【俳優・小西桜子】自分の昔の言葉に勇気づけられることもある
12月20日(金)より公開となる映画『ありきたりな言葉じゃなくて』。
念願のドラマ脚本家のデビューが決まった主人公の藤田拓也(前原滉さん)。夢を掴んだ矢先に、訪れたキャバクラで出会った“りえ”と意気投合しますが、ある晩、りえと遊んで泥酔した拓也が目覚めたのはホテルのベッドの上。掴んだと思ったはずの夢が、この夜を境に変化していきます。
拓也の運命を握るりえを演じた小西桜子さんに、役のこと、小西さんが大事にされている「書くこと」についてお話いただきました。
難しかった「りえ」という人間
――作品への出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。
私が演じた“りえ”はすごく難しいんですけど、主人公である拓也に大きな影響を与える重要なキャラクターです。演じさせていただいたら、良い経験になるだろうな、と思いました。
――脚本の制作段階から監督らともお話をされていたのだとか。
今までにも意見を求められることはあったんですけど、今回は監督や脚本家さんがこちら側の意見を取り入れたい、ということで積極的に意見を求めてくださったんです。それもあって、今までにないぐらい、思っていることは提案させていただきました。私はクランクインの少し前ぐらいからなんですけど、主演の前原さんはわりと前の段階から参加していらしたと伺っています。
――その上で、撮影に入られる前にどのように役を作っていかれたんですか?
脚本では描ききれていない今までのりえの人生をしっかりと理解しておかないと、演じるのは難しいんじゃないかな、と。そこは監督と、りえにどんなことがあったのか、情報として埋めてから臨みました。
――そこまでの人生があるからこそ、この作品でのりえの言動に繋がるんですよね。
ある一面では、りえというキャラクターは悪い人だというふうに捉えられるんですけど、わかりやすく表現しなくても、それだけじゃない部分を自分の中で持っておきたいな、ということは監督との共通認識でありました。そこはたくさん話し合いましたね。
――監督とお話された中で、印象に残っているものはありますか?
りえはわからない部分がすごく多いキャラクターなので、作り手側としてどう向き合うべきか、ということはたくさん話し合いました。
例えば、りえの良くない行動についても、「どうしてこういうことをしたのか」というところをしっかりと考えて、男性と女性で考え方が全く違うんだなということは話し合いの中で感じましたね。それも面白いな、と思いながら、私は同性として、どんなふうにりえを理解してあげられるかな、と向き合ったのが印象的です。
いつかは自分の言葉を形に残したい
――拓也は脚本家ということで、書くことが人生の中心となっていますが、小西さんも書くことを大切にされているとか。
文章を書くのは大好きです。自分がその時に思ったことが日々更新されていく感覚があるので、それをアウトプットがてら、書くのが好きですね。
――以前はブログに書かれていましたが、ブログ自体がサービス停止してしまったんですよね。今はどういうふうに書かれているんですか?
ブログがなくなって細かく発信することはなくなったんですけど、日記は変わらず書いています。調子がいい時は3~4ページぐらい書いちゃいます。読み返した時にも、自分の昔の言葉に勇気づけられたり、初心に返ったり、ということが多いので、これからも続けたいな、と思います。
――日記を書こうと思う人はたくさんいらっしゃると思うんですが、続けていくのが難しいもののひとつです。小西さんはいつごろから日記を書く習慣がついていたんですか?
覚えているのは中学生ぐらいの時ですね。自己表現じゃないですけど、どこか発信したいなという気持ちで書いていました。
――書くためのペンやノートにもこだわったり?
自分が好きなものだと書き終わってからも手元に置いておきたいな、と思うので、できるだけテンションが上がるものを選ぶようにしています。
――今後、こういうものを書いてみたい、という願望はあるんですか?
エッセイとか…写真集などは出させていただいたことがあるんですけど。そういう機会がいただけるように頑張らないとなんですけど、自分の言葉を本という形に残したいな、と思っているので、いつかやってみたいですね。
撮影期間中に小西さんが夢中になったものは?
