浴みを
大浴場では、四季折々の美しい姿を見せてくれる雄大な由布岳を眺めながら、開放的な気分で温泉に入れます。露天風呂は寝湯もあるので、青空の下でのんびりと、まろやかな湯に身をゆだねられます。
大浴場は、石をモチーフにしたモダンさと温かみのある空間です。鏡も小石のようなころんとしたフォルムでかわいい!
内湯は、1日の滞在でも効率よく湯治体験ができるように、写真手前の「あつ湯」と奥の「ぬる湯」の2種類を用意。色が違って見えるのは成分濃度の違いなんだそう。
まずは37〜38℃のぬる湯で体をならし、40〜41℃のあつ湯へ。体を芯から温めたら、その後再びぬる湯でリラックスを。何度か繰り返すと体がぽかぽか、すっきり爽快な気分に!
脱衣所にはスキンケアセットが一通り用意されているし、ドライヤーはダイソンというのも嬉しいポイントです。
大浴場の隣には、棚田を見渡せる湯上がり処があります。
水分補給にうれしい「かぼす蜜」や「はだか麦茶ペパーミントブレンド」といった2種類のドリンクやアイスキャンディが用意されているので、汗が引くまでのんびり過ごすのもおすすめ。
温泉に入る前に参加したいのが「温泉いろは」(毎日16:15から開催。無料)。「酵素シロップ」をいただきながら、紙芝居形式でさまざまな角度から温泉の楽しみ方を教わります。
由布院の温泉の歴史や泉質、1泊2日で湯治の効果が得られる入浴法など、界オリジナルの「現代うるはし湯治」の要点もわかりやすくレクチャーしてくれます。個人的には、由布岳、鶴見岳、久住山の三角関係のお話が興味深かったです。これはぜひ現地でのお楽しみに。温泉がより親しみやすく感じられる、充実の15分間でした。
棚田に心癒されるご当地部屋「蛍かごの間」
全45室の客室はすべてご当地部屋「蛍かごの間」で、棚田に面した「蛍かごの間(棚田離れ)」と、くぬぎ林に面した「蛍かごの間(くぬぎ離れ)」の2タイプがあります。
今回宿泊したのは、棚田の中に佇む独立した2棟のみの特別室「蛍かごの間(棚田離れ)」。平屋のような雰囲気で、よりプライベート感のある贅沢なお部屋です。
客室に入ると、畳のいい香りに包まれます。
この畳は、大分県国東半島でしか栽培されていない七島藺(しちとうい)を使用。この七島藺の栽培から製造まで手がけている農家さんも今では7軒ほどと、とても希少なものなのだそう。
ちなみに、この美しく丈夫な七島藺の畳は、1964年に開催された東京オリンピックの柔道場でも使われたそうですよ。
インテリアは、大分特産の竹を使用したベッドボードやソファ、ランプシェードなど、この地に息づく伝統工芸の技を活かしたものばかり。華美な演出がないお部屋だからこそ、豊かな自然との一体感を感じることができます。
虫の音や鳥のさえずりがすぐそばで聞こえてくる…、忙しない日々では味わえなかった、ゆったりとした時間もまた贅沢なひとときです。
客室の「蛍かご照明」は、畳と同じく国東半島の七島藺を使用。蛍かごとは昔、麦わらなどの素材でできたかごに蛍を入れて愛で、照明がわりに使用していたもの。今ではインテリアや照明としてその風情が楽しまれています。
独特の風合いと優しい香りを身近に感じることができる「蛍かご照明」は、日が落ちてから点灯させてみて。まるでかごの中に蛍が生きているように淡く暖かな光が点滅し、幻想的なムードを醸し出します。
客室には露天風呂も。湯船に浸かりながら棚田を眺めることができ、のんびりと寛ぐことができます。
地元の恵みで紡ぐ、特別会席をいただく
夕食は、ご当地の食文化をふんだんに盛り込んだ特別会席をいただきます。
まずは、全国の界ブランドでおなじみの各地の食材を用いて作る「ご当地先付け」からスタートします。
こちら「界 由布院」では、小鹿田焼の器で供される「猪と椎茸の最中パテ」が登場。臭みはゼロ、椎茸の食感と旨みがアクセントになって滋味深い味わいです。付け合わせは、大分に自生する「ヤソゼリと猪の生ハムのサラダ」。クレソンのようなほろ苦いヤソゼリと、名物のかぼすを使ったかぼすドレッシングが、さっぱりとした風味です。
煮物椀は「鮑真薯」。あおさのりの豊かな風味や柚子の爽やかな香りとともにいただきます。
山と海の美味を集めた「宝楽盛り」は目にも華やか。趣向をこらした八寸、旬の魚のお造り、河豚皮と鶏皮のぽん酢ジュレがテーブルを彩ります。
続いては、糸すじ青のりと湯葉をまとった車海老の揚げ物です。バリっとした衣の食感が小気味良い一品で、何本でもいただきたいくらいおいしかったです。
メインの台の物は、山の肉を満喫できる「山のももんじ鍋」。
スッポンの出汁を張った鍋に、牛肉、猪肉、鹿肉、穴熊肉をそれぞれさっとくぐらせ、それぞれに合うタレで堪能します。スッポン出汁だけでも豪華なのに、なんという贅沢さ!
