【俳優・比嘉愛未】コンプレックスだらけだった自分も、肯定できるようになった

【俳優・比嘉愛未】コンプレックスだらけだった自分も、肯定できるようになった

1月12日(日)22時15分よりスタートする新ドラマ「フォレスト」(ABCテレビ・テレビ朝日系)。同棲してまもなく1年を迎える恋人同士の恋愛模様と、登場人物それぞれが抱える“嘘”、そこに隠された“真実”が、鬱蒼と生い茂る森のようにさまざまな思惑が絡み合いながら展開していくオリジナル脚本のラブサスペンスです。

本作で、クリーニング店を営む純(岩田剛典さん)と共に暮らすフラワーギフト会社勤務の楓を、比嘉愛未さんが演じます。

ドラマの見どころや役作りのことはもちろん、「第20回クラリーノ美脚大賞2024」の30代部門に選出された比嘉さんに、ご自身のメンテナンス方法についても伺いました。

ストーリーの重さに反して笑顔の絶えない現場

――まずは、この作品のオファーを受けた時のお気持ちをお聞かせください。

台本を読んだ時に、今までにない世界観の作品になるのではないかと、すごくわくわくしたのを覚えています。

今回一緒に主演を務めさせていただく岩田さんは、これまで一度もお会いしたことがなかったんですが、アーティストで役者さんでもあり、ご自身でアート作品も制作されているということは以前から存じ上げていました。そんな表現者として幅広く活躍されている多才な方と物作りができるのはとても嬉しく、一緒にどういうものを作れるだろうか、という期待感もありました。

――今回、楓を演じるにあたって役作りで何かしたことはありますか?

今回は、あえて特別なことは何もしないようにしました。というのも、本作には色んなキャラクターが登場するんですが、それぞれ個性があって、怪しげで、とにかく濃いんですよ(笑)。

その中で、楓は比較的ニュートラルで、気が強すぎも弱すぎもせず、感受性が豊かで愛嬌もあって、誰もが「こういう子いるよね」と思うような女の子です。そんな楓が色んな嘘や真実にぶつかって、翻弄される姿がこの作品の見どころだと思うので、彼女は彼女で抱えているものはあるんですが、あまりその闇に引っ張られすぎず、フラットに演じたいと思っています。

――撮影も半分近くまで進んでいるとのことですが、現場の雰囲気はいかがですか? 印象的なエピソードがありましたら、教えてください。

このドラマは「フォレスト」というタイトルが示すように、それぞれの人物が抱えている嘘や秘密が複雑に絡み合って、迷宮に入っていくようなディープで重ための作品なんですが、打って変わって現場はとても明るくて。キャストもスタッフもプロフェッショナルな上に陽気な方ばかりで、いつも笑顔が絶えません。

特に、楓の母である鈴子を演じる松田美由紀さんが最高にチャーミングで、愛され力が抜群なんです。私は役柄的に本当は嫌いにならなきゃいけないのに、もう大好きになっちゃって困ってます(笑)。

他の共演者の皆さんも役との切り替えがすごくて、お話自体が重ためだからこそ、スタンバイ中はみんなと作品に関係ない話で盛り上がったり、助監督さんたちも本番前にオヤジギャグを言ってきたりするので、「やめてよー(笑)」と言いつつも、すごく和むので救われていますね。だから、撮影がない日も「早く現場に行きたいな」と思いますし、大変なシーンの撮影が続いている時でも、「この人たちも一緒に戦っているんだな」って前向きな気持ちになります。そういう仲間意識が1ヶ月も経たないうちからできていたので、これは絶対に良い作品になるな、と確信しました。

――先ほど、岩田さんと物作りをするのが楽しみだったとおっしゃっていましたが、実際に共演してみていかがですか?

岩田さんとはB型同士で、お互いに絵を描くのが好きなことなど、色々と共通点があって、無理に合わせなくても自然体でいられます。ただ全てが同じではなくて、私は猪突猛進タイプなんですが、岩田さんはどちらかと言うと、物事を冷静に分析しながら落ち着いて構築していく方なので、性格は割と真逆なんです。でも、だからこそ一緒に物を作る上ではありがたくて、お互いにないものを持ち合ってセッションしながら、日々プラスアルファされていっているような感覚があります。

“嘘”が一概に悪とは言えない

――本作は“嘘”が一つのテーマになっていますが、ひとくちに“嘘”と言っても、誰かを騙すための嘘や、誰かを守るための嘘など、色んな種類があると思います。比嘉さん自身、この作品を通じて“嘘”について何かお考えになったことはありますか?

