2019.10.31
廃棄食材を絶品の一皿に変える、アムステルダムのレストラン。
廃棄食材の現状に着目したレストランが誕生
運河が張り巡らされた酪農大国オランダ。アムステルダムから少し足を伸ばすと、見渡す限りの田園風景が広がります。
この日中心地からトラムで 10 分ほど東へ向かった場所では、古い風車が出迎えてくれました。子供の頃オランダに住んでいた私が好きだった風景との、嬉しい再会でした。
その風車の近くにあるのが、今回ご紹介するユニークなレストラン「 INSTOCK (インストック)」です。
店内は落ち着いた色調で統一された、ハイセンスな空間。
コーナーのソファスペースを見て、オランダの家はカーテンを閉めず、インテリアの美しさやライフスタイルをオープンにする習慣があることを思い出しました。オランダ人の住へのこだわりは強く、それだけにインテリアセンスは抜群です。
インテリアの一部のようなこのオレンジ達は、スーパーでの廃棄処分を免れて、こちらのお店に引き取られたもの。
なんとこちらのレストランでは、大きすぎたり小さすぎたりキズものだったり、または供給過多という理由で、廃棄された食材だけを仕入れて料理しているのです。
世界で全食材の 1/3 が廃棄されているという現状は、環境問題の観点からもあまりにも深刻です。 まだ十分食べられる食材を大量廃棄する現実を目の当たりにしてきた、大手スーパーの社員 4 人が、「フードレスキュー」をコンセプトにこちらのレストランを立ち上げました。
現在はオランダ国内に3店舗展開し、今まで 35 万キロ以上の食材をレスキューしてきたそうです。
INSTOCK では、そんな枯れ際が美しい花や、ドライフラワーを各テーブルに飾っています。季節感の演出にも一役買っていて、お店の雰囲気ともしっくり調和していました。このセピア感は、若々しい花には出せません。
廃棄食材からは想像できない、妥協なしの絶品料理
「 READY TO RESCUE FOOD FOR LUNCH? 」と書かれたランチメニュー。
「一流以外の食材を、創造性と工夫で一流の味に」という信念のもと、その日届いた食材を見て、シェフ達が日々メニューを決めていくそうです。
この日はシェフのオススメを一品作っていただくことにしました。
ドリンクは、ラズベリーソーダをオーダー( 3.5 €/約 400 円)。
さっぱりとして甘酸っぱく、おいしくいただいたのですが、これが驚きの特大サイズ。日本のカフェなどで出るドリンクの 3 杯分はあると思って間違いないです。
シェフにお任せしたお料理も運ばれてきました( 7.5 €/約 900 円)。
ランチでも妥協なしの、アートな盛り付けにも感激。ボリューム満点で、オーダー時にもう一品頼もうとした時、止められた理由がわかりました。食材廃棄ゼロを目指すこちらのお店で、「オーダーしたものを残す」ことだけはやっぱり避けたいなと思ってしまいます。
チーズのフリットは、食感と香りが良く、ビールと相性バツグンであろう濃厚な味。ミートボールとビーツのクロケットも揚げたてアツアツで美味でした。皮ごと揚げた人参のフリットは自然な甘さがじわっと口に広がり、一番シンプルなのに一番感動してしまいました。
お店のレシピ本も売られています。英語で書かれていたら欲しかったのですが、残念ながら全てオランダ語でした。。
正直、グルメな記憶もイメージも全くなかったオランダ料理。それだけに INSTOCK のシェフ達が廃棄食材から作り出す創作料理の美味しさと美しさは、目から鱗でした。
お店オリジナルのクラフトビールもあります。
次回はこのビールと夜のコース料理で、思い切りレスキューフードしたいと思います!
映像ディレクターなどを経験し、ヨーロッパなどを旅した後に、NYに留学。そこで出会ったイタリア人の旦那さんとの結婚を機にミラノに。現在は育児の傍ら、通訳や日本食ケータリングのお仕事もしています。人との距離感やテンション、センスなどミラノの全てが大好き! 記事では街やそこに住む人々の魅力も伝えていきたいです。様々な形で日本とイタリアの橋渡しができればと思っています!
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