引き出し式の木箱に美しくおさめられた4種の肉たち。猪は木の実ダレ、鹿は太白ごま油とすもものフルーツ煮を合わせたタレ、穴熊はカボスおろし、牛はすき焼き風の黄身醤油の4種のタレが用意されています。
とりわけ珍しいのが、市場にも出回らないという穴熊。“熊”と名前がついていますが、熊ではなくイタチの仲間で、フルーツを好んで食すため、脂身がフルーティな甘さなのです。ジビエは苦手という方もぜひトライしていただきたいほど、驚きの美味しさ!
由布院をイメージした緑色の土鍋で炊かれた「姫島ひじきと紫蘇の実の土鍋ごはん」。
大分県の北部、瀬戸内海に浮かぶ離島の姫島で獲れる姫島ひじきは、なんと2日間で1年分を収穫してしまうそう。
甘味は「やっこめのミルク煮 麦茶のゼリー」。“やっこめ”とは焼き米のことで、玄米を香ばしく焼いたもののこと。アイスクリームに、さっぱりとした麦茶のゼリーをかけていただくと、ちょうどいい甘さに。
清々しい空気の中で行う現代湯治体操で、すがすがしい朝をスタート
翌朝は、屋外にある朝霧テラスで毎朝開催されている「現代湯治体操」に参加しました。
ゆっくりと呼吸を繰り返しながらストレッチを行い、身体をほぐしたところで、農作業の動きを模したユニークなエクササイズを。終わったあとは、細胞のすみずみまで血液が流れ込んでいるようなイメージで、ぼんやりした朝の頭もすっきり、日々の疲れをリセットできました。
理想的な和の朝食メニューで1日をごきげんに
朝から体操をしてお腹が減ってきたところで、お待ちかねの朝ごはんへ!
朝食は、和食と洋食から選ぶことができます。
和食は焼き魚や卵、煮物や大分の郷土料理・だんご汁など、ほっとするメニュー揃いです。
かご盛りされた野菜と豚肉の煮物は、七輪で香ばしく焼く炭火焼きで。ゆっくりと時間をかけていただく朝食は、豊かな気持ちに浸れました。
由布院の手仕事、わら綯いを体験
全国の「界」ブランドでは、その土地の文化を体験するおもてなし「ご当地楽」が開催されています。
ここ「界 由布院」のご当地楽は、農閑期に行われる手仕事「わら綯(な)い体験」。“綯う”とは藁をより合わせることを意味し、縄は手を合わせてできることから“祈りのかたち”を表します。
手を合わせて藁を綯うのは、初めてだとなかなか難しいので、ちょっとゆるめな仕上がりなのもご愛嬌。最後に好みの水引をつければ完成です。旅の思い出として、お土産に持って帰ることができますよ。
窓の外に広がるのどかな棚田の風景は、忙しない日々を過ごす現代人に、ときにはゆったりと過ごす時間の大切さを教えてくれているかのよう。同じく大分県にある「界 別府」とは車で約40分ほどの距離なので、温泉のはしごもおすすめです。
大分県由布市湯布院町川上398
美容ライター。早稲田大学卒業後、アパレル、出版社勤務を経てフリーに。女性誌やWEBで、美容をはじめ、健康、美食に関する記事、著名人へのインタビュー取材などを担当。好きなことは、スキンケアとファッションと旅行。猫が好き。
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