2026.06.10
【俳優・平間壮一】リフレッシュは絵を描くこと。「やっぱり絵には“出る”な、と思います」
舞台となるのは幼児期のテストによって職業が決まる架空の社会。そうやって決められることが人間にとっての幸せだと考えられていました。そんな中で数少ない音楽の才能を見出されたクリスチャン・ハロルドセン――。彼の壮絶な人生を描いたのが、短編小説『無伴奏ソナタ』です。
演劇集団キャラメルボックスが舞台化した本作が、2024年にミュージカルとして上演され、この夏、再演されます。
主演を務めるのは前回に続き、平間壮一さん。再演への想い、生みの苦しみを感じていた上演時の思い出のほか、旅にまつわるお話もお伺いしました。
再演決定に「来たか」

――再演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。
「来たか」と思いましたね。怖かったです。当時のことを思い出して、あの重みがまた来るのか、という感じでした。
でも、自分が主演で再演できるのは普通のことじゃないんだな、と思って。またもう一回観たいという声が多かったことが嬉しかったですね。
――『無伴奏ソナタ -The Musical-』、改めてどういう作品だと捉えていらっしゃいますか。
実際に観終わった方々が何を受け取って帰ったか聞きたいな、といつも思っているんです。『無伴奏ソナタ』は特に。自分が演じているクリスチャンとしてはいろいろ大変なことがあっても、最後は生きていてよかった、と思えるんですけど、全編通して観ていたお客様は何を受け取って帰っているんだろうな。今でも気になります。
大体作品をやっている時は、「この作品を観てみんな何を思うんだろう」と考えるんですけど、『無伴奏ソナタ』ではクリスチャンのことしか考えられなかったですね。
――重みがあったということは、それだけ役にどっぷり入っていた期間ということですよね。
そうですね。最後も、複雑な感情で「生きていてよかった」と言っているんですけど、「生きていてよかった」と思うしかないということでもあるし。ただただ明るいハッピーエンドではない、というのがこの作品の特徴かなと思います。
――確かに、生きていてよかったと思うラストではあるんですが…。
なんとも言えないですよね。救われたと思うしかないというか。
いろんな人がいる中にクリスチャンを合わせていけたら

――再演にあたって、演出部分など変更される部分はあるんでしょうか。
さらによくするためにはどうしていこうか、ということをみんなで話し合いながら、お芝居面は変わっていくと思うんですけど、演出はそんなに変わらないと思います。
噂では曲が変わるかもね、と。だから前回観てくださったお客様は、ちょっと変わった印象を受けるんじゃないかなと思います。
――前回の公演から2年の間にさらにいろいろな作品に出演されて、平間さんご自身も吸収されたことがたくさんあると思うのですが、現時点でこんなことをやってみたいな、ということはありますか?
キャストも変わって、またいろんなところから来てくださるので、どんなジャンルのお芝居の人たちが来るんだろう、と楽しみです。出会う人々によってクリスチャンも影響を受けるので、皆さんの芝居のスタイルと合わせながらやっていけたらいいな、と思いますね。前回は「同じ世界で生きている人たち」ということを意識してやっていたんですけど、声の出し方もそれぞれ違っていいし、芝居のスタイルが違ったっていいんじゃないかな、と最近の僕は思っています。だから統一感などではなく、いろんな人がいる中にクリスチャンを合わせていけたらおもしろいな、と。
――カンパニーの雰囲気としてはどんなふうになりそうですか。おっしゃった通り、キャストの方も前回とは変わりますよね。
西川大貴くんはめちゃくちゃお話できそうな気がするので、結構楽しみにしています。お芝居の話とかたくさんしそうです。ご自身で作品も作る演出家の面も持っているんですけど、僕も観に行かせてもらってすごく感動したので。
――キャストのお話だと、リチャード役を演じられる大久保祥太郎さんは『コーカサスの白墨の輪』でも共演されていました。次回作についてお話されたりしましたか?
「壮ちゃんのお父さんだよ」と毎日言ってました、祥ちゃん(笑)。「え? 俺が壮ちゃんのお父さん? え? (自分のほうが)後輩だよね」と言ってましたけど、祥ちゃんは落ち着いたお芝居も多分できるだろうし、歌も上手だし、器用な役者さんなので楽しみですね。
もし天才になれるのだとしたら…

