
2025.02.27
テクノロジー×持続可能性。セルフで淹れるスペシャルティーコーヒーが話題の2050 COFFEE
街を歩けばカフェに当たる。カフェの激戦区として知られる京都の街中で、斬新な一軒に出会いました。2024年2月にオープンした「2050 COFFEE(ニセンゴジュウ コーヒー)」は、京都にスペシャルティーコーヒーを浸透させたカフェのひとつ「Kurasu」が仕掛ける最先端のカフェブランドです。
今回は、2050 COFFEEのストアマネージャー・佐藤瑳希子(さきこ)さんにお話を聞いてきました。
カフェの激戦区でひと際目を惹く存在

まず驚くべきはその立地。2050 COFFEEがあるのは、有名コーヒーショップが集まる新京極のど真ん中。一見チャレンジングにも思えますが、スペシャルティーコーヒー専門店という点でも珍しい存在であることは間違いありません。
ガラス張りの近未来的な建物で、どこかスペースシップのような印象を与える外観。大きな窓ガラスのおかげで、小さな店内にもかかわらず開放感があります。
室内は飲食店とは思えないほど余計なもののないミニマルさ。そして、その中心に並ぶ計6つのタップ(注ぎ口)。こちらについては後からゆっくり紹介します。

店内の奥にはゆっくりコーヒーを楽しむことができるコの字型のカウンター席。席数はそう多くないので、開いていたらラッキーです。

2階にも席があり、こちらはまさにスペースシップの中にいると錯覚してしまいそう! 空間の大半を占めるガラス棚には、タンブラーやTシャツといったオリジナル商品が並びます。



唯一無二のコーヒー提供スタイルとは

2050 COFFEEを有名にしたのは、一線を画したコーヒーの提供スタイル。SNSで注目を浴びたセルフで入れるタップコーヒー、そしてまだ使われている店は少ない全自動のエスプレッソマシンです。
クラフトビールのバーなどで見かける、タップから注ぐことができるコーヒーは、「一杯10秒」というキャッチ―なコピーやSNSのリール動画で注目を集めています。

エスプレッソマシンも豆によって挽き方はバリスタが手動で調整しているものの、アメリカ―ノ、ラテなどドリンクごとにボタンがあり、ボタンを押すだけでそのコーヒーに合ったエスプレッソが抽出され、ミルクのスチームまで行われるのです。


「テクノロジーの導入と聞くと、スタッフとお客さんの交流が生まれないんじゃないかと思われがちなんですが…。できる部分をマシンに任せることで、余白が生まれ、実際には店内のコミュニケーションは活発になっています」と佐藤さん。
京都のカフェ業界では知られた存在「Kurasu」の新業態
2050 COFFEEは浅煎りコーヒーで知られているKurasuが仕掛けた新コンセプトのカフェ。コーヒーの焙煎や、販売されているいくつかの食品の製造はKurasuで行っているため、提供スタイルは違っても同品質の味を楽しむことができます。
地域に根差すことを目的としたKurasuとの違いは、あえてローカライズせず、多店舗展開しやすい仕組み作り。これはより多くの人に、スペシャルティーコーヒーを広めたいという思いがあってのことだそうです。
とはいえ2050 COFFEEは、すでにご近所の常連さんも多いようで「商店街のスタッフさんが休憩時に買いに来てくれたりと、交流があります」とバリスタの本田さんが教えてくれました。

それもそのはず、同店のスタッフさんはとても気さく。取材時には佐藤さんとバリスタの本田さんが対応してくれましたが、まるでスタイリッシュな空間に彩を添えてくれるような、温かい2人でした。
バリスタの本田さんも「ほかのスタッフも皆、(キャラクターが)濃いですね」と笑顔。バリスタとお客さんの関わりなどからも、Kurasuのスピリットが引き継がれているのがわかります。

