【シンガーソングライター・藤原さくら】「今の自分にはもがくことよりも、全部味わって浮かぶことが必要」
INTERVIEW

2026.02.11

【シンガーソングライター・藤原さくら】「今の自分にはもがくことよりも、全部味わって浮かぶことが必要」

シンガーソングライターの藤原さくらさんが、2月27日(金)公開の映画『結局珈琲』で主演を務めます。

藤原さんといえば、2025年3月からのデビュー10周年イヤーを記念して、2月23日(月)の『10th Anniversary 武道館大音楽会』を開催することでも話題。

今回は映画のこと、10周年イヤーのこと、そして2024年に回ったヨーロッパでの旅のこと、そこで得た価値観などについてたっぷりとお話していただきました。

縁が深い下北沢を舞台にした映画『結局珈琲』での主演

――映画『結局珈琲』は東京・下北沢に実在する喫茶店「こはぜ珈琲」の閉店・移転までの2カ月をつづった映画です。企画や脚本を読んで、賛同したそうですね。

今回の作品は「こはぜ珈琲」の店長・谷川隆次さんの、18年間営業した旧店舗を映画に残したいという思いを受けて、そこに仲間たちがどんどん加わっていって始まったプロジェクトでした。「まずは脚本を読んでみてください」とお声がけいただいたのですが、それがすごくおもしろくて。

――どういったところにおもしろさを感じましたか?

私自身、歌詞を書いたりお仕事したりする時に、家で1人でやっているとやる気が出ないこともあるので、よくカフェに行くんです。東京のカフェって、仕事や勉強をしている人がすごく多いからいいエネルギーをもらえるというか、相乗効果があると思っていて。「この人も頑張ってるし、もうちょっと頑張ろう」とか、そういう気持ちになれるのがすごく好きなんですね。その時に、隣に座ってる人たちが話してる会話が自然と耳に入ってくることがあります。『結局珈琲』はそういう本当に他愛のない瞬間を明るく切り取りつつも、永遠に続くものなんてない…という諸行無常感がすごく素敵だなと思いました。

――本編を拝見させていただきましたが、かなりポップですよね。

そうなんです。エモーショナルな作品というよりも、もっとライトなテイストで。一人でいたいけど、孤独にはなりたくなくて、誰かの気配だけ欲しいみたいな感じは「すごくわかるな」と思ったので、台本を読ませていただいてすぐに「やってみたいです」とお話をしました。

――ポスタービジュアルで描いていたイメージといい意味で違う点もあって、本編の中では藤原さんが本当に笑みをこぼしているようにも見えました。

武田と塚本の話を聞いていて普通に笑っちゃうこともあって(笑)。この環境が終わってしまうことは、ずっと聞いていたPodcastが終わる感覚に近いなと思いました。気づけば、自分の生活の一部になっていたのに 「終わっちゃうんだ。え? もう聞けないの?」みたいな。でも、人生ってそういうものだと思うし、ずっと居合わせた人の会話を聞けるわけではないから、おもしろいけどほろ苦さもあって、絶妙なバランスだなと思います。

――『結局珈琲』の舞台、下北沢にはよく行きますか?

行きますね。プライベートでも行きますし、今放送中のドラマ『未来のムスコ』では、下北沢の劇団員役をやっていますし。なんだか下北との縁が続いています。

――藤原さんにとって、こはぜ珈琲のような場所はありますか?

それこそ、本当に「こはぜ珈琲」にはたくさん行っています。ドラマの撮影の空き時間にも。それから、ファンクラブの企画でブレンドコーヒーを「こはぜ珈琲」さんと作っていて、武道館公演でも販売する予定です。もうここまでの関係を築いたら、逆に別の珈琲屋には行けないです(笑)。

「曲を書くって、自分の成長だったり、変化だったりを日記のように残せること」

――武道館公演のお話も出ましたが、10周年イヤーもいよいよラストスパートです。振り返ってみていかがでしょう?

音楽活動をはじめ、演技だったり、本当にいろんなことに挑戦できましたし、それが全部音楽に生きた10年間だったなと思います。

――10年、長かったですか? あっという間でしたか?