――2年前の公演のことは色濃く覚えていらっしゃるものですか?
色濃いのかな。でも、もがきながら、苦しみながら、それはスタッフも含め、みんなで作ったな、という思い出はあります。
――何か印象的な出来事はありますか?
クリスチャンって音楽の天才じゃないですか。でも音楽ってみんなに馴染みのあるものだから、どこまで行ったら天才と呼ばれるんだろうね、という話はしてたかもしれないですね。キャストの中にも音楽家の方がいたりとかして、「いや、この曲は全然天才の領域に行ってないよ」みたいなことをたくさん話しました(笑)。そもそも設定が、誰も見たことがない楽器で作っているという時点でミュージカルにするのが難しいんですよ。だって誰も聴いたことがない音楽が奏でられているという想像だから。僕は劇中で鳴っている音楽は感情の音だと思っていて。実際に『無伴奏ソナタ』の世界で流れる音楽は、あれとはまた違う、聴いたことがない音楽なんだろうな、という想像が膨らむからおもしろいな、と思います。
――そんな中で天才感を出すのも大変ですよね。
そうなんですよね。天才に見えていたらいいんですけどね(笑)。天才をやらなきゃ、ということに縛られないようにがんばっていました。でも、別の作品でモーツァルトを演じることもあったんですけど、彼も“天才感”はなかったらしいですよ。平凡なわけじゃないけど、ちょっと変な子というだけで。クリスチャンもきっとそうなんだと思っています。

――演じていて特に大変だったのはどういったところでしょう? 全編大変そうなイメージがありますが。
本当に、楽しく幸せでいられるのは最初のシーンだけなんですよ。外に出てからはずっとどこかしら辛い思いがあるので。だから、幸せってなんだろうと考えちゃうんでしょうね。だいたい、舞台って幸せになっていくお話が多いと思うのですが、だんだん幸せを失っていくお話なので、おもしろい舞台だなと思います。
――公演中はどんなふうにメンタルを安定させていたんですか?
いつもよりは暗かったらしいです。あんまり覚えていないんですけど。でも、それが普通だったから、あんまり食らってる感じはなかったと思います。わりと明るいほうが僕自身も苦手だったりするのかな。
――クリスチャンは音楽の天才ですが、今から何かの天才になるとしたら、何の天才になりたいですか?
絵描き。好きで描くんですけど、天才になりたいと思いますね。
ただ、ちょっとだけ調べてやってみようかなと思ってやりだすと、めっちゃ難しいんですよ。ものの見方が変わるというか、「線で描くならこうか」みたいな見方になるんですけど、天才って多分そういうことを考えずにペペッと描けちゃうのかなと思ったら、なりたいですね、天才。
自分の身体の限界は?

――秋には『THE ALUCARD SHOW』が控えていますが、再演を楽しみにしている方にメッセージもいただけたら。
出演しているメンバーもそうですし、ALUCARDが好きな人たちが集まった作品だな、と思います。一緒に出ていたけど、今回出られなくてめちゃくちゃ嫉妬している人もいると思うので、精一杯がんばりたいな、と思っています。
――楽しみにしていることはありますか?
自分の身体の限界がどこになったんだろう、ということですね。
――作中、ずっと踊っていますもんね。
当時でもゼーハーして倒れ込んでいるぐらいだったので、袖で(松下)優也と。今、ビビっています。
――松下さんのInstagramを拝見すると、ずっと走っているな、と思って。やっぱり身体作りを…。
絶対にそうですよ。優也の場合、踊りも歌もやるし、もっときついと思うから…。僕も身体作りがんばります!
感情が絵に表れる

――いまもいろいろな作品のお話が出てきましたが、作品から作品への切り替えは得意なほうですか?
切り替えはあんまりしてるつもりないですね。場所が変わると勝手に切り替わるというか。出会う人によって変わるなという感じがあって。自分自身はあんまり変わってないかもしれないです。
――オンとオフの切り替えはいかがですか?
オンの瞬間、自分でも分からないですね。外に出たらオフ、家はよりオフ。で、舞台の本番だけはオンかもしれないです。
――舞台によっても変わったりするんですか? 気持ちの持続性とか…。
変わっていないつもりなんですけど、変わってるんですって! だけど、自分自身は役抜けないわ、と言ってる人が苦手なんですよ(笑)。だから引きずられているつもりはないんですけど…周りから見ると「ちょっと暗くなったね」とかあるみたいです。
――よく行うリフレッシュ方法はありますか?
最近は絵ですかね。やっぱり作品によって違いはあるかもしれないです、暗い役をやっていたら絵が暗かったりするから。やっぱり絵には出るな、と思います。
――『コーカサスの白墨の輪』の最中ですが(取材時)、今はどうですか?
今ね、怒ってるやつばっかりです。怒ってる人をたくさん見ているから、描いている絵も怒ってる顔ばかりになっていますね。そんな気がします。
プライベートの旅では手ぶら?

