2025.12.07
日帰り香港。九龍城砦、レトロ喫茶、名ビストロを巡る大人旅
2024年に全世界公開されてから、香港映画史上最高興行収入、日本でも異例のロングランが続いた映画「トワイライトウォリアーズ決戦!九龍城砦」。私も2回観て大ハマり。10億円かけて作ったという本格的な舞台セットの展示が観られるとのことで、日帰りで行ってきました。レトロ喫茶で伝統のフレンチトースト、ビストロでグルメもしっかり楽しんで、飛行機で片道4時間。滞在時間約6時間でノスタルジックな香港を攻略!
九龍城砦を再現した舞台セットで、80年代香港にタイムスリップ

舞台セットがあるのは、九龍城砦跡地の九龍公園内。当時の九龍城砦の様子を再現した舞台セットを、ぜひ多くのファンに見てもらいたいということで、香港政府、香港観光局が協力し、展示を実現したのだとか。入場料は無料。本格的な舞台セットに、入口からワクワクする!

まずは、1980〜90年代の移動型アイスクリーム屋台が出迎えてくれます。昔は九龍城砦の周辺や公共住宅の広場、公園の入り口にあり、子供たちが小銭を握りしめて買いに行ったそう。

こちらは、今でも現存する香港最古級の喫茶店、冰室(ビンサッ)。九龍城砦が解体される前からこの界隈にあって、当時の住人や労働者、警官まで通っていたのだとか。

店内も当時の雰囲気そのまま。映画のシーンで出てくる叉焼飯の展示もあり、多くの観光客がここで撮影していました。

昭和を感じる、キッチュな食器が可愛い。カラフルなプラスチックの器、ミルクティーを大量に仕込むアルミポットから、花柄の水差しまでどれもレトロ可愛い!

映画の中で、とくに人気のシーンの主人公が逃げ込んだ「床屋」もそのまま再現。昔は、このような床屋が九龍城砦の中にたくさんあったそう。この椅子に座ったキャストに想いを馳せながら・・・。

こちらは、九龍城砦の住民たちがお米からお菓子までなんでも変えた雑貨店。今でいうスーパーのようなもの。昔の香港限定スナックからチュッパチャップス、卵まで、映画に映らない細部まで美術スタッフがこだわり再現したそう。

展示を見終わったあとは、九龍公園をお散歩。
公園内には九龍城砦の模型があり、14階建ての建物が隙間なく密集していて、ここに5万人以上が暮らしていたと思うと本当にすごい! ちなみに、模型上部のガラスに描かれている白い線画は、解体直前に日本人の研究チームが航空写真から起こした実測図だそう。

映画ファンだけでなく、観光として行ってもタイムスリップ気分が味わえる九龍城砦舞台セット展示。2028年の5月24日まで開催予定なので、ぜひ立ち寄ってみて。
開館時間:9時~19時
入場:無料
場所:九龍城砦公園の衙門(Yamen)
1950年創業の茶餐廳(喫茶店)で、絶品フレンチトーストを


次に訪れたのは、1950年に開業した老舗のレストランカフェ、茶餐廳(チャーチャンテン)。「美都餐室(Mido Cafe)」。70年以上の歴史があり、映画やドラマのロケ地としてもたびたび登場する、香港人で知らない人はいない名店です。日本の雑誌でもたびたび紹介され、ずっと憧れていた場所。外観からレトロ萌え!


一歩店に足を踏み入れると、まるで昔の香港映画のセットに迷い込んだような錯覚に。パステルカラーのガラス窓、赤いメニュー表、花柄の椅子など、すべて当時のまま。

観光客向けにリノベーションされたレトロカフェとは違い、時が止まったような、当時の生活が息づいたままの光景がここにはあります。

左の壁が、ブルーとオレンジのモザイクのタイル、右の壁は香港の旧唐楼(建物)の象徴でもあるクリーム色のタイル。配置のセンスが天才的。

階段を上がると広々とした2階フロアへ。壁には昔の香港女優のポスターや古いカレンダーが貼ってあり、天井の回転式扇風機も雰囲気満点。実は、観光客はあまり多くなくて、地元の人が今でも気軽に食事やお茶を飲みに来るそうです。


「香港で最もノスタルジックな窓際席」と呼ばれる席に座ることが出来ました。眼下には、油麻地の廟街(テンプルストリート)が広がります。緑とクリーム色の2階建てトラムが通過。時間があったら、ここからぼーっと外を眺めていたい。
カリカリ、じゅわっ。名物のフレンチトーストの美味しさに悶絶!

