「ずっと同じことをしている」「成長していない」が嫌いな人たち=s**t kingz
s**t kingzが作・演出・出演する舞台「See」が2025年2月1日(土)から東京・新国立劇場 中劇場にて上演されます。これまでにもメンバー自身が作・演出・出演する舞台公演を上演してきており、今回の作品が6作目です。
国内外の多くのアーティストたちのコレオを担当し、自身も常に新たな表現に挑戦し続け、現在のダンスシーンをけん引している一組と言っても過言ではないs**t kingz。彼らがあえて今、挑戦したい、見せたいものとは。
舞台は「基本的にはなにも準備しないで来て、楽しんでもらえたら嬉しい」
――まだまだベールに包まれている「See」ですが、差支えない範囲で設定などをお聞きしてもいいでしょうか。
shoji:実は、今回はあまり役柄というものが存在せず、わりと素の僕たちに近い状態なんです。
Oguri:s**t kingzがそのまま舞台上にいて、いろんなことが繰り広げられていく。そこに特別なストーリーがあるわけではないんです。そのまま存在しているs**t kingzを見てもらって、何か感じてもらえたらいいな、という感じですね。
shoji:ベースとしては、「見る」ということをテーマに、s**t kingzの頭の中を見てもらうようなイメージです。いろんなパフォーマンスがありますし、いろんなファンタジーも起こります。でも、それもあくまで僕らの頭の中のこと。そんなパフォーマンスのおもしろさを観に来てほしいというところに軸があるのかな、と思います。
――そういった形にしよう、ということに着地するまでにどういった過程があったんですか?
shoji:3カ月前にはどういうストーリーにするかみんなで話し合っていたんです。どんなテーマがあるかな? というところから、どんなことをしたいか、したくないかを話し合って、前半は何回か僕がちょっとしたプロットを書いたりもしたんですけど、「なんか違うね」って。
じゃあ、何がやりたいんだろう?ということを話し合っていく中で、見えているもの、見えていないもの、見たくないもの、見せたくないもの、見えない物差しだとか、「見る」をテーマに作品を作っていったら、広がりがあっておもしろいかもしれないね、って。
――「見る」というのはシンプルですけど、いろんな切り取り方もありますね。
shoji:で、やっぱりストーリーという縛りがありすぎるものは、今回は違うかもね、という話になったんです。もっとパフォーマンスがおもしろいと思える作品作りってどうだろう? というところから、今までとは違う作品にしたいという想いで話し合ってたどり着いたのがここです。
自分たちとしても、今までとは違う作りを目指しているから、着地点がどこになるか作りながら迷ってるんだと思います。だから、わくわくもするし、少し不安もあるし、というところです。かといって今までのs**t kingzの良さを消したくないですし。
Oguri:言葉に頼らない、ダンスで伝える、という選択をとり続けているので、言葉なら一瞬で伝えられるものも、ダンスで伝えるとなると、すごく回りくどい説明になるのは、嫌だとか。ただ、何をやっているかわからないような、敷居が高いアートみたいなことも好みと違う。落としどころがどこなんだ、って6作目にして、一番でかい壁が現れましたね。
今まではそれでも何とかストーリーを繋げてやっていたんですけど、多分、自分たち自身がその手法からもちょっと離れたくなっていたのかもしれません。
NOPPO:これまではコンセプトがわりとキャッチーだったもんね。人形を使ったり、図書館とか工場とか。
shoji:今まで、自分たちとしては「分かりやすいストーリーがなくてもダンスで伝えられるんだ」ということがしたかったんだと思うんですよ。でも、きっと自分たちも次のフェーズに行こうとしているのか、これまでとはまた少し違う見せ方だったり、表現方法をしてみたいな、と。ずっと同じことをしている、成長していない、ということが嫌いな人たちなんですよね。
――今回、かなり頭を悩ませていらっしゃる部分も多いかと思うんですが、作っている中で新たな気づきみたいな部分はありますか?
kazuki:舞台に限らず、最近、感じるのが「これ、俺らやったことあるよね」というものを避けて新しいものをやる。で、新しいものができた時って、自分たちの中ではすごく自信があるんですよ。だけど、観ている人からしたら、別に僕らほど新しく感じない可能性が大いにあるんですよね。僕らは散々やってきたことを避けているから新しく感じるけど、初めてs**t kingzを観に来られる方もいらっしゃって。やったことのあることだけど、こっちのほうがはまってる、こっちのほうがおもしろいと思うものを素直に選んでいいんじゃないかな、と思う瞬間は、個人の振り付けでもありますし。そこを改めてぐるっと1周回って、自分の中でちょっと帰ってきた感覚があります。何事もセンスって本当にバランスだなっていうか、何を選ぶかだけじゃなくて、周りがどうなっているか、今こういう状況だからこれを選ぶとか、そういう総合的な感覚なんだな、深いなって、最近は思うことが多いです。
――これだけたくさんのことをチャレンジされている中で、まだ新しいことが出てくること自体がすごいですよね。
kazuki:多分、ぐるぐる回っているんだと思うんですよね。1周していろいろ経験したからこそ、10年前にも思っていたことが新しく感じているような感覚。だから、エンタメってそういうもんなんだなって気づけたんだと思います。
――観に行かれる方はどういったところを楽しみにするのがいいんでしょう?
