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2026.06.12

物書き SYOさんが選ぶ、雨にまつわるオススメ映画 #Seasonal Letters

季節には、その時期だけの空気があります。「Seasonal Letters」は、さまざまな分野の表現者や専門家に、その季節をより豊かに味わうためのヒントを綴っていただきます。

今回は物書きのSYOさんが綴る、「雨にまつわる映画」について。雨の日の見え方や過ごし方が、少しだけ変わるかも。

#Seasonal Letters
by SYO

雨は不思議な存在だ。降られると身体が濡れてしまい、梅雨時のジメッとした湿気も合わさると読んで字のごとく「不快指数」がマックスになってしまう。だが「恵みの雨」という言葉があるように、動植物が生きていく上でなくてはならないものでもある。そして、映画・漫画・小説・絵画に音楽――スクリーンやページ、スピーカーを通すと雨は情感豊かな“装置”へと変化する。適度な雨音はリラックス効果があるし、カフェなどでのんびりと窓の向こうの雨を眺める時間は心に余裕を与えてくれる。そう考えると、もうすぐ日本全土が迎える梅雨入りも気持ち次第で大きくイメージが変わるのかもしれない。ということで本稿では、雨にまつわるオススメ映画をいくつかご紹介しよう。

まずは、恋人たちの距離を近づける存在としての雨。恋愛漫画などだと「急な雨→気になる相手と相合傘」は王道シチュだが、これは何も日本に限った話ではなく、万国共通で雨はラブストーリーを盛り上げてくれる。例えば米・アカデミー賞を受賞した『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督が運命の男女を描く『ビール・ストリートの恋人たち』(2018年)では、レストランを出たカップルが雨に気づく→店員がそっと赤い傘を差しだし、夜の街を2人で歩くロマンチックなシーンが登場。あえて傘の「赤色」を目立たせるために街並みの色彩を抑えた画面構成も絶妙で、何度観てもうっとりさせられる。作品自体は不当に逮捕された恋人の無実を信じ続ける切なく苦しい物語なのだが、隅々まで芸術的な傑作のため、雨で外に出られない休日などにじっくりと観ていただきたい。

『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年)では、魔法で杖の先に透明な傘を創り出し、雨の中でキスをする切なくも美しいシーンが登場。魔法使いと魔力を持たない人間(マグル)の道ならぬ恋も相まって、涙なしには見られない。ファンタジー作品では、透明人間の青年と盲目の少女の恋路を見つめたベルギー映画『エンジェル、見えない恋人』(2016年)も雨の日に観たくなる。雨に濡れる少女に透明人間がそっと傘を差すシーンがなんともエモーショナルで、作品を象徴する名シーンとして日本版ポスターにも起用された。

日本では晴れているのに雨が降る現象を「狐の嫁入り」というが、英語では「Liquid Sunshine(直訳すると液体日光)」と呼ぶそうだ。昨年公開されたラブファンタジー『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(2025年)では、この天気が物語全体のキーになっている。友人の結婚式で出会ったデヴィッド(コリン・ファレル)とサラ(マーゴット・ロビー)は、自分たちの人生の大切な日を再体験する不思議なドアに出会う。その旅に出る際、たまたまハンバーガーショップで再会した2人を見守るのが、雨。もしあの時に戻って、やり直せたら――という願いをかなえてくれる本作もまた、物憂げな季節である梅雨時に観たくなる映画の一つ。余談だが、本作を手掛けたコゴナダ監督による静謐な感動作『アフター・ヤン』(2021年)もオススメ。こちらは雨の映画ではないが、「家族同然のアンドロイドが故障してしまったら?」を優しく描いた心に深く染み入る物語で、きっと雨の日に相性がいいはず。

ちょっと風変わりな作品を観たいなら、傘同士の恋を描いたピクサーの短編アニメーション『ブルー・アンブレラ』(2013年)はいかがだろう。映像も音楽もストーリーもなんともお洒落でかわいらしく、7分程度の作品のため時間がないときでも挑戦しやすいのも◎。雨が映えるアニメといえば、新海誠監督の『言の葉の庭』(2013年)も推したいところ。舞台は雨の日の新宿御苑。靴職人を目指す少年と、人生を見失った女性が出会い、静かに心を通わせていく。キャラクターの心情とシンクロした雨の描写が見事で、クライマックスは一度観たら忘れられない輝きを放っている。新海監督が同じく雨をモチーフにした『天気の子』(2019年)との表現の違いを見比べてみるのも一興だ。