ここに来たら絶対に食べたいのが、創業以来の伝統的なレシピで作る「西多士」(香港式フレンチトースト)(32香港ドル/約627円)。柔らかい白い食パンを溶き卵に浸して油で揚げ焼きにし、外側カリッと中ジューシーにするスタイルが、60年以上変わらず受け継がれています。熱々のトーストにかかったメープルシロップに、冷たいバターがとろけます。

シンプルな「西多士」ともうひとつ、火腿西多士(ハム入りフレンチトースト)(48香港ドル/約941円)をオーダー。甘さと塩気のハーモニーがクセになる美味しさ。

飲み物は、香港の無形文化遺産にもなっている「牛乳奶茶」(港式ミルクティー)。(22香港ドル/約431円)。セイロンティーをストッキングのような布で濾す、昔ながらの製法で、練乳や蒸発ミルクの甘みとミルクのコクが強いリッチな風味。もうひとつは、香港名物の「鴛鴦」(ユンヨン、珈琲入りミルクティー)(22香港ドル/約431円)。意外とプレーンなミルクティよりもあっさりとした味わいで、どちらも無糖なので甘いフレンチトーストにぴったり。次回、香港に来たらまたゆっくり訪れたい!
海外からも目当ての客が訪れる、大人気のビストロで夜ご飯


今回、絶対に行きたかったのが、九龍・尖沙咀の賑わう路地に位置する「スカーレット・カフェ&ワインバー(Scarlett Café & Wine Bar)」。伝統的なフレンチをカジュアルに昇華させたビストロで、リーズナブルで美味しい料理が楽しめると人気。じつは、1840年の開港以来、ヨーロッパ人が多くなった香港においてフランス料理は、飲茶と並び、日常に根差した食文化なのです。つまり、香港では本格的なフレンチを食べられるレストランが多く、その美味しさには定評があります。

黒板メニューとオープンキッチン、金属と木材の洗練されたインテリアが、親しみやすいビストロの雰囲気。17時前に行ったのですが、予約なしで入れてなんと全品半額でした!

早い時間だったので空いていましたが、18時過ぎには席が埋まっていました。地元の方や香港在住フランス人ほか、海外から来る人も多く、予約した方が安心です。
海鮮からお肉まで。何を食べてもメイン級の美味しさ!

どれも美味しそうで迷ったのですが、ネットの評価が高かったものの中から選びました。左上から反時計回りに、「ブッラータ&希少トマト」(178香港ドル/約3,622円)、ブッラータがクリーミーでバルサミコソースとの相性がバツグン! 「和牛リブステーキ」(338香港ドル/約6,878円)、選べる付け合わせはマッシュルームに。白ワインのブイヨンが効いた「ボンゴレパスタ」(178香港ドル/約3,622円)は、アサリの身がぷりっぷり。「グリルサーモン ほうれん草添え」(218香港ドル/約4436円)、サーモンの火入れが絶妙で、濃厚なクリームソースが絡みます。「フレッシュオイスター」(200香港ドル/約4,070円)は、フランス産。小ぶりで身がしまっていて甘い!

一緒に行った中国人の友人たちも、どれも美味しくて感動していました。ここは、ぜひリピートしたい!

後日談。記事の一番最初の九龍の展示を見に行く時に乗ったタクシーの運転手さんですが、なんと昔、九龍城砦に住んでいたそうです。そのときは、城砦内の水道などのインフラ修理の仕事をしていて、取り壊されたのはやはり寂しい、と語ってくれました。こういう、偶然の出会いも旅の醍醐味です。昔の面影が消えつつある香港ですが、今だからこそ、ノスタルジックな街並みと伝統の食文化を楽しんでください。

美容・恋愛ライター、美食レシピ研究家。女性誌を中心にライターとして約20年活動。恋愛、美容、食、健康、結婚、出産など女性のライフスタイルに寄り添ったコラム執筆ほかセミナーを随時開催しています。料理家としても活動しておりアンチエイジングを目的とした料理を中心にレシピつきレストラン「Mitsue’s Kitchen」をオープン。
この著者の記事一覧へ



