2025.01.04
“ハウルの動く城”の世界。フランス・アルザスの街でしたい3つのこと
フランスの北東部に広がるアルザス地方。
「ワイン街道」と呼ばれる約170㎞のブドウ畑が続く街道沿いには、小さな村が連なりアルザスワインの産地としても知られています。
その中心に位置する“おとぎの国”のような風景が広がる街が「コルマール(Colmar)」。
ドイツとの国境沿いに位置し、歴史的な背景から、フランスとドイツの文化が交わった街並みや雰囲気を楽しむことができます。
街を流れる運河と、パステル調の木組みの家が美しく『ハウルの動く城』のモデルになったといわれ、実際に作中に登場する建物が存在しています。
コルマールを訪れたら外せない「街歩き」「伝統料理」「ワイン」の3本立てお届けします。
名作の舞台で街歩き
まず訪れたら、石畳の道をゆったりと散策するのが楽しみ方のひとつ。
広場に建てられた神聖ローマ帝国の軍人「シュヴェンディ」の像。手に握っているのは何だと思いますか?
答えは「ワイン(ぶどう)の苗木」。銅像の彼は、過去の戦でハンガリーの大部分をトルコから解放した功績者。その際、ハンガリーから“トカイワイン”の苗木を持ち帰ったのが、コルマールがワインの名産地になった起源と言い伝えられているそう。
この像が有名なもう一つの理由は、作者がコルマール出身の「フレデリク・バルトルディ」。なんとニューヨークの自由の女神像を作った人! 小さな街とニューヨーク、意外な接点がありました。
こちらは、『ハウルの動く城』のモデルとなった場所。
この「プフィスタの家」は、1537年に帽子製造業者のルイ・シェレによって建てられました。作中ではハウルとソフィーが空中散歩のシーンでチョンッと蹴って歩くシーンで登場します。ジブリファンにはたまりませんね…! ぜひ見比べてみてくださいね。
街のいたるところで、可愛らしい鉄製の看板が目を惹きます。
プレッツェルはラテン語で「腕を組む」という意味で、人が腕を組んでいる様子を表しているのだとか。看板をよく見ると、昔は現在と逆の向きが一般的だったことがわかります。
お土産探しにもぴったりなのが、コルマール出身の絵本作家、オンクル・アンシーの美術館。
アルザスの民族衣装が可愛らしく印象的なイラストのグッズが並びます。「コワフ」という、頭に付ける大きなリボン飾りのような、帽子の一種をかぶっています。
文化の融合、アルザス料理を堪能
アルザス料理はドイツや東ヨーロッパの影響を受けており、山地のためジビエや加工肉、チーズを使ったレシピが多いのが特徴。身体もあたたまりお腹を満たしてくれる料理たちは一度食べたら忘れられない味です。
・ベッコフ(Baeckeoffe)
アルザス地方を象徴する郷土料理。白ワインでマリネした牛肉、豚肉、ラムなどと、じゃがいもやにんじんなどの野菜をじっくり重ね焼きするオーブン料理。ホロホロになった肉と甘みが最大限引き出された野菜にホッとするおいしさ。
・エスカルゴ(les escargots)
人生で初めてのエスカルゴ。バター焼きで香りが良くコリコリとした肉厚の食感と濃厚な旨味がクセになります。セットのバゲットをソースにつけると最高!
