星野リゾートの温泉旅館「界 別府」で別府の温泉文化を満喫!
日本一の温泉数と湧出量を誇る別府温泉に開業した、星野リゾートの温泉旅館「界 別府」。
“ドラマティック温泉街” というコンセプトのもと、時間とともに、窓から見える景色や館内の情景が移り変わる様子は、訪れる人の心まで解きほぐしてくれます。
素晴らしい景色とおもてなしに、館内から一歩も出たくなくなること必至の宿泊レポートをお届けします。
JR別府駅から徒歩約10分、大分空港からのバスの停留所からは徒歩約2分という、好アクセスな場所にある「界 別府」。
洞窟をイメージしたエントランスから、黒塗りのエレベーターでレセプションがある2階へ向かいます。
心が躍る、別府の温泉街を再現した情緒あふれる館内
エレベーターの扉が開くと暗がりから一転、大きな窓から光が差し込む開放的な空間の「湯の広場」へ。別府湾を一望できる絶好のロケーションで、昼と夜でガラリと異なる雰囲気に姿を変えるのも見どころです。
建築家・隈研吾氏が設計とデザインを手がけた館内は、随所に温泉街に見立てた意匠が施されています。
和紙のちょうちんが照らす石畳の路地や、温泉街にある土産店、夜店をイメージした空間などが広がり、館内にいながらまさに温泉街をそぞろ歩きしている気分を楽しむことができるのです。
桶をモチーフにした手湯も、別府の暮らしに溶け込んだ温泉文化をアレンジしたもの。
別府の町中には、手軽に楽しめる手湯がたくさんがあり、お湯を囲んでおしゃべりしたり休憩したり、人々の交流の場になっているそう。そんな別府の文化を、館内でも体験できる工夫がされています。
湯の広場の向かいには、別府関連の書籍がそろうトラベルライブラリーがあります。やわらかな照明の下で、コーヒーや紅茶、各種ハーブティなどをいただきながら、ゆっくりと寛げるスポットです。
スパークリングワインのほか、かぼす緑茶やゆず和紅茶などのウェルカムドリンクもどうぞ。
ご当地部屋・柿渋の間から、息を呑むほどの美しい絶景を堪能
70室のすべての客室は、別府湾の大パノラマが広がるベイビューというのも贅沢。
今回宿泊したのは、最上階の11階にある、露天風呂付きの特別室です。
部屋に一歩足を踏み入れると目に飛び込んでくるのが、眼前に別府湾と大きな空が広がる絶景! 海を絵画のように楽しめる“ピクチャーウインドウ”は、部屋との境界線を感じさせない造りで、まるで天空に浮かんでいるような一体感が得られます。
この日はあいにくの曇り空でしたが、晴れた日には遠くに四国も望むことができるそう。
写真では伝えきれないこの感動は、ぜひ肉眼で確かめていただきたい!
壁紙は、別府の名所「血の池地獄」の赤から着想を得た古代色の“柿渋色”で統一されています。別府湾のブルーとのコントラストが映えて、なんともドラマティックなムード。
ベッドは、界ブランドのオリジナルマットレスの「ふわもくスリープ」を採用。まるで雲の上で寝ているかのような感触で、朝までぐっすり極上の眠りへと誘ってくれます。
モダンな豊後絞りをあしらったヘッドボードやフットスロー、豊後絞りの“雲絞り”という技法を使った温かみのあるランプなど、伝統工芸を感じる設えにも注目を。
特別室では檜の露天風呂に浸かりながら、別府湾を独り占めできます。登る朝日を見ながら、満点に輝く星空を眺めながら、そんな贅沢も体験できます。
別府の温泉を深掘りする「温泉いろは」で、“うるはし現代湯治”を体験!