shoji:s**t kingzの舞台の良さってなにも考えなくても楽しめるところだと思っているんですよ。でも、ダンスの良さって、僕たちがセリフを発しないがゆえに、お客さんがいろんな想像力を膨らませてくれたり、人によって観た感想が違ったりするんですよね。
何も考えたくない人が来ても楽しいし、もちろん、僕たちはそこにいろんなメッセージを込めているので、読み解いたり、みんなで考えて終演後に話し合うのもいい。どっちもちゃんとできる舞台を作りたいですね。
どういう気持ちで来た人たちも取りこぼさないようにしたいな、と思うので、基本的には何も準備しないで来て、楽しんでもらえたら嬉しいですね。
今のダンスシーンは「めっちゃいい!」
――s**t kingzさんの大きなトピックのひとつが夏の『s**t kingz Fes 2024 ももたろう』だと思うんですけど、たくさんのアーティストが出られるライブで、どういったことを大事にされたのでしょうか。
kazuki:最近自分たちで音楽を作ったりもするのでフェスに出させてもらう機会が多かったんですけど、全アーティストがアウェイだと思うんですよ。「自分たちのステージを観に来てくれるかな」って不安になったり。
ワンマンライブとは違っていろんなアーティストがいろんなファンに囲まれているからこそのメリットもあるんですけど、僕たちがつくるフェスはワンマンライブかのようなひとつの大きなフェスにしたいなという思いから始まりました。僕らが尊敬してるアーティストたちを呼んで、繋ぎ目を演出でしっかり繋いで、『桃太郎』っていうストーリーを軸にやることが最初の目標だったので、それがすごく好評で、みなさんに喜んでもらえたのが嬉しかったですね。
――出演されたアーティストのみなさんがすごく楽しそうで。
kazuki:こんなに有名なアーティストが集まって『桃太郎』を学芸会みたいに表現するってどういうこっちゃ、となったと思うんですけど(笑)。リハーサルを経て、全力で『桃太郎』という世界観を演じてくれたり、2日目のDa-iCEは僕らのフェスということでs**t kingzが振り付けた曲でセットリストを組んでくれたり、本当にs**t kingzフェスになったな、という感覚がありましたね。
――『ももたろう』も盛況でしたが、いまダンスシーン自体もすごく盛り上がっているのは感じます。
kazuki:ダンサーだと思っていた子がアーティストになるみたいなパターンがめちゃくちゃ多いですし…そもそもアーティストを目指してダンスをやっていたのかもしれないんですけど。
ダンススタジオやダンスイベントで会っていたような子たちが、今やINIにいたり、King & Prince、BE:FIRSTにいたり…そういう時代だからこそできたフェスでもあるな、と思います。ダンサーとアーティストが本当に近いというか。アーティストの本気のダンスを見られるイベントの一つでもあったんでしょうね。
――みなさんは今のダンスシーンをどういうふうに捉えてらっしゃるんですか?
kazuki:めっちゃいい!!
shoji:すごくいい時代に生きてるなって思っています。ダンサーとしてはダンスがちょうど盛り上がっていくその波に乗っているので、盛り上がっていくところを全部観られて…これほど楽しいことはないですね。
Oguri:僕らは建物のガラスの前で踊っていたけど、今はいろんな人に見てもらえるからね。
shoji:そうだね、自分だけを見て踊ってたからね。
今はみんな同じ場所で踊っていても、いろんな人に見てもらえる環境にいるからおもしろいよね。
――そんな中で、みなさんが今注目されているダンサーさんっていらっしゃいますか?