・タルトフランベ( tarte flambée)
パリパリとしたピザのような郷土料理。フロマージュブランというチーズやクレームフレッシュを広げ、玉ねぎ・ベーコンなどを乗せたもの。ドイツでは「フラムクーヘン」という名前で似たものが存在していて日常的に食べています。似たものだけどそれぞれ郷土料理として存在していて、長い歴史と文化の交わりを感じました。
・マンステールチーズ(Munster)
元々は修道院で作られていた歴史がある、アルザス地方を代表するウォッシュタイプのチーズ。納豆菌と同じ由来の酵素を使っているらしく香りも特徴的…。熱を加えると旨味がしっかりとして美味です。
・マカロン(Macaron)
クリームが挟まれたふんわりしたもの=マカロン、のイメージですよね。諸説ありますが、この何も挟まれていないサクッとしたものが進化して、現在の”パリ風マカロン”になったと言われています。
・アルザスマカロン(Macaron coco )
“アルザスマカロン”といわれる、ココナッツの粉で焼かれた、こちらもマカロン。ホロっとしたケーキとクッキーの間の食感で、ピスタッチオ、ラムレーズン、ショコラなど種類も豊富。これが原型となり、先述のカラフルなメレンゲのマカロンができたとも言われているので、「元祖マカロン」と言えますね。食で歴史を辿るのもおもしろいです。
・クグロフ(Kouglof)
Marché couvert de Colmarという1865年からある地元の人でにぎわう屋内型のマルシェを訪れました。
精肉店や鮮魚店、ベーカリーなどが並びます。クグロフというふわふわした銘菓がどのベーカリーにもあるので、スイーツ好きは見逃せません。
名産地のワイナリーを訪れる
私が訪れたのは11月、一面のブドウ畑が綺麗に色づく黄金の季節。ブドウ畑ではリースリングやゲヴュルツトラミネールが栽培されています。ワインを求め隣村に足をのばすことに。
コルマールからバスで約30分。リクヴィル( Riquewihr)という別名「アルザスの真珠」と呼ばれる名産地を訪れました。
アルザス地方では生産の90%以上が白ワイン。斜面いっぱいのブドウ畑に圧倒されます。
リクヴィルは「フランスの最も美しい村」に登録されていて、直径は1Kmにも満たないこじんまりとしたサイズ。
村には多数のワイナリーがあります。その中で、3か所のワイナリー直営のテイスティングサロンを訪れました。
・Dopff et Lrion
・Famille HUGEL Viticulteurs et négociants à Riquewihr depuis 1639
・Domaine Laurence & Philippe Greiner
店内では、気になるものを試飲することができます(有料)。「HUGEL」には現在も使用しているギネスにも登録された世界最古のワイン樽があり、この村がワインと歩んできた歴史の長さを知ることができます。
「Domaine Laurence & Philippe Greiner」はご夫婦で営まれているワイナリー。幸運にも、生産者とお話しながら試飲し、直接購入するという経験ができました。これまでとは違った自分の好みに気づいたり、新たな発見があるかもしれませんよ。
ワインとセットでお土産に持ち帰りたいのが、アルザス特有のワイングラス。白ワインのフレッシュな果実味や上品な酸味を味わいやすいような構造になっているそう。
【番外編】このお店では9割の商品がすべてアルザス地方の小村「スフレンナイム」で作られた器や鍋。昔ながらの年度を使って1000℃でも可能な耐熱性を持っています。
食卓に並べば、旅先で食べたあたたかい料理たちを思い出しますね。ベッコフ用の鍋をひとつ購入しました。
身も心もゆったりと過ごせる場所
一面に広がるブドウ畑、美しい建築物と運河。あたたかい料理で身も心も満たしてくれる、フランスの小さな街は、日常を忘れさせてくれるゆったりとした時間が流れる場所でした。
島国の日本では感じる機会が少ない、隣国との文化の交わりや歴史をより濃く感じられるのはヨーロッパの醍醐味。ぜひ一度訪れてみては。
ドイツ在住の元CA。システムエンジニアを経て客室乗務員となり、退職後2023年より家族とドイツに住む。学生時代に台湾留学でマスターした中国語と英語に加え、現在はドイツ語の資格取得に挑戦中。異文化交流と新しい体験を求めて、世界中を旅するグルメ探究者。旅先で味わった料理を自宅で再現するのが趣味。ドイツを中心にヨーロッパでの暮らしと旅情報をお届けしていきます。
Instagram:@wakana_log/@wakana_log_germany
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