
2025.04.02
【俳優・恒松祐里】「毎日楽しく、自分らしく生きている人」は美しい
二宮正明原作の『ガンニバル』のシーズン2が3月19日よりディズニープラススターにて独占配信されています。
「供花村」という村に家族とともに赴任してきた警察官の阿川大悟(柳楽優弥さん)。この村には「人が喰われる」という噂があり、その真相を探っていく大悟ですが、次第に村はもうひとつの顔を見せはじめ…。
今回、村を狂わせる女当主・後藤銀の若き頃を恒松祐里さんが演じます。妖艶な美しさと、周りの者をゾッとさせる狂気を巧みに表現。強烈な人物像をどのように演じきったのか。お話を伺いました。
役としての気持ちを持続させるためにやったこと

――『カンニバル』に銀としての出演が決まった時はどういったお気持ちでしたか。
シーズン1はもともと拝見していたので、「あ、シーズン2やるんだ」「出られるんだ!」と。
でも、その時は、ドラマしか観ていなかったので、銀がどういう役か分からなかったんです。原作を読んで、本当に壮絶な人生を歩んできた女性の話だと知り、すごく挑戦のしがいがある役だな、と思いお受けしました。
原作を読み込んで意識してお芝居するのはもちろん、倍賞(美津子)さんの若い頃を演じるということもあって、倍賞さんが出演されていた過去の映画も拝見したんです。役作りは倍賞さんの雰囲気と原作の雰囲気をミックスして行いました。
――恒松さんが演じる銀は、妖艶な中にも寂しさと強さ、両方が感じられます。見え方はどのように意識されていたんですか?
全体を通して、衣装やメイクはこだわりました。
銀は5~6話の中ですごく変化がある役なんです。最初は無垢なように見えて、計算高い部分が覗く。すると妖艶さが出てきて…そこから復讐前、復讐後、とどんどん変化していく役柄なので、監督と相談しながら決めていきました。
最初はあまり化粧っけのない顔をしているのですが、だんだん口紅を塗ってみたり、アイメイクも変化させて、髪型も倍賞さんが結んでいらしたので、それに合わせて最後のシーンは同じように結んでグラデーションをつけていきました。

――気持ちのグラデーションはどういうふうに作っていかれたんですか?
銀は復讐の気持ちが爆発する前と爆発した後があります。やっぱり最初は村に対する復讐心があって、後半は大切なものができて、それを守りたい、一緒に生きていく、という愛のようなものが動機になっているので、その2つを軸に考えていました。
――今回の役は入り込みすぎると、大変そうですよね。
もっと昔に銀の役を演じていたら、辛かったかもしれません。今はわりとオンとオフの切り替えができるようになっているので、引き込まれることはなかったですね。逆に気持ちを維持するために、原作にある、村の人たちが畑に撒くはずの排泄物を嗤いながら銀に浴びせる1コマを、半年ほどスマホのロック画面にしていました。

――ロック画面に…!?
スマホを見るたびに村人への憎悪を…。
銀はただ生まれてきただけなのに、村の人たちも、どうしてこんなことになってしまうんだろう、という気持ちもありながら、村への復讐心を途切れさせないためにやっていましたね。
極寒の中での撮影…対策は

――今回の出演は、片山慎三監督が恒松さんのお名前を出されたのがきっかけだとか。
そうなんです。舞台「パラサイト」を観て、名前を挙げてくださったみたいです。銀とは全く違う、関西弁のおちゃらけた役だったんですけど…そこからどうして銀につながったのか、私にもわかりません(笑)。
――恒松さんから見て、片山監督はどんな方ですか?
人間の嫌な部分を描くのがうまい方だな、と。嫌な部分を見られるように描いて、観ている人も共感できてしまう。その気持ち悪さのようなものが、『ガンニバル』にぴったりだな、と思います。人間がギリギリのところまで追い詰められ、狂ってしまう様子ってエンタメになるというか。
実際、片山監督は、現場ではわりと笑いながらOKを出されているんです。そこに少し恐ろしさを感じたりもしました(笑)。

――作品を拝見していると、現場も過酷そうな…。
真冬の、雪が降っている中で撮影していました。ナイターロケだったので、わりとハードな撮影でしたね。でも、狂気的な作品だからこそ、俳優部はみんな明るく頑張っていました。
――寒い中の撮影、どのように対策されていたんですか?
私、すごく寒がりなんです。だから、普段から、現場に行く時はボトムスの下にも重ね着をしています。
でも着物だとあまり下に着こめませんし、『ガンニバル』は本当に寒くて大変でした。でも、たまたまその時期に足袋型のソックスが販売されていて、すごく助かりました。大量に購入して撮影に臨んだので本当に「ありがとう」という気持ちでした。

