四季の静寂と食悦に憩う「ニセコ羊蹄の宿 楽 水山」
LIFESTYLE

2026.02.14

四季の静寂と食悦に憩う「ニセコ羊蹄の宿 楽 水山」

ニセコ唯一の伝統的な日本旅館

蝦夷富士と呼ばれる雄大な羊蹄山の麓には、尻別川が穏やかに流れ、四季折々の愉しみで魅了するニセコエリアがあります。新千歳空港から車で約2時間半、電車でも小樽を経由して約2時間半ほどかけて倶知安駅に着きます。

冬はパウダースノーを求めて世界中からスキーヤーが訪れ賑わう街ですが、新緑が芽吹く春を迎える頃、この地は本来の静けさを取り戻します。大地の食材の恩恵を受ける、静寂なニセコこそが、実は最も贅沢な滞在を叶える特等席なのです。

2020年12月に誕生したニセコ羊蹄の宿 楽 水山は、ニセコエリア唯一の伝統的な日本旅館。わずか18室の離れ客室からは風趣富む里山の情景が広がり、四季が織りなす大自然と親しむことのできる悠々とした佇まいを楽しむことができます。日常から離れた閑静な空間で、心ゆくまで癒やしの時間が流れていきます。

木の温もりに包まれたラウンジから望むのは、季節や天候で刻々と表情を変える羊蹄山。この日は窓の外にしんしんと降り積もる雪を眺めながら、ゲストの到着に合わせて立てられたというウェルカムドリンクの抹茶と和三盆糖の落雁をいただき、ほっと一息。これは遠方より訪れた旅人の疲れを癒やすために供される“お着き菓子”という習慣なんだそう。

夜の帳が下りる16:30〜19:30には、ラウンジがアペリティフタイムに変わります。家族や友人、恋人、大切な人と心を通わし時を重ねる、かけがえのない滞在に心躍ります。

わずか18の離れ客室で暮らすように滞在する

今回滞在したのは、羊蹄山を正面に望む洋間客室「山の間」。75㎡に広々としたリビングルームとツインベッドルームを備え、まるで暮らすような居心地の良い空間。建物には道産木材をふんだんに使い、土地の気候に合わせた心地よさがあります。

羊蹄山に向かうなだらかな傾斜に佇む離れ客室からは、どの客室の窓からも遮るものなく、堂々と聳え立つ山の姿を望めます。朝の澄んだ空気、夕暮れに染まる山々、星空の下の静寂。時間帯によって全く異なる表情を見せてくれます。

長期滞在や外国人ゲストを意識して、フィットネスルームやリラクゼーションルーム、ミーティングルームも用意。全18室という限られた客室数は、その余白を守るための選択なのかもしれません。

源泉掛け流しのアンヌプリの湯に身も心もほどける

全18室いずれの客室にも敷地内から湧き上がる源泉掛け流しの露天風呂を設えるという贅沢。陶器、ヒバ、石の3種類の浴槽があり、客室によって趣きが異なります。

中性泉の源泉が湧き上がる樺山温泉アンヌプリの湯は、肌にやさしく、湯上がりにはしっとり潤いを感じられるほど。少し茶褐色の湯の花ととろりとした肌触りが特徴で、筋肉や関節のこわばり、疲労改善、良質な睡眠にも効果的。

好きな時に好きなだけ、ゆっくり湯に浸かり、壮麗な羊蹄山を独り占め。ふと目を閉じて、じっくり湯のまろみと静寂を感じる。冷たく澄んだ風にあたり、深呼吸と共に自分の心の声に耳を澄ます。温まった肌と心が、やわらかに解きほぐされていくのがわかります。

昨年には、オーストラリア発のオーガニックスキンケアブランド「Jurlique(ジュリーク)」とのコラボステイプランが期間限定でリリースされました。生きるための必須項目の「睡眠」と「食事」に、「香り」で豊かな時間が体験できるリトリート。