10秒で一杯!?セルフで入れるコーヒーに挑戦

タップコーヒーは4種類、さらにアイスオーツラテや抹茶ラテなどのアレンジドリンクも。
スペシャルティーコーヒーは大きく分けてイノベーション(1,000円)とプレミアム(600円)の2種類。よりプロセスが多岐に渡るようなものや希少なものは、イノベーションのカテゴリーになります。タップコーヒーも、専用の機械でドリップして抽出するバッチブリューなので、ドリップコーヒーの味わいが楽しめます。
またKurasuの焙煎状況によりますが、2050 COFFEEの豆の種類は、2ヶ月弱ほどで入れ替わります。
いよいよ、タップコーヒーに挑戦です。まず入り口近くのカウンターでお会計をし、カップを受け取ったら飲みたいタップの下に置くだけ。すぐに注ぎ口からコーヒーが注がれ、10秒も経たないうちに一杯ができあがります。早い!



「お客さんが少なければ、テイスティングをしてもらうことも可能」と佐藤さん。迷ったら相談してみてくださいね。
今回試したのは「甘さがあり、赤ワインのようなフレーバー」と佐藤さんがおすすめの、ベンサ・シダモ産のプレミアム「エチオピア」です。中深煎りでしたが、浅煎りを感じるフルーティーさはそのままに、一回り存在感が増したような印象。スペシャルティーコーヒーに馴染みがない人にも、飲みやすいと感じました。
自家製グラノーラヨーグルトとコーヒーでモーニング

コーヒーと合わせるスイーツには、ヴィーガンドーナツなどの焼き菓子があります。
今回はKurasuで作られているという自家製グラノーラ入りヴィーガンヨーグルトをおすすめしてもらったので、いただきます。

ザクザク食感のグラノーラは、噛みしめるほど材料の味を楽しめます。コーヒーの実を発酵させたカスカラ入りという、コーヒー専門店ならではの一品なのです。
また豆乳ヨーグルトの下に敷かれたブルーベリーソースは、甘さ控え目でスッキリしているのも嬉しい。あまり食欲がない朝でも、こちらなら美味しくいただけること間違いありません。


2050 COFFEEに込めた想い

最後になりましたが、店名の2050は、気候変動による環境問題でコーヒーの栽培地が影響を受け、2050年には生産量が現在の半分になるとされている「2050年問題」からつけられました。
主な取り組みを聞くと「まずコーヒーの産地や生産者にこだわるところから」と。
例えば今提供されているエチオピア・セゲラは、元々は荒れた地を耕しコーヒー菜園を作ることで環境改善に貢献している生産者のエレアナさんより仕入れています。同店の豆はすべて、このように生産者さんの姿勢や取り組みに共感し、応援したいと思えるものばかり。
こうした情報をお客さんに伝えると、喜んでもらえるそうです。自然環境のことを思うなら、まずは知ることが大切なのだと改めて感じます。
「自分が口に入れるものだから、誰が育てどのようにここまでやって来たのか、その背景まで思い巡らせて欲しい」と佐藤さん。2050 COFFEEとして、味以外の理由でコーヒーを選ぶきっかけ作りをしたい、と笑顔で話してくれました。
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2050 COFFEEを紹介しました。
話題作りのためではなく、一人でも多くの人にスペシャルティーコーヒーを身近に感じてもらいたいと、テクノロジーの導入をいち早く行った同店。先進的なハード面(外観や内装)に、人間味のある温かみのあるソフト面(サービスや人)のバランスが取れた一軒でした。
京都の街中にあるので訪れた際にはぜひ立ち寄って、サステナブルアクションを楽しんでみてはいかがでしょうか。

旅するように暮らす自然派ライター/オーガニック料理ソムリエ。
4年に渡る世界一周後、オーストラリアに移住し約7年暮らす。コーヒー好きが高じてオーストラリアではバリスタ業の経験も。今は繊細でフルーティーな浅煎りコーヒーに夢中です。ライターとしては旅行誌の広告制作を経て、雑誌広告や編集ページを主に執筆。現在は自然に沿った生き方、ほどほど丁寧な暮らしを自ら実践しながら発信中。地球にも体にも優しい生き方のヒントをお届けしていきます。
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