【俳優・木村文乃】「内面から溢れ出るヘルシーさ」に衝撃を受けた人物は?
INTERVIEW

2025.07.04

【俳優・木村文乃】「内面から溢れ出るヘルシーさ」に衝撃を受けた人物は?

6月27日(金)に公開された三池崇史監督の最新作『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』。福田ますみ氏の実話に基づくルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)を映画化した衝撃作です。

ある日突然、身に覚えのない児童への体罰で告発された小学校教諭・薮下誠一(綾野剛さん)。マスメディアでも「史上最悪の殺人教師」として報道され、停職処分に。さらには世間からの誹謗中傷で日常が脅かされていきます。

そんな薮下を支える妻・希美を演じた木村文乃さんにインタビュー。この作品から得た教訓やご自身のネット情報との向き合い方はもちろんのこと、忙しい日々でも健康と美容を保つための食生活について伺いました。

綾野さんの動きで薮下家の日常が作られていく

――本作は実話を基にした作品ですが、脚本を読んでどんなことを感じられましたか?

このお話の基になった事件については、テレビでも報道されていたので知ってはいました。とはいえ、そこまで詳しく調べたこともなかったので、脚本を読んで改めて衝撃を受けましたね。きっと事件を知っている方も、今回の映画を通して新たな気づきがあると思います。過去の話ではなく今なお繰り返されていること、そして自分の身にも起こり得ることとして、皆さんの心に刺さるものがあればいいなと思いながら演じていました。

――世間から猛バッシングを受ける小学校教諭の夫を支える妻という役どころを演じる上で、大切にしていたことを教えてください。

今回は撮影に参加する日数が少なかったこともあって、「こういう風に演じたい」という明確なイメージはあえて作り込まないようにしていて。先に撮影に入られていた綾野さんと監督の三池(崇史)さんの間ですでに作られていた世界観があったので、そのパーツの一部になりにいくつもりで臨みました。

――今回、夫婦役で共演した綾野さんの演技について「台本に書いていない部分のふくらませ方が、すごくて」とコメントされていましたが、特にそのように感じた場面はありましたか?

現場で綾野さんの手によって台本以上の行動や表情が増えていくんです。もともと台本にあまり説明がなかったのもあって、「綾野さんはこういう動きをするんだ」と新鮮に感じるとともに、目の前で薮下家の日常が作られていくような感覚がしました。私はその邪魔にならないように、必死についていった感じです(笑)。

“家族”という存在の大きさを改めて感じた

――停職処分を言い渡された薮下さんに希美が、きっぱり「事実でもないことを事実だって、私は認めたくない!」と宣言するシーンが印象的でした。あのシーンはどのような気持ちで演じていたのでしょうか。

あのシーンに関しては10回以上テイクを重ねていたこともあり、正直なところ、最後のほうは自分でもどんな気持ちなのか分からなくなっていたんです。監督からも細かいオーダーがあったわけではなく、おそらくカチっとくる瞬間を待ってくださっていたんだろうと思うんですね。なので、私は色んなことをかなぐり捨てて、そこに希美さんとして立っているのが精一杯でした。

――完成した作品をご覧になって、特に印象に残ったシーンを教えてください。

実は撮影の時から「実際に使うかどうかわからない」と言われていた幻のシーンがあって。それは、薮下家の家族団欒の場面だったんです。それがカットになったことを知った時に、三池さんの作品のテーマに対するブレなさ、ひいては監督としての真髄を感じました。こういう話って紆余曲折を経て希望のあるラストにたどり着くケースが多いですし、見ている方にとってはそれが救いになると思うんですよね。でも、三池さんはあえてそうしなかった。すごくリアルだなと思うのと同時に、完全には救われることのない人生に変えられてしまったという事実が胸に刺さりました。なので希美さんのやりたいこと、言いたいことを後悔のないように…ということを常に意識していました。

――希美を演じたことで、木村さんの中で何か新たな気づきはありましたか?

私自身、日々仕事をしている中で家族のありがたみを身に沁みて感じているのですが、薮下さんがあれだけ世間からバッシングを受けてもなお、家に閉じこもることなく外に出られたのも家族の支えがあったからこそだと思うんですね。どんな環境に追いやられても、自分の味方でいてくれる家族がいれば、人として立っていられる。そんな家族という存在の大きさを改めて感じた作品でした。

「自分が呟く言葉の先に生身の人間がいる」ことを再認識する作品に

――本作は自分が被害者にも加害者にもなり得るネット社会の恐ろしさも実感する作品ですが、木村さんご自身はネットの情報と、どのように向き合っていますか?

私は「教科書よりも教科書」だと思って向き合っていますね。学生の頃って、教科書に書いてあることが正しいかどうかなんて疑わなかったと思うんです。これさえ覚えておけば、何とかなるという感じで。でも、ネット上では正しい情報も正しくない情報も一緒くたになっているので、私たちはその中から自分が真実だと思えるものを選び取っていく必要がある。その作業こそがある意味、本当の教育なんじゃないかなと思っています。

――数多ある情報を取捨選択する上でご自身の軸になっているものはありますか?