「香りが誘う、深い眠りとニセコグリーンに秘められた美」をテーマに、滞在中はジュリークの6つのベストセラーアイテムを思う存分堪能して、睡眠美容に特化したビューティーリチュアル。バスルームに漂うラベンダーの香りに癒やされ、自分を愛しむ滞在でした。

1日目:創作フレンチ「ゆきあい亭」で味わう食悦

「楽 水山」の魅力を語るうえで欠かせないのが、「食悦の湯宿」という言葉。

一夜目に訪れた創作フレンチ「ゆきあい亭」では、北海道の食材をフレンチの文脈で再構築したコースが展開されます。

料理人が自ら、後志(しりべし)地方を中心に道内各地から厳選した四季折々の大自然の恵みを贅沢に用いて仕上げます。生産者が想いを込め育んだ食材を、余すことなく活かす――。日々の移ろいを感じられるダイニングで、五感が悦ぶ美食体験が始まります。

高橋牧場のモッツァレラチーズにプラムジャムを合わせた、カプレーゼのような一皿から始まり、ダークホースという名の南瓜を煮込んだ、料理長のスペシャリテとも言えるポタージュに心を掴まれ、釧路産の生ししゃものふわふわホクホクとした食感に胸を打たれます。

湧別産の一夜干しした帆立貝に、何種類もの茸を刻んだコンソメスープを静かに注ぐ一皿、倶知安産の落花生と蒸したキンキの出汁を味わうポトフを思わせる一皿、ニセコ産の男爵をミルフィーユ状に重ねたグラタン、土地の恵みが軽やかに美しく連なっていきます。

自家製パンに添えられた有塩バター、ジャージー牛乳の無塩バター、アイヌ語で“神”を意味する「カムイミンタル」の塩。細部にも哲学が滲みます。

十勝産黒毛和牛の炭火焼に、スモークした牛蒡、ブロッコリーへと進むにつれ、一皿ごとに素材の持ち味を活かしながら、フレンチの技法で新たな表情を引き出します。素朴でありながらも情緒溢れる料理の数々に息を呑みます。

食後には、シャインマスカットのブランマンジェとショコラテリーヌが穏やかな余韻を残します。

ワインペアリングでは、道産ワインを中心にフランス、ドイツ、ニュージーランドと幅広いセレクトを提案。余市産ワインを牽引するワイナリー「ドメーヌ・タカヒコ」のピノ・ノワール「ナナツモリ」が料理の繊細な旨味を引き立て、口の中で調和していく様はまさに美食の歓び。

2日目:日本料理「入舟」で深まる土地の記憶

二夜目は日本料理「入舟」へ。わずか4席の落ち着いた佇まいのカウンターで、料理長が目の前で一皿ごとに丹精込めて仕上げてくれます。

ここでは日本料理に合わせて日本酒のペアリングを。はじまりは八海山のスパークリングから。

オスとメスの食べ比べを楽しむ小樽産しゃこ、85℃で低温調理したという厚岸産蒸し牡蠣の先付けから始まり、蝦夷あわびの柔らか煮、苫小牧産の北寄貝や根室産の秋刀魚、余市産の牡丹海老の沖漬けと、北海道の海が静かに語りかけてくるよう。

銀宝(ギンポ)の柚庵炭火焼き、540日熟成させた希少品種のじゃがいもを使ったじゃがバター、宗谷岬の生帆立一夜干しなど、北海道ならではの逸品が続きます。オホーツク産たらば蟹を海苔で大胆に巻いた磯辺揚げの天麩羅には、料理長のセンスと遊び心が込められているよう。

日高沖で水揚げされる銀聖といくらの炊き込みご飯はふっくらと炊き上げられ、いくらのプチプチとした食感と鮭の旨みが沁み渡ります。

甘味にはニセコ産南瓜ぜんざい、水菓子には仁木産シャインマスカット。満たされたお腹と心を優しく労わってくれます。土地と季節を身体に刻むような体験。

越前和紙と漆で作られたというランチョンマットや、この宿の建設時に伐採した白樺の木を加工して作られたという箸など、手に取るもの一つひとつに温かみを感じます。

春夏秋冬、姿や彩りを変える無為自然な食材、器のセレクト、盛り付けの美しさ、出汁の香り。その全てが五感を研ぎ澄まし、大地と海川の恵みをいただくことの歓びを改めて感じさせてくれる一夜となりました。