長かったです。25年ぐらいやった感じ(笑)。…というのも、10年前の自分の曲を聴いているとかなり考え方が変わっているんです。変わらないものも、もちろんあるんですけどね。曲を書くって、自分の成長だったり、変化だったりを日記のように残せることだな、思考が何周もしているなと思いました。

――特に変化したと思ったのは、どういう部分でしょう?

10年前に書いた曲って、女の子のすごいかわいい恋心を歌っている曲が多いんです。例えば、「かわいい」という曲も“あなたから「かわいい」って言ってほしかったの”と歌っていて「こんなストレートに歌えるんだ!?」みたいな(笑)。やっぱり30歳になるとなかなか歌えないようなことも、すごく素直に歌ってる曲が多いんですよ。きっと今の30歳の私だから歌える曲もあるでしょうし。振り返ってみて「あの時に、これを出せてよかったな」という曲ばかりです。

――今回のアルバム名『uku』に込めた思いもお伺いしたいです。

もともとはウクレレで作った曲が多かったので『ウクレレ』という仮タイトルをつけた曲があって。語源を調べたら、ハワイ語で“ノミが跳ねる”、可愛い音が鳴ってるという意味があることを知りました。それで、ウクレレの軽やかな感じとか、一見すると「どういう意味なの?」と引っ掛かる感じも含めて、『uku』ってかわいいな、と。日本語だと“浮く”っていうぷかっと浮かんでる感じを連想されるのもいいなと思いました。

――たしかにかわいいです。

溺れちゃいそうな時にジタバタもがくと、より苦しくなる。そういう時は、ただ流れに身を任せたほうがいいみたいな話を聞いたことがあって、なんかそういうところもいいなと思ったんですよね。人間、生きてるといろんなことがあって、自分が努力すればどうにかなるということも少ないじゃないですか。もがく時間も必要だったと思うけど、今の自分は全部味わってただこの状況に浮かぶことが必要なんだろうなと思って、このタイトルにしました。

――すごい素敵! 武道館公演も目前ですが、それに対する思いもお伺いできますか?

いい山だなというか、挑戦しがいのある山だなと思っています。それこそ『uku』とも通じますが、その場にいるお客さんと私とバンドメンバーが揃ったから、こういう風なものができたよ、というような、今を生きるという楽しみ方ができたらいいなと思っています。10周年なので、昔の曲もたくさんやりますし、一夜限りのアレンジというか、『uku』で自分がたどり着いた考え方とかを今までの曲に反映させた南の温かいバイブスを感じるライブをする予定なので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

「今、こうしたい」にフォーカスできるようになった理由

――2024年に音楽活動をお休みしていた時のことも教えてください。

ライブ活動をお休みしていた時期は、歌うことが怖くなっちゃったんですよね。それまで、散々人前で歌ってきたのに「急に何?」という感じなんですけど、なんか「向いてないかも」とか、音楽を作ることは好きだから作るほうに徹しようかなと思ってしまうくらい落ち込んで、悩んでいた時期でした。10年間、本当にいろんなことをやらせていただいて、たくさん楽しい思いもしたんですけど、やっぱり「もっとこういう風になりたい」とか「自分はまだ足りてない」とかって気持ちが大きくて。もちろん向上心があることは悪いことではないんですけど、それに対して苦しいという気持ちになってしまったんです。

――そうだったんですね。

ただ、休んでみてたどり着いた答えとしては「考えすぎてたな」と。頭の中で、どんどんどんどん考えが膨らみすぎて、考えに押しつぶされるような感覚があったんですけど、それを手放してみたら、身体がもっと楽だとか「これをやってる時の自分が好きだ」とかそういうシンプルな五感を取り戻せたんですよね。10年間の最後に、この感情にたどり着けたということは、よりまた軽やかに次の10年ができそうだなと思いました。

――それって、学生でも社会人でも共感する人が多い気がします。藤原さんは、どのようにして自分自身と対話できるようになったのでしょう?

