SERIAL STORY

2024.12.31

札幌は本の都!?旅でも訪れたい、北海道民おすすめの図書館&書店

元TBSアナウンサーで、現在は故郷・札幌を拠点にフリーアナウンサーや文筆家としてご活躍のアンヌ遙香さんによる連載「now HOKKAIDO by Anne Haruka」。

今回は、「図書館&書店」について。無書店自治体が増えつつある中で、実は札幌は本の都なのでは? と感じるというアンヌさんの、熱量溢れる文章をお届けします。

第七回のテーマは…図書館&書店

いよいよ本格的に深い深い雪と共に生きるシーズンが始まる北海道札幌市。

前回お伝えしましたミュンヘンクリスマス市やホワイトイルミネーションをはじめ、2月には雪祭りと、とにかく北海道らしさ満載の時期になりました。

実はかつてある作家さんが、雪国の人間と言うのは読書好きが多いのではという文章を記されていたのですが、その原文がどうしても見つからず…。

内容としては、雪深い地域に暮らす人間は、雪に閉ざされている間、長い長い冬を家の中でじっと本を読んで過ごすのだ…と言うようなことが書いてあったような。

たしかに、少なくとも私は読書好き。特に紙媒体の本が好き。今年20年ぶりに北海道に拠点を戻した私ですが、体感として、確かに北海道の人は本が好きかもしれない! という印象があります。地元の本屋さんも、図書館も、いつも人でいっぱいです。

さて、皆さんは最近本を読んでいますか? それは紙媒体の本ですか? そしてそれは書店で購入しましたか?

本といえば、本屋さんが街から消えつつあるという社会現象からは、目を背けることはできません。その現実にもまず触れなければならないでしょう。

街から書店が消えつつあるというのは、北海道に限らず全国どこであっても深刻な社会問題といえます。10月4日付の北海道新聞に以下のような記事がありました。

創業102年で倶知安町内唯一の書店が11月の移転を機に、書籍の店頭取り扱いをやめる。かつて5軒以上あった町内の書店は、この1年半余りで相次ぎ姿を消しており、今回の移転で人口約1万5千人の町から事実上、一般書籍を扱う本屋はなくなることになる――。

書店のない自治体、いわゆる無書店自治体というものも、今後増えていくのかもしれません。

そんな辛い現実がありながらも、しかし一方で、北海道札幌市に関しては、紙媒体の本にまつわるムーブメントが目立ちはじめているのでは? という印象があります。

最近の北海道札幌市は少しずつ本の都としても頑張っているのではないか?と感じる私。今回は「札幌は本の都?! 本を読みにいらっしゃい!」という内容でお送りします。

まずお伝えしたいのが、図書館の充実度について。

札幌には知の宝庫ともいえる中央図書館という素晴らしい施設があり、周辺住宅街は非常にハイソサエティー。実は、北海道版の「住み続けたい街 駅ランキング(*1)」というデータがとられた際の第1位は中央図書館近辺だったのです。

(*1)……2024年「大東建託 賃貸未来研究所」のデータを参照

あの重厚感と、山を間近に臨む周辺の環境の良さは、目を見張るものがあります。ただ、大通公園や札幌駅と行った街の中心部からは、市電を使って30分弱ほど移動せねばならないという難点もありました。

そんな中2018年にオープンし、2023年にリニューアルしたのが、テレビ塔真横にある「札幌市図書・情報館」です。

一般的な図書館とは異なり、ビル内の限られた面積が図書・情報館に与えられたスペース。オールジャンルの本を網羅できるほど広くはないですが…いつでも人がいっぱい!!

今年札幌に帰ってきた私がかなり驚いた施設がこちらでした。

実はこちら、働く世代に向けて、ジャンルを「WORK(仕事)」「LIFE(暮らし)」「ART(芸術)」に限定して設定しており、最大の特徴は本の貸し出しを行わないこと。

一般的な図書館では最新刊や人気の本は予約待ちで手に取れないケースがありますよね。実は私も今10人待ちの本をずーっと待ってます。なかなか順番が回ってこない…。

そんな現実を受けて、あえて閲覧のみのスタイルとし、図書館の常識を打ちやぶっているのです。つまり、いつでもお目当ての本が読めるということ!