――普段の生活で何か温活はされていますか?
お風呂は長めに入るのが好きですね。あとはとにかくふわふわで温かい服を着る! ですね。喉が痛くなるのであまり暖房もつけられないこともあって、とにかくたくさん着ています。
――現場では印象的だったことはありますか?
豊原(功補)さんは、役柄的にも撮影中はちょっと怖い…ムスッとした顔をされていることが多くて。でも猫の話をする時だけ、すごく優しい顔になるんですよ。私も昔、猫を飼っていたので猫トークで盛り上がって、「このギャップをみんなに知ってもらいたい!」と思いました。
話していたのは、「孤独のグルメ」の猫カフェバージョン。豊原さんが実は猫カフェにこっそり行っている上司役で、私が後輩役。「孤独のグルメ」のように猫カフェを部長が巡っているのを、後輩が毎回目撃してしまう…という30分ぐらいのドラマを作りたいね、という話で盛り上がって。で、シーズン2から声をかけあって一緒に行くようになって…。会社では寡黙な上司だと思われているのに、実は猫にデレデレ…という妄想話で盛り上がっていました(笑)。
SNSは「唯一『私』を発信できる場所」

――普段はどのようにリフレッシュされているんですか?
手芸が好きで、最近は編み物にハマッているのですが、『ガンニバル』の時も編み物をしていました。音楽を聴きながら編み物をして、何も考えない時間を作ることがリフレッシュになっているかな、と思います。
――今はどういったものを編まれているんですか?
先日、セーターを作るキットを購入しまして、今は袖部分を編んでます。編み物は1年半~2年ぐらい前にはじめて、バックや帽子を編むだけだったのですが、初めてセーターに挑戦しています。

――『ガンニバル』のイメージと編み物をされる恒松さん、ギャップが感じられますが、恒松さんは普段のお姿とギャップがある役が多いですよね。SNSでの恒松さんがとてもキュートです。
やっぱり役のイメージで見られることが多いので、SNSは唯一「私」というものを発信できる場なのかな、と思っています。SNSでは作品の宣伝ももちろん、私の好きなものを載せたり、普通のプライベートアカウントのように使っています。この仕事をやっていると、「好き」と言っていることがお仕事に繋がったりするかもしれませんから。だから好きを発信する場所としてSNSを活用してます。私の服の雰囲気を見て、衣装さんが服をこっちにしよう! と派手なものにしてくれたり…ということもあるんですよね。

――美容についても少しお聞かせください。最近ハマッている美容法などはありますか?
実は、これまであまり肌について気にしてこなかったんです。でも、世にあるたくさんの美容グッズを調べてみようと思って、最近は買い物をしています!
これはハリにいいんだ、とか、ターンオーバーが早くなるんだ、とか、いろいろ試してみているのですが、まだよく分かってないんです。ありがたいことに、肌が荒れることがほとんどなかったので、ビフォーアフターが自分では分かりにくくて。でも、たぶん、良い気がします(笑)。
――最後に。「キレイな人」と聞いてどんな人を思い浮かべますか?
毎日楽しく、自分らしく生きている人はイキイキしているな、と思います。人に優しく、自分らしく楽しくお仕事されている方を見ると美しいなと思いますし。あとは、私は真似できないかもしれないですが、おっとりゆっくり美しい言葉でお話されているのを見ると、「わあ、キレイ!」と思います。

Profile
恒松祐里
1998年生まれ、東京都出身。子役としてデビューしたのち、「女子高生の無駄づかい」(2020)や2021年前期連続テレビ小説「おかえりモネ」、「全裸監督 シーズン2」(2021)、「今際の国のアリス シーズン2」(2022)、映画『凪待ち』(2019)、『タイトル、拒絶』(2020)、『きさらぎ駅』(2022)、『Gメン』(2023)、舞台「パラサイト」(2023)、「ハザカイキ」(2024)など話題作に多数出演。映画『きさらぎ駅 Re:』の公開を夏に控えている。
■『ガンニバル』作品情報
ディズニープラス「スター」で 2025 年3月19日より独占配信中
出演:柳楽優弥 笠松将 吉岡里帆 高杉真宙 北香那 杉田雷麟 山下リオ 田中俊介 志水心音 吉原光夫 六角精児 恒松祐里 中村梅雀 倍賞美津子
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊))
監督:片山慎三、佐野隆英、大庭功睦
脚本:大江崇允、廣原暁
© 2025 Disney
撮影/芝山健太
取材・文/ふくだりょうこ

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