2024.11.04
アンヌ遙香さんが北海道池田町で出会った十勝ワインの魅力
元TBSアナウンサーで、現在は故郷・札幌を拠点にフリーアナウンサーや文筆家としてご活躍のアンヌ遙香さんによる連載「now HOKKAIDO by Anne Haruka」。
今回は、アンヌさんがお仕事で訪れた十勝・池田町で出会い、魅了された「十勝ワイン」について。熱量溢れるアンヌさんの文章をお届けします。
第四回のテーマは…「十勝ワイン」
ふるさと・北海道に拠点を移して、改めて多趣味になったと実感している私。
もともと好きなものは多いほうであると言う自覚はありましたが、例えば、若い頃に好きだったけれど東京での生活が長くなったことで、一度は手放したダム巡りの趣味。車の免許も取ったしということでこの度趣味が復活。
また木彫りの熊収集に目覚めたり(詳細は過去のキレイノートの記事をぜひご覧ください!!)、おしゃれすぎて、自分には一生縁がないだろうと思っていたワインに目覚めてしまったり。
よく小説や映画などで、ワインを一口含んで、ソムリエールと語り合う…なんてシーンを目にしますが、この私がまさかそんなことができるようになるだなんて…! この新しい世界、ぜひ多くの皆さんに体験していただきたい!!
そう、今回は北海道十勝ワインの魅力にすっかり虜になってしまったという話です。
お仕事で十勝平野にある池田町へ
みなさんの心にある所謂「北海道らしい景色」が広がる雄大な大地・十勝。
そんな十勝平野の中央やや東寄りに位置している池田町は、人口約6,300人の町です。DREAMS COME TRUEの吉田美和さんの出身地としても知られ、ドリカムの聖地としても多くのファンが足を運びます。
実は、池田町は昭和38(1963)年に全国で初めての自治体経営ワイナリーとして「十勝ワイン」を誕生させ、現在では国内外で高い評価を受けています。
今回私が池田町にお邪魔したのも、ワイン祭りの司会進行のため。
ワイン祭りとは?という方のためにご説明をすると、ブドウの収穫とワインの仕込みを祝い、毎年10月第1日曜日に開催される「秋のワイン祭り」のこと。十勝ワインの飲み放題や道産牛肉の炭火焼き、数々のキッチントラックまで繰り出すという夢のようなイベントです。毎年前売りのチケットは完売…というすごすぎる内容なのですが、これはまた来年までお預け。
大人のマジカルスポット、“ワイン城”
とにかく美味しい空気、大地、お肉、スイーツ、そして十勝ワインを全身で満喫できる池田町に「ワイン城」という南ヨーロッパの古城を思わせるお城があることをご存知でしょうか。
このワイン城こそ、ワイン祭りの開催地であり、北海道観光の際には絶対外していただきたくない大人のマジカルスポットと言えるでしょう。
ワイン城の正式名称は「池田町ブドウ・ブドウ酒研究所」。地下熟成室にはワイン樽、オールドビンテージの数々がひっそりと眠っています。
十勝ワインをはじめ池田町の特産品が買えるショッピングエリアは時間がたりないくらいの品揃え。そして4階レストランからの壮大な眺めは、是非一度体験していただきたいほどに見事です。
国内外から注目される、十勝ワインの特徴とは?
北海道の中でも冷涼な気候が特徴ともいえる十勝。この環境で造られるワインだからこそ、酸味が強い本物志向のワインとなるのだそう。
たしかに、ワインにそこまで詳しくなかった私でも、十勝のワインをいただくとサラッとした清涼感、そして不思議な清潔感が口内に広がる感覚があるのはよくわかりました。
白ワインはフルーティーで爽やかな味わいに、そして赤ワインでは長期熟成に耐えうるワインとなり、ブドウの甘みを残さずに酸味をストレートに表現することで料理の味わいを引き立てるのです。
よってバラエティの豊かさが特色ともいえる昨今の和食には、サラッとした十勝ワインを合わせるのがピッタリとのこと。
そもそも十勝ワインの一番の目的は、ブドウ栽培による「農業振興」でした。しかし、北海道を代表するまでの基幹産業になるには多くのご苦労があったといいます。
元来、十勝はブドウの育たない地。冬期間は極低温に加え、晴天による乾燥した日々が続き、通常の栽培方法では、ブドウ樹は枯死してしまうのだそう。一方で、池田町の日照時間は国内有数の長さを誇り、さらにブドウの成熟期である秋には、日中と夜間の気温差が大きいのも特徴。これはブドウの糖度は上げ、糖と酸のバランスをよくしてくれるのです。
とは言うものの、冬の寒さとの戦いを語らずして、池田町のブドウ栽培は語れず…寒冷地に適したブドウの栽培方法と独自品種の開発の果てに誕生したものの代表格が清見、清舞、山幸です。
私はとてもあっさりした口当たりの「清見」が気に入ったのですが、「清見」を含めた一般的なブドウは、冬期間にブドウの樹を土の中に埋めることで、寒さと乾燥からブドウを守る必要があるそう(これは大変!)。美味しいのだけれども、非常に手間がかかる子…という特徴があります。
この問題を解決すべく、より寒さに強いブドウの品種を! ということで、なんと、これまで交配した品種数は21,000種以上!