――拓也からは、脚本家としての第一歩を踏み出したあとの苦しみのようなものを感じました。夢と現実のギャップなどもあると思いますが、小西さんは「夢」に対してどのような思いで取り組まれているのでしょうか。
夢はある意味、麻酔みたいなものだと思っているんです。どんなに辛いことや、痛み、苦しみがあっても和らげてくれるんですよね。でも、夢からさめて現実を見てしまうと、それまで頑張れていた気持ちが切れてしまうっていうことがあると思います。
夢が現実として叶うかということと、その夢に向かってやってきた時間が報われるかって全く別のものだと思っているので、夢が叶わなかったとしても、努力してきた時間はなくなるわけじゃないんですよね。
オーディション番組を観ていると、落ちてしまった子もオーディションでこんなに輝いていた時間はかけがえのないものだなと思っていたりするので。
――何かオーディション番組を観られていたんですか?
ちょうど、映画撮影中に「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS(=日プガールズ)」のファイナルを観ていたんですけど、もう気が気じゃなくて。
本当に日プやオーディション番組で大切なのは、夢を叶えたか、叶えなかったかじゃないんだ、ということをすごく学びました。勇気をもらって、私も過程を大切にしたいな、と思いましたね。日プを観ていたのは、私も夢を追いかける初心を忘れかけていた時期だったので、日プは人生を変えたかもしれません(笑)。本当に大好きです。今日もME:I(ミーアイ)の楽曲をずっと聴いていました。
不器用なぐらいの人のほうが本物の美しさがある
――過程を大事にする、というお話がありましたが、その中で辛いな、と思った時は今までどのように乗り越えていらっしゃったんですか。
やっぱり、世の中いいことばかりじゃないので、いろんな経験をして、いろんな感情の引き出しを自分の実体験として持つということは、この仕事をしていたら決して無駄なことではないんですよね。そう思ったら、辛いことがあっても辛い役が来た時に寄り添えるな、と思えるので、この仕事に助けられているところもあるかもしれません。
――寄り添う、というところでは、「人の気持ちがわかるのか」という点はこの作品の主題のひとつでもあるかと思います。小西さんは人とわかり合うために気をつけていらっしゃることはありますか?
なるべく、相手に対して先入観を持ったり、決めてかかったりしないようにはしています。その人の一面しか自分は知らないんだ、という自覚は常に持っていたいですね。でも、ある意味、自分と相手は全く違う人間なので、考え方の違いを尊重し合えたらいい方向に向くんじゃないかな、と思うようにしています。
――最後に、小西さんが考える「美しい生き方」はどういうものか教えてください。
人間って完璧ではない部分に美しさがあるな、と思うんです。決して拓也もりえも褒められた人ではないんですけど、物語が後半に向かうにつれて、建前の部分を取っ払って本音をさらけ出した時はすごく美しい瞬間だな、って。嘘のない生き方をしている、少し不器用なぐらいの人のほうが本物の美しさがあるな、と思います。
Profile
小西桜子
1998年生まれ。埼玉県出身。大学時代の自主制作映画への出演をきっかけに俳優を志す。2020年、『ファンシー』『初恋』『佐々木、イン、マイマイン』で第42回ヨコハマ映画祭 最優秀新人賞を受賞。そのほか、映画『猿楽町で会いましょう』(2021年)、ドラマ「映像研には手を出すな!」(2020年)「スイートモラトリアム」(2023年)に出演するなど、映画やドラマで幅広く活躍している。今後、1月11日スタートのドラマ『風のふく島』(テレビ東京系)、1月14日スタートのドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』に出演する。
■『ありきたりな言葉じゃなくて』作品情報
12月20日(金)より全国公開
出演:前原滉、小西桜子、内田慈、奥野瑛太
脚本・監督:渡邉崇
原案・脚本:栗田智也
公式 HP:https://arikitarinakotobajyanakute.com/
公式 X(旧 Twitter):@vivia_movie
公式 Instagram:@vivia_movie
©2024 テレビ朝日映像
ヘアメイク/伍島琴美
スタイリスト/阪上秀平
撮影/金井尭子
取材・文/ふくだりょうこ
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