2026.01.23
【俳優・齊藤京子】卒業してからも「やっぱりアイドルって素敵だな」と思う
1月23日(金)に公開される映画『恋愛裁判』は、アイドル=恋愛禁止という不文律がある世の中に対して一石を投じる作品。しかも、かつて実際に恋愛をしたことでアイドルが所属事務所から損害賠償請求された事実をもとに、気鋭の作り手・深田晃司監督が社会的な問題を人間ドラマへと見事に昇華させています。また、題材となっているアイドルもディテールをしっかりと描いているのが特徴。ドキュメンタリーを観ているかのようなリアリティーを追求しています。
劇中アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーを演じるキャストもオーディションで選ばれましたが、アイドル経験者と現役アイドル、研修生の経験がある5人で固められました。そのセンターにして後に恋愛を選ぶ主人公・山岡真衣役を、人気グループ・日向坂46の一期生としての活動を経て、現在では俳優として目覚ましい活躍を続けている齊藤京子さんが演じます。
自身もアイドルだったからこそ理解できる心情や、俳優としてカメラの前に立つ現在の心境、そして“キレイだと思う人”と『恋愛裁判』絡みで克服できたことなどについて、多々語っていただきました。
2作品で共演した俳優からの賛辞の言葉

──グループ在籍時に初めて出演したドラマ「Re:Mind」から8年強が経ちますが、役を演じるという表現を今、齊藤さんはどう捉えているのでしょうか?
ようやく最近になって、演じることが楽しいと感じられるようになってきました。何でしょう…前よりも“掴めてきたのかな”という感じと言いますか。特に昨年はずっと作品が続いて、「1つの撮影が終わると、また次の作品へ」と常にお芝居をしている状況だったこともあって、俳優業の生活リズムに慣れてきた感覚が自分の中ではありましたね。
──初主演映画『恋愛裁判』では第78回カンヌ国際映画祭をはじめ、海外でも大きな反響を呼びました。映画は世界へと繋がっている、という観点も持ち得ましたか?
そうですね、まさか自分の初主演映画でカンヌ国際映画祭に行けるとは思ってもいなかったですし、日本だけじゃなくて世界中の方が自分のお芝居だったり、作品を観てくださっているという状況もまったく想像していなかったので夢みたいでしたし、また新たに頑張ろうという気持ちにもなりました。

──キャスティングは偶然だと思いますが、『恋愛裁判』で山岡真衣の恋愛相手・間山敬として共演した倉悠貴さんとは、『教場 Reunion/Repuiem』(※『〜Reunion』はNetflixで配信中、『〜Requiem』は2月20日(金)から劇場公開)で星谷舞美と氏原清純として再び共演しています。彼のお芝居から何かインスピレーションを得た、ということはありますか?
倉さんに対しては、とことん“俳優としてスゴい方”だなと思っていて。何て言えばいいんですかね…日常から俳優として生きていらっしゃって、たとえば現場でちょっとふざけた感じの会話をしていても、俳優という職業をすごく誇りに思っていて、お芝居を楽しんでいらっしゃるのが伝わってくるんです。そういった感じのことを『恋愛裁判』と『教場〜』という2つの作品でご一緒する中で、私は感じていました。
──そこ、もう少し深掘りしてもいいですか?
本当に何気ない話をしていても、それが倉さんの中では単なる会話では終わらないような印象があるんです。他愛のない話も俳優業に結びつけていると言いますか──。
そもそも、2つの作品で続けて共演するって結構な長い時間を共にすることになるじゃないですか。年齢が近ければ、共演者の方とも友達や仲間のような感覚で距離が近づいていくことがあるんですけど、倉さんとはあくまで俳優同士なんです。ただ、私自身はまだお芝居の歴が浅くて自信を持って「私は俳優です」とは、とても言えないですし、ましてや『恋愛裁判』は初主演映画で、しっかりと映画の現場に入るのは今作が初めてだったんですよ。

