
2025.04.08
長めの冬を味わう、阿寒湖畔に佇む全室露天風呂付きスイートで贅を尽くした滞在


季節の変わり目、今こそ北の大地へ。
雪国のステイケーションをとことん満喫すべく、釧路空港から雪景色を見ながら車を走らせること1時間弱、今年1月に私が訪れたのは北海道・阿寒湖。冬の北海道というと、豪雪やドカ雪を思い浮かべますが、釧路がある道東エリアは寒さこそ厳しいものの、実は降雪量はそれほど多くないのが特徴でもあります。


阿寒湖の湖畔にはホテルや旅館が30軒ほど並ぶ温泉街があり、それぞれの宿から阿寒湖が織りなす四季折々の景色と湯浴みを同時に楽しめます。
地形を生かした湖上アクティビティが充実

今回は阿寒湖のほとりに佇む高級温泉旅館「あかん鶴雅別荘 鄙の座」に滞在しました。「鄙」とは故郷を意味することから、懐かくしも温かく、故郷でゆるりと心が解き放たれるような場所をテーマとして、国内外から訪れるゲストたちを阿寒湖畔の地で迎えています。


創業70周年を迎える鶴雅グループは、阿寒・網走エリア中心に幅広く展開していて、ブランドごとに客層や価格帯が異なります。中でも、エグゼクティブクラス“座”シリーズの1つ「あかん鶴雅別荘 鄙の座」は、全室に露天風呂が付いた、ゆとりある設えのスイートルームを備えた高級旅館です。
グループ全体としてアクティビティに力を入れていて、通年ではモーニングカフェツアーやトレッキング、夏季にはフィッシングなど、地形を生かしたアクティビティが充実しています。


1月中旬には湖が全面凍結するので、スケートリンクとしてはもちろん、湖上トレッキングやわかさぎ釣りなど、冬場しか体験できない氷を活用した湖上アクティビティが楽しめます。3月下旬まで少し長めの冬を満喫できるとして、冬場になると訪日外国人観光客が7割を占めるほど、今注目のデスティネーションです。
ドリンクインクルーシブの贅を尽くした温泉旅館

特筆すべきは、全室露天風呂付きスイートであり、滞在中は全て“ドリンクインクルーシブ”という制度を設けていること。
客室冷蔵庫内のドリンクをはじめ、阿寒湖を望むバーラウンジで飲むカクテルや、北海道の旬を味わうディナーシーンで飲む地酒など、滞在中の飲み物は一部特別なものを除き、全て無料で利用可能だというのです。


右:藁靴やかんじきなど雪国ならではの履き物


右:おやつの時間になると自家製おはぎが並ぶ


右:女性は鮮やかな色浴衣を選べる
郷愁と気品漂う、大人の隠れ家を思わせる外観から、阿寒の自然を表現したアート作品に迎えられ、エントランスへと続きます。一歩足を踏み入れればどこか懐かしさを憶えるような雰囲気も。一面に広がる雪景色を見ながらチェックイン。これから始まる滞在に心躍らせます。
ロビーラウンジには毎日“3時のおやつ”として自家製のおはぎが並びます。きなこ、白胡麻、黒胡麻、青海苔、ずんだなど、定番のおはぎからここでしか味わえない変わり種まで選ぶ楽しみがあります。
趣き異なる全室温泉露天風呂付きスイート



110平米超のレイクビューから60平米ほどのマウンテンビューの客室まで、全25室のうち天の座、湖の座、風の座、霞の座、森の座の5タイプがあり、その全てが趣きの異なる温泉露天風呂付きのスイートルームです。目の前に広がる阿寒湖や雄大な自然を眺めながら、好きな時に好きなだけ湯浴みを愉しめます。


右:故郷を思わせるヴィンテージ感ある食器棚


右:襖や障子を多用した内装デザイン
今回宿泊したのは502号室の「風の座スイート」。
和室と寝室とリビングを組み合わせたユニークな間取りで、仕切りのない広々としたリラクゼーションルームを配しています。木のぬくもりに包まれてぐっすり快眠を。




右:浴衣はサイズ別に特大、大、中、小を用意


右:ずんだと青のりの自家製おはぎ


右:サスティナブルな素材を取り入れたアメニティ


右:バニラアイスクリームもコンプリメンタリー
ちょっとしたバトラーのような制度を導入しているのもこの宿の特徴。スパの予約やアクティビティの手配など、チェックインからチェックアウトまで滞在中のフォローをしてくれます。ロビーフロアにはコンセルジュデスクがあり、ゲストの旅のプランニングを柔軟にお手伝いしてくれます。
阿寒湖から湧き出る天然温泉で雪見足湯体験