「清舞」は母親である清見種譲りのうすめの色合い。強い酸味、そして軽快な味わいが特徴。
「山幸」は色も濃く、渋味や味わいの深みがありますが、なんとそのお父さんは山ブドウ。山ブドウを交配したことで、厳しい寒さに強く、かつ野生味溢れるような味わいのぶどうが出来上がったとのことでした。
こういうバックグラウンドを知ると、思いも特別なものになります。
池田町の特産品池田牛の肉料理によく合う香り高さにすっかり魅了され、清見や山幸のファンになって十勝から帰ってきた私。
日が経ってもあの感動が忘れられず、札幌でも十勝ワインを存分に楽しみたい!! と特別なバーレストランに足を運ぶべく夜のすすきのへ。
夜の街・すすきのでも十勝ワインを楽しめるバーレストランへ
道内のワイン好きが集まる、お食事もおいしい大人のバーレストラン、ランコントル。
入り口入ってすぐには札幌芸者さんたちの名前が染め出された団扇が飾られており、まるで京都にやってきたかのような趣、落ち着きを感じさせるとっておきのお店です。
出張でいらした女性1人客などもよくいらっしゃるそう。あえてお伝えしておきますが、決してものすごくお安いお店と言うわけではありません。洗練された大人が集まるお店と言えるでしょう。
美味しいものを求める大人のためのお店で再会したのは…
私はウキウキしながら、事前に池田町のワインが飲みたいとリクエストをしておりましたが、この日提供していただいたのが…山幸!!
山ブドウを交配したことで野生味あふれる香りが特徴となったあの赤ワインです。池田町で飲み比べをさせていただいた際には、非常に個性的な、草のような香りがすると感じたのですが…
この日、素敵な女性ソムリエールと一緒に山幸を1口含んだ瞬間、非常に穏やかな清涼感が感じられ、思わずお互いに目を合わせてしまいました。
「体調のせいですかね? 池田町で飲んだ時はもうちょっとクセが強いと思ったんですが、今日こうしてお食事に合わせて飲んでみると、すごくさらっとしていて、するするといけそうですね」とお伝えしたところ、ソムリエールの女性も、「そうですね。この年の特徴なのかもしれませんが、私も以前飲んだ時よりも非常にクセがないような印象がありました」と返してくださいました。
いやいや! 皆さん!! 私もともとこんな会話をできるようなタイプじゃ全然なかったんです!! まさか自分がワインの香りや味についてバーレストランで言葉を交わせるようになれるだなんて、夢にも思っておりませんでした。
池田町でおいしいワインの試飲をたくさんさせていただき、かつブドウ栽培のご苦労などをしっかりと学ばせていただいたおかげで、こうして自分の中で新たな趣味が生まれたことに本当に驚きました。
物事を知ると、新たな世界がパーン! と目の前に広がるんだなぁ…ということをしみじみと実感。
これから池田町のワインを、もっともっと知っていこうと決意しました。レストランに足を運んだ際にも、これまで眺めることもなかったワインリストに今後は手が伸びそうです。
ふとした出会いが、あなたの新しい趣味の扉を開くかもしれません。あなたも池田町に是非どうぞ!
Profile
アンヌ遙香
1985年生まれ。北海道出身。2010年より小林悠名義でTBSでアナウンサーに。現在は札幌を拠点にフリーアナウンサー、文筆家、スクール講師などとして活動している。ゴールデンレトリバーの愛犬と仏像をこよなく愛す。
Instagram:@aromatherapyanne
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