2024.07.31
中国・ハルビン旅行記ー可愛いモノ編ー
by Kana Sato vol.05
ブランディングディレクター、コンサルタントとして活躍する佐藤香菜さん。世界各国を旅して見つけた“本当にいいモノ”を見極める審美眼を持ち、SNSで発信する丁寧な暮らしが同世代から熱い支持を集めています。そんな佐藤さんが、普段愛用しているコスメやいま気になっているモノ、旅先でのエピソードなど、美容からライフスタイルまで赤裸々に語ってくれる本連載。
第五回は、「中国・ハルビン旅行記ー可愛いモノ編ー」についてお話いただきました。
初めての中国・ハルビン旅行記、今回は可愛いモノ編をお届けします。旅したのは7月初旬で、日差しは強かったものの気温は20度くらい。とても過ごしやすい気候のハルビンでした。マイナス19度~マイナス37度にもなる冬の時期はとても長く、有名な「ハルビン氷祭り」が開催されます。そう、雪ではなく氷なのです! そんな寒さ厳しいハルビンだからこそ、少しでも生活が楽しく気持ちが明るくなるようなカラフルな雑貨や衣類が見られるのかもしれません。実はこの傾向はハルビンのお隣ロシアでもよく見られ、わたしが集めている旧ソ連製のヴィンテージ食器類も可愛らしい花柄がたくさん!
今回はハルビンで見つけた可愛いものをご紹介します。ご旅行で行きたい方は参考にしてみてくださいね。
可愛いパッケージ
最先端というわけではない古典的なデザインには独特な魅力があります。わたしは化粧品にまつ わる仕事をしていますが、その世界においてもパッケージはとても重要で、古くから親しまれたパッケージをいきなり化粧品メーカー側の意向だけでリニューアルしスタイリッシュでミニマルなものに変更した瞬間に売上が下がる、という現象をたくさん見てきました。ときにメーカー側というのは必死に時代の先を行きたくなるもので、「別に今までのままで良かったのに・・・」という消費者の気持ちなど想像もせずにせっかく長い年月をかけて認知されてきた伝統を捨てる傾向があります。もう元に戻すことはできないのに・・・。ここハルビンで見たパッケージ類はレトロで可愛らしいと感じたものがたくさん! わたしのツボにハマったものをいくつか写真に収めてきました。
ここのお店はハルビンの中心部から少し離れた老道外エリア、歴史文化景区と呼ばれる場所にあり、にこやかな店主ご夫妻が迎えてくれる店内には壁一面に茶葉が並んでいます。その包み紙はどれも個性豊かで、虎の柄、植物の紋様、産地の山々の景色がプリントされていたりと大変美しいものばかり。簡体字で記載された商品名もデザインの一部となり、英語表記とはまた違ったアジアの美しさを再確認できます。
キャンディの包み紙も渋さ満点、この古めかしさが長く愛されてきた証。「蝦糖」はピーナッツの砕いたものに飴がけしたサクサクな食感がとても美味しいお菓子で、止まらない美味しさはお土産におすすめしたい1品。縞模様の飴細工がエビのように見えることから蝦糖と呼ばれています。スーパーマーケットのお菓子売り場もレトロパッケージの宝庫! 創業者のお顔がプリントされているキャンディや猿のパッケージなど、包み紙がキラキラとしていてノスタルジック。
「東北大花」との出会い
ハルビンについて早々、わたしが目を奪われたのがこの花柄プリント!
