【俳優・松田るか】『かなさんどー』は沖縄が好きな人と、沖縄の人が集まったからこそ生まれた作品
INTERVIEW

2025.02.19

【俳優・松田るか】『かなさんどー』は沖縄が好きな人と、沖縄の人が集まったからこそ生まれた作品

“かなさんどー”。沖縄の方言で「愛おしい」という意味の言葉です。

そんな“かなさんどー”をタイトルとした映画が2月21日(金)に全国公開となります(沖縄では1月31日より先行公開中)。

父・悟(浅野忠信さん)の命が危ないと聞き、故郷である沖縄県伊江島に帰った美花。母・町子(堀内敬子さん)が亡くなる間際にかけていた電話を取らなかった父を許せずにいる美花は、故郷に戻ってもずっと険しい表情のままでした。しかし、そんな中で母の日記を見つけます。そこに記されていた母と父の「愛おしい秘密」を知った美花は、ある行動を起こすことに。

監督はガレッジセールのゴリとしても活動する照屋年之さん。照屋監督が描く愛の物語を、松田るかさんは美花としてどのように体現したのか。お話を伺いました。

共感よりも美花という人を尊敬する

――松田さんはご自身が演じられた「美花」については、どんなふうに捉えていらっしゃるんでしょう?

感情の起伏が激しい子だな、と。お母さんが優しかったからあれだけ感情が出せる子に育ったんだろうな、と思いました。いつも我慢しないといけない子だったら、言えませんし。感情をあらわにしても包んでくれる家族がそこにあったんでしょうね。

――美花に共感するところはありましたか?

私はただただ、美花を尊敬していました。

地元にいられないぐらい父親のことを許せなかったのに、ちゃんと戻って看取ってあげられるってすごく慈悲深い子ですよね。父親を許しているかどうかわからないでけすけど、25~6歳でそういう決断をしているのは尊敬です。自分を見つめることってすごく怖いのに、それがちゃんとできる子なんだな、と思いましたね。

――美花の中でもきっと、葛藤があったんでしょうね。

そうですね。美花が父親を許したかどうかは、結局は細かく描かれていないですし、観た方によってきっと感じ方は違うと思うんですけど、私は許してないんじゃないかと思っているんです。でも、許す、許さない、じゃなくて、受け入れたんですよね、美花は。

それに、父が許せないということより、母を愛していたから動けたのかな。父親は認知症が進んでいて美花のことを妻だと勘違いしているんですけど、このまま亡くなると、父から見た母はすごく冷たい人になってしまう。あんなに優しかったのに。それはお母さんにとっても冒涜なんですよね。きっと、父を許すことより、母が大好きだったということがきっかけとしてあって、母のために動けたのかな、と思います。

照屋監督だからこその作品の空気感

――監督は松田さんのことを「全てにおいて器用な女優さん」とコメントされていましたが、松田さんから見て、監督はどんな人ですか?

優しくて真面目で、作品のことを我が子のように愛している人です。作品ファーストですね。

最近は、どこの現場も時間もお金もなくてカツカツになってしまいがちです。この作品の撮影は、予備日がなかったので結構ギリギリだったんですけど、それでも大事なシーンはしっかりと時間を取ってくださっていました。「良い画が撮れるんだったら僕たちはいつまでも待てるし、だから用意ができたら声かけて」と言ってくださったんです。

どうしたら作品が良くなるかを一番に考えて動いてくれる方だったので、役者としてはすごく嬉しいです。そして、監督がそういう方だからこそ、周りのスタッフも独りよがりにならないんですよね。作品が良くなるために動こう、とみんなの想いがひとつになるのですごく嬉しい現場でした。

――そんな空気もあるのか、作品自体もすごく温かみを感じるものになっていました。沖縄という風土も関係していそうにも感じたのですが…。

たぶん、地元の人たちが集まって撮っているから、というのはある気がしますね。

浅野さんも敬子さんも、なるべく沖縄の人になれるようにと、私や監督に「これってイントネーションはどう?」と積極的に聞いてくれました。浅野さんは沖縄が好きで、旅行にもよく行ってらっしゃるんですけど、「いつも癒やしをもらってばかりだから、いつか沖縄に恩返しをしたいなとずっと思っていた。だからこの機会があってすごく嬉しい」とおっしゃっていて。

沖縄が好きな人と、沖縄の人が集まったからこそ生まれた空気なのかもしれません。撮影自体は10日間ぐらいだったんですけど、家族になれましたし、沖縄で撮影したことで地元感も出たのかな、と思います。

――おおらかな空気と、優しい雰囲気が観ていても届くようでした。

空気感は沖縄で撮られた、ということがあるかもしれないですね。

でも、もともと監督の作風が、笑ってゆるんだところを泣きで締める、というものなので、それと沖縄の空気が混ざったんでしょうね。

伊江島に助けられた

――舞台が沖縄の伊江島ということですが、松田さんも沖縄出身。伊江島には行かれたことはあったんですか?

