2026.03.19
【俳優・伊藤健太郎】人生で経験することすべてに何かしらの意味がある
3月20日(金・祝)にABC/テレビ朝日系で放送されるドラマ「TYPEなに? 性格診断で人生決めちゃいます」で、伊藤健太郎さんが1人5役に挑戦! 人間の性格を36タイプに分類した“TYPE診断”によって人生が定められる架空の世界で、就職活動にいそしむ学生・結城翔と、性格診断をもとにAIが生成した4つの異なるタイプの未来の自分=“協調タイプ”“堅実タイプ”“カリスマタイプ”“研究タイプ”を、それぞれ演じます。
4タイプの自分それぞれの言葉に耳を傾けて、どの未来を選ぶか結城が葛藤するさまはおかしさもありながら、一抹の不安も感じさせる──多重構造的なドラマになっているのも興味深いところです。この意欲作に挑んだことで新たな感覚を持ち得たと話す伊藤さんに、思いのほどをうかがいました。
5役、それぞれのキャラクター

──1人5役、髪型や服装や振る舞いに違いが出ていますが、伊藤さんご自身はどのような意識づけをされたのでしょう?
自分で言うのも何ですが(笑)、それぞれのキャラクターを見ていて「こんなに変わるんだ!?」と思うぐらい見た目も違いますし、立ち方や喋る声のトーンやスピードなども個々に変えて演じたので、結構分かりやすく変化が出ていると思います。それと各キャラクターが芯食ったことを言うタイミングがちょくちょくあって、そこには説得力を持たせたかったんですよね。たとえば“カリスマ”なら、ふざけるところは思いっきりふざけつつ、しっかりと言うポイントは押さえる、といったような──。それぞれの個性を出しながらも、ちゃんと要所要所で刺さるように…と、テンションのチューニング合わせみたいな部分はすごく意識していました。
──ちなみに、それぞれのキャラクターごとに最初から最後までお芝居を撮っていく方法だったのか、それともシーンごとにだったのか…どういう撮り方だったのでしょうか?
今回はシーンごとに撮っていきました。まず、就活生・結城としてのパターンを録って、次に“カリスマ”〜“研究”といった感じですね。段取りの時には、各キャラクターの代役の方々がいてくれるんですけど、本番では誰もいない空間に向かって“壁打ち”のように喋るという──。一度、ライティング(照明)を組み直すのに時間が掛かってしまったカットがあって、確か“協調”キャラでのお芝居だったんですけど、急きょ“研究”タイプに変えて撮ろうということになったんです。そのあと、“研究”を撮り終えたら、また違うキャラになって、もう一度“協調”に戻って残っていたカットを撮るという流れになった日は、さすがに混乱しましたね。「え〜っと…“研究”はこういう感じだったけど、“協調”はこうだから…」みたいに、自分の中で交通整理しながら演じたことを強烈に覚えています(笑)。
性格診断に思うこと


──確かに頭がこんがらがりそうですね(笑)。先ほど伊藤さんがおっしゃったようにキャラクターそれぞれに芯を食ったセリフがあって。笑いをまぶしつつ、咀嚼するとゾクッとする怖さを内包しているように感じました。
僕自身も、“研究”が結城に対して言う言葉は鋭利なナイフで刺すぐらいの感情を込めましたし、観てくださる方がドキッとするようなインパクトを残せたらいいなと思いながら現場に臨んでいました。手応えとしても、ラストを含め、いろいろな受けとめ方や捉え方ができる作品になったという感覚があります。
──それこそサブタイトルじゃないですけど、「性格診断で人生を決めていいのか?」と考えさせられますよね。
個人的にそのような性格診断を否定するつもりはないんですけど、ちょっと前に友達と一緒にいた時に恋愛に関するタイプ診断の話になったんですよ。僕、その時は何なのか知らなくて、言われるがままにやってみたら一途なタイプという診断結果が出て。「お〜、いいじゃん!」なんて言われてる横で友達が、あんまりウケの良くない診断結果が出て、「うわ、最悪だぁ」なんて言っているんですね、わりと真剣に。確かにいくつかのタイプに分けられるというのも理解はしていますし、それぞれ当てはまる部分もあるにはあるんですけど、「自分はこのタイプと診断されたから、こういうチョイスをする」というのは、ちょっと縛られすぎじゃないかなぁ、と。もちろん価値観も人それぞれなので、何を指針にするかは自由ですけど、自分の感覚的には「みんな、何かにすがりたいのかな?」というのが正直なところだったりします。