少々脱線するが、自宅で過ごす時間が増える梅雨時、映画だけでなくゲームに挑戦してみるのもいいかもしれない。そんなときは「動かせる映画」といっていいほど圧巻の映像美×雨の存在が効いているゲーム「DEATH STRANDING」シリーズをぜひチェックしてみてほしい。ノーマン・リーダスやレア・セドゥ、エル・ファニングに忽那汐里、マ・ドンソクに星野源まで登場する超オールスター仕様の本作は、DS(デス・ストランディング)という現象により荒廃して分断した世界で“配達人”となり、人と荷物を運んでいくストーリーが展開。劇中世界では「時雨(ときう)」と呼ばれる雨が降り、触れたものの時間を急速に進めるため人間が浴びると老化してしまう。またBTと呼ばれるクリーチャーも出没するため、一般人はなかなか外出が難しい。そんななかプレイヤーは主人公サムとなって困っている人々に荷物を運んでいく。独創的な世界を堪能できる人気作であり、雨の中荷物を運んでくれる現実の配達業者たちへの感謝の気持ちが高まること間違いなし。続編に登場する雨を司るキャラクター、レイニー(忽那汐里)も非常にキュートだし、物語も奥深く、映画以上に長く楽しませてくれる。

続いて、別の切り口で「雨映画」をご紹介しよう。水もしたたる…な雨に映える俳優/登場人物たちが登場する映画だ。まずは『セブン』(1995年)のブラッド・ピット。猟奇殺人犯をベテランと新人の刑事コンビが追う本作、劇中で結構な量の雨が降っているのだがなぜか皆傘を差そうとしない。むしろそれが美学といえるほど洗練されており、ロングコートに短髪のワイルドなブラピがずぶ濡れになって顔をしかめている姿が何ともカッコいいのだ。次に、ギャング映画『ロード・トゥ・パーディション』(2002年)のトム・ハンクス。“良心の擬人化”といえるほどいい人のイメージが強い彼だが、本作では寡黙な殺し屋を熱演。雨の中、黙々と任務を遂行するシーンは激シブだ。ちなみにこの映画、父親の裏稼業を見てしまった息子を犯罪組織から守る逃亡劇となっており、ハラハラさせられつつも親子愛に泣かされる。犯罪劇ながらエレガントな風格が全編に漂っており、見ごたえ十分のためこのジャンルが苦手な方にも一度チャレンジしていただきたいところ。

また、伝説的映画の続編『ブレードランナー 2049』(2017年)のライアン・ゴズリングが雨に打たれるシーンも孤独さと悲壮感が混じっており、同じようにはなれないとわかっていてもつい雨の日に外に立ち尽くしたくなってしまう(なお、前作にも雨の名シーンが登場)。個人的には『THE BATMAN -ザ・バットマン-』(2022年)のロバート・パティンソン、『リターナー』(2002年)の金城武、『SHAME -シェイム-』(2011年)のマイケル・ファスベンダーなど、雨のシーンでの彼らに同性として憧れてしまった。やはり、雨には魅力をさらに引き立てる効果があるのだろう。

今回はあえて触れなかったが、雨映画の鉄板としては『ショーシャンクの空に』(1994年)や『七人の侍』(1954年)、或いは『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013年)での雨の中の結婚式のシーンや、『きみに読む物語』(2004年)でのキスシーンなどが有名。雨中のキスといえば『スパイダーマン』(2002年)を思い出す方も多いはず。また、『雨に唄えば』(1952年)や『恋は雨上がりのように』(2018年)『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(2015年)『雨の中の慾情』(2024年)『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』(2019年)のように“雨”がタイトルに入った作品も多数。作品のテイストに合わせて大きく表情を変える雨の奥深さを、この季節にしっとりと楽しんでいただければ幸いだ。

物書き SYO
1987年、福井県出身。東京学芸大学にて映像・演劇表現を学び、卒業後は映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。

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