【俳優・剛力彩芽】ダメな時は全力でどん底まで落ちるけれど、そこからはい上がった私は一回り強くなる
INTERVIEW

2025.05.07

【俳優・剛力彩芽】ダメな時は全力でどん底まで落ちるけれど、そこからはい上がった私は一回り強くなる

昨年、世界独占配信されているNetflixシリーズ「極悪女王」で女子プロレスラーのライオネス飛鳥さんの役を熱演したことで話題となった剛力彩芽さん。

そんな剛力さんが、今度は新橋演舞場6月公演『黄昏のリストランテ〜復讐はラストオーダーのあとで〜』で喜劇に挑戦します。

舞台のキーワードは「女の笑顔」と「復讐劇」。剛力さんが演じるのは、悲しい過去を持つIQが高い農林水産省の役人、鱧野貴音(はものたかね)です。

この難役を剛力さんは舞台でどんな風に表現するのでしょうか。今回の舞台への意気込みや、これからの活動のことなど幅広い質問に答えてくれました。

コメディ作品だからこそ、大真面目な姿勢で役に没頭したい

――今回ご出演される『黄昏のリストランテ~復讐はラストオーダーのあとで~』は「料理・食」を題材にした大爆笑エンターテインメントとのことですが、剛力さんの役どころについて教えてください。

私は、農林水産省で働くIQが高い女性を演じます。役どころを聞いた直後は、「IQが高い女性」をどのように表現しようか悩みました。でも、作品の内容を知るにつれて、まちがいなく面白い作品だということはわかったので本番が楽しみです。

――共演者は、三宅裕司さん、渡辺正行さん、ラサール石井さん…とお名前を拝見するだけで面白い作品だということが想像できます。

今回の舞台は、「料理」「悲しい過去」「復讐」がキーワードですが、共演者の皆さんのお名前を拝見するだけで面白い舞台になるんだろうなと想像ができますよね。私も観客の皆さんと一緒に今回の舞台を楽しもうと思っています。

――剛力さんと言えば笑顔の印象がありますが、人を笑わせることは好きですか?

人を笑わせることは好きですが、うまくはないと思います(笑)。でも、私は笑うことが大好きなので、よく笑っています。普段の声はあまり通りませんが、笑い声だけはよく通るようで、周りの人から「笑い声や表情につられて笑顔になる」と言われます。

――周りの人を笑顔にするなんて素敵です。とはいえ、作品で笑いを取ることは難しそうです。

コメディは笑いを取りにいこうとすると冷めてしまう恐れがあるので、あえて大真面目にお芝居に打ちこみたいと思っています。そして、共演者の皆さんからお芝居しかり、笑いのセンスしかり、近くで勉強させてもらい吸収したいなと思っています。

――映画やテレビドラマに加え、最近はNetflixシリーズ「極悪女王」に出演され話題になっている剛力さんですが、映像と舞台の、それぞれどんなところに魅力を感じていますか?

一般的な連続ドラマに関しては、映像なのでやり直しがききます。でも時間がない中でシーンごとに撮っていくので全体像をしっかり把握し、感情の起伏を丁寧に紡いでいかないといけないという難しさがあります。映像の仕事をはじめたばかりのころ、監督さんから「今撮っているシーンだけが物語ではない」と言われた言葉が今でも心に残っています。

一方で舞台は1カ月ほどお稽古の時間があり、みんなで作りあげていく楽しさがあります。舞台の幕が上がる前から最後まで緊張しっぱなしですが、お客さんの生の反応が見られるのでワクワクします。

――熱海五郎一座は、実はアドリブはほとんどなく、舞台上でのハプニングも笑いに変えるそうですね。

覚悟はしています(笑)。どんなハプニングが起こるのかドキドキですが、そこも舞台の醍醐味だと思います。今は挑戦するような気持ちでいます。

「ダメな時は全力で、どん底まで落ちます」

――多忙な毎日でストレスがたまることもあると思いますが、どんな方法で自分を癒やしていますか?

私の今の趣味が2歳になった姪っ子と遊ぶことなので、姪っ子に癒やされています。2歳になって急にいろんなことができるようになってきました。おしゃべりも上手になってきて、私にいろいろと話かけてくれます。姪っ子の行動すべてがかわいくて、一緒にいるとストレスが吹き飛びます。

――どんなことをして遊んでいるのでしょうか。

姪っ子は歌を歌ったり、踊ったりすることが好きなので一緒に歌って踊っています。最近はアイス屋さんごっこをしました。「あいしゅ、どうぞ!」ってアイスのおもちゃを渡してくれて…。本当にかわいいんです。会えない時は姉が姪っ子の動画を送ってくれるので、それを見て癒やされています。

姪っ子にプレゼントする洋服選びも楽しんでいます。プレゼントした洋服を着てポーズをとってくれる姪っ子が、これまたかわいいんです。姪っ子の存在自体が私の癒やしですね。

――逆にネガティブな気持ちになってしまった時、どんな風にして自分自身の気持ちと向き合っていますか?

ダメな時はとことん落ちます。しかも全力で底まで落ちます(笑)。ひたすら部屋でマンガを読んで過ごしています。特に異世界転生系が好きなので、マンガの世界に現実逃避して、その世界観にどっぷりはまります。目の前の現実から一旦離れるんです。

――とことん落ちた時はそこからどうやって上がるのでしょうか?

私の場合、どん底まで落ちたら「ま、いっか」と気持ちが切り替わる瞬間があるんです。ふっと前向きになれる瞬間が来たら、あとは自然と上がっていきます。そこからの自分は一回り強くなれたような感覚になります。

仕事も自分の時間も挑戦を続けていきたい

――2020年に個人事務所を設立されました。このお仕事をはじめられて20年以上、個人でお仕事をされるようになって約5年の月日が経ちましたが、仕事に対する意識に変化はありますか?