──確かに、『#真相をお話しします』や『(LOVE SONG)』は出演シーンが限られていましたよね。
はい、なので謙遜でも何でもなく自分が俳優として未熟だっていうことも自覚していたんです。そのうえで、『教場〜』でまた倉さんとご一緒した時に「『恋愛裁判』での私…どうだった?」と聞いてみたんですよ。そうしたら「“何だろう、この人は”と思った」と、安易な褒め言葉じゃない答えが返ってきて。でも、そんな風にお芝居に対して妥協しないところが、まさしく俳優なんですよね。
それについては、『教場〜』の生徒役でご一緒した方々も「倉くんは根っからの俳優だね」と、おっしゃっていて。撮影の合間はすごくフレンドリーな現場で、(笠原敦気役の)金子大地さんもめちゃめちゃ気さくで面白くて場を和ませていらっしゃったんですけど、倉さんはちょっと雰囲気が違うと言いますか…別にピリピリしているわけじゃないんですけど馴れ合わない、みたいな感じだったんです。でも、だからこそ倉さんが「齊藤京子のお芝居は面白い」と言ってくださったことが、すごく嬉しくて。

──それって、俳優としては最上級の賛辞じゃないですか!
『恋愛裁判』のオーディションの時、倉さんが相手役を務めてくださったんですけど、後からお話した時に「あの時、齊藤さんは正直、技量的には『う〜ん』という感じだったけど、芝居していて一番面白かった」と、言ってくださって。その言葉を聞いて、自分ではすごく腑に落ちたんです。確かに俳優としては全然まだまだだから、下手だと言われても仕方ないなと思っていたんですけど、何となく“うまいお芝居はできなくても、面白いお芝居はできる”という自覚があったんですね。というのは、アイドル役のオーディションということですごく気合いが入っていましたし、絶対に山岡真衣という役をつかみ取りたいという気持ちがあったからこそ、“必死に”ではなく“ナチュラルに”と思って、その場では演じたんです。その感じがたぶん面白かったんじゃないかなって、妙に納得したところがあったんですよね。
「山岡麻衣は自分が演じたい」


──うまいお芝居が必ずしも良いお芝居になるわけじゃないのが、表現の面白さかもしれないですよね。それと…結果論になるかもしれないですけど、山岡真衣役はもはや齊藤京子さん以外に考えられないです。要所要所で似ていませんでした?
そうなんですよ、細かいところで自分と真衣が重なる部分が多かったので、完成した映画を観ていても面白かったですね。グループ時代の私は真衣のように絶対的なセンターという存在ではなかったですけど、どことなく似ているキャラクターで“絶対的センター”を演じたら楽しいだろうなっていう想像ができたので、それもあって…真衣は自分が演じたいなという思いが強まったんです。
──しかも、初期の脚本だと真衣はセンター適性のあるタイプには描かれていなくて、齊藤さんが台本を読んで感じたことが台本に反映されていったと聞いています。
初期の段階だと、真衣は歌もダンスもあんまり得意じゃなくて、端っこにいるようなタイプで人気もそこまである感じじゃない、というキャラクター設定がト書きされていたんですよ。でも、台本を読み進めていくうちに、AKB48さんに憧れていた私が思うアイドル像だったり、実際に日向坂46のメンバーとして活動してきた経験からも、「山岡真衣って、すごくセンタータイプの子だな」っていうイメージを抱いたんです。私自身はむしろ、端っこにいるようなタイプの真衣を演じるのが楽しみだったんですけど、台本を読んで率直に感じたことを、深田晃司監督と雑談のような雰囲気でお話させていただいて。
そしたら、次に上がってきた台本では真衣がセンターになっていて、設定が結構変わっていたんです。「えっ、あの雑談でお話したことがガッツリ採り入れられているんだけど、ここまで変わっちゃって大丈夫なのかな!?」と、不安に思ったくらい変更になっていて(笑)。さすがにビックリして、深田監督に「こんなに変わっちゃって本当に大丈夫ですか?」と何度も聞いちゃったんですけど、観てくださる方に状況が分かりやすく伝わるんじゃないかなという意味でも、結果的には決定稿の設定でよかったなと思っています。

