
2025.04.11
名付けて「駅直結型純喫茶」!札幌に多いのはなぜ?おすすめ喫茶5選も
元TBSアナウンサーで、現在は故郷・札幌を拠点にフリーアナウンサーや文筆家としてご活躍のアンヌ遙香さんによる連載「now HOKKAIDO by Anne Haruka」。
今回は、「駅直結型純喫茶」について。アンヌさんの熱量溢れる文章をお届けします。
第十一回のテーマは…「駅直結型純喫茶」
ふるさと札幌に拠点を戻して、もうすぐ一年。
札幌に帰ってきて思うのは、とにかく純喫茶が多い。コーヒー豆を売っているお店が多い。コーヒー好きが多いという事実!!
実際、2020年の「コーヒーへの年間支出額が多かった都市ランキング」で、札幌市が第1位というデータも(総務省統計局「家計調査」)。
二人以上の世帯における年間支出額は8691円で、全国の平均支出額6988円を約1700円上回る結果…
とのことで、少々古いデータではありますが、コーヒー好きが多いと考えてもよい数字ではないでしょうか。
そう思って見渡せば、コーヒーイベントも盛んな札幌。
北海道の、一年を通して冷涼な気候や湿度の少なさも、実は豆の管理や焙煎に適しているといわれています。さらに、口当たりが優しく飲みやすい「軟水」の水質が、コーヒーをより美味しく感じられるポイントとのこと。
東京でよく目にするいわゆるチェーン店のコーヒーショップも良いですが、むしろ地域密着型の、落ち着いて、コーヒーそのものを楽しむような喫茶店が多い印象です。
そして、中でも私が目をつけたのが、ただの純喫茶ではない、「駅直結型純喫茶」が非常に目立つということ。ちなみに、駅直結型純喫茶というのは私が命名しました。
これ、どういうことかといいますと、北海道は一年の多くを雪で覆われるため、道民は真冬はなるべく外を歩かず、繁華街を歩く際はなるべく地下街で移動を済ませたいという欲求が非常に強くあります。
札幌駅と大通駅をつなぐ地下歩行空間(チカホ)は真冬は特に多くの賑わいを見せ、知り合いに会う確率もとても高い!
要するに、地下鉄を降りてからそのまま目的地のビルに地下から直結し、そこで軽食を楽しむ、という、ビジネスパーソンには嬉しすぎる喫茶店が目立つことに気づきました。
これにより、札幌のコーヒー文化+地下街文化=札幌の駅直結型純喫茶が栄える! という構図が生まれるのです。
そんなわけで今回は、題して「昭和の香りに平成レトロ!! モーレツ社員の味方、札幌の駅直結型純喫茶が熱い!」。どうぞ!
1. 焙煎窯元 菊地珈琲 大通西11丁目店

札幌市内に数店舗ありますが、私はこちらの店舗がお気に入り。
こげ茶色のカウンター、テーブル、椅子の落ち着いた空間。カウンターの雰囲気が素敵! 奥のスペースには喫煙席が。

モーニングセットを注文したところ、オリジナルブレンドコーヒーに、厚切りトースト、ゆで卵、バナナ付き。
トーストがとにかく厚切りで驚き!! 斜めに半分にカットされ、さらに切り込みが入っているため、食べやすく、ほいほい口に入れてしまいます。
表面には、バターが塗られ、さらに懐かしのミニサイズイチゴジャムまで。よくホテルバイキングで拝見する、アレです。もちもちサクサクふんわりなトーストは、やはり幸せな気持ちになります。

お店の雰囲気も、どこかジブリ映画の『おもひでぽろぽろ』の現代パートを思い起こさせる懐かしみと、都会的な平成レトロが融合している空気。一人で朝にこそ行きたいお店です。
>>詳細はこちら。
2. さえら

こちら、知るぞ知る名店であることを知らずに入ってしまいました。札幌に来たら1度は行ってみたい!といわれるほどの、伝説のサンドイッチ専門店。
1975年にオープン。昭和レトロ感が漂う駅ビルの地下街には、さらに下に降りていく階段が。

こういう、入り口が階段型の店舗って、中の様子がわからないからちょっとドキドキしますよね。ご安心ください、階段を降りた先には、広々とした落ち着いた喫茶空間が広がっていました。
名物のサンドイッチは10種類以上の具材から2種類を選ぶスタイルで、フレッシュなフルーツを甘さ控えめのクリームで挟んだ「フルーツサンド」と、タラバガニの脚とフレークをたっぷり使った「たらばがにサラダサンド」が看板メニュー。
私は平日のお昼過ぎにお邪魔しましたが、残念ながらタラバガニのサンドイッチは完売!
ただ、メニュー表を見てみてそのバリエーションの豊かさに驚き。1種類は甘めでもう1種類はおかずっぽいもので…などなど。その時の自分のお腹と口のテンションと相談しながら最良の組み合わせを考えるのがたまらない。
開店と同時に食事やテイクアウトのお客さんがひっきりなしに訪れる人気店です。