眼前に阿寒湖と山々の雄大な景色を望む「和気の湯」では、湖畔をぼんやり眺めながら足湯に浸かってひと休み。冬場は温泉の温もりが冷えた体にじんわりと染みてきます。実際に井戸から汲み上げているという自然のミネラルを蓄えた名水「阿寒湖百年水」を飲めば、温まった体に沁み渡ります。


右:タオルやクッション、ホットドリンクのサービスも
阿寒湖温泉の多くは「万人の湯」「神経痛の湯」として親しまれる単純温泉(中性低張性温泉)です。「万人の湯」と呼ばれる所以は、無臭・無色透明という泉質と、広範囲に柔らかな効果が期待できることから、最も静養・療養に優れ、低刺激で肌にもやさしく湯疲れもしにくいとか。老若男女誰でも気軽に利用できるので、温泉を愉しむための始まりの湯ともいわれています。
源泉掛け流し阿寒湖温泉と岩盤浴を設えた2つの大浴場

客室露天風呂とは別に、6階と7階に大浴場があり、それぞれ趣が異なるので併せて利用したいところ。
7階は阿寒湖畔を望む「石室の湯 金の弓」。冬場は辺り一面真っ白な雪見風呂を堪能。新緑の季節には清々しい湖の香りや木々の間から差し込む光に青白い濁り湯が照らされてキラキラ輝く幻想的な情景を映し出します。

6階はすべすべとした優しい肌触りが特徴の切石で作られた内風呂。広すぎず狭すぎず、ちょうどいい大きさで温泉をゆっくり堪能できます。22:30から男女入れ替わります。


右:7階は着座式岩盤浴で景色を楽しめる
大浴場の隣に岩盤浴が完備されているのもポイント。日本国内ではサウナが一般的ですが、本格的な岩盤浴を備えている温泉旅館は珍しいのでは。


右:湯上がりには養老牛放牧牛乳のグラスフェッドミルク
美しい阿寒の自然の情景に包まれ、身も心も癒やされる湯浴みはこの地ならではの贅沢なひと時です。
阿寒湖に存在する自然の色を表現したルームスパトリートメント

宿泊者限定のホテルスパは、セラピストが訪問して客室で受けるスタイル。プライベートな空間で心と身体を癒やす極上のひと時を味わえます。事前予約制ですが、当日空いていれば受付可能で、延泊のゲストに限っては午前中でも柔軟に対応してくれます。

キャリアオイルを3種類から、エッセンシャルオイルを7種類から選んでカスタマイズする本格的なスパトリートメントを体験できます。季節に合わせて変化する体調や気分に合わせて、相性の良いオイルでリラックスできます。
エッセンシャルオイルはローズ、フランキンセンス、イランイラン、ラベンダー、ゆずなど7種類から、症状や気分によって選びます。

鄙の座 専任セラピストの荒井さんは、一人で担当しているので同時施術はできないものの順に代わる代わる受けられるので女子旅にも最適。多い時は1日4名に施術する日も。空きがあればスパルームを用意。

長旅で足が疲れているゲストを思い、最初に足首とお尻を伸ばすためストレッチを施します。その後は頭から足先まで全身をオイルトリートメントで流し、隈なく流れを改善していきます。特に気になる部位は集中的に。痩身エステとリラクゼーションサロン勤務を経て、今の手技に至るそう。デトックス、代謝促進、ボディラインを整えるのに効果的だとか。
トリートメントメニューでは、阿寒湖に存在する自然の色を表現しています。私が今回受けたのは「鮮緑」というコースでした。鄙の休日、どこまでも広がる青い空のもとで、自然に還り、自分に還るひと時を。
阿寒湖が凍る瞬間の水色を「浅縹(あさはなだ)」
鳥居と丹頂鶴の鶏冠部分の赤土色を「丹色(にいろ)」
阿寒湖と夏の青空をイメージした「天藍(てんらん)」
山に咲く高山植物の黄色を「黄梔子(きくちなし)」
阿寒湖エリアの山桜の色を「中紅花(なかのくれない)」
温泉入浴してからより効能を感じやすいので、就寝前にスパを受けてそのままベッドで寝る幸福感や最高の贅沢を味わえます。
天然木カウンターのバーラウンジで酔いしれる夜


阿寒湖畔を見渡す、10mにも及ぶ天然木のカウンターがアイコニックな「座・BAR」では、歳月が熟成させた美酒と音楽に浸りながら、ゆっくりと流れる時間を過ごせます。


シグネチャーカクテルは春夏秋冬をイメージした8種を用意。バーテンダーに好みのテイストを伝えれば、華麗なミクシングを披露しながらカクテルを作ってくれます。



春をイメージした「咲桜」は、桜のリキュールをベースに爽やかな酸味とヨーグルトのまろやかなコクが新鮮な可愛らしい一品。


「冬花火」はブランデー、ペパーミントリキュール、アイリッシュウィスキー、生クリーム、ブラウンカカオをブレンドしたデザートカクテル。
掘り炬燵の個室で北海道の旬の味覚を味わう和食会席