例えば、誰かが罪を犯した時にネット上には色んな意見が散見されると思うんですが、その中には「そこまで言う必要があるのかな」「これを言うことで誰が得をするんだろう」と疑問に感じるような言葉に出会うこともあるじゃないですか。そういうものに関しては、あくまで一個人の意見として話半分ぐらいに受け取っておけばいいのかなって。そうじゃなくて、その人がそこに至るまでの背景も踏まえながら、冷静に論述されている意見の場合は信頼に値するものとして素直に受け取れることが多いですね。

――改めて、木村さん自身がこの作品を通して伝えたいメッセージを教えてください。

ネットの世界に限らず、普段の日常でも自分の不用意な発言で相手を傷つけてしまう瞬間はあると思うんですよね。ただネットの場合は相手の反応が見えないために、本来は選ばないはずの言葉も遠慮なくぶつけてしまう。そういう自由に発言してしまうことへの抵抗感が、今や「ネット社会だからしょうがないじゃん」っていうワードの中に埋もれてしまっている気がしていて。この作品が今一度、自分が呟く言葉の先に生身の人間がいるということを思い出すきっかけになればいいなと思います。

内面からヘルシーで美しい人になりたい

――木村さんと言えば、日々丁寧な手料理をInstagramに投稿されていますが、何かお料理に目覚めるきっかけはあったのでしょうか?

母親の影響が大きいかもしれません。母はとにかく食事に重きを置いていて。ただ、毎朝早く起きて作っていたわけではなく、前日の夜ご飯がすごく豪華なんですよね。朝ご飯はその残りを食べて、さらに残ったものがお弁当に入る、みたいな感じでした。そんな風に食に関してはしっかりした家庭だったので、自然と私も作るようになったのかなと思います。

――食卓の彩りもバランスも完璧だなと感じているのですが、どんなことを意識していますか?

特に意識しているのは、見た目の楽しさですかね。特に私は薄味派であまり味付けをしないので、彩りや盛り付けで視覚的にも美味しいと感じられるように心がけています。あと、私はたまにSNSで流れてくる栄養素のかけ算表を見るのが好きで。そこに、例えば美肌にはたんぱく質×ビタミンC、ダイエットにはカリウム×ビタミンB6がいいとかっていうことが書いてあると、「じゃあ今日はこの食材とこの食材を組み合わせて、こういうものを作ってみようかな」と食生活に取り入れるようにしています。

――日々忙しく働いている中で料理をするのは大変だと思いますが、気が進まないこともありますか?

私はむしろ「作らせてくれ!」って思っています。あまり料理に対するネガティブな感情はないんです。ただ、どうしても疲れている時とか、夏はキッチンが地獄なので気が進まない時もあって。そういう時は、無理に作ってもあまり美味しくならないような気がするので、諦めて外食にします。

――特に最近、健康や美容のために取り入れて良かったものを教えてください。

最近は寝かせ玄米や発酵食品を添えたお弁当を撮影現場に持参しています。以前はロケ弁をいただいていたんですが、自分の体がだんだん普通の炭水化物に耐えられなくなってきているのか、胃が痛くなっちゃうことも多くて。どうしたものかと思っていた時に出会ったのが寝かせ玄米で、試してみたら自分の身体に合っていたので続けています。美味しいから食べているというよりは、それを摂っておけば一日頑張れるので、要はサプリみたいな感覚で取り入れていますね。

――最後に、木村さんは“キレイな人”と聞いてどんな人を思い浮かべますか?

以前、撮影現場で夏木マリさんにお会いした時に、「私、音楽が好きなんです」って伝えたことがあって。その時、白いシャツを着られていたと思うんですが、「あなた、自分で演奏する? 音楽はいいわよ〜」って弾けんばかりの笑顔でおっしゃった夏木さんが、もうめちゃくちゃキレイだったのを覚えています。その内面から溢れ出るヘルシーさ、美しさに衝撃を受けて、私もこんな風になりたいなと思いました。永遠の憧れですね。

Profile
木村文乃
1987年生まれ、東京都出身。映画『アダン』のヒロインに選ばれ、2006年に女優デビュー。近作に映画「ザ・ファブル」シリーズ、『LOVE LIFE』、ドラマ「七人の秘書 THE MOVIE」シリーズ、「#家族募集します」「スカイキャッスル」「宙わたる教室」など。現在WOWOWにてドラマ「I,KILL」が放送中のほか、2025年7月期にはドラマ「愛の、がっこう。」に出演、10月には映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』の公開を控えている。

■『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』作品情報
6月27日(金)より全国公開中
出演者:綾野剛 柴咲コウ
亀梨和也 大倉孝二 小澤征悦 髙嶋政宏 迫田孝也
安藤玉恵 美村里江 峯村リエ 東野絢香 飯田基祐 三浦綺羅
木村文乃 光石研 北村一輝
小林薫
監督:三池崇史
原作:福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)
脚本:森ハヤシ
映画公式ホームページ:https://www.detchiagemovie.jp/
映画公式 X:@detchiagemovie
映画公式Instagram:@detchiagemovie

©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会

ヘアメイク/井村曜子
スタイリスト/岡本純子
撮影/渡会春加
取材・文/苫とり子

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