日々、考えてますね。本当におっしゃる通りで、私もこの年齢まで生きてきて一度も嘘をついたことがないわけではないですし、嘘にも色んな種類があって一概に悪とは言い切れないということはわかっているつもりです。

それこそ、お芝居だってある意味、嘘ですよね。でも、嘘だからこそ、私じゃない誰かの人生をリアリティを持って生きることで、観てくれている方に何かしらの気づきを与えられたらいいなと思いながら日々奮闘しています。

だから、私も楓と一緒で割と正義感が強くて、頑固で真面目すぎるところもあるんですが、正解なんてないんですよね。本人にとっては、それは正しい嘘だったかもしれないし、受け取り方は果てしなくあるなと思いました。

――「もし愛する人が貴方の知らない顔を持っていたら、変わらずその人を信じ、愛し続けられますか?」というドラマのキャッチコピーも印象的ですが、比嘉さんだったらいかがですか?

厳しい問題ですね(笑)。まず私自身、嘘がつけないタイプで全部顔に出るし、勘も鋭いほうなので、家族や友達に何かあったらすぐに気づいて、「どうしたの? 何かあった?」ってストレートに聞いちゃうんですよ。特に大切な人であれば、なおさら見て見ぬふりはできないですね。

家族だってすべてを知っているわけじゃないし、もちろん言いたくないこともあると思います。だけど、せっかく一緒に生きていくのであれば、できれば色んなことを分かち合いたいじゃないですか。だから、嘘の内容にもよりけりですが、許すか許さないかは一旦置いといて、なるべく一緒に向き合いたいなという精神でいます。

――4話までの台本を拝見させていただきましたが、それぞれの登場人物が抱えている嘘が少しずつ明らかになる一方で、なかなか大元の真相に辿り着けない、良い意味でのもどかしさがありました。考察も盛り上がりそうですが、比嘉さんは視聴者の皆さんにこの作品をどのように楽しんでほしいですか?

私もミステリーや考察モノが好きで、どっぷり物語にはまって抜け出せない感覚になることがよくあります。そういう風に沼ってほしいです(笑)。台本を読むだけでも面白いんですが、さらにブラッシュアップして、視聴者の皆さんにも純粋に面白いと思わせたいですし、「次はこうくるんじゃないかな?」という予想を超えて、良い意味で裏切っていきたいと思います。

――ちなみに、比嘉さんはこの物語の結末を知った上で演じられているのでしょうか?

実は私も含め、出演者はまだ誰も知らないんですよ。だから、みんなと「これからどうなっていくんだろうね」って言いながら、ドキドキして演じています。それも新しいですよね。物作りにも色んな形があって、最初から展開を全て知った上で演じることもあれば、今回のようにリアリティーショーみたいな感覚で演じることもある。それぞれの面白さがあるんですが、不器用な私は順を追って知っていくほうが感情移入しやすいので、とても助かっています。

コンプレックスも肯定できるようになった

――比嘉さんといえば、先日「第20回クラリーノ美脚大賞2024」の30代部門に選出されました。授賞式で披露されていたミニスカート姿がとても素敵でしたが、その美脚を維持するためにしていることはありますか?

足に特化して何かをしているというわけではないんですが、常に何かしらの運動はするようにしていますね。もともと私は運動が好きで、20代の頃から自分に合うエクササイズを模索してきたんですが、最近はマシンピラティスに週1回は必ず通っています。

ただ、ずっと同じだと体が慣れてきちゃうので、10年以上続けているキックボクシングで筋力アップを図ったり、パーソナルトレーニングで全身を引き締めたり、それぞれの専門分野の方に意見を聞きながら、色々と組み合わせて体の基礎を作っている感じです。

というのも、役者の仕事は本当に体力勝負なんです。特にドラマの撮影期間は約3ヶ月間、早朝から夜中まで、自分じゃない誰かになって感情をフルで動かすので、それだけでかなりエネルギーと体力を消費します。常にそれができる体でいなきゃいけないなと思っているので、もちろん美容も一つの目的ですが、表現者としての土台を作るという意味でも運動は絶対に必要なメンテナンスだと思っていて。その結果として、たまにこういう賞をいただけると純粋に嬉しいなって思います。ちょっと照れ臭いですけどね(笑)。

――週1といえども、お忙しい中で時間を作るのは大変だと思いますが、比嘉さんにとって運動はリフレッシュになっている部分が大きいのでしょうか?