どうしても未来のことや、過去のこと、今じゃないどこかのことを考えることがすごく多かったんですよ。スマートフォンを見ていても、ここじゃないどこかのことに思いを馳せて。そうではなくて、“今そこにある”ということにフォーカスする時間を意識的に取るようにしました。

それができるようになったのは休暇中に行ったヨーロッパでの経験が大きかったかもしれません。「これから先どうなるんだろう」とかを考えずに、ただ、今やってみたかったこと、見に行きたかったもの…例えば、私が好きなアーティストのライブを観に行ったり、あえて予定を決めたりせずに、自分の心が「今、こうしたい」と思ったことに従ってみて。当時は明日泊まるところすら、決めていませんでした。

――えー! すごい。

2ヶ月間行ったので、その時によってやりたいことが変わるかもしれないしと思って、ざっくりとしか決めなかったんですよ。それに、交通手段が遅れることも多いので、その場その場で自分がどう感じるのかに、ちゃんと向き合うようになったら「自分は本当は何がしたいんだろう」ということが分かるようになって。もちろん仕事をされている方の中には、全部が全部自分の感覚に従った動きはできないという方もいるとは思うんですけど、1週間、もしくは1日のちょっとした隙間に、自分が本当にやりたいことをやる時間を取ってあげることで、自分の気持ちがわかるんじゃないかなと思います。

――その2ヶ月の間に、今にフォーカスすることができたんですね。

本当にそれは思います。今、この瞬間をちゃんと楽しんで、目の前にいる人とモノに集中する、その時にしかできないことをしたいなと思うようになりました。

――そのヨーロッパ旅の中で特に印象的だった景色は?

本当に素晴らしい景色をたくさん見たんですけど、スイスが一番記憶に残っています。圧倒的な山々を前に「これは太刀打ちできないわ」と思うと、嫌でもちゃんと、意識が今になるんですよね。それが一番忘れられない景色です。

――最後にお伺いしたいのですが、“キレイな人”と聞いて、藤原さんはどのような人を思い浮かべますか?

芯のある人のことをキレイだなと思いますね。外見的な品の良さはもちろん、内面的なところで自分が理想とする人はたくさんいて。その指標になってるのが、私の姪っ子から見て恥ずかしくない人でいたいみたいなところだなと思っています。ちゃんと哲学を持って、自分がやりたいことをやってる人のことをキレイだと思うので、そういうふうにありたいですね。

ヘアメイク/佐竹静香
スタイリスト/岡本さなみ
撮影/渡会春加
取材・文/於ありさ

<衣装協>
オーバーシャツ¥49,500
中に着たシャツ¥36,300
ともにジョイスアディッド(ジョイスアディッド)
問い合わせ先:
ジョイスアディッド joiceadded@gmail.com

Profile
藤原さくら
1995年生まれ。福岡県出身。2015年にシンガーソングライターとしてデビュー、10周年を迎えた。ラジオDJ・役者など活動は多岐にわたり、ドラマ「ラヴソング」で俳優デビューを果たすと、ドラマ「ファイトソング」「こっち向いてよ向井くん」、映画『銀平町シネマブルース』などに出演。現在はドラマ「未来のムスコ」(TBS)にも新山桜子役で出演中。

■『結局珈琲』作品情報
2026年2月27日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
出演:藤原さくら 細井じゅん 山脇辰哉
東野良平 日高七海 瀬戸璃子 谷川隆次
磯村勇斗(特別出演)・岡田義徳(特別出演)/柄本時生
監督・脚本:細井じゅん
主題歌:曾我部恵一「エンディング」(ROSE RECORDS)

■6th Album 「uku」
2026年2月18日(水)リリース
価格:¥4,180(税抜価格 ¥3,800)
予約はこちら: http://sakurafujiwara.lnk.to/uku_CD
先行配信シングル「little baby feat. 安部勇磨」
ストリーミング/ダウンロード:https://sakurafujiwara.bfan.link/little-baby

■Sakura Fujiwara 10th Anniversary 武道館大音楽会
2026年2月23日(月・祝)に開催
16:00開場 17:00開演
会場:日本武道館
チケットの購入はこちらから

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