
2025.06.01
【パリの新スポット】香水メゾンが手がける、美しき「フレグランスカフェ」
フランスといえば、やっぱり香りの国。なかでもパリは、さまざまな香水メゾンが軒を連ねる、フレグランスラバーにとって聖地のような場所です。街を歩いているだけでも、風にのって漂ってくる香りにときめいてしまうことがあります。
そんな香りの都・パリで、近頃ちょっとユニークな動きが…。「LANCOME(ランコム)」や「Diptyque(ディプティック)」といった名だたる香水メゾンが、期間限定でオリジナルのカフェをオープンしているのです。
「香る」だけでなく、「見る」「味わう」ものとして広がりつつあるフレグランス。今のパリで注目を集めている、“体験型”フレグランスカフェの世界観に迫ってみました。
香りを「味わう」。香水メゾンの新しいコンセプト

ここ数年、パリの香水メゾンで広がっているのが、香りを「五感で体験してもらう」という新しいコンセプト。ブランドの哲学や美意識を、カフェやスイーツといった味覚体験、インテリアなどを通して伝えていこう! という試みです。パリではこれが大ヒットしているそうで、2022年頃からじわじわと増えてきました。
実際に、「Dior(ディオール)」や「Diptyque」、「YVES SAINT LAURENT(イブ・サンローラン)」など、これまでにも多くのブランドがカフェやレストランをオープンしています。注目度も高く、現地パリでは“ポップカフェ”として、期間限定ながらたくさんの女性たちで賑わっています。
今回は、初夏の空気が心地よい現在のパリで、特に話題を集めている2つのスポットを巡ってきました。
LANCOMEが手がける「Café de la Rose」

2024年、シャンゼリゼ大通りにあるLANCOMEの旗艦店に、「Café de la Rose(カフェ・ドゥ・ラ・ローズ)」が誕生しました。マスカラやファンデーションといったコスメで有名なLANCOMEですが、その原点は、実はバラのフレグランス。
ブランドの象徴でもあるバラをモチーフにしたこのカフェでは、2024年に世界一のパティシエールに選ばれた、ニナ・メタイエ氏が手がける特別スイーツを味わうことができます。


ピンクとゴールドを基調にした可愛らしい店内には、誰しも気分が上がることでしょう。カフェは旗艦店のエントランスからすぐの場所にあり、外にはテラス席も用意されていました。もちろん、コスメやフレグランスもショップの奥に数多く並んでいます。

そんな空間で発見したのは、LANCOMEのフレグランスからインスピレーションを受けたという、見た目麗しいスイーツの数々。すべてCafé de la Roseのために考案されたそうで、バラのテイストとモチーフがあちこちに散りばめられていました。

ラインナップには、クッキーやフィナンシェ、レモンタルト、そしてオリジナルのケーキが並んでいます。すべてがテイクアウト可能で、チョコレートやクッキーが入ったBOXはパリ土産としても喜ばれそうです!

中でも一番人気のスイーツは、バラのかたちを模した「La rose Signature(ラ・ローズ・シグネチャー)」とのこと。花びらのように美しいケーキは、アプリコットのコンポート、ハチミツとバニラを含んだやさしい香りが印象的でした。
こうしたスイーツを、フレグランスを感じながらいただくという体験も新鮮で、ブランドファンならずとも、思わず立ち寄りたくなる場所かもしれません。

嬉しいことに、Café de la Roseは期間限定ではなく、毎日無休でオープンしています。シャンゼリゼ大通りというアクセスしやすいロケーションにあるので、パリを訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてくださいね。
■Café de La Rose Lancôme
52 avenue des Champs-Élysées, 75008 Paris
https://www.lancome.fr/cafe-de-la-rose-lancome-x-nina-metayer/cafe-de-la-rose-nina-metayer.html
Carolina Herreraのコーヒーショップ

2025年5月には、パリのマレ地区にポップアップカフェ「Good Girl Coffee Shop(グッドガール・コーヒーショップ)」が登場していました。こちらは10日間だけの期間限定カフェ。ニューヨークのファッションブランド、「Carolina Herrera(キャロライナ・ヘレラ)」が展開する、フレグランスとエンターテインメントを組み合わせた“体験型”のスペースです。

Carolina Herreraのフレグランスといえば、“ピンヒール型のボトル”でピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。今回オープンしたカフェは、新作フレグランス「Very Good Girl Elixir(ベリー・グッドガール・エリクシール)」の発売を記念したもので、ニューヨークのコーヒーショップ風に特別にデザインされたそうです。

赤とブラックを基調にしたシックでエネルギッシュな内装は、可愛らしさが光るLANCOMEのカフェとはまた違った魅力がありました。訪れていたパリジャン、パリジェンヌたちも、みな元気はつらつ! パンツにスニーカーといったラフな装いに、電動自転車でふらりと来店する人々…。その姿に、今のパリらしさが重なるようでした。
パリでは、クラシックな街並みに相反するような、軽やかで自由なライフスタイルを送る人々をよく見かけます。車が減り、ここ数年で急増したサイクリストたちが、歴史あるオスマン建築の間をすいすいと駆け抜けていく光景。石畳の街角には、現代アートのオブジェや絵画が突如現れ、新と旧が絶妙に交差する。そんなコントラストが、今のパリを象徴する一つの景色になっているのです。

さて、店内のカフェスペースでは、香水のノートからインスピレーションを受けたというドリンクとスイーツが並び、目と鼻の両方で楽しめるラインナップが揃っていました。

抹茶&チェリーのラテや、ウベ(紅山芋)ラテといったフレーバーラテも、今のパリでは大人気。ちなみにスイーツは、フランスで活躍する実力派パティシエ、ニコラ・パシエロ氏によるオリジナルレシピです。メニューの注文で、新作フレグランスの試供品をいただくことができました。


Good Girl Coffee Shopはカフェだけではありません。アクティビティも盛りだくさんで、なんと毎朝9時30分からは女性DJによる「モーニングパーティー」が行われていました!
さらに期間中は、このカフェをスタート&ゴール地点としたランニングイベントも開催。午前中のパリの街を仲間とともに走り抜け、ゴール後はカフェでゆったりと一息…という、香水のポップアップとは思えないアクティブなイベントです。

こうしたユニークな企画も相まって、たった10日間の限定オープンにもかかわらず、Good Girl Coffee Shopは連日多くの人で賑わっていました。飲食だけにとどまらない、香りとアクティビティのコラボレーションが何よりも新鮮です。
香水メゾンがより身近に
パリの香水メゾンは敷居が高い、というイメージがありました。ですが、新しいかたちのポップアップカフェが登場したことによって、以前は入りにくかった香水メゾンがより身近になったと感じます。
こちらで暮らす人々にとっても同じ印象があるのか、どのポップアップカフェも行列ができるほどの人気ぶり。「香る」だけではないフレグランスの新たな可能性に、多くの人が魅了されているのかもしれません。

フランス在住。美容部員、メイクアップアーティストを経て、2019年からライターに。香りやコスメが大好きで、現地パリから最新情報をお届けしています。趣味はヨガと水彩画とパリの美術館めぐり。美容のほか、アート・エシカル・ライフスタイルなど、日本とフランスをつなぐ読みものを発信。
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