【俳優・間宮祥太朗】「ハスリンボーイ」で共演、自身の人生を変えた役者とは?
11月1日(金)から放送/配信がスタートするWOWOWの連続ドラマW-30「ハスリンボーイ」。裏社会の実情に詳しい作家・ライターの草下シンヤさんと漫画家の本田優貴さんがタッグを組んだ同名マンガが原作です。
奨学金の負担を減らそうとするも、詐欺に引っかかって人生が詰んだ大学生のタモツ。そんな彼を助けたのは、非合法なツールを扱う「道具屋」だった――。その恩人に報いるため池袋の裏社会に足を踏み入れ、ヤクザや半グレ、中国マフィアなど、ひと筋縄ではいかない悪人たちの中で生き抜いていく姿を描いた、新感覚クライムサスペンスです。
タモツを演じる間宮祥太朗さんに、本作で心がけたこと、そして“恩人”について語っていただきました。
タモツを演じる上で意識したこと
──間宮さんが演じられているタモツは主人公だけに、ほとんどの登場人物と関わりますが、個人的には『全員死刑』(2017年)以来の間宮さんと毎熊克哉さんの共演にテンションが上がりまして…。
目の前に立って向き合うと、それだけでしっくり来る役者さんなんですよ、克ちゃん(=毎熊)は。今年で言うと大河ドラマ「光る君へ」でも鮮烈な印象を残していますし、2人でセリフを交わしているだけでも伝わってくるものが多いなと、改めて実感しました。
──なるほど。そして…これは俳優さんからすると当然のことだと思いますが、「ハスリンボーイ」での間宮さんはどこから見ても大学生ですね。
いやいや、そんな…当たり前のことではないですし、大学生に見えたのであれば、自分だけの力ではなくて衣装や撮り方、作品の世界観が僕をタモツにしてくれたのだと思っています。自分が心がけたというか意識したことは、エッジの効いた中にもポップさがある原作のニュアンスを残すようにしていましたね。
──原作は手触り感がザラザラというか、ヒリヒリしていますよね。
特にタモツの周りにヒリつく感じの人たちが多いので、作品全体のバランス的にも自分はそちら側に振らないほうがいいのかなと思ったんです。
──タモツが完全に闇落ちしているように見えてしまうと、作品のテイストも違う感じで受け止められかねないですよね…。
そうですね、あくまでタモツなりに生き抜いたんだけれど、最終的に“お前はこっち(裏社会)側の人間じゃないよ”と思われるニュアンスみたいなものを残したくて。何でしょうね、「表社会に戻れよ」って思いたくなるヤツであってほしいなという願望もあったんです。なので、ザラついた質感のキャラクターたちの中で、ある種浮いた存在として見える空気感を漂わせようとはしていました。
間宮さんが考える、タモツの義理とは?
──そんなふうに、タモツをギリギリで踏みとどまらせたものは何だと間宮さんは思われますか?
1つは里中さん(由佳子/演:横田真悠)の存在が、タモツと表社会をつなぎ止める要素としては大きいと思っています。その里中さんでさえも切り捨てて戻れない領域にまで踏み込もうとする瞬間も出てきますが、片足を突っ込んだタモツと、アキヒロ(毎熊克哉演じる半グレ集団のボス)や九条さん(玉山鉄二が演じる、タモツに裏社会のイロハを教える道具屋)、村田さん(竹原ピストル演じる、タモツの相棒)といった人たちとでは、そもそも覚悟が違っているんですよね。完全に根を張っている彼らの土壌に、ポンッと落ちた一粒の種のような存在がタモツで、「お前は本当にここに根を張るつもりか?」と問われているような気がしたんです。
「根を張るんだったら、これから一緒にやっていくぞ」という関係性を彼らとは築いていきますが、その覚悟が本当に自分にはあるのかと自問自答していたりもするのかな、と。同時に、良い悪い、表裏といった話じゃなくて、いろいろな犠牲を払う覚悟で裏社会を生きている人たちに対して、ある種のリスペクトも抱いているようにも感じました。ただ、それでも感覚的にタモツはやっぱり表社会に片足を残している人間なんだというのが、僕なりに考えたところです。
──なるほど、タモツという人物の解像度が上がりました。ただ、逃げてしまうことも選択できたのに、九条さんとの義理を果たすわけですが…何が彼をそこまで義理堅くさせたのでしょうか?
元々、タモツは義理堅い人間だったというわけではなかったと思います。第1話でだいぶ話が動いてしまうので、その前の描写はわりと端的だったりもしますが、かつての彼は被害者意識が強かったのかなと思っているんです。自分が置かれた状況であったり…分かりやすく言ってしまうと、人生でのツキのなさを憎んだり悔やんだりしていて、もっと卑屈だったイメージがありました。
そういった中でさらになけなしのものを失っていくわけですが、それもタモツ自身が、いつしか当たり前のものとして身につけてしまったネガティブなマインドに起因しているんじゃないかな、と僕は捉えたんです。その時点でタモツの人生は詰んだわけですけれど、九条さんに助けてもらって九死に一生を得ます。その九条さんには難病の一人娘がいて…それでもなお自分のために嘆き、怒り、行動してくれる、人としての層の厚さの違いを痛感させられるんですよね。そこに対してタモツなりに感じることがあって、義理人情の真似事をしたんじゃないかな、と。最初は仁義じゃなくて見よう見まねで模倣することから始まったものが、だんだんとホンモノになっていったと言いますか。入口はカタチだったかもしれないけれど、結果的に真実になればイーブンだと思うので、僕はタモツの選択が間違っているとは思っていないんですよね。
役者人生に導いてくれた“恩人”
──その九条さんに該当するような“恩人”的な存在が、間宮さんご本人にもいらっしゃるのでしょうか?