ちょっとダサいのになんだか可愛い、派手な包装紙みたいな花柄は屋台のデザインなどにも使われており、ハルビンの空の色や空気の中で見るとちょっと着てみたくなる魅力がありました。毎朝5:30~9:00に開かれている朝市にて、上下で1,000円くらいのセットアップを見つけて早速購入。トップスだけすぐに着用し市内を歩いていると・・・あれ、特に50代以上くらいの現地の方の視線を感じる・・・?すれ違いざまにじーっとこちらを見て少しクスッと笑われているような気も。後で知ったのですがこのプリントは「東北大花」と呼ばれておりハルビンでは冬に布団や座布団で使われていた「ちょっと古めかしくてダサい」ポジションのプリントだったのです (笑)。しかしここ数年、中国のインフルエンサーがこれを着こなして登場したTikTokが大バズりしたそうで、ちょっとしたブームにもなりかけているとか。まさにリバイバルヒット中の花柄を見つけた自分、見る目あるじゃない!(あるのか?)と満足して友人へのお土産としても購入。 薄くてさらっとした生地が気持ちよく、部屋着として活躍中です。
ハルビンの景色にはこのくらい派手なプリントも馴染む・・・気がしたのは自分だけかもしれませんが、大満足のお買い物でした♪
アンティークの素晴らしさ
老道外エリアにある5階建くらいのビルに入ると、古美術品や古い紙幣、家具や絵画などの専門店が集まっていました。手荷物で持って帰れない大きさのものが多いですが、隅々までチェック してみると・・・1軒の小さなビーズ店を発見。翻訳アプリを使いながら店主さんとやりとりしてみると、ここは古いものだと清の時代のビーズや、チベット密教で価値あるものとされる天珠というビーズなどが揃う店。
中国らしい翡翠やターコイズもあったり、つい長居してしまう品揃えで、アクセサリー作りをする方には必見のスポットです。
お次は黒竜江省博物館で満洲国当時のハルビンの街の歴史を知るとともに民族衣装とご対面です! 窓口でパスポートを見せると海外からの旅行客は無料で入館することができました。
西洋らしさのあるハットに中国らしい立ち襟、手には細いステッキ、右の男性は胸ポケットに懐中時計と、センスが良すぎる昔の衣類。この地に住むロシア人女性たちの装いも華やかです。
満洲服と言われる、チャイナドレスの原型でもある衣装。時代が古いものはこのように斜めに留める襟のデザインで、シルクに施された手刺繍が見事! 購入できるならこれが欲しいと思ってしまうほどの美しさです。
子供用の帽子は虎の顔を施したもので、悪や災難から守ってくれるお守りの役割があってのデザインです。耳までつけた愛嬌のある表情がユーモア満点で遊び心を感じます。底が厚い刺繍の靴を見ると、纏足(てんそく)していた足のサイズではないため調べて見たところ、ハルビン周辺ではこの文化は見られなかったそう。なぜならば禁止されていたから! 健康的だしラクで良かったね~と思いきや、纏足した足への憧れが強かったこのエリアの女性たちはわざと底の厚い靴を履いて、おぼつかない歩き方にしていたそうです。なんとも不思議な美意識ですね。
世界のどこを旅しても、その土地の民族衣装の展示がある博物館に行くようにしているのですが、不思議なことにどこの国にも似たような紋様が見られます。この博物館で見た布もまた、ウズベキスタンの刺繍やアイヌ民族の衣類に見られるようなデザインで、自然界にある植物や空や太陽などから着想を得ていたり、世界は繋がっているのだと感じさせてくれました。
グルメ編と可愛いモノ編の2回に渡ってご紹介したハルビンの旅、いかがでしたでしょうか?
実はハルビン旅行の少し前、サッカーの試合観戦のために広島にいたのですが、そこで乗ったタクシーの運転手さんがお喋りの楽しい方で「僕は昔、中国から日本に来たんだ」と話してくださったので「中国のどちらご出身なんですか?」と質問したところ、 「キレイなところだよ~!(数秒間じらしてから、勢いよく)ハルビン!」と言われ、あの広い中国でまさにわたしはそこを旅行する予定なのだ! と、引きの強さに笑ってしまいました。 タクシーの運転手さんがハルビンの魅力を熱く語ってくれたように、わたしの初めての中国旅行が王道な大都市とはまた少し違ったハルビンで本当にラッキーでした。そして今回の旅をきっかけに中国の歴史を改めて学びたいと思っています。 民族衣装コレクターとしてあまり手を出してこなかった中国の衣装たち。地域ごとの特性などを調べ始めたわたしは、まずは中国の少数民族「ミャオ族」のヴィンテージを手に入れました。これを着てまた中国を巡りたいものです。
どんな場所に行っても、その良さを見つけられるかは自分の過ごし方次第。それは旅だけでなく毎日の生活でも同じなのだと再確認。 実際に足を運んでみて興味を持ったことを深く追求していく、その過程もまだ旅の途中です。
Branding Director 佐藤香菜
株式会社マッシュビューティーラボにて、オーガニックのコスメとインナーケア製品のセレクトショップ「Biople by CosmeKitchen」の立ち上げとディレクションを行ったのち、独立。ブランディングディレクター・コンサルタントとして多数の企業の製品企画立案、製品プロデュースから販路拡大に携わる。オーガニックコスメを巡る旅の様子はNHK「世界はほしいモノにあふれてる」への2度の出演や、Instagramアカウント @kana__sato622 で発信している。
>>vol.01 1人で旅する時間で気づくこと
>>vol.02 大人になった今だから本当の友人に出会える
>>vol.03 5月のパリ旅行記 おすすめグルメスポット!
>>vol.04 中国・ハルビン旅行記ーグルメ編ー