夕食は食事処「料理茶屋ひな」にて、北海道の旬の味覚と新鮮な素材にこだわる和食会席。テーブル席や掘り炬燵式の席があり、いずれも素朴で落ち着いた雰囲気の中で旬の料理を味わえます。

地元釧路市で100年以上続く酒蔵「福司酒造」のセカンドブランドとして立ち上げられた「五色彩雲(Goshiki no Kumo)」シリーズの希少酒「Mashu」「Nusamai」「Ashiri」の3種を利き酒できるセットも。


右:北海道産のお米を丁寧に醸した純米吟醸酒「福司」は食事の邪魔にならない吟醸香が特徴。
左:根室の碓氷酒造「北の勝」から限定販売された「まつり」に遭遇。


右:道東産ししゃも南蛮漬け 十勝産湯葉豆腐




右:めんめの出汁と白味噌のコクを感じる深い味わい


右:蝦夷鮑柔らか煮 旬野菜の炊き合わせ


右:和牛に合う赤ワインをソムリエがセレクト


赤出汁 香の物


右:鄙の座パティシエ特製クリームブリュレ
地酒や地ビール、道産ワインから世界各国のワインまで幅広いラインナップで、値段を気にすることなく好きなだけ飲むことができます。とりわけ北の旬味とのマリアージュを堪能したいなら地酒がおすすめ。素材の味わいを見事に引き出してくれます。
今年は鶴雅グループ創業70周年を記念した特別プランの販売をスタート。北海道余市郡仁木町にあるNIKI Hillsワイナリーとのコラボレーションにより完成した、70周年記念ロゴがあしらわれた特別仕様のフルボトル「ツヴァイゲルトレーベ2022」は必見です。
コーヒー片手に寛ぎのリスニングルーム

アンティークスピーカーJBLパラゴンが奏でる、温かみのある音色とワインのマリアージュを楽しめる、大人のための空間。




右:アンティークスピーカーパラゴン




右:読書を楽しめるライブラリースペース


右:ソファや照明など心地良さに拘った愛煙家のための空間も
夜はしっとり寛ぎの時間と日本の田舎の風景をそのまま残した温泉宿。阿寒湖にゆかりのある書籍やアイヌ文庫などが並ぶ書庫から好きな本を選んで読書に没頭するのも良いでしょう。
売店「遊座房」では地元の作家によるアート作品や名産品などオリジナルの土産品が並んでいて、気軽にショッピングを愉しめます。
地産地消を存分に感じる、からだにやさしい和朝食

優しい朝日に照らされて、気持ちの良い朝の目覚め。朝風呂に浸かれば、澄んだ空気にしゃんとするよう。お食事処「料理茶屋ひな」の昨晩と同じテーブルにて朝食をいただきます。




右:料理長自らが漬けたという漬物


右:自家製ヨーグルト
炊きたての北海道米、出汁をしっかりとった味噌汁、木箱に入ったパリパリの焼き海苔、料理長自ら漬けた漬物など、心もお腹も満たされます。体が目覚めるやさしい味わいで、ホッとする朝のひと時を。美味しい一日が始まります。
阿寒のエネルギーに導かれて

日本の田舎の風景をそのまま残した温泉宿「あかん鶴雅別荘 鄙の座」。和と文化が融合した館内と、心地良いサービスには、古くから伝わるおもてなしの心が息づいています。
目まぐるしい日常の喧騒から離れ、自然の中に溶け込むように、ゆったりと心と体を解き放つひと時。
都から遠く離れて文化の至らない地=片田舎は、人里離れた阿寒湖畔の地に身を置いて、静寂に包まれながらも心温まる滞在を約束してくれます。
毎年4月下旬には、海開きならぬ“湖水開き”といった春の訪れを告げるセレモニーが開催され、冬のあいだ長らく運休していた遊覧船が七色のテープを引きながら静かに出港するのだとか。いよいよ阿寒湖の本格的な観光シーズンの到来。冬の幻想的な銀世界も素敵でしたが、今度は阿寒湖の違った表情に会いに行きたいところ。

17歳から読者モデルとして「Vivi」「JJ」「non-no」など多数女性誌に出演。6年にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。大学卒業後、化粧品会社勤務を経て、フリーランスに転身し、ヨガインストラクターを務める傍ら、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国。特にタイに精通し、渡航回数は30回以上。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。JSAワインエキスパート呼称資格取得。
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