何人かいらっしゃいますが、それこそ鉄二さんは直接的ではないにしても、結果的に今の自分がこうやって役者をやっている理由のひとつでもあります。子どもの頃、わりと洋画を観て育ってきましたが、『手紙』(2006年)の鉄二さんを見て、“役者の芝居”ってスゴいんだなと初めて実感したんです。その体験があってから日本映画も観るようになって、今この世界にいるので、そういうきっかけがなかったらいろいろな作品に触れようとしなかったかもしれない──と思うと、僕を芝居に導いてくれた恩人の1人なのかなと思っています。
──何たる運命的な…! ちなみに『手紙』をご覧になったのは偶然ですか?
たまたまでしたね。それまでは両親の影響もあって、『ロード・オブ・ザ・リング』のようなハリウッドの大作をよく観ていたので、日本のドラマや映画を観る機会が少なかったんです。でも、『手紙』と出合って、まさしく人生が変わりましたね。
時間が空いたら旅行へ。次に行きたいのは…
──とても素敵なエピソードをありがとうございます。さて、2024年もご多忙だった間宮さんですが、作品と作品のインターバルや次の作品に入る前にリフレッシュするためにしていることがあれば、教えてください。
決まってやっているルーティーンのようなことはないんですよね…。物理的にできない場合もあったりしますし、そもそも現場が変われば人も変わるので、自分も自然と変わっていく感覚があります。作品ごとに職場が変わるような感じと言いますか──。ただ、時間がちょっと空いた時は旅行に行きますね。別の土地に行ってゆっくりする、といった過ごし方をする時もありますが、特に意識的に「これをしている」ということはないかもしれないです。
「ハスリンボーイ」の撮影は、『ある閉ざされた雪の山荘で』(2024年)から『変な家』(2024年)に続いて撮影していったので特にどこへも行かず、『変な家』を撮り終えた流れで現場に入りました。「ハスリンボーイ」は1時間枠の連続ドラマよりも短いスパンでしたし、その前の2本も映画だったのでちょっとしためまぐるしさはありましたが、テンポ感としては続けて撮れて良かったのかなと思います。
──ちなみに、今どこか行ってみたいところはありますか?
海外で行ってみたいところはいろいろありますけど、広げてしまうとキリがないので、国内で言うと…東北ですね。わりと国内は北海道、九州、沖縄、四国、中部、甲信越のほうにも行って、それぞれゆっくり過ごしたことがありますが、なぜか東北だけがまだないんです。なので、東北のほうへ県をいくつか跨いで温泉めぐりをしてみたいですね。東北へ行けたら、日本列島まんべんなく行けた、という感じにもなりますし(笑)。
──どうでしょうか、行けそうなチャンスは…?
どうでしょうね…せっかく行くなら雪景色の東北を見てみたいんですけど、雪道の運転が大変そうなので…でも、情緒がすごくあると思うから何とも悩ましいですね。行けるかどうかも決まっていないのにこんな話をするのも変なんですけれども(笑)。
Profile
間宮祥太朗
1993年生まれ。2008年、ドラマ「スクラップ・ティーチャー~教師再生~」で俳優デビュー。主な出演作に「半分、青い。」「麒麟がくる」(NHK)、「ナンバMG5」「真夏のシンデレラ」(フジテレビ)、「ACMA:GAME アクマゲーム」(日本テレビ)、映画『全員死刑』(’17年)『殺さない彼と死なない彼女』(’19年)『東京リベンジャーズ』シリーズ(’21、’23年)、『変な家』(’24年)。現在、『劇場版 ACMA:GAME 最後の鍵』公開中&Bunkamura Production 2024『台風23号』上演中。
■連続ドラマW-30「ハスリンボーイ」:作品情報
2024年11月1日(金)配信・放送スタート(全8話)
第話無料放送【WOWOWプライム】【WOWOW4K】【WOWOWオンデマンド】
出演:間宮祥太朗 毎熊克哉 横田真悠 一ノ瀬颯 / 玉山鉄二
原作:草下シンヤ・本田優貴「ハスリンボーイ」(小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
監督:鈴木浩介
脚本:小寺和久 掛須夏美
音楽:堤 裕介
プロデューサー:廣瀬眞子 笠原高弘 河相沙羅
製作:WOWOW トライストーン・エンタテイメント
【連続ドラマW-30「ハスリンボーイ」第一話まるごと無料配信】
<衣装協カ>
ジャケット¥132,000、パンツ¥104,500
(LES SIX/MATT.)
靴¥157,300
(Christian Louboutin/Christian Louboutin Japan)
その他スタイリスト私物
ヘアメイク/三宅茜
スタイリスト/津野真吾(impiger)
撮影/Marco Perboni
取材・文/平田真人
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