客室でひと息ついたら、温泉の配管とネオンを張り巡らせた実験室のような「ラボ」へ。こちらでは、「温泉いろは」と「温泉ミスト作り」(15:30~、16:15~、17:00~。当日予約)が無料で開催されています。
白衣を着たスタッフが、別府市内に点在する8つの温泉“別府八湯”の特徴や、バラエティ豊かな泉質、温泉の効果的な入浴法、免疫力を高める呼吸法など、温泉にまつわるいろはをレクチャーしてくれます。
その後は、ビーカーやスポイトを使いながら、温泉ミスト作りを体験することができます。「界 別府」の自家源泉とアロマオイル入りのミストは、ふんわりといい香りで、湯上がりの保湿にもぴったりです。
この「温泉いろは」は、温泉旅館「界」が提案している“うるはし現代湯治”の一環です。
“うるはし現代湯治”とは、本来、長期滞在して温泉療法を行う“湯治”を、現代のライフスタイルに合わせて1泊2日で体験できるようアレンジしたもの。客室内に用意されたガイドブックには、入浴法や呼吸法などがまとめられていたり、早朝には血流改善を促す「現代湯治体操」を指南したりと、まさに現代的な湯治体験ができます。
大浴場で心ゆくまで湯浴みを楽しんで
別府といえば、やはり温泉がお楽しみという人も多いはず。
「界 別府」の大浴場では、四季折々の花や実、紅葉が魅力的な庭園を眺めながら浸かる露天風呂と、内風呂を備えています。
女性用露天風呂は、プライバシーを守りながらゆっくり湯浴みを堪能できる造りです。外の光や風を楽しみながら、じっくり温泉とも向き合えます。
内風呂には、源泉かけ流しの約42℃の「あつ湯」と、約38℃の「ぬる湯」の2つの湯船を用意。
炭酸水素塩泉のお湯はとてもやわらかく、肌をすべすべに整えてくれて、ぽかぽか感が持続。寝る前には、温泉成分を身体に浸透させ、副交感神経を優位にしてリラックスできる「ぬる湯」を、交感神経を刺激してくれる「あつ湯」は、シャキッと目覚めたい朝にもおすすめです。
また、内湯の壁面には、大分県に伝わる臼杵焼きの小さなオブジェが400個はめられています。オブジェのモチーフは、大分県の鶴見岳と由布岳に咲くといわれる8種類の花たち。この中に、ひっそりとお地蔵様のオブジェが隠れているので、ぜひ探してみてくださいね。
湯上がり後は、屋外の庭園「湯上がり処」でのんびりしながら一息つくのがおすすめ。
水分補給にちょうどいい、爽やかな甘さが心地いい「ゆず蜜」と、さっぱりした風味の「ゆずほうじ茶」、アイスキャンディーが無料で提供されています。
大分の海の幸をふんだんに盛り込んだ特別会席に舌鼓
お待ちかねの夕食は、プライベート空間が保てる半個室の食事処でいただきます。
大分県の名産品・かぼすや近海で獲れた旬の魚など、地元の素材を活かした会席料理を堪能できます。食材だけでなく、その盛り付けや食器にもぜひ注目を!
はじめに提供されるのは、全国の界ブランドが、その土地ならではの素材や調理法にこだわった渾身作「ご当地先付け」です。
「界 別府」では、別府の伝統工芸である竹細工と小鹿田(おんた)焼きの器で演出した「かぼす麺と雲丹のジュレ仕立て」が登場。かぼすの香りをまとったジュレが、絶妙な太さのオリジナルの麺に絡み、爽やかな喉越しを楽しめます。
華やかな「宝楽盛り」は、繊細な竹細工が目にも楽しい盛り合わせです。
この日は、八寸に、鮭の幽庵焼き、鶏と干し葡萄の松風、干し無花果と青菜の胡麻白和え、自然薯の麦とろ仕立てどんぶり、帆立貝の紅葉和え、落花生豆腐、太刀魚棒寿司。
九州の甘口醤油でいただくお造りは、さざえ、関サバ、真鯛、中トロ、車海老。どれも鮮度抜群で文句なし!
酢の物には、河豚皮と鶏皮のポン酢ジュレ仕立て。コリコリとした食感と上品な味わいが印象的な一品です。
特別会席のメインである「豊後鍋」には、別府八湯にちなんだ8種類の食材が入ります。食材は季節や仕入れによって変わります。
この日は、豊後サバ、ヒオウギ貝、伊勢海老、クエ、フグ、肉厚で大きいステーキ椎茸、耶蘇ぜり(大分の山間寒冷地で育つクレソンの一種)、乾しいたけを練り込んだ自家製麺というラインナップ。高級食材のオンパレードに気持ちが高まります!
まず、鶏肉の出汁の中にスライスしたかぼすをさっとくぐらせて、風味をプラス。上品なかぼすが香る出汁は、飲み干したくなるほど! 次々と具材を投入して、かぼすおろしやかぼす胡椒でいただきます。
豪華な海鮮はもちろんのこと、驚いたのがステーキ椎茸。ただの椎茸と侮るなかれ、存分に出汁を吸い込みながらも弾力を失わない、ジューシーさは絶品!
鍋のあとのお楽しみといえば、雑炊。具材の旨みがたっぷり溶け込んだ、濃厚な味わいの出汁がたまりません!
「界 別府」特製のデザートは、ユニークな名前の「やせうまあんみつ」。
“やせうま”とは、ミルクアイスの上に乗っている茶色のもので、だんご麺(小麦粉で作った平たい麺)にきなこをまぶして揚げた郷土料理のこと。素朴な味わいがどこか懐かしさを誘う味わいです。黒蜜をかけていただきます。
情緒たっぷりな別府の夜をお祭り気分で満喫できる
夕食を終えてすっかり夜の帳がおりた頃、館内は昼間の雰囲気とうって変わって、賑やかなムードに。温泉街をイメージした「夜のドラマティック温泉街」が、開催されています。
あちこちにちょうちんが灯り、別府音頭がBGMとして流れ、屋台まで出現。大人も子どもも夢中になってしまう型抜きや輪投げもあって、まるで縁日のよう!
