2019.09.02
スイスの古都で生まれた「ART OF SCENT」のフレグランス
ベルンの美しい香水屋さんを訪ねて
アルプスから流れ出る、エメラルドグリーン色のアーレ川。 U 字に湾曲した川は「中世の真珠」と謳われるベルンの街を囲み、夏になると人々が水浴びを楽しむ憩いの場となります。
アインシュタインも、ベルンに魅了され移り住んだ一人です。この街で特殊相対性理論などを発見しました。今回はそんな美しい水の街にある、小さなフレグランスショップを訪ねました。
旧市街の長いアーケード通りの一角に、「 ART OF SCENT(アート・オブ・セント)」はありました。
ひっそりとした町並みもお店のショーウィンドウも、まるで中世から時が止まっているかのようなまいです。
小さい頃から、近所の香水屋さんを手伝いながら香りのイロハを学んだという、オーナーのブリジットさん。やがてセラピストの職に就き、 障害のある子供たちの治療にアロマを取り入れ、効果を研究してきたそうです。 近年グラースで調香師として本格的に学び、こちらのお店を 3 年前にオープンしました。
ワークショップで自分だけの香りを作る
私がお店を訪ねた時は、ワークショップの最中でした。 少人数のグループ制で、数ヶ月先まで予約が埋まっているほどの人気です。
香水の基礎を学んでから、自分が作りたい香りのイメージに合わせて、 3 つのエッセンスを選んでブレンドし、自分だけの香水を作ります。
これが実際はたっぷり 3 時間かかる作業。 30 以上あるエッセンスから 3 種類を選ぶフェーズは、専門的なアドバイスなしでは迷宮入りしてしまいます。次にフラスコを使って、それぞれのエッセンスの分量を決めていきます。これが 1 滴で全体の雰囲気が変わってしまう、とても繊細な作業。臭覚を通して自分自身と向き合う、スピリチュアルな体験でもあります。
スイスへの愛が詰まった、オリジナルフレグランス
店内では、スイスをテーマにしたブリジットさんのフレグランスを購入することができます。
まず、こちらの「 Bergduft( アルプスの香り)」シリーズ 。スイスで昔から「魔法のようなヒーリング効果」があると言われてきたエーデルワイス、リンドウ、シルバーアザミの花々がそれぞれテーマになっています。 (10ml: 29CHF/ 約 3,200 円、 50ml: 79CHF/ 約 8,600 円)
私にとって、この中の「エーデルワイス」との出会いが忘れられないものとなりました。 トップノートのベルガモットから樹脂系のミドルノート、ムスクとサンダルウッドのベースノートに至る、柔らかい甘さの中にある心地よい清涼感は、初めて「寝る時もつけたい」と思えるほどでした。
次に、ユニークな「ベルンコレクション」の二つの香水をご紹介します(30ml: 69CHF/ 約 7,500 円)。クマのフィギュアは、ベルンの熊公園にいる人気者フィン君です。
そのフィン君をモチーフにしたこちらの香水「 FINN 」は、ウッドとレザーの香りでその愛らしさと野性を表現し、アーレ川(の一角)で泳ぐのが大好きな彼を象徴する瑞々しさも漂います。
ベルンコレクションのもう一つの香りが、美しく澄んだアーレ川を表現したこちらの「 AAREWASSER 」です。纏う人によって七変化する香りは、ベルンに住む人や訪れた人全てに捧げられています。ベルン観光案内所でも手にすることができる、街を象徴するフレグランスです。
一つ一つに詩的なストーリーが込められている、重厚で芸術的な「 PARFUMS D’ATELIER 」シリーズの香りも素晴らしかったです。
ブリジットさんの優しい人柄や、故郷への愛が伝わってくるフレグランスとの出会い。お店を出て空気を吸い込むと、アーレ川とフィン君の気配を感じた気がして、初めて訪れたこの街への愛着が不思議なほど湧くのでした。
映像ディレクターなどを経験し、ヨーロッパなどを旅した後に、NYに留学。そこで出会ったイタリア人の旦那さんとの結婚を機にミラノに。現在は育児の傍ら、通訳や日本食ケータリングのお仕事もしています。人との距離感やテンション、センスなどミラノの全てが大好き! 記事では街やそこに住む人々の魅力も伝えていきたいです。様々な形で日本とイタリアの橋渡しができればと思っています!
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