そうなんですよ。運動は私の中で嫌々やっていることではなくて、純粋に体を動かすと気持ちいいからやるっていう感覚なんです。先日も朝一の撮影で中空きが結構あったので、その間にピラティスに行ってきました。それくらい私にとってはリフレッシュになっていて、別に美意識が高いわけでもなく、ただ単純にやりたくてやっていることが結果に繋がったから嬉しくて続けているだけなんです。

だから、自分が好きなエクササイズを見つけられたら勝ちなんですよね。ひとつに絞らないことも大事で、例えば、今日は追い込んでもいいなと思ったらキックボクシングに行くとか、体を伸ばして呼吸を巡らせたいなと思ったらピラティスに行くとか、自分の心身と向き合って、どういう状態かを確認しながら選ぶようにしています。

――比嘉さんはいつも凛とされていて、お心もすごく健やかな印象を受けます。

それこそ嘘がつけない人間なので、自分の気持ちも手に取るようにわかるんです。それがたとえマイナスな感情でも、「今、私はなんでこう思っているんだろう」って向き合って、あまり引きずらないようにしていますね。特に撮影期間中はタイトなスケジュールの中で動いているので、どうしても思い通りにいかないことも多いんですが、そういう時は帰りの車の中で大熱唱してデトックスしています。マネージャーさんは可哀想ですけど(笑)。

あとは撮影が終わるたびに、必ず地元の沖縄に帰るようにしています。家族に会うのも大事なんですが、沖縄の空気や自然の中に身を置くと自分をリセットできるんですよね。

私はそうやって人や自然からもらったエネルギーを循環させていきたいと思っているんです。このお仕事も地位や名誉のためにやっているわけじゃなく、ただ単純に自分がもらったものを人に渡して、そこからどう広がっていくかを見たいだけで。だから、そういうありのままの自分が心まで健やかに見えているのだとしたら、とても嬉しいです。

――私たちからすると非の打ち所がないように見えますが、そんな比嘉さんでもコンプレックスに感じることはありますか?

たくさんありますし、特に学生時代はコンプレックスだらけでしたね。今だからわかるんですが、当時の私は子どもながらに学校という閉鎖的な社会が苦手で、特定の価値観を押し付けられている感覚がありました。だから、学生の頃はもっと内気だったし、人見知りで閉ざした子だったんです。

そんな私が人前に出る仕事に就いて、芸歴20周年を迎えるなんて自分でもびっくりで。最初はお芝居も上手くできなくて、悔しい思いをしたのも覚えています。だけど、そういう時期があったからこそ、今があるんですよね。今まで経験した悲しみも悔しさも、お芝居に昇華して、プラスに変えられているので。

だから、コンプレックスはあって当たり前で、それを駄目だなんて思わないでいたいなって今は肯定できるようになりました。すごく時間はかかったけど、それに気づくことができて良かったなと思います。

Profile
比嘉愛未(Manami Higa)

1986年生まれ。沖縄県出身。2005年に映画デビュー。2007年に連続テレビ小説『どんど晴れ』でヒロインに抜擢され、ドラマ初出演・初主演を果たす。主な出演作に「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」シリーズ、「にぶんのいち夫婦」「推しの王子様」(ともに2021)、「作りたい女と食べたい女」シリーズ、「大病院占拠」(2023)、「新空港占拠」「スカイキャッスル」(ともに2024)など。

■「フォレスト」作品情報
2025年1月12日より、毎週日曜22時15分放送
※放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信
出演:比嘉愛未 岩田剛典
ファーストサマーウイカ 中川大輔 川島鈴遥 石山順征 町田悠宇
水野美紀 / 森田甘路 ふせえり 堀部圭亮 / 松田美由紀
脚本:山岡潤平
原案:龍居由佳里
主題歌:「What Is Your Secret?」
三代目 J SOUL BROTHERS (rhythm zone)
制作著作:ABC テレビ

ヘアメイク/奥原清一(suzukioffice)
スタイリスト/後藤仁子
撮影/須田卓馬
取材・文/苫とり子

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