独立してからもう5年なんですね。こうして改めて聞くと月日の早さを感じます。

今も周りの方に支えてもらっていますが、これまでは多くの方々にしっかりと支えてもらっていたんだな、という有難みを感じています。独立してからは自分が「知らなければならない」、そして「知っていなければいけない」という機会に直面し、すべてを把握しながら物事が進んでいく楽しさを実感しています。

――ここからはどんな風に活動をしていきたいと感じていますか?

これまでは、多くの方に「剛力彩芽」という存在を認識してもらうために駆け抜けてきました。ここからは役者としてはもちろんのこと、一人の人間としてもさらに成長するためにはどうしたらいいのか、ということを考えながら活動を続けていくことが次のステップだと思っています。

――お仕事とは別で挑戦したいことはありますか?

小さい頃から野菜好きなので、畑に興味がありました。だから農業に関わることに挑戦し、発信もしていきたいなと考えています。そのためには畑を借りて自分で耕すところからですね。私の地元にも畑がたくさんあるので、まずは地元からかな?

また、日本文化にも興味があるので歴史や食文化、華道や茶道も勉強したいです。やりたいことがたくさんありすぎて、どこから手をつけたらいいものか悩んでいます(笑)。

「極悪女王」の役作りで変化したこととは?

――透明感のある肌がとても印象的な剛力さんですが、日頃どんなケアをしていますか?

3,4年前に肌荒れがひどい時期があり、クリニックに通って先生に相談したり、スキンケアを変えたり、自分の肌に向き合う機会がありました。そこからは、自分に合う化粧水、乳液で保湿をするという基本のケアを大事にしています。

――自分の肌質を知って、自分に合うスキンケアを使うことは大事ですね。

肌質に合うスキンケアに出会ってからは本当に調子がいいです。今では、お守りのような存在になっています。スキンケアに限らず、自分の身体の状態を知った上で自分に合うものを使ったり摂取したりすることが大事だなと感じています。

――デビュー当時から体型をキープされていますが、食事はどんなことに気を付けていますか?

昔から野菜やカロリーの低い食べ物が好きなこともあって、過去の写真や映像を振り返ると、デビューしてからしばらくは痩せ過ぎでした。今は当時の体型に戻る必要はないと思っているので、低カロリーのものばかりではなく、肉や魚などのたんぱく質も意識し、バランスの取れた食事を心がけています。

――運動はどうでしょう。継続していることはありますか?

「極悪女王」の撮影に入るにあたって筋トレを週に3回、プロレス稽古も週に2回行っていました。体を大きくするために食事の量も増やしたので、10キロほど増量しました。撮影が終わってからは、その反動であまり運動をしていません。そろそろ「痩せる」ことを目的にするのではなく、「体を引き締める」ことに重点を置いたトレーニングを開始させたいなと思っています。

――役によっては体型を変化させないといけないので、俳優さんは本当に大変だと思います。

大変な面ももちろんありますが、「極悪女王」の撮影のおかげで健康や体づくりについて知識が増えました。また、自分の身体に対する考え方や向き合い方にも変化が生まれたので、良い機会でした。今はすごく体調がいいです。

「できない」と言えることも責任のある行動に繋がる

――剛力さんにとって“キレイな人”とはどんな人でしょうか? 理想の人物像があれば教えてください。

自分の好きなことを楽しんでいる人はキレイだと思います。そして知識がある人にも魅力を感じます。最近、仲良くさせていただいている藤原紀香さんは私にとってまさにキレイな人です。探求心もあり、一つひとつの行動が丁寧で理想の女性像です。

――お手本になるような方が身近にいることはいいですね。では、年齢を重ねることに関してはどんなことを感じていますか?

私の周りには年齢を重ねることを心の底から楽しんでいる方がたくさんいるので、私も楽しみで仕方ないです。とはいえ、20代に比べて体力は少し落ちたように感じています。だから「休む時は休む、そして働く時は働く」というように緩急をつけることを意識しています。

また、自分の年齢を意識して限度を知るということが大事だなと感じています。20代はどんなことに対しても「できます」と言っていましたが、今はできないと思ったら「できない」と相手に伝えることも責任ある行動だと思います。

――30代に入り、考え方にも変化が生まれたようですね。

未来に目を向ければ今日という日は自分にとって一番若いので、今この瞬間をしっかり楽しみたいです。こんな風に考えられるようになったのは、「極悪女王」のような転機になるような作品に出会えたからかもしれません。

これからもさまざまな役にチャレンジしていき、「この役を剛力彩芽が演じるの?」と思われるような意外性のある作品にまた出会えるよう、チャンスを逃さないよう、努力を続けていきたいです。

Profile
剛力彩芽
1992年生まれ、神奈川県出身。小学生より芸能活動を始め、雑誌「Seventeen」などで活躍。俳優としてもさまざまなドラマや映画、舞台に出演している。近年はNetflixシリーズ「極悪女王」(2024)で女子プロレスラー役を演じ大きな話題に。2025年6月2日(月)から熱海五郎一座『黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~』に出演する。

熱海五郎一座 新橋演舞場シリーズ第11弾
『黄昏のリストランテ ~復讐はラストオーダーのあとで~』
作品情報
2025年6月2日(月)~27日(金)新橋演舞場で上演
出演:三宅裕司 渡辺正行 ラサール石井 小倉久寛 春風亭昇太 東貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演)
ゲスト出演:羽田美智子 剛力彩芽
作:吉髙寿男
構成・演出:三宅裕司

撮影/渡会春加
取材・文/安田ナナ

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