――旅のお話も少し。平間さんはご出身が北海道ですが、おすすめの観光スポットを教えていただけますか?
この間、カレンダー撮影で北海道に行ったんですけど、困りました。あんまりなくて。でも雨竜という場所があるんですけど、その途中にひまわりの迷路があるんです。そこはいいですよ。
――思い出の場所はありますか?
中学2年生までの北海道にいる間、スタジオしか通っていなかったんです。なんていう駅だったかな。スタジオの最寄駅が思い出の場所ですね。そこからずっと歩いて通っていました。
――今好きなだけ時間あったらどこに行って何をしたいですか?
愛媛に行ってみたい。で、みかん食べたい(笑)。四国ってなかなか行く機会がないなと思って。北海道と似てません? 海を挟んでというか、海に囲まれているところとか。多分あそこだけの文化とかあると思うので、行ってみたいですね。
――旅行の目的によって異なると思うんですけど、ホテルを選ぶ際のこだわりポイントがあれば教えてください。
ちゃんと履けるルームウェアがあるところ。バスローブとかは嫌ですね。なぜなら、朝起きたら脱いじゃってるから。こだわりはそこぐらいかな。
――旅に出かけた時に定番の過ごし方みたいなものはあるんですか?
せっかく出かけたのに、あんまり外に出ないんですよね。だから窓から見える景色がいいと好きですね。

――外に出ないのはなぜ…?
なんでなんだろう? なんか探すのが苦手なんですよ。それより、何も決めずに行くほうが好きだったりするから、あんまり外に出ない。で、本当に困った時だけ外に出て、「あ、こんなのあった!」とやるのが好きです。だから、逆に何もない場所も好きなんですよ。ありすぎると嫌になっちゃう時があるんです。せっかく旅行に行ってるのにという感じですが、普段一番ものがある場所に住んでるから。だから、何もなかった時のほうが喜んだりします。変な人と言われますね(笑)。
――旅行はもう、東京から逃げる目的ぐらいの感じですね。
そうですね。だから大好きです、地元。何もなくて、自然がいっぱいあって。
――旅の必需品はありますか?
何もなくても生きていけるかもしれない。いや、嘘かな(笑)。でも、財布と携帯ぐらいしかいつも持ってないんですよ。よく、手ぶら? とびっくりされます。でも、地方公演の時はすごく準備していきます。何があってもいいように(笑)。
――地方公演の時の必需品は?
旅公演の時はいっぱい持っていきます。怪我してなくても足を支えるタイツとか。肉離れした時があったんですよ。やっぱり舞台をなめちゃいけないなと思って用意していきます。ちゃんと。ものすごく荷物が増えますね。
枕は自分の家のものよりホテルのものを試すのが好きです。眠れないということはないですね。家の枕が一番眠れません(笑)。いろいろ買い替えても、家の枕は気になるんですよね。呪われてるのかな、家の枕(笑)。お祓いかなにか行ったほうがいいかもしれない。
――最後に改めて、今回の『無伴奏ソナタ』、注目してほしいポイントを教えてください。
多分前回よりも、稽古に向き合う、芝居の中身に向き合う時間が増えると思います。キャストも変わったことによって、また新しい考えも入って、印象がすごく変わると思うので、そこは楽しみにしていてほしいです。

Profile
平間壮一
1990年生まれ、北海道出身。ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』「劇団☆新感線『髑髏城の七人 Season月』上弦の月」『Coloring Musical Indigo Tomato』『ヘアスプレー』『RENT』『イン・ザ・ハイツ』『The View Upstairs-君と見た、あの日-』『ダ・ポンテ』『無伴奏ソナタ-The Musical- 』『ワイルド・グレイ』『コーカサスと白墨の輪』など数多くの舞台で活躍。7月には再演となる『無伴奏ソナタ -The Musical-』、10月には舞台『THE ALUCARD SHOW』への出演を控える。
撮影/金井尭子
取材・文/ふくだりょうこ
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