また、図書館といえば私語を控えなければならないイメージですが、図書・情報館は「リーディングルーム」を除いて会話がOK。ミーティングルームやグループ席を予約して、仕事の打ち合わせをすることもできます。

場所によっては飲み物も持ち込めて、かつ平日は夜9時までやっているというのも嬉しいところ。実は私も時折お世話になっています。

BGMにはジャズが流れ、本当にここは図書館なのかな? という気持ちになるほど。観光でいらした時にはぜひ覗いていただきたい施設です。

さらに観光客の皆さんにお勧めしたいのが、札幌の奥座敷・定山渓にオープンした特別な本屋さん。

定山渓温泉唯一の書店「風呂屋書店」が2024年9月19日、「定山渓第一寶亭留(ほてる)翠山亭」(札幌市南区定山渓温泉西3)2階にオープンしました。

風呂桶、脱衣棚など、お風呂屋さんをモチーフにした和風の店内には、およそ2500冊もの本がずらっと!

温泉やサウナに関する本はもちろん、旅先でゆっくり読みたくなるような純文学やミステリー、子どもの頃に親しんだあの漫画など、とにかくジャンルが多岐に渡ります。

ホテルの中にある書店だからこそのゆったりとした時の流れを感じつつ、時間を忘れて読書を楽しむという贅沢な過ごし方ができてしまうのです。

本は閲覧スペースなどで自由に読むことができ、購入も可能。旅先で出会った本を持ち帰ることで、自分の旅の思い出にもつながるのでは?

おすすめは、北海道にまつわる本をゲットして、ゆっくりと翌日の観光プランを考えるという過ごし方。

かつて私も和歌山県高野山の宿坊に泊まった際には、司馬遼太郎著『空海の風景』を持参して、空海に思いを馳せたことがありましたっけ…。旅先でその土地にまつわる本を読むという過ごし方、私は非常におすすめです。

そして…本、文房具好きは決して外すことのできない北海道ならではの名店が…「コーチャンフォー」!! あの林真理子先生が週刊文春での連載「夜ふけのなわとび」にて大絶賛した超大型書店こそコーチャンフォーなのです。

コーチャンフォーは北海道釧路に本社をおく北海道発信の超大型書店ですが、関東にも最近出店が続いていますので、ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

北海道ならではの土地の広さを最大限に生かしたコーチャンフォー。駐車場も広く、品揃えと在庫量もとにかく豊富。もちろん有名な大型書店というのは、都心にも数多くあることでしょう。

ただそちらは1階、2階、3階…とフロアが分かれていませんか?

コーチャンフォーの凄いところは、体育館を凌駕するほどの圧倒的な広さの店内に見渡す限りずらっと本が並んでいるということ。あの光景は壮観! 一度見ていただきたい。

そして本のみならず、コーチャンフォーが厳選したご当地グルメを扱うコーナーがあったり、かわいい文房具が所狭しと並んでいたりと、とにかくいるだけで、幸せな気持ちになる! 楽しい気持ちになる!

しかも、あのミスタードーナツをフランチャイズ展開しているコーチャンフォー。

ミスタードーナツのイートインスペースもかなり余裕を持って設置されており、購入した本を片手にそのままミスタードーナツで一息…なんていう過ごし方も最高です。

このように、商品調達力や在庫力も圧倒的ですが、リアル店舗の強みとして接客力、サービス力も見逃せないところ。

店員さんのご対応が丁寧でこちらが恐縮してしまうほど。

実は先日コーチャンフォーである文庫本を買った時に、会計直前に床に落としてしまい、ページが一部折れてしまったことがありました。私が落としてしまったものだし、これはそのまま買っていこうと思いレジに並んだところ、少し折れているところをめざとく見つけられた店員さん。

「こちらが折れているようですので、新しいものを見つけてきましょうか?」とご丁寧にご提案いただいたのです! 「いえいえ、これで大丈夫です!」と辞退しましたが、まあなんと気持ちの良いサービス!!

本はインターネットで注文するという方も多いでしょうが、リアル店舗はその場で買って帰ることができる利便性がありますね。すぐ読める! また、従業員の方がきめ細かく接客してくださるのが気持ち良く、清々しい。

コーチャンフォーでは接客コンクールまで実施しているとのこと。だから皆様、プロ意識がすごいのですね。

本にカバーをかける時は、何色もあるものから好きな色を選ぶこともできるなど、とにかくその場で本を買うことをエンターテインメント化してくれるのです。

コーチャンフォーを絶賛している林真理子さんも平成27年の週刊文春4月9日号でこのようにおっしゃっています。

インターネット通販はワンポイントしか買えない。しかし、本屋ではあれもこれも脈絡なく、いろんなものが目に飛び込んでくる。雑多に買い込み、雑多な知識を詰め込む。が、スマホで得た知識と違い、本から得たものは、ちゃんと脳みそに染み込んでいくのである。

皆さん、本の都・札幌にぜひいらして下さい!! 窓から眺める雪景色、しんしんと積もる無音のBGMを満喫しながら、読書タイム。いかがでしょう?

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