私はこの日、名物のフルーツサンドとスモークサーモンのサンドにブレンドコーヒーを合わせました。
猫ちゃんのかわいいオブジェがたくさん並んでいるカウンターをぼーっと眺めながらコーヒーを啜っていると隣には常連と思しき女性が一人。
マスターとポツポツと「お久しぶりです。最近ご主人元気にされていますか?」と会話をされている感じ。とても良い! あ、聞き耳立ててごめんなさいね。
こんな名店が自分の行きつけになったら、なんてかっこいいんでしょう…ぜひタラバガニのサンドイッチをリベンジしたいので、必ずや必ずや、また行く予定です。
3. Cafe ひので

プラスチックのショーケースに、ずらりとディスプレイされた食品サンプル。これだけでたまらないと感じる方も多いのでは?!
正統派の純喫茶。大通のど真ん中、いつも賑わう本屋さんでお馴染みの日の出ビル地下一階にある「Cafe ひので」。
創業は昭和46年。冬季オリンピックの開催を翌年に控え、地下鉄の開業やビルの建設ラッシュで札幌の街自体が大きな進化を遂げた年に生まれた名店です。大通駅出口に直結しているこのお店は、当時の「モーレツ社員」たちを支えたはず。

開業時からほとんど手を加えていないというインテリアがたまりません。ランプやアンティーク感のある調度品はどれも昭和ならではの品格が漂います。古き良き昭和の雰囲気を醸しだす中、テレビでは情報番組が流されていました。常連さんがテレビを眺めながら、コーヒーや軽食を楽しむ落ち着いた空間です。
私が注文したのはパンケーキではなく、「ホットケーキ」。生クリームと小倉のトッピングを選びましたが、そえられたシロップ漬けフルーツの感じも最高。

私たちアラフォー世代が子供の時に親に連れられたデパートで楽しんだような、間違いなく懐かしいタイプのホットケーキ。
カフェもいいけど、やっぱり「喫茶店」だよね、と深く頷きたくなる名店。
札幌オリンピック時代から続く、もはや歴史ある空間。今のうちにたくさん満喫したいものです。
>>詳細はこちら。
4. JUIN

私が子供のころからずーっとずーっと、超絶最高の立地にあり続ける、きゅっとコンパクトな喫茶店。
最高の立地というのは、大通駅の改札を出て10歩ほどの場所にあるから!!! 地元民なら「大通改札の目の前にあるあのレトロな雰囲気の純喫茶」といえば絶対わかるお店です。
かなりの有名店であるにも関わらず、あまり雑誌などに掲載されていないのは、普段比較的取材はお受けしないようにされていらっしゃるそう。この度は温かくお受けしてくださりありがとうございます。
オープンは1971年11月、創業53年。さっぽろ地下街の創業時から続く数少ない店舗だそうです。
人気メニューは、軽食ではピザトースト、デザートではチョコレートパフェ、ドリンクではコーヒー以外だとクリームソーダ! どれも創業時から変わらぬレシピなのだそう。

私は生クリームたっぷりのホットココアを注文。とにかくこの空間、落ち着く。
赤い低めソファと、ツルッとしたテーブルの雰囲気。私が愛してやまない松本清張ミステリーにも登場しそうな、レトロかつポップな重厚感。
「お客様の世代交代を感じます」とマスター。「子供の頃、祖母に連れて来てもらい、クリームソーダを飲みました、と3世代でご利用の方もいらっしゃいます」としみじみ語ってくださいました。
チカホが開通して札幌駅と繋がり、人の流れが増え、最近ではココノすすきののオープンで、さらに人の流れが増えて、若いお客様も増えたとのこと。

大通でもチェーン店が増えたものの、昔ながらのスタイルで常連さんの好みを把握して接客するスタイルを変えるつもりはない、と語ってくださる、お言葉一つひとつにジーン。
5. 宮の森珈琲 さっぽろテレビ塔店

いくつか店舗があるものの、テレビ塔の地下という独特の懐かし空間に静かに佇むこちらの店舗がたまりません。
全席喫煙可というなかなか珍しいお店。愛煙家には嬉しいかもしれませんね。私はタバコは吸いませんが、タバコ空間にいることは苦にならないので、ゆっくり考えごとなどしたい時にかけこみます。
ブラウン基調でウッディな室内は、薄暗く、山小屋風。というより山小屋にいる錯覚をしてしまうほどの雰囲気。

中2階へ続く階段があり、各テーブルは仕切られているのでプライベート空間が保たれます。テーブルが広めなのも、紙媒体の新聞を広げて読みたい、ノートにいろいろ書き込みたいという私には嬉しい。
仕切りがあるおかげか周りの声も聞こえづらく、とにかく、じっくり過ごしたい、ちょっとお仕事をしたい、なんていう時にはもってこい。
名物のパンケーキは分厚く、運ばれてきた瞬間思わず「おー!」と声をあげたほど。

時間帯によっては全くタバコの香りが気にならない時もありますし、どの飲食店も混んでいて入れない!なんていう時に覗いてみるのもあり。

長居は禁物ですが、ゆっくりゆっくり静かに過ごせる不思議な居心地の良さ。一人で何か作業したい時に。
>>詳細はこちら。
まとめ
数ある純喫茶の中でもあえて「駅直結」という観点からお伝えしてみました。
懐かしの昭和、平成レトロなんて言葉が流行っていますが、札幌は魅力的な純喫茶が多くあります。
「映え」を求めて足を運ぶもよし、ノスタルジーに浸るもよし。あなたなりに「駅直結型純喫茶」を楽しんでみてください!