──誰もがそうだというわけじゃないですけど、人生においてもリスク回避を選ぶ傾向にある気がします。「失敗したくない」という思いが強いと言いますか。
僕自身は…あくまで個人的な考えとしてですけど、無駄こそが大事だと思っているんです。たとえば人と仲良くなる時って、無駄話を通じてだったりするじゃないですか。そういう無駄な時間や会話が、いつからか“タイパ”という概念によって良くないモノとして広がってしまった気がしていて。もちろん失敗しないに越したことはないですけど、人生で経験することすべてに何かしらの意味があって、そこに気づけるかどうかが本質なんじゃないかなぁ、と。なので…決して上から言うわけじゃないですけど、(診断の結果に)「最悪だぁ〜」と言っていた友達にも、この「TYPEなに?」を観てほしいですね(笑)。
──何が起こるか分からないから、人生は面白かったりもしますよね。
今回に限らず、作品をつくるにあたって何かしらのメッセージやテーマを込めているつもりではあるんです。それは僕だけじゃなくて、スタッフの皆さん、キャストの皆さんそれぞれにきっと何かがあって、表現をしていると思っていて。観てくださる方すべてに刺さるとは思ってはいないものの、何かの瞬間にふと「あのドラマで描かれていたことって、こういうことだったんだな」と思い浮かぶことがあればいいなと願わずにはいられなくて。高望みだと分かってはいるんですけど、この「TYPEなに?」は少しでも多くの方に届いてほしいですね。
伊藤健太郎が考えるエンターテインメント

──ただ、思ってもみなかった届き方がする場合もありますよね。今はSNSや配信もありますし…。
この前、小学生の子から「『今日俺(今日から俺は!!)』観ました〜」って言われたんですよ。「え、何で観たの?」と聞いたら、「TikTokで切り抜きが流れてきた」と。いや、本当はダメなんですけどね! でも、そうやって5〜6年前の作品が今の小学生に届くこともあるんだな、そういう時代なんだなと思ってしまったのも事実で──。
──エンターテインメントの在り方も刻々と変わりつつありますよね。
極論を言ってしまえば、映画やドラマが世の中から消えてしまって、僕ら俳優という職業がなくなったとしても、世界は何も変わらずに動いていくと思うんです。でも、道路をつくっている人や電気工事をしている人がいなくなってしまったら、大変なことになるじゃないですか。それでも、僕らのような職業が成立する世界は、何かがちょっと豊かなんじゃないかと思ってもいて。娯楽かもしれないですけど、たったひと言のセリフにも人の感情を揺れ動かす力がある。遥か昔からずっと娯楽が残り続けているのは、そういうことなんでしょうね。中には、映画やドラマの登場人物に影響されて、その職業を目指した人、夢を叶えた人もいらっしゃるでしょうし。木村拓哉さんの作品を見て美容師になった人、パイロットや検事を目指した人がたくさんいると思うんです。それだけでもエンターテインメントの存在価値はあると思います。

──その俳優という職業に対して、伊藤さんは今どのような思いを抱いているのでしょうか?
それこそ、人生でいろいろと経験してきたことが無駄にならない職業だと思っていて。自分が感じたことがお芝居に還元されることが多々ありますし、僕が演じた人物に少なからず心を動かされたと言ってくださる方もいらっしゃるので、そこに対する責任を感じるようにもなりました。さっきの「今日俺」を観てくれた小学生然り、自分の知らないところで作品が届いていて、しかも今は国内外どこでも観られる機会があるわけじゃないですか。僕自身は会ったことがないたくさんの人たちが自分のことを知ってくれていて、役を通じて応援してくださったり、出演している作品を観て笑ったり泣いたり…いろいろな感情を抱いてくださるという環境も、よくよく考えてみるとスゴいことですし、不思議な気持ちにもなります。何でしょうね…面白いけれども人への影響に対する責任も重いぶん、複雑で難しい職業だなというのが、現段階での捉え方ですかね──。
──どこまでやっても正解がないから面白い、という側面もあります?
どの仕事にも言えると思うんですけど、それなりに長く続けてくると「これは初めてやることだ」と思ったり感じたりすることが、少なくなってくるじゃないですか。そのぶん経験値が上がっていることにもなるわけですけど、初々しく思える感覚はどんどん減っていってしまう。もちろん、作品ごとに新たな気持ちで臨んでいますし、役が変われば気持ちもリセットされるんですけど、アプローチしていくプロセスにおいて、何となく自分の中で“教科書”的なものができてくるんです。でも、「TYPEなに?」は自分の教科書にはなかった芝居が多々あって、そこは痺れましたし、いい意味での疲労感がありました。
撮影中は、頭の中に火花が…!?