湯の広場では、自分でラーメンが作れる「地獄ラーメン」や、別府の地獄めぐりをイメージしたカラフルなカクテルが楽しめる「地獄巡りバー」が登場。どれも無料で楽しめます。
21時を過ぎた頃に始まるのがメインイベント「湯治ジャグバンド」。法被をまとったスタッフが、桶とお湯を使って音色を奏でます。ゲストも手拍子で参加して、会場が一体となって盛り上がる様子は、お祭りそのもの!
朝日とともに清々しい朝を迎え、足湯や現代湯治体操にトライ!
温泉に癒され、ご当地の美味に満たされ、布団に潜り込んだらたちまち心地よい眠りに。
翌朝はぜひ、日の出とともに目覚めたいところ。別府湾から昇る朝日が、神々しい光で空と海をオレンジに染める幻想的な風景は、早起きしたご褒美です。
「湯の広場」にある足湯で眺める日の出も格別です。刻々と表情を変える空の色は、なんともドラマティック!
朝7時からは、深呼吸しながら行う「現代湯治体操」(前日までに要予約) も開催。ストレッチと軽い有酸素運動を組み合わせた約20分間の体操で、心と体を目覚めさせましょう。
朝食は、別府の湯けむりをイメージした「せいろ蒸し」がメイン。地元ではお祝いの席でいただくという、糸すじ青のりの麦味噌の味噌汁や、大分の郷土料理である辛子椎茸など、郷土色豊かなメニューです。
湯気の上がるせいろの中には、豚肉や季節の彩り豊かな野菜が。旨味が凝縮され、素材そのものの味が引き立ちます。
すりこぎで白胡麻をすって作った「ゴマだれ」や、九州で親しまれている甘い醤油をベースにした「りゅうきゅうだれ」でいただくと、いくらでも食べられそう!
ご当地ならではの心に残る文化体験も用意
お部屋や温泉でひと息ついたら、朝9時半から開催される「別府温泉絞り体験」(4日前までに要予約。1,800円)へ参加。温泉を利用して、ご当地文化である豊後絞りに挑戦します。
赤色か青色のハンカチを選び、割り箸や木のボールを好きなところに輪ゴムでくくりつけ、絞り模様を作ります。
温泉に浸けて色を抜く作業は、スタッフの方におまかせです。初心者が狙った通りに模様が出ることはありませんが、それもまた味わい深いもの。どんな模様が出来上がってくるのか、楽しみ!
温泉は自然のものなので、日によって色が変わるのも醍醐味。温泉絞りもその日だけの特別な風合いと考えると、なんだか愛着が湧きますね。
界ブランドでは、地域の文化を継承する職人や作家、生産者の方々と連携したご当地文化体験「手業のひととき」を実施しています。
「界 別府」では、2023年2月28日まで、「別府つげ細工職人と行う一生モノのつげブラシ作り」体験を開催中。つげブラシは椿オイルを染み込ませて仕上げるため、髪の毛をとかすたびに艶をもたらしてくれるとして、美しいヘアにこだわる人から好評のアイテムです。
滞在中、お部屋には5種類のつげブラシをご用意。実際に使用することで、お客様の髪質や用途に合わせてお好みのつげブラシを選べます。
体験はまず、つげ細工工房で、素材となる薩摩柘植がどのような作業を経てブラシに仕立てられるかを見学。その後、職人指導のもと、選んだブラシの土台にピンを1本ずつ差し込んで固定する、組み立ての作業を体験します。完成したブラシは、職人が柄の部分に名前を彫刻し、椿オイルを十分に染み込ませて乾かし、後日郵送されます。
ブラシのお手入れができるハケと椿オイルもついてくるので、自宅でのメンテナンスも簡単に。また、メンテナンスすることで飴色に風合いが出て、一生使うことができるのもつげブラシのいいところ。万が一、ピン部分が壊れてしまっても、郵送で修理をしてもらえるアフターサービス付きなので安心です。
訪れるたびに新たな楽しみが発見できる「界 別府」は、老若男女が楽しめる温泉旅館です。魅力的なアクティビティにもぜひ注目してみてくださいね。
大分県別府市北浜2-14-29
0570-073-011
「別府つげ細工職人と行う一生モノのつげブラシ作り」
期間 :2022年9月1日~2023年2月28日(除外日:2022年12月23日~2023年1月6日)
時間 :チェックイン翌日11:30~13:00
場所 :「別府つげ工芸」 大分県別府市松原町10-2(現地集合解散)
料金 :1名20,000円(税込、宿泊費別)*ブラシの種類により5,500~13,200円追加料金が発生します。
定員 :1日1組4名まで *1名より実施
予約 :公式サイトにて7日前までに要予約 *事前に宿泊予約が必要です。
備考 :完成したつげブラシは後日郵送します。(約10日後に発送)
美容ライター。早稲田大学卒業後、アパレル、出版社勤務を経てフリーに。女性誌やWEBで、美容をはじめ、健康、美食に関する記事、著名人へのインタビュー取材などを担当。好きなことは、スキンケアとファッションと旅行。猫が好き。
この著者の記事一覧へ