2024.07.23
香水は“吹きかける”から“塗る”へ。パリで急増中のスキンパルファム
香水の発祥地であり、今もたくさんの香りが発表されるフランス。そんなフランスで、 フレグランスの新たなトレンドが生まれています。
「スキンパルファム」と呼ばれる新ジャンルは、人肌の自然な香りに近づけるようにデザインされたフレグランスライン。まとえばお風呂上がりのような、やさしい香りが辺りに漂います。パリでは2021年頃から、じわじわとこのスキンパルファムを使う人が増えてきました。
パリでスキンパルファムがトレンドになったワケ
スキンパルファムの人気が高まったのは、パンデミックがきっかけでした。人とのつながりはオフラインからオンラインに、組織からどんどん個人単位に。しかし、オンラインの世界では香りを感じることができません。つまりスキンパルファムは人肌のぬくもりを思い出させる香りとして、そして開いてしまった人との距離を埋める存在として、パリで人気を集めてきたのです。
それもかたちは“塗る”タイプのロールオン。スプレータイプよりも人懐っこい印象を残し、ふんわりと香るのが特徴です。では実際にパリで大人気のスキンパルファムを2つ、ご紹介していきましょう!
「AIME」のスキンパルファム
「AIME(エイム)」はパリジェンヌ御用達のスキンケアブランド。「内側からの輝き」をテーマに、スキンケア、ヘアケア、サプリメントなどの商品を幅広く扱っています。CEO は女性で、働くスタッフも女性が中心でしたが、店内は男性客の姿もあり和気あいあいとした雰囲気でした。
そんなAIMEが提案するのは、ロールオンタイプの“塗る”フレグランスです。こちらはブランド唯一のフレグランスですが、ベストセラーアイテムとしてフランスのメディアで何度も取り上げられてきました。
アルコール、防腐剤を使用していない「parfum de peau(パルファム ドゥ ポー)」は、ホホバオイルがベースの肌にやさしいフレグランス。香りのメインは、アーモンド、ホワイトムスク、サンダルウッド、ベチバーです。アルコールを使用していないため、つけたての「ツン!」という感覚がなく、スプレータイプよりもかなり早く肌に馴染んでくれます。
“塗る”タイプのフレグランスは体温との相性も抜群。シャワーを浴びたあとの、体温が一度も二度も上がったような“ふっくら”とした感覚が、その場ではっきりと蘇ります。
とはいえ香りは強くありません。ホワイトムスクを軸としながらも、人肌の香りとして「控えめ」を貫き通してくれるのです。自分にも周囲にもそっと寄り添う、お守りのようなフレグランスでした。
「versatile」のスキンパルファム
もうひとつのスキンパルファムは、2021年にパリで誕生した「versatile(ヴェルサティル )」から。こちらもCEOは女性です。
CEOのコラリー・フレブールさんは、コロナ禍で失業したあとに起業、たったの3年で世界30か国に商品を流通させたという驚愕のエピソードを持つ人物。スキンパルファムの勢いを感じさせてくれるストーリーです。
さてversatileのスキンパルファムも、アルコールフリー、防腐剤フリー、ジェンダーフリーで構成されています。香りの種類は全8種。それも“塗る”タイプのスキンパルファムのみで、すべてがヴィーガン仕様となっています。
中でもいちばんの人気は、コーヒーとクロワッサンが香る「croissant café(クロワッサン カフェ)」とのことでした。
croissant caféを肌にのせれば、気分はパリのカフェに一飛び。本物そっくりなコーヒーとバターの香りに、頬の筋肉もほぐれていくようでした。
香りの主張はもちろん、強くありません。肌からふっと立ち込める美味しい香りは、テレワークの合間や休日のひとときにもぴったりだと思います。
国も、季節も、男女の垣根も超えてまとえるスキンパルファム
スキンパルファムのほとんどは、“塗る”ことを前提に小さめサイズにつくられています。持続力は高くないものの、このサイズなら持ち運びにとても便利。会社のお化粧室でも出先でもササッとまとえるのがメリットです。
強く香らないので湿気の多い日本でも違和感なくまとえますし、季節も、性別も、年齢もすべてノープロブレム。そんなやさしく頼もしいスキンパルファム、これからのパリでますます増えそうな気がしています。
フランス在住。美容部員、メイクアップアーティストを経て、2019年からライターに。香りやコスメが大好きで、現地パリから最新情報をお届けしています。趣味はヨガと水彩画とパリの美術館めぐり。美容のほか、アート・エシカル・ライフスタイルなど、日本とフランスをつなぐ読みものを発信。
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