
2025.04.14
仕事におけるキャリアの作り方
by Kana Sato vol.13
ブランディングディレクター、コンサルタントとして活躍する佐藤香菜さん。世界各国を旅して見つけた“本当にいいモノ”を見極める審美眼を持ち、SNSで発信する丁寧な暮らしが同世代から熱い支持を集めています。
そんな佐藤さんが、普段愛用しているコスメやいま気になっているモノ、旅先でのエピソードなど、美容からライフスタイルまで赤裸々に語ってくれる本連載。
第十三回は、「仕事におけるキャリアの作り方」についてお話いただきました。
頑張りどきと、チャンスのタイミングは人それぞれ
コラム13回目の今回は、仕事について誰もが考えたことのあるテーマを書いてみます。
高校、短大、大学、専門学校…それぞれのタイミングから始まる社会人としての仕事キャリア。自分の好きなことを仕事にするべきか? 生活のための安定を最重要視するか? 業種や働き方には膨大な選択肢があり、それを自由に選べる時代でもあり、人生のターニングポイントが度々訪れるわたしたちは悩むのです。
会社員経験を経て独立したわたしに母はこう言いました。「お母さんの時代に、かなちゃんのような働き方があったなら、お母さんもそうしてみたかった」と。母は大学病院の検査技師や、東京の新聞社で働くなかで父親に出会い結婚しました。当時の日本では会社のデスクでタバコを吸うのが普通だった(!!)のでオフィスの中は常に煙が充満し、母は夕方になると頭痛になっていたそうです。すごい時代ですよね…。そして「結婚する」と報告すると「おめでとう! 寿退社だね」という空気が当たり前だったそうで、仕事を続けるという選択肢は自然と手放すものだったとか。結婚し退職した母はわたしの子育てに専念し、「子育てほどクリエイティブなものはないよ」という名言を発したほど、なんでも楽しむことができる人です。
わたしたちは働くからには頑張りが認められ、それが評価に繋がり、報酬となって豊かになることを望みます。そして誰もが、勇気を出して責任を引き受けてみる、もしくは掴みにいくタイミングが必ずやってくると思っています。
わたしの場合、当時働いていた会社の傘下において27歳でひとつのセレクトショップ業態を立ち上げるチャンスが巡ってきたこと。人と同じことをせず、自分で考えて売上を上げる自分なりの工夫をしていたのをありがたいことに見ていてくれた上司がいたこと。
例えばこのチャンスをもらったとき「わたしにそんなことはできないかもしれない」と断っていたら、今のわたしは存在しません。今の自由も、周りにいる大切な人も、積み重ねた経験も、全て得られなかったでしょう。
だからこそ、ずっと変化しないことよりも「やってみます、ありがとうございます。」から始まる新しいミッションを絶対に逃さないつもりで、タイミングこそ全てと踏み出したい。今までの安定を手放すような怖さを感じたとしても、それよりどちらの道に進んだら自分の心がワクワクするかを優先して決断できたら後悔はないはずです。
そして、何歳のときに一番の頑張りどきが来るかは本当に人それぞれなのだと、周囲を見ていて確信しています。

自分の強みって何?
もしわたしが従業員を雇用する経営者だったとして面接を行うなら、どんな質問をするか? のひとつがこれ。
「自分の好きなところは(嫌いなところは?)」という質問をして、どんな小さなことでも好きなところをスラスラと言える人に期待したいと思えます。それは自分だけでなく、一緒に働く人の良いところや、扱う商材やコンテンツの良いところ、お客様の良いところ…全てにおいて良いポイント=強み を見つけることのできる人だから。
仕事は自分が提供できる技術や特性を提供して対価をいただくことなので、まずは自分を分析するためにわたし自身の好きなところを箇条書きにしたことがあります。
ちょっと恥ずかしいですが、わたしも自分の強みを考えたとき…
・行動力だけは誰にも負けない
・ゼロからなにかを作ることは得意
・今まで培った人間関係の中で、仕事でタッグを組める人材がたくさんいる
・興味を持ったことは徹底的に掘る
・同性の敵ができない
・嫉妬の気持ちを持たない
・自分の機嫌は自分で取れるので感情は安定している
・勘と引きの強さを気に入っている
など。ちゃっかりしてますがけっこうたくさんありますね…(笑)。これはみんな違うオリジナルの良さがたくさん出てくるはずで、年齢を重ねるほど経験上、気付けるものだと思っています。わたしの場合は上記の特徴から、やはり独立して仕事を進めるのが向いていると自覚しているのですが、もっと協調性があったり、ミッションを正確にこなすことや、ルールを守れたなら、今も会社員を続けるという選択をしていたかもしれません。
自分の性格や特性を理解できるある程度の年齢までは、与えられたミッションをひたすら引き受けて経験を積んでみた結果、その先に適切なキャリアの入り口が見えてくるのではと思っています。
SNSなどからの情報ではその地道な過程が見えないため、つい他者と比較して焦りを感じたり、近道をしたくなる傾向がありそうです。わたしも仕事について質問をいただいたり、相談のDM(…はお返事をしていませんが)をいただくことがあります。その多くは、できるだけ苦労をせずに最短距離で特定の役職であったり憧れの職種に就きたいという思いが見えます。
自分自身を思い出したときにひとつ言えることは、無意味な経験は何ひとつなかったということ。その経験の過程なくして、チャンスも訪れなかったのを強く実感しています。決して焦らず、今を着実に進み、しかるべきタイミングで決断し、流れに身を任せる。
今までもこれからも、それを大切にしたいと決意しています。

Branding Director 佐藤香菜
株式会社マッシュビューティーラボにて、オーガニックのコスメとインナーケア製品のセレクトショップ「Biople by CosmeKitchen」の立ち上げとディレクションを行ったのち、独立。ブランディングディレクター・コンサルタントとして多数の企業の製品企画立案、製品プロデュースから販路拡大に携わる。オーガニックコスメを巡る旅の様子はNHK「世界はほしいモノにあふれてる」への2度の出演や、Instagramアカウント @kana__sato622 で発信している。
>>vol.11 情報との付き合い方と本当のフェミニズムを考る
>>Vol.12 初めての韓国・ソウル 2泊3日の旅
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A Journey to find my selfーわたしを見つける旅ー