──その深田晃司監督は、誰ひとり心身の傷つくことがない理想的な制作現場を標榜したうえでエッジの効いた作品を撮るクリエイターとして知られていますが、今回ご一緒されてみていかがでしたか?
ひと言で表すのなら、「本当に優しい方」ですね。とても優しくてあたたかい方だからこそ、『恋愛裁判』という作品と山岡真衣という役への思い入れがより強まりましたし、クランクアップの日は「こんなに素晴らしい経験をすることは、もう二度とないです」と言いながら大号泣して──。最近も取材や舞台挨拶などで深田監督とお会いする機会があったんですけど、何か元気が出てくるんですよ。お会いするたびに、人として素敵だなと思いますし、本当に心から尊敬できる方だなと感じています。
──「アイドルと恋愛」という社会的なテーマと人権について描いた深田監督ならではの問題提起もありつつ、アイドルを映画で描きたいテーマのための“装置”としてではなく、リアリティーを伴って映し出している真摯さがありますよね。
はい、それこそ自分が表現したかったアイドルのリアリティーが映画全体に投影されていたなと、私も思います。ドキュメンタリー映画のような感じに仕上がるといいなと考えていたんですけど、まさしくそういう映画になっているなと思いましたし、お芝居も…誤解を恐れずに言うと、「ちょっと棒読みっぽくない?」と思われたとしても、ナチュラルな表現を選択したかったんです。まったく誇張をせず、ふだん隣にいる人と話すようなテンションとか声量でセリフを言っていったんですけど、この作品では最適解だったんじゃないかなと自分では思っています。
齊藤京子さんの考える“キレイ”な人とは…

──当然ながら作品と役が違えば、お芝居も変わるわけで、『教場 Reunion/Requim』では異なる齊藤さんの姿が見られる、と。ちなみに、役を通してではありますけど、「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーとしての日々を経たことによって、アイドルに対する考え方に変化はありましたか?
そうですね…でも、やっぱり“アイドルは夢や元気をもらえる存在”だっていうところは変わることがないですし、改めて思いが深まった感じもします。ただ、アイドル時代から私はほかのメンバーよりも一歩引いた目線でグループのことを考えたり、客観視することがあったんですけど…卒業してからも「やっぱりアイドルっていいな、素敵だな」と、傍から見ていてすごく思うんですよね。なので、現役のアイドルの皆さんには誇りを持ってステージに立ってもらえたら、元アイドルの1人としては嬉しいです。

──素敵なエールです。では、サイト名にちなみまして…京子さんが“キレイ”だと思う人についてもお聞かせください。
それこそきれいごとじゃなく、男女問わず外見よりも心がキレイな人に惹かれるところがありますね。「この人と一緒にいると、自分もいい人になれる気がする、穏やかな自分でいられる気がする」みたいに思える人が素敵だなって思います。深田監督がまさしくそうで、監督とご一緒している時の私は、ちょっとふだんの私とは違うんですよ。それは深田監督から良い影響を受けているからなんだと思うんですけど、その私もつくっているわけじゃなくて、ウソ偽りのない齊藤京子なので──やっぱり深田監督のキレイな心に触れて感化されるんだろうなと思います。
──満点の回答じゃないですか! では、最後に…もし少し長めのお休みがとれたら、どこへ行ってみたいですか?
実は元々飛行機が得意じゃなくて、海外に行きたい気持ちはありつつもプライベートでは断念していたんですけど、カンヌ国際映画祭へ行った時に克服したんですよ。長い時間、飛行機に乗っていても大丈夫だったので、これからは海外に行く機会も増やせたらいいなと思っています。

Profile
齊藤京子
1997年生まれ。東京都出身。アイドルグループ日向坂46の元メンバー。卒業後は俳優として映画やドラマでの活躍の場を広げている。主な出演作に、映画『#真相をお話しします』『(LOVE SONG)』『教場 Reunion/Requiem』、ドラマ「泥濘の食卓」「いきなり婚」「あやしいパートナー」「娘の命を奪ったヤツを殺すのは罪ですか?」など。
■『恋愛裁判』作品情報
2026年1月23日(金)公開
出演:齊藤京子 倉悠貴
仲村悠菜 小川未祐 今村美月 桜ひなの
唐田えりか 津田健次郎
企画・脚本・監督:深田晃司
共同脚本:三谷伸太朗
主題歌:「Dawn」yama (Sony Music Labels Inc.)
製作:東宝
ⓒ2025「恋愛裁判」製作委員会
ヘアメイク/木戸出香
スタイリスト/藤井エヴィ
撮影/須田卓馬
取材・文/平田真人
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