夜長をバーで過ごす、渡り鳥の止まり木

夕食後のひと時、ラウンジに現れるバーへ。バックバーの代わりに天井まで届く大きな窓、その向こうに漆黒の闇に森林の輪郭が浮かぶ。照明は抑えられ、夜の景色と静謐な雰囲気に満ちています。

バーは止まり木。人生の苦楽を旅にたとえ、束の間の休息として羽休めに来る場所で、ゲストは旅をする渡り鳥というコンセプトのもと、ニセコの澄んだ空気と星空を感じながら美酒を傾けるひと時は、この宿の滞在の醍醐味でもあります。

1杯目は「ニセコスピリッツ」。ニセコグリーンをイメージしたカクテルで、バジルの爽やかな香りが印象的。カンパリの代わりにミドリのリキュールを使い、ナイトキャップにぴったりの優しい味わい。

2杯目は「楽 水山ハイボール」。ニッカウヰスキーの「竹鶴」に黒糖と岩塩を添えて、ほうじ茶で割った香ばしさが引き立つカクテル。甘味と塩気がウイスキーの深い味わいを引き出します。

朝を彩る、北海道の恵みがそろう朝食

羊蹄山の稜線が静かに朝の光を受け止める頃、会津塗りの茶器で供される滋賀県産の深煎り煎茶から朝食が始まります。山中牧場の濃厚な牛乳、余市産の林檎ジュース、搾りたてのニセコ産の人参ジュースが並びます。酸味の強い余市の林檎は目が覚めるような爽やかさ。

ホッケの一夜干し、平飼い有精卵、噴火湾産のたらこ、根室産の水蛸。肉じゃがは北島ポークを柔らかく煮込み、表面を照り焼きに。じゃがいもは黄爵(とうや)という地元品種で煮崩れしにくいのだとか。共和町産のななつぼしの白飯に、網走産のしじみ味噌汁。黒千石小粒納豆は臭みがなくて食べやすいのが特徴。食後には余市産ナイアガラ。酸味が強く爽やかで、食事の締めくくりに相応しい。

連泊のゲストのために、朝食の献立がマイナーチェンジされるという心遣いも。派手さではなく、整う感覚を大切にした構成。ドリンクから全て地元産にこだわり、焼き魚、ななつぼしのご飯と味噌汁が、前夜の余韻を優しく受け止めてくれます。

山に抱かれ、水を聴く。静寂の中に見る本物の贅沢

2泊3日の滞在を終え、なんとも名残惜しい気持ちに。もう少しだけ、この静けさに包まれていたい。

雪解けが進む羊蹄山、芽吹き始めた木々の緑、清々しい空気、鳥たちの囀り。

羊蹄山の雄大な自然に抱かれ、尻別川のせせらぎに耳を傾け、湯に身を委ねる。自然の息吹を感じながら、この環境に身を置くことで、いつのまにか心の雑音が消えていくー。

宿の名前に込められた「山に抱かれ、水を聴く」の意味を、滞在を通して体感できたような気がします。

この静寂に出会えるのはスキーシーズンの賑わいが去った大地が芽吹くころ。食悦の湯宿「ニセコ羊蹄の宿 楽 水山」の真価を堪能できる最良の季節です。

喧騒から距離を置き、食と湯に身を委ねる——そんな贅沢を知る大人にこそ訪れてほしい一軒です。

◼︎ニセコ羊蹄の宿 楽 水山(らく すいさん)
住所:〒044‐0078 北海道虻田郡倶知安町字樺山119-1
TEL:0136-22-0520(予約時間:10:00~17:00)
公式HP:https://www.raku-suisan.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/raku_suisan/

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