Oguri:うわあ、いっぱいいるなあ。
NOPPO:めっちゃ難しい……。
――たっくさんいらっしゃると思うんですけど……。
kazuki:最近フジテレビの番組でshojiくんと一緒にDリーグの子たちがアーティストと組んでワンシーズン戦う番組の審査員をやらせてもらったんですけど、まじまじとDリーガーの子たちのダンスを見たら、すごくうまくて。
僕の偏見ですけど、ああいうバトルで踊る人たちって、めっちゃアスリートだったと思っていたんですけど、アーティスティックな中にアスリートのスキルを持っているダンサーがうじゃうじゃいるんですよね。僕らとはちょっとジャンルが違った感じの毛色なんですけど、これが次の世代なら、日本すごいな、って素直に思ったというか。この世界がちゃんとJリーグみたいに広がってほしいな、と思いました。
Oguri:THE D SoraKiっていう子がいるんですけど、まだ21歳とかかな。
一昨年、レッドブルのダンスバトル世界大会で優勝して一気に有名になって。ダンサーであり、世界的なセレブリティの一員というか。ブランドのファッションショーに呼ばれたり、世界的な俳優やモデルと同じように、ダンサーが並んでそこにいるという世界が本当にすごいな、と思います。ダンス自体もめちゃめちゃかっこいいんです。ありのままSoraKiが踊って、それをダンスが好きな人も、そうじゃない人も夢中になって……ということが、これからもっともっとたくさん起きていったときにまたひとつ新しい存在としているな、ということがすごく憧れというか。すげぇな、っていつも思ってます。
shoji:振付師でKANUちゃんっていう女の子がいるんですけど、最近いろんな事務所の人やアーティストと話していると、よく彼女の名前が出るんですよ。これから絶対に来る振付師だなと思っていて。もうすでにいろんなアーティストを振り付けされてるんですけど、韓国の事務所の方とかと話したときにも、名前が出たりして。これは来るぞと思って、楽しみですね。
Oguri:SNSの力だよね。
shoji:そうだね。いろんなアーティストの楽曲に対して、自分で振り付けや構成をつけて作品を作ってアップしているんですよ。そういうのを見て、たくさんの人が「この子いいね」ってなっているので、SNSでちゃんと自分をプロモーションして自分の力で仕事を勝ち取ってる子だと思うんです。かっこいいですよね。
NOPPO:僕はBOXERさん。
shoji:渋くてカッコいいよね!
NOPPO:ダンス的にはめちゃくちゃ難しいことを追求している方なんですよ。もうこれは絶対できない! というようなダンスで。でもインスタの再生数は何百万にもなりますし、フォロワー数もすごいですし。めちゃくちゃ難しいことやってるけど、オシャレで使っている曲も気持ちいいし、存在自体がオシャレなんですよ。その存在自体が武器になるというか。Nulbarichさんの楽曲のMVとか1人で出演されていたり、ダンスのスキルもなんですけど、そうやって見てくれるアーティストが世の中にいたりして、またダンサーに新しい夢を与えてくれたな、と思います。
いつまでもs**t kingzのパフォーマンスを届けるために
――最後に、ボディメンテナンスでみなさんが気をつけていらっしゃることがあれば教えていただきたいです。
kazuki:最近は頑張って水をたくさん飲むようにしています。
飲んだほうがいいっていろんな人にアドバイスされるんですけど、ダンサーでたくさん汗をかくのに水を飲むのが本当に苦手で。集中すればするほど飲むのを忘れるんですよ。スタジオに入る時に買ったペットボトルが終わるまでそのままの状態だったり。水を飲む癖がないので最近は意識して飲んでます。2年飲めば効果が出るよって聞いたので、2年はがんばります!
Oguri:6月、7月くらいから朝はアサイーボウルを自分で作っています。冷凍のアサイーを使って、ヨーグルトとか、フルーツとか、ナッツとか、チアシードとかいろいろ入れて食べるっていうのを続けてますね。
――今年、流行語大賞にもノミネートていましたね、アサイーボウル。
Oguri:今年!? 知らなかった…まんまと流行にのってます(笑)
NOPPO:ずっとジムは行ってるんですけど…どんなに疲れていても絶対3日か2日に1回は、ジムには行っていますね。でもそのほうが体の調子がいいです。年を重ねてくると、身体が痛み始めるのも怖くなってきて。「あれ、今日はなんで膝がこんな痛いんだろう?」というのが怖いので動いて、強化してます。
shoji:サプリを飲みまくる! あとは毎晩寝る前に乳酸菌飲料を飲んだり、ヨーグルトを食べたり、極力腸内の環境は良くすることは心がけて日々生きております。
NOPPO:内側からね。
shoji:そうそう!
――ありがとうございました!
Profile
s**t kingz
shoji・kazuki・NOPPO・Oguriの4人で構成される世界が注目するダンスパフォーマンスグループ。アメリカ最大のダンスコンテスト「BODY ROCK」では、2010年、2011年と連続優勝。世界各国からオファーが殺到し、これまで25カ国以上を訪問。オリジナルの舞台公演は毎回大好評で、2018年の第4作目「The Library」では、全国7都市・全30公演が行われた。
2021年1月には、ダンサー発としては異例の全曲オリジナル楽曲で作り上げる<見るダンス映像アルバム>「FLYING FIRST PENGUIN」(Blu-ray)を発売、歌唱しないダンスアーティストとしてテレビ朝日「MUSIC STATION」に出演した。
■s**t kingz 新作舞台公演「See」
公演期間:2025年2月1日(土)〜2月9日(日)
会場:東京・新国立劇場 中劇場
出演:s**t kingz
shoji / kazuki / Oguri /NOPPO
プレリザーブを12月3日(火)23:59まで受付中!
受付URL:https://w.pia.jp/t/shitkingz-see/
結果発表:12月7日(土)13:00
入金期間:12月7日(土)13:00〜12月9日(月)23:59
撮影/須田卓馬
取材・文/ふくだりょうこ
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