実は、初めて行ったんです。沖縄に住んでいると、わざわざフェリーに乗って島に行くことがないんですよね。だから、本島から遠くに見えた伊江島をあんなに近くで見たのは初めてでしたし、作中で出てきた「ゆり祭り」も知らなかったんです。

――実際に訪れてみて、印象はどうですか?

たまたま行った日がとっても晴れていたので、伊江島のいいところだけを吸収して帰れました。もちろん高い建物もないですし、すごくのどかでゆっくり時間が過ぎていて、結果としてすごく良かったな、と思いました。

最後のシーンも伊江島で撮影したんですけど、日が落ちたあとの撮影でした。映画なので一部しか切り取られていませんが、本当に結構な面積にずっとゆりが続いていて、あとは海があるだけ。現実に引き戻されるものが何もなくて、だからこそ集中して、別世界にいるような気持ちで撮れたと思います。

――確かに、まるで異世界のような映像でした。

予備日もなかったので、ここで咲いてなかったらもうどうするんだ、と。でも、本当に満開の時期とぴったりとかぶったんです。かすかにゆりの匂いがしていて、というような状況で撮影できたので、本当に伊江島に助けられた気がします。

東京にいるだけで美肌に?「かなりチートだと思います」

――やはり沖縄は日差しも強いかと思うのですが、そんな中で美肌のために気をつけているのはどんなことですか?

沖縄の日差しが強すぎて、東京にいたらどうってことないんですよ(笑)。かなりチートだと思うんですけど、私の場合はこまめに日焼け止めを塗らなくてもどんどん白くなっていきます。あと、沖縄って水道水が硬水寄りなんです。だから髪や肌がギシギシになりがちなんですけど、東京は軟水なので本当に楽させていただいてるな、と。

――てっきり小さい頃から何かされているのかと。

小さい時は、母が絶対に日焼けはするなって言っていましたね。「今はいいけど25歳過ぎてみ!」って脅かされて(笑)。10歳ぐらいから芸能の仕事をしているので、ずっとやっていくんだったら、日焼けをしちゃいけないよ、って。高校からは日傘をさして通っていましたし、外に行く時は長袖を着たり、海には行かない、だとか、自分で決めてやっていました。

――最近、取り入れた肌管理方法はありますか?

10代の無頓着だった時は、とにかく肌に何かのっていれば大丈夫だと思って化粧水と乳液だけだったんですけど、そろそろちゃんとしなきゃいけないわねと思って、工程を増やしました。導入液を使うようになったり。

――調子が良くなりました?

毛穴はだいぶきゅっとなりましたね。

あとは食べ物は昔から気をつけています。油断しているとビタミンやたんぱく質も摂れなかったりするじゃないですか。なので、バランスを考えて基本はおうちで食べるようにしてます。やっぱり現場が続くとどうしてもお弁当が続きますし。あとはお風呂に入るのも湯船に入るとか汗をかくとか。そういったところに重点を置いていますね。

Profile
松田るか

1995年生まれ、沖縄県出身。地元沖縄でスカウトされ、芸能界デビュー。『仮面ライダーエグゼイド』(2016)でヒロインを演じ、注目を集める。主な出演作品に、『賭ケグルイ』シリーズ(ドラマ/映画)、連続テレビ小説『ちむどんどん』(2022)、大河ドラマ『光る君へ』(2024)、映画『としまえん』(2019)、『レディ加賀』(2024)など。3月公開予定の映画『STEPOUT にーにーのニライカナイ』、6月から上演予定の舞台「W3 ワンダースリー」といった待機作がある。

■『かなさんどー』作品情報
2月21日(金)全国公開
(沖縄では1月31日より先行公開中)
出演:松田るか 堀内敬子 浅野忠信
K ジャージ 上田真弓 松田しょう 新本奨 比嘉憲吾 真栄平仁 喜舎場泉 うどんちゃん ナツコ
岩田勇人 さきはまっくす しおやんダイバー 仲本 新 A16 宮城恵子 城間盛亜 内間美紀
金城博之 前川守賢 島袋千恵美
監督・脚本:照屋年之
主題歌:『かなさんどー』/作詞・作曲:前川守賢
配給 :パルコ
公式サイト:https://kanasando.jp/
公式X:@kanasando_movie
公式Instagram:@kanasando_movie

©「かなさんどー」製作委員会

撮影/芝山健太
取材・文/ふくだりょうこ

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