──おそらく肉体的な疲労というよりも、脳を5倍回転させたことによる疲れなんでしょうね。
頭の中でバチバチッって火花が散っているのが見えましたから(笑)。真面目な話、「TYPEなに?」の撮影中は、家に帰ると熱はないのに頭だけが熱いんですよ。走っていないのに息切れするような感覚と言いますか…そんなふうになることも久しくなかったので、初心に戻る瞬間もありましたし、すごくいい経験をさせていただいたなという感謝の気持ちですね、今は。まだまだ自分は経験していないことのほうが多いし、味わったことのない感覚がたくさんあるんだなと知れたのも、ありがたかったです。ただ、撮っていた時は本当に大変でしたし、よく5日間で撮りきったなって思うと、改めて驚きますけど(笑)。
──え、5日であの膨大なセリフ量の芝居を5人分撮ったんですか!?
しかも「TYPEなに?」のクランクイン2日前まで、別の作品に入っていたんですよ。で、インする前日に台本をしっかり読み込んだんですけど、一度閉じて…「さて、どうやって(セリフを)入れていくか」と考えて考えて…いるうちに、どんどん時間だけが過ぎてしまって。「ヤバいな、もう深夜0時(※クランクイン当日)になるぞ……!」と、ようやくスイッチが入るという(笑)。なかなかスリリングでした。でも、時間があったらあったで、逆にダレていたかもしれないですね。今回は追い込まれた状況だからこそのアプローチもあったと思いますし、現場でも瞬発的に生まれた芝居もあったので、集中力も含めてライブ感がいい効果を生んでくれた気がしています。
「ほんの小さなことでも幸せに感じられる人」は素敵

──今後も出演作が続々待機している多忙な伊藤さんですが、もしお時間ができたとして、どこか行ってみたい場所ってありますか?
ニュージーランドのテカポ(南島のテカポ・レイク)に行ってみたいんですよ。星空がすごく美しいらしくて──ふつう、星を見る時って見上げるじゃないですか。でも、テカポは標高が高くて空が近いのもあって、ふつうに目線の先に星が見えるそうなんです。それこそ「TYPEなに?」を撮っている5日間は、「あぁ、テカポに行きたいなぁ」と妄想しながら乗り切ったところもありましたね(笑)。何にしても景色が美しくて…あと僕はサーフィンをするので、ニュージーランドかオーストラリア、バリといった海のあるところへ行きたいです。
──もう1つ。美しい、というワードに掛けまして、伊藤さんが“キレイ”だと思うのはどんな人でしょう?
やっぱり心がキレイっていうところにつながりますよね。僕自身も心がけていることで、そうありたいと思っていることですけど…たとえば、ほんの小さなことでも幸せに感じられる人は、男女問わず素敵だな、と。日々忙しくて、なかなか趣味を楽しむことができなかったり、それこそ旅行に行けない、リフレッシュする時間がなかったりというカツカツの中でも、小さなことを幸せとして受け取れるかどうかで、日常が変わってくる気がするんです。仕事が終わって家に帰ったら何か美味しいものを食べよう、ということを楽しみに1日がんばれることって、素晴らしいことだな、と。自分も忙しい時、よく考えるんです。「忙しくしているからこそ、“終わったら美味しいものを食べる”ことを楽しみにできるんだ」と。そんなふうに幸せを自分の中で増幅できる人でありたいですね。

Profile
伊藤健太郎
1997年生まれ、東京都出身。2014年にドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」で役者デビュー。以降「今日から俺は!!」、NHK連続テレビ小説「スカーレット」、大河ドラマ「光る君へ」など話題作に多数出演。近作に「略奪奪婚」「北方謙三 水滸伝」など。また、3月27日公開の『鬼の花嫁』、8月7日公開の『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』の映画2作品の公開を控えるほか、主演舞台「赤坂檜町テキサスハウス」が5月8日より上演予定。
■スペシャルドラマ「TYPE なに? 性格診断で人生決めちゃいます」作品情報
2026年3月20日(金・祝)深夜0時24分~ABCテレビ(関西)にて放送
★ABCテレビでの放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信!
出演:
結城翔 伊藤健太郎
協調タイプの結城翔 伊藤健太郎
堅実タイプの結城翔 伊藤健太郎
カリスマタイプの結城翔 伊藤健太郎
研究タイプの結城翔 伊藤健太郎
脚本:どくさいスイッチ企画 ふくだももこ
監督:ふくだももこ
ヘアメイク/花村枝美(MARVEE)
スタイリスト/前田勇弥
撮影/Marco